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中国専売PHEV「日産 N6」試乗レポート/日本メーカーならではの快適さを実現

中国専売PHEV「日産 N6」試乗レポート/日本メーカーならではの快適さを実現

日産が2025年11月に中国で発売した新型PHEV「N6」は発売後約1か月間で7000台以上を販売するなど大きな注目を集めています。今回はN6に海外メディアとして初試乗、先立って投入されたBEV「N7」との違いなどを体験しました。

目次

N7は日系EVとして好調も、俯瞰して見ると苦戦

中国の特色あるEV需要に応えるべく、外資系メーカーは現地開発主義を掲げ、積極的に中国向けEVをここ1~2年でローンチしています。日本メーカーもその例外ではなく、日産は2025年4月に初となる中国向け新規設計のBEV「N7」を発売しました。

N7

N7はかねてから製造と販売において合弁関係を結んでいる「東風汽車」や、その合弁である「東風日産」と一丸となって開発されました。日産によればN7は東風汽車がすでに販売しているEVをベースにしたのではなく、自らシャーシやボディを新たに開発したとしており、日産なりのこだわりが内外の随所に現れています。

特徴のひとつが酔いにくい乗り味です。2025年4月に試乗した際にはその安定した走りに驚かされたと同時に、路面の凹凸や段差の処理がとても上手だと感じました。出力・トルクは上位モデルで268 hp/305 Nmと日本基準で考えるとかなりパワフルですが、アクセルペダルを踏み込んだ際の加速感はマイルドで、踏んだ分だけリニアに加速します。このような日本車特有の「優しさ」だけでなく、シンプルなインテリアや、高度な運転支援機能といった先進性と相まって、とても中国の消費者の好みを反映させた一台に仕上がっています。

【関連記事】
「日産復活の先陣となるか?」中国でヒット中の新型EVセダン〜日産『N7』試乗レポート(2025年6月9日)

日産 N7の販売台数は毎月6000台前後、2025年8月には1万台超えを達成し、日系メーカーのEVとしては異例のヒットを記録しました。外資系合弁メーカーのEV販売ランキングではトヨタの「bZ3X」と合わせてワンツーを独占することもあった一方、EV市場全体で見ると多くの中国勢が壁として高く立ちはだかっている状況です。そんなN7ですが、依然として中国で人気のPHEV需要へ応えるべく、2025年11月には「PHEV版N7」と呼ばれる「N6」が登場しました。

中国市場への次なる一手はPHEV

N6のボディサイズは4831 x 1885 x 1491 mm、ホイールベースが2815 mmと、N7と比べて全長・ホイールベースがそれぞれ100 mm程度短くなっています。「PHEV版N7」と日産自身も呼んでいますが、実際は別のボディを用いた別車種で、外から見た印象も結構コンパクトだと感じました。

パワートレインはN6のために新たに開発されたNR15型1.5リッター直列4気筒エンジンを、出力201 hpのフロントモーター、そして容量21.1 kWh(一部グレードでは20.3 kWh)のLFPバッテリーと組み合わせたPHEVとなります。純電動での航続距離は130 km前後(WLTC値)としており、普段の運転の大部分を電気のみで賄える形です。

外観は基本的にN7に準拠している一方、例えば、フロントの左右一体型デイライト下にあるヘッドライトユニットデザインの屈折方向が異なるなど、同様の雰囲気を出しつつも細かい意匠が作り分けられています。また、ボディが短縮されているため、N6ではDピラーより後ろのトランクスペースが短くなっているのが特徴的です。

運転支援機能に関してはN7と同じく、中国の自動運転ベンチャー「Momenta」と共同開発したレベル2+相当のシステムを搭載しています。ハードウェアはN6もN7もLiDARを搭載せず、2つのフロントカメラを主軸としています。

コックピット周りの印象も中国の需要に合わせるべく、15.6インチディスプレイを中央に据えたシンプルな設計となっています。物理的な操作ボタンを極力少なくしており、エアコンの操作もディスプレイ内で行わないといけないのは煩雑さを覚えましたが、送風口の向き調整が手動なのはまだ扱いやすい印象です。中国ではジーリー(吉利汽車)のプレミアム電動ブランド「ジーカー」など、向き調整さえもタッチ操作にしているクルマが増えつつあり、実際に使ってみても良い操作感ではないと筆者は感じておりました。

