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新ブランド「EMTA」が2027年に軽EVを日本で発売/エンジン車並みの価格で「普通の人に届くEV」を

新ブランド「EMTA」が2027年に軽EVを日本で発売/エンジン車並みの価格で「普通の人に届くEV」を

中国のEVメーカーである奇瑞汽車(チェリー)やオートバックスセブンが設立した「EMT」が、日本市場向けの新自動車ブランド「EMTA(エムタ)」を発表しました。第一弾モデルは2027年発売予定の軽自動車規格EVで、販売は全国のオートバックス店舗ネットワークを活用するとともに、ショッピングモールなどに拠点を設置していく計画です。

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「Daily Magic」は日本の日常に寄り添う合言葉

写真左から、CTOの山本浩二氏、代表取締役CEOの何暁慶氏、CMOの打越晋氏。

2026年5月27日、中国の大手EVメーカーである奇瑞汽車(チェリー)やオートバックスセブンなどが共同出資して設立した株式会社EMTが記者発表会を開催。日本市場向けの新自動車ブランド「EMTA(エムタ)」を本格始動して、第一弾モデルとして軽自動車規格の電気自動車(EV)を2027年に発売予定であることを発表しました。さらに2029年までに合計4車種を投入する計画です。

発表会で示されたブランドプロミスは「Daily Magic」。大上段に「未来のモビリティ」を語るというより、日常にある小さな不便や不安を、EVとソフトウェアの力で少しずつ解消していく、という方向性が印象的でした。気になるのは、やはり第一弾となる軽EVの実力、充電性能やバッテリー容量、そして市街地も含めた運転支援技術の中身です。EMTAというブランド名は「Easy, Made To All」が由来となっています。EMTの発表資料では、「すべての人の日常を幸せにする」というパーパスが示されました。新しいブランドが狙うのは、狭い道でのすれ違い、駐車のしづらさ、子どもの送迎、雨の日や長時間運転時の緊張といった、日本の日常移動に残る課題です。

価値を表すキーワードは「ちょうどいい」「楽」「Wow」の3つ。サイズや価格だけでなく、乗る人の暮らしや習慣にしっくりくること。購入、点検、修理、問い合わせまで、面倒を減らすこと。こうした考え方を、クルマと店舗、アプリ、サービス拠点まで含めて実現しようとしています。

最初のモデルに軽EVを選んだ理由も明快です。日本では新車販売の約3台に1台が軽自動車で、軽自動車の平均月間走行距離は約400km。つまり軽自動車は遠くへ行くためだけのクルマではなく、買い物、送迎、通勤など毎日の暮らしのすぐ近くにある存在です。EMTAはそこにこそEVの価値を持ち込みたい、というわけです。

軽EV専用プラットフォームを新規開発

第一弾の軽EVは、たんに既存車を日本へ持ち込むのではなく、日本の軽自動車規格に合わせた専用プラットフォームを新規開発します。軽規格は全長3.4m、全幅1.48mという制約があり、この小さな車体にバッテリー、居住性、衝突安全性能を成立させるのは簡単ではありません。

EMTAは「Magic EV」として、複数ユニットを一体化したeアクスル、床下バッテリー、静粛性、力強い加速感、日常に十分な航続距離と充電性能を訴求。さらにV2HとV2Lにも対応します。急速充電はCHAdeMO規格を採用します。災害時の非常用電源として軽EVが使えることは、日本市場では大きな訴求点になります。

気になるバッテリー容量や急速充電性能は、公表されませんでした。ただし山本CTOは、急速充電について「日産サクラのレベルではない」とコメント。日産サクラより上の充電性能を目指していると受け取れる発言で、量産仕様の発表が待たれます。

一方で、山本氏は軽EVに過剰なバッテリー容量は必要ないとも強調します。軽自動車の月間平均走行距離が約400kmなら、1日あたりの走行は20〜30km程度。自宅で基礎充電できる環境であれば、外で急速充電する機会はほとんど無いでしょう。セカンドカー用途なら航続可能距離は100km程度でも十分な可能性があります。

