ホンダが5月下旬に発売する電気自動車『Super-ONE(スーパーワン)』のメディア向け試乗会に参加。ちょっぴりですが、サーキットを走らせてきました。自由自在にコーナーを駆け抜ける運動性能は痛快そのもの。人気ブレイクの予感がします。
期待の小型スポーツEVにはサーキットがよく似合う
筆者の青春時代、「ボーイズレーサー」とか「ホットハッチ」と呼ばれる、コンパクトボディの高性能車が人気を集めていました。「Super-ONE」は、当時大ヒットした「ホンダ シティターボII」(通称・ブルドッグ)が令和に甦った、と話題を集めている小型EVです。

シティターボⅡ(左)とSuper-ONE BULLDOGスタイル。
ジャパンモビリティショーやオートサロンで「ほぼ実車」のプロトタイプが公開されていましたが、2026年4月10日に「5月下旬に発売」とアナウンスされ、合わせて袖ヶ浦フォレストレースウェイでメディア向け先行試乗会も行われました。限界性能など引き出せるはずもないサーキット初心者ではありますが、筆者のマイカーはHonda e。EVsmartブログ編集部から「ホンダEVユーザー視点のレポートを」と依頼され、参加してきました。

まずは外観です。羊の皮を被った狼というより、見た目から狼っぽさを主張しています。ブリスターフェンダーが張り出して、低く広く構えたシルエットはいかにも走りそう。「かわいい」雰囲気のN-ONE e:とは、ずいぶん違う印象です。サーキットが似合います。
迫力あるデザインのせいか、スケール感がバグってしまって、運転席に座ったとき、助手席の近さに戸惑いました。そうそう、ベースは軽サイズでしたよね、と感覚をリセット。車内空間はN-ONE e:を踏襲していて、ダッシュボードやハンドルなどの配置も共通です。大きな違いは前席シート。ホールド性を高めた専用設計になっています。

ブーストモードで軽自動車の自主規制を解除
バッテリー容量は29.6kWhでN-ONE e:やN-VAN e:と同じ。一充電航続距離(WLTCモード)は274kmで、N-ONE e:(295km)よりは短いですが、N-VAN e:(245km)よりは長くなっています。
パワーユニットもシリーズ共通。ただしSuper-ONEには「ドライブモード」が備わっています。まず、ノーマルモードのほかに「ECON(イーコン)」というエコドライブ、「CITY(シティ)」というシングルペダルモード、メリハリのある加減速とエンジン音が楽しめる「SPORT(スポーツ)」モードが選べます。ただし、この4モードでは最大出力は軽自動車の自主規制値、64馬力(約47kW)のままです。

最もSuper-ONEらしさが出るのは「BOOST(ブースト)」モードです。ハンドルのブーストスイッチを押すとモードチェンジ。電流制限が解除されてパワーユニット本来の性能を使い切る70kW(約94馬力)まで出力が拡大されます。同時に「仮想有段シフト」「アクティブサウンドコントロール」も作動して、エンジン車のようなドライビング感覚が楽しめます。

筆者の担当した試乗は2周。開発スタッフが助手席に乗って、あれこれ説明してくれました。「違いがよくわかるように」というアドバイスに従い、1周目はノーマルモードで周回して、2周目でパワー全開のブーストモードを試してみます。
グリップ感の高いコーナリングが痛快

なんと、バッテリー温度計(左端)を装備。ブーストモード以外のドライブモードでも表示可能です。
ノーマルモードのままでも、ただものではないことがすぐにわかりました。ピットロードからそれなりに加速して、1コーナーでハンドルを切った瞬間に、クイックなレスポンスとグリップ感にびっくり。ググッと横Gがかかります。
1コーナーを抜けたところにパイロンスラロームが設定されていました。よぉし、とかなりの勢いでクルマを振ったつもりでしたが、まったく限界を感じません。くいくいっと抜けてしまいます。コーナリングに関しては、N-ONE e:との違いがどうこうと言うより、別のクルマと考えた方が良さそうです。
トレッドを広げて、サスペンションを含めた足回りを強化、タイヤサイズも155/65R14→185/55R15にアップしてスポーツタイプの「ADVAN FLEVA」を装着していることで、ICE車のN-ONE RSと比べても、接地点横剛性(横Gに耐える力)がフロントで37%、リアで57%も高まっているのだとか。操舵に対する初期応答性や旋回追従性も高められています。
右回りの4コーナーは25Rのヘアピン。結構な勢いで飛び込んだつもりでも、ちょっとタイヤが鳴いただけ。限界はまだまだ先ですよー、とSuper-ONEに言われている気がしました。まさしく「コーナリングマシン」です。
中低速からは何も考えずアクセルさえ踏めばEVらしくスムーズに加速。高速の伸びはそれほど期待できませんが、とにかく曲がるのが楽しすぎます。素人レベルでは「あ、やばいかも」と思える速度でコーナーに進入しても、ぐるん、と平気な顔でクリアできます。

