テスラ2022年第三四半期の台数速報〜生産台数は過去最高の36万台へ

テスラ社は2022年10月2日、2022年度第3四半期の生産台数が過去最高の36万台以上になったことを発表しました。納車台数も34万台以上です。生産台数と納車台数のギャップは生産と物流体制のアンバランスが要因のようです。2022年1月~9月の実績では90万台を超えていて、年間120万台は確実な状況です。

テスラ2022年第三四半期の台数速報〜生産台数は過去最高の36万台へ

生産、納車の台数はともに過去最高

電気自動車(EV)メーカーのテスラ社は、2022年10月2日(現地時間)に、第3四半期(6~9月)の生産台数と納車台数の速報値を発表しました。生産台数は、『モデルS/X』が1万9935台、『モデル3/Y』が34万5988台で、合計36万5923台と過去最高を記録しました。第2四半期は25万8580台だったので、約41%の大幅増になっています。

生産台数推移

※クリックするとグラフ画像が拡大表示されます。

納車台数推移

【参考情報】
Tesla Vehicle Production & Deliveries and Date for Financial Results & Webcast for Third Quarter 2022

納車台数は、『モデルS/X』が1万8672台、『モデル3/Y』が32万5158台、合計34万3830台で過去最高です。前期は25万4695台だったので、約35%の増加になりました。

生産台数、納車台数ともに30万台になったのは2021年第4四半期(10~12月)、2022年第1四半期(1~3月)に続いて3度目です。

テスラ社の実績が前期を大きく下回ったのは、新型コロナの影響が出始めた2020年第2四半期、それに中国のロックダウンが長引いた2022年第2四半期でした。それでもテスラ社は、大手自動車メーカーが半導体不足などで軒並み生産が伸び悩む中、ほとんどの四半期で前期比プラスを達成していました。

また2022年7月の第2四半期決算発表の時にイーロン・マスクCEOは、6月にフリーモントと上海の両方で生産を大きく伸ばすことができた結果、「今年の下半期は記録的な結果を出す可能性がある」と述べていました。過去最高になった今回の実績は、マスクCEOの言葉に沿った結果と言えそうです。

今年の生産台数はマツダを超える

テスラ社は今年、生産、納車台数を前年比50%増にすることを目標にしています。昨年はどちらも約93万台だったので、今年は139万5000台が目標値になります。

2022年1月から9月までの実績は、生産が92万9910台、納車が90万8573台なので、目標達成に必要な数は生産が46万5009台、納車が48万6427台です。

ところで、テスラの内部資料などをもとにしたニュースが比較的多いロイターは10月3日、第4四半期に約49万5000台のモデルYとモデル3を生産する目標を設定した内部計画を確認したと報じました。

これが事実なら、マスクCEOの言葉通り今年下半期に記録的な結果を出せることになります。当初目標の年間約140万台に届きそうな気配です。日本メーカーで言えば、トヨタ、ホンダ、日産に次ぐ規模になります。

ちなみにマツダの2022年1月~8月の生産台数は、速報値で68万4554台です。月に約8万6000台なので、このままのペースで行くと年間約103万台です。生産台数が延びる予兆はないので、テスラ社がマツダを超えるのは間違いなさそうです。

大手自動車メーカーもEV販売が伸びる

テスラ社の好調を支えているのは、独自の車の人気が高いことはもちろんですが、世界各地でEVの需要が伸びていることです。このことは、大手自動車メーカーの今期業績でも見えてきます。

ゼネラル・モーターズ(GM)は10月3日(現地時間)に発表したニュースリリースで、北米のEV販売台数が過去最高になったことを明らかにしました。

GMによれば、『シボレー・ボルト』と『ボルトEUV』の北米での販売台数は、2022年第3四半期に過去最高の1万4709台になりました。需要の急増に応えるため、GMは同車の年間生産台数を2022年の4万4000台から、2023年には7万台以上に増やします。その後は、2025年までに年間100万台以上のEVを生産する目標を掲げています。

『シボレー・ボルト』と『ボルトEUV』の台数は、日本で一番売れているEVの日産『サクラ』、三菱『eKクロスEV』の合計台数を上回りそうです。『サクラ』『eKクロスEV』は、2022年8月に合計約4000台が登録されています。生産計画台数が非公表なので推測するしかないのですが、仮に月5000台だとして年間6万台なので、シボレーのEV販売台数より若干、少なくなるかもしれません。

2022 Chevrolet Bolt EUV

GMは2023年には、『ハマー EV』と『キャデラック LYRIQ』の増産を予定しています。2023年はさらに、『シボレー・シルバラード EV』、『シボレー・ブレイザー EV』が夏、『シボレー・エクイノックス EV』を秋に発売予定です。

こうしたEVの予約販売も好調のようです。来年発売予定のGMC『ハマーEV Pickup』とSUVは9万台、シボレーはフリートオペレーターの意向も含めると17万台、それぞれEVの予約が入っているとGMはリリースで公表しています。

GMC HUMMER EV SUV

好調な需要に合わせてGMは工場の拡充を計画しています。当面の、ミシガン州のファクトリー・ゼロとオリオン組立工場の生産が本格化すると、年間60万台のEVトラックを生産可能だとしています。