細かい点ではルームミラーをデジタルではなく通常のミラーにしたり、室内用カメラを搭載しないなどコストを抑えている印象はありますが、決して安っぽい空間にはなっていない点に努力を感じました。

日系メーカーならではの快適性を実現

前述のとおり、N6/N7の乗り心地は「酔いにくさ」がアピールされています。サスペンションはスポーティよりもコンフォート(快適さ)寄りにチューニングされており、未舗装路や荒れた地面、石畳の多い道路でも身体に伝わってくる衝撃が抑えられています。中国汽車技術研究中心(CATARC)や中山大学付属第一病院と開発した「車酔い防止機能」では、渋滞時の発進・停止や、坂道発進のわずかな後退、カーブを抜ける際の不快な揺れを軽減するとしており、乗り心地の悪い新興メーカー車種が増える中で大きなアピールポイントになるだろうという印象です。

エンジンはEVモードで走行している場合、時速70 km前後から始動します。エンジン音がまったく聞こえないわけではありませんが、かなり抑えられているので他の環境音(風切り音やロードノイズ)と相殺されてほとんど気になりませんでした。専用に開発されたエンジンということもあって、設計の段階から数々のNVH(騒音・振動・ハーシュネス)対策を盛り込んでいるのでしょう。

筆者の身長は比較的高め(187 cm)ではありますが、ボディがN7より小さくなった分、運転席に座ると少しばかりの窮屈さを感じてしまいました。シートポジションをもっとも低く調整してもあまり低くならず、ボディの小ささ以外にこの点も影響していると推測します。ただ、N7と同じく「ゼログラビティソファ」と呼ばれるリアシートは快適性にかなりこだわったようで、座面と背もたれの反発性まで計算したとアピールしています。その自信はこのリアシートを実際に家庭用のソファとして販売までした点にも現れています。

価格は200万円台前半から!

急速充電にも対応。

N6の価格は9.99~12.99万元(約228.1~296.5万円)とN7よりも安く、なおかつBYDが販売する同車格のセダン「秦L」のPHEVモデルとほぼ同等であるあたりに日産の本気度がうかがえます。

その反響はさっそく販売台数にも現れており、発売後約1か月間(2025年11月下旬+12月)で7387台を記録しました。一方、N7もかつては毎月6000台前後を記録していましたが、N6発売後の2025年12月は1925台、2026年1月は978台へと落ち込んでいます。販売台数減速の要因としては、N6とN7がラインナップ内で共食い状態を起こしていることも推測されます。

2025年12月にはN7、N6に続く中国専用設計EVの第3弾モデルとして「NX8」を公開しました。「X」が車名に含まれていることからもわかる通り、NX8はNシリーズ初のSUVとなります。また、パワートレインはBEVに加え、発電用1.5リッター直列4気筒ターボエンジンを搭載するEREVも用意することが中国政府機関への届出から判明しています。

日産は中国専用設計のEVラインナップを増やすと同時に、従来の売れ筋車種である「シルフィ」や「ティアナ」の刷新も継続的に行なっています。なにかと先行きが不安視される日産ですが、中国市場の変化の速度についていくべく、かつて類を見ないレベルでの改革が進行していると感じます。

取材・文/加藤 ヒロト(中国車研究家)

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この記事を書いた人

下関生まれ、横浜在住。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶ傍ら、さまざまな自動車メディアにて主に中国の自動車事情関連を執筆している。くるまのニュースでは中国車研究家として記事執筆の他に、英文記事への翻訳も担当(https://kuruma-news.jp/en/)。FRIDAY誌では時々、カメラマンとしても活動している。ミニカー研究家としてのメディア出演も多数。小6の時、番組史上初の小学生ゲストとして「マツコの知らない世界」に出演。愛車はトヨタ カレンとホンダ モトコンポ。

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