EVsmartブログ読者にはおなじみの話ですが、軽EVの価値は航続距離の数字だけでは測れません。自宅充電で毎朝満充電に近い状態から出発できること、アイドリングなしで駐車中もエアコンを使えること、V2H/V2Lで非常時や屋外レジャーの電源になること。こうしたEVならではの実用価値をどう伝えるかが、軽EV普及の鍵になります。

オートバックスとの連携にも注目

新興ブランドが日本でEVを売るうえで、車両そのものと同じくらい重要なのが販売拠点と整備体制です。EMTAもこの点を強く意識しており、発表会では「ゼロから始まるブランド」だからこそ、従来型ディーラー網に限らない顧客接点を作っていく方針が示されました。

キーワードは「共創」です。EMTAは、数十社規模の自動車事業者と、これからの時代に必要とされる店舗やサービスのあり方を議論していると説明しました。その中でもオートバックスセブンは、EMTAにとって重要なパートナーの一社です。オートバックスは、車を買った後にタイヤ交換、アクセサリー購入、ちょっとした相談などでユーザーが頻繁に立ち寄る場所。

販売拠点は従来型店舗だけにとどまらず、ショッピングモール内の小型拠点、生活導線上の体験型スペース、移動型の出張店舗なども想定するとのこと。軽EVの販売では、購入前の説明だけでなく、自宅充電、V2H、補助金、日常の使い方まで丁寧に伝える必要があります。生活導線上で相談できる場をどう作るかは、普及の実務としてかなり重要です。

さらに「Magic Connect」というOne ID構想も掲げられました。店舗、アプリ、コールセンター、サービス拠点をつなぎ、どの拠点でも顧客の相談内容や点検履歴を踏まえた対応を行うという考え方です。EVは購入後の充電相談やソフトウェア更新など、従来のエンジン車とは違うフォローが必要になります。販売後の関係をスムーズに深める仕組みを作れるかどうかは、EMTAが日本で信頼を得るための大きなポイントになりそうです。

市街地での自動運転も可能に

もうひとつ注目したいのが、運転支援システム「Magic Drive」です。公式資料では「エンドツーエンド方式のレベル2自動運転支援システム」と説明され、自動駐車、一般道や高速道路での高度な運転支援が示されました。

個別インタビューで「自宅の駐車場から目的地まで、ボタンひとつでレベル2の範囲内で支援する機能を目指しているのか」と尋ねると、山本CTOは「技術的なケイパビリティ(能力)としては、それを目指している」と回答しました。

ただし、日本で実現するには国内における実際の運転データ取得が大きな壁になります。中国やグローバルでのデータや技術基盤は親会社である奇瑞側にありますが、日本の道路、駐車場、交通環境に合わせたデータはこれから取得していく必要があります。

このような高度な運転支援を実現するために必要なセンサー構成についても聞きました。テスラのように「カメラだけ」ではなく、カメラと各種センサーを組み合わせ、上位モデルではLiDARも搭載する可能性もあるとのこと。山本氏は、LiDARを使うことで自転車や飛び出し障害物などを検知する精度を高められると説明します。奇瑞はすでにLiDAR搭載車を中国で市販し、一般道で高度なレベル2運転支援を展開しているとのことで、EMTAはその技術を日本向けにどう最適化するかが勝負になります。

日本国内データについては、すでに東京周辺で取得を始めているとのことですが、集めた大量のデータをどう処理するかが次の課題で、AIや機械学習による処理も検討していくといいます。

重要なのは、取得した日本のデータを中国側に丸投げするのではなく、日本側主体で処理したいという姿勢です。山本氏は、開発委託として奇瑞のリソースを使う可能性はあるとしつつも、主体はあくまで日本のEMTであり、中国で日本の運転データを勝手にトレーニングするような形にはしない、という考えを示しました。

4車種計画は「中国車の横流し」ではなさそう

EMTAは2029年までに4車種を計画しています。ラインナップ画像では、第一弾の軽EVに続き、複数の車型らしきシルエットが示されました。

では、2車種目以降は中国で既に販売されている車を日本へ導入するだけなのか。山本CTOの答えは「イエスでもあり、ノーでもある」でした。

軽自動車はもちろん、コンパクトMPVやミッドサイズMPVのように日本で需要が大きい車型は、中国市場には多くありません。一方で中国のミニバンはアルファード級の大きなモデルが中心で、車幅も1850mmを超えるものが多く、日本の立体駐車場や道路事情にそのまま合うとは限りません。