ブーストモードに切り替えた2周目、自分なりにペースアップを試みましたが、限界を感じさせるようなシーンは迎えませんでした。どこまでもスムーズに「オン・ザ・レール」感覚でコーナーを周回できました。
立ち上がりの加速をもう少し……と感じる瞬間もあったものの、サーキットゆえ、と言っていいのでは。公道で70kWのフルパワーをかけ続けられるようなシーンはあまり多くないでしょう。腕利きがガチでレースに挑むならともかく、かつてシティターボに憧れたおじさんがレーサー気分を味わうだけなら、十分すぎます。
ブーストモードでのICE車のような演出については、事前に聞いて「EVに必要なの?」と感じていたのですが、実際に乗ってみると意外に楽しめました。「フォーン、オーン…」というダミー音(スピードを出していたせいか思ったより小さめ)だけでなく、段階的にマシンが速度を増すシフトアップの加速感も再現されています。減速しながらハンドルのパドルでシフトダウンすると、ヒール&トゥを使ったような音と減速Gを味わえます。ゲームみたいです。
たった2周だったのに、調子に乗って飛ばしてしまい、あっという間に試乗終了でした。加減速や旋回をじっくり試してみたいので、公道で試乗できる機会を待ちたいと思います。サーキットで見せてくれたコーナリング性能からして、ワインディングロードはかなり得意なはず。同時に強い自制心も必要になるでしょうけれど。
小型EVのポテンシャルを活かした純正チューニングカー?
「もともと中央部に重心が集まった設計なのが旋回性能の良さにつながっています」と開発スタッフは話していました。Super-ONEは、N-VAN e:、N-ONE e:と並行して開発されています。先述したようにバッテリーやパワーユニットは共通。ICE車より低重心で、旋回性能を示す「ヨー慣性倍率」も低く抑えられているのは3車種共通の特徴です。
マイカーであるHonda eもまた、気持ちのいいコーナリングが楽しめるコンパクトEVです。Super-ONEの挙動はその痛快さをわかりやすく強調している印象で、ホンダの小型EVシリーズが秘めた「走り」のポテンシャルをメーカー自らが引き出した「純正チューニングカー」と呼べそうです。

早速、ホンダアクセスや無限からカスタムパーツが登場しています。
試乗会場には、そんなSuper-ONEをさらにカスタムしたマシンも展示されていました。ホンダアクセスの「BULLDOG STYLE(ブルドッグスタイル)」は、よりスポーティテイストを強めたテールゲートスポイラーやLEDフォグライトなどを装着。アイテムは純正アクセサリーに設定されるそうです。無限(株式会社M-TEC)も開発中のエアロパーツやセミバケットシート、パフォーマンスパーツなどでカスタムした車両を披露していました。発売前からカスタムパーツが続々ということからも、ホンダの力の入れ具合がわかりますね。
ぶっちゃけ、性能を使い切るような腕が筆者にはありませんが、それでも思った通りに操れて「人車一体感」をしっかり楽しませてくれたSuper-ONE。スポーティな走りが好きな人は、ぜひ試乗してみてください。
ほぼ軽サイズなので、買い物や送迎など日常の足として気軽に使えそう。そして休日にはサーキットやワインディングロードを楽しめる。未発表ですが補助金もかなり期待できそうで、セカンドカーとして大ヒットするのでは。生産計画台数はあまり多くないという話も聞こえているので、早々にGETしたい方は早めの予約がオススメです。駐車場さえなんとかなるなら筆者も2台目に……と妄想しちゃいました。
取材・文/篠原 知存






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