また欧州フォードは9月2日のニュースリリースで、『マスタング・マッハE』の販売台数が、ガソリンエンジンの『マスタング』に対して8対1にもなっていると発表しました。ヨーロッパでマスタングと言えば、EVのことを意味しそうになってきました。

そんな中でGMは9月、新たに7億6000万ドル(1100億円)をかけてEV用ドライブユニットの製造設備を作ることを発表しています。もちろん、こうした投資のリスクがゼロというわけではありません。

GMは将来予測に記載が義務付けられている注意事項を、EV特有の事情を含めて20以上記載しています。その中には、テスラ社でも課題になっている物流コストの変動や、気候変動に関連する規制の変化などもあります。このあたりは定型文とは言え、どの自動車メーカーにも関係するリスク要因です。

それでも各社はEVを10年先を見越した戦略の中心に置いています。ヨーロッパやカリフォルニア州の規制強化も背中を押す要因になっています。アメリカではニューヨーク州が、カリフォルニア州と同様の規制強化を決めました。

気候変動対策はEVだけが回答ではないとは言え、他の手段がまだ市場に出せるほど開発が進んでいないことを考えると、手をこまねいているわけにはいかないということなのだと思います。

物流能力が追いついていない

話をテスラ社に戻します。今回の速報値で特徴的なのは、生産台数と納車台数の間に2万台のギャップがあることです。2020年以降に業績が右肩上がりになってからは、生産、納車の台数がほとんど同じでした。

けれども今期は生産台数が納車台数を2万台以上も上回っています。なぜなのでしょうか。テスラ社はプレスリリースで納車台数が少なかったことについて、こう説明しています。

●テスラ社は地域ごとに一括して生産(地域ごとにバッチ生産)しているために、車両が完成する四半期の末に偏っていた。
●生産台数が増加する中で、物流のピークに合わせた輸送能力を合理的なコストで確保することが難しくなってきた。

(筆者注:そのため物流がボトルネックになって納車が遅れるようになってきたという意味でしょう)
●第3四半期は、毎週、平均的に車両を生産できる体制への移行を開始したが、四半期末の時点で納車に向けて輸送中の車両が増加した。

要するに、作ってから納車が完了するまでに今までよりも時間がかかっているようです。このため2万台の差分は、次の四半期実績に反映されると思われます。

ロイターは、速報値発表の日曜日にマスクCEOが、「クレイジーな四半期末の配送の波をスムーズ(平均化)にして、迅速なコスト削減&テスラチームのストレスを軽減する」と述べたことを伝えています。

そして、テスラ社がカリフォルニア州で、「第3四半期の最後の数日間、熱心に待っている顧客に非常に大量の車両を届ける」のを手伝うよう、従業員に再び要請したと報じています。

そういえば日本でも、テスラの登録台数は四半期最後の月に偏っているようでした。

【関連記事】
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日本自動車輸入組合がまとめた2022年の登録台数を見ると、「その他(Others)」のメーカーは1月が10台、2月が212台なのに対して、3月は1201台と急増しています。同様に、4月は15台、5月は2台ですが6月は870台です。関連記事でも指摘したように「その他(Others)」はおそらくテスラで、なぜ四半期末に偏っているのかと不思議だったのですが、謎が解けました。

余談ですが、生産と物流のバランスをとるのは容易ではなさそうです。部品の納期を生産に合わせたいわゆるカンバン方式は、全体が順調に動いている時は効率も良くコストも抑えられそうですが、冗長性に乏しいため災害など突発的な事態の影響を受けやすくなります。

それだけでなく、カンバン方式では納品を生産に合わせるため、物流側は時間通りに着くために早く出て近場で待機するようになったりします。高速道路のSA&PAに大量のトラックが駐車しているのはその象徴と言えるでしょう。輸送する車両の集積基地があればいいのですが、日本のように車両基地が未整備だと道路上の待機車両が増えることにつながります。これではアイドリング時間も増加し、CO2排出量も増やしてしまいます。

生産効率を上げてコストを抑えるためのカンバン方式ですが、物流の効率は物流業者に投げているので、よくよく計算してみたら効率がよろしくなかったということにもなりかねません。コストも外部化しているだけという指摘は、従前からあります。それを荷主側が気にするかどうかは別問題ですが、社会全体の効率向上には必ずしもつながらないことがあります。

深夜の高速道路が無法地帯になっているのを見るたびに、そんなことを思ってしまうのです。これは日本特有の話なので、これから変わることを願って、閑話休題とします。

テスラ社の今期の業績が好調を維持しているのは確実です。年間の実績は140万台に手が届きそうですが、マスクCEOは、しばらくは50%成長が続くという見方を述べているので、来年は200万台超えということでしょうか。

生産能力は確保しつつあります。あとは、中国メーカーの台頭でテスラの一人勝ちがどこまで続くのかですが、EV市場の幅が広くなれば住み分けになるようにも思います。それに価格勝負になると、高品質低価格をウリにしてきた日本メーカーが、中国メーカーの相手になるのかもしれません。

ということで、第3四半期の決算発表は日本時間で10月20日早朝です。それまで少し、お待ちください。

(文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. テスラの販売が好調なのは先行者としての優位性と
    深刻な不具合もほとんどないから信頼性で有利なんでしょうね。
    「テスラ買っとけば間違いない」ということでしょうか。
    私のような貧民には縁の無い話です。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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