とはいえ、SUVのように活用できる既存アセットがあれば、奇瑞のプラットフォームを使う可能性はある。つまり、プラットフォームや技術は活用しつつ、日本のユーザーに合わせて上屋や仕様を作り込む、という現実的なアプローチになりそうです。

山本氏は「私たちはEVを普及帯に持っていきたい」と語りました。アーリーアダプターだけでなく、いまガソリン車に乗っている普通のユーザーが自然にEVへ移れる車を作りたい。そのためには価格も使い勝手も、日本のガソリン車と競合できるレベルに近づける必要があるということです。

個別インタビュー山本浩二CTOに聞いてみた

発表会後、株式会社EMT CTOの山本浩二氏に、Magic Driveの実現性、自動運転用のデータの取得、今後の車種展開、充電・バッテリーまわりについて個別に話を聞きました。一部前述の内容と重複する点もありますが、改めて一問一答形式で紹介します。

Q:Magic Driveは、自宅の駐車場から目的地まで、レベル2の範囲内で高度な運転支援をする機能を目指しているのでしょうか。

少なくとも技術的なケイパビリティとしては、それを目指しています。それが実現できるようなセンサーやアルゴリズムも組み上げています。

ただし、日本の道でそれを実現するには、日本の道路データを取らなければいけません。そこにはまだ時間がかかると思います。能力という意味では、十分に実現可能なシステムをすでに持っています。テスラのFSDが日本で認可されるのであれば、私たちも日本で実現できるように準備していきたいと思っています。

Q:市街地での運転支援を実現するにあたり、センサー構成はどう考えていますか。カメラだけでいくのか、LiDARも使うのか、そのあたりはいかがでしょうか。

テスラのようにカメラだけで自動運転のアルゴリズムを作っているわけではありません。カメラとセンサーを使いますし、上位モデルにはLiDARも搭載していくことになると思います。

カメラだけでエンド・トゥ・エンドを実現しているのは、たぶんテスラくらいではないでしょうか。LiDARがあれば、障害物を検知しやすくなります。たとえば自転車を避ける、突然飛び出してくる障害物を避ける、といった場面では、カメラとLiDARを組み合わせることで精度が上がると考えています。

親会社の奇瑞は、すでにLiDARを使った車を市販していて、中国の一般道で高度なレベル2の自動運転支援を行っています。技術的なケイパビリティとしては、その技術を活用すれば十分にできる。そこに日本の道路データをどう取っていくかが、私たちにとって最大のチャレンジだと思っています。

Q:中国では実際に走っている機能でも、日本の法規や交通事情に合わせたデータ取得は大きな壁になると思います。データ取得はEMT単体で行うのでしょうか。それとも他社と協力しながら進めるのでしょうか。

いま具体的な実験計画を立てているところです。私たちのようなスタートアップが、全国すべての道路データを自前で取るのは難しい。ですから、アウトソースも含めて、どうデータを取っていくのかを検討しています。

東京周辺では、すでにデータを取り始めています。ただし、今度はそれをどう処理するかが非常に難しい。データが大量に集まっただけでは意味がありません。AIや機械学習を使ってどう処理するかを考えないといけない。高速道路であれば難しくないと思いますが、一般道はさまざまなシチュエーションがありますから、そこをきちんとできるように準備する必要があります。

Q:取得したデータは、中国側でトレーニングし、そのフィードバックを日本にOTAなどで配信する形を想定しているのでしょうか。

データは中国に送信せず、日本側で処理したいと考えています。ただし、そこはまだ奇瑞と具体的な話をしているわけではありません。

奇瑞は奇瑞で、中国向けの車の開発がありますから、開発リソースが余っているわけではありません。日本向けの開発は、できれば日本でやってほしいという話もあります。可能であれば、私たち自身でやりたい。

一方で、彼らには多くの人材がいます。現在も私たちの車は、奇瑞に開発委託契約を結んで、図面の詳細を書いてもらうようなことをしています。そういう形でお願いすることはあるかもしれません。ただし、その場合も主体はあくまで日本のEMTです。奇瑞が勝手にデータを使うような形にはしません。

Q:今回発表された軽EVは日本独自の新しい設計になると思いますが、その先に出す2車種目以降も、中国で既にある車を使うのではなく、オリジナルで考えているのでしょうか。

それはイエスでもあり、ノーでもあります。いま2台目、3台目、4台目の企画をしていますが、日本独自の車の場合、奇瑞にはそういう車がないんです。軽自動車がまさにそうですし、コンパクトMPVやミッドサイズMPVも中国にはあまりありません。

中国にあるミニバンは、アルファード級の大きな車が中心です。でも日本では、ホンダのフリードのようなコンパクトMPVや、ノア、ヴォクシー、セレナのような車が売れています。もしそういう車を第2モデルとして考えるなら、一から作らないといけません。

一方で、たとえばモデルYのようなSUVを作りたいのであれば、奇瑞の車を活用する可能性はあります。ただ、中国の車は全幅が非常に広い。1850mmを超える車も多く、日本では立体駐車場の問題があります。簡単にOEM供給を受ければいい、というものではありません。プラットフォームは活用しつつ、上屋は新しく作らざるを得ない、ということもあると思います。

私たちはEVを普及帯に持っていきたいと思っています。普通の人に買ってもらえる車にしたい。価格設定も、ガソリン車と競合できるレベルにしなければいけません。航続距離も、800km必要だから800km分のバッテリーを積むという話ではありません。400kmくらいの航続距離があって、経路充電(急速充電性能や充電インフラのネットワーク)がしっかりしていれば、十分ファーストカーになると思います。ただ、日本のお客様はまだそこをなかなか越えられない。自宅で充電する使い方を、もっと理解していただく必要があります。

日本のEVシェアはまだ2%、3%というレベルで、あまりにも低すぎると思います。もちろん、内燃機関車をすべて置き換えるべきだとは思っていません。ただ、10%くらいはEVで十分な方がたくさんいるはずです。

EVは悪いところばかり注目されがちですが、加速性能、運転のしやすさ、アイドリングなしで駐車中もエアコンを使えること、ペットモード、自宅充電、非常用電源としての価値など、良いところもたくさんあります。私たちは既存の2%のシェアを奪い取るつもりはありません。BYDやホンダなど、いろいろな車が出てくる中で、一緒にEV市場を作っていきたい。2%を10%、20%に広げていく中で、お客様に選んでいただきたいと考えています。

Q:バッテリーや充電についても伺います。資料には少なくともV2H / V2Lに対応しているとあります。これはCHAdeMOで導入されるということでしょうか。

V2LはCHAdeMOではなく、ACのコネクターから行う方式です。そこにアダプターを付けて100Vを出します。V2Hの方はCHAdeMOで対応します。

Q:普通充電は何kWくらいまで対応するのか、急速充電はどのくらいまで出すのか、そのあたりはいかがでしょうか。

そこは競争力の話もあるので、まだ詳しくは言えません。ただ、日産サクラのレベルではありません。

Q:ということはバッテリー容量は20kWhではなく30kWhに近いところを目指すのでしょうか。

いい質問ですが、そこはまだ言えません。

ただ、軽自動車にそんな大容量バッテリーが本当に必要かというと、私はそうではないと思っています。軽自動車の月間平均走行距離は約400kmです。1日でいえば20〜30km程度しか走らない。なのに、なぜ300kmが必要なのかということを、もっと理解していただく必要があります。

自宅で基礎充電できる環境があれば、家で充電するわけです。外では充電しない。だから充電インフラが少ないことは、とくにセカンドカーとしての軽自動車にとっては、大きな足かせにはならないと思います。極端に言えば、航続距離100kmでも成立する可能性があります。15kWh程度でも十分かもしれません。

ただし、冬場や安心感を考えると、200km程度あったほうがいいというお客様もいるでしょう。ファーストカーとして使いたい場合は、もう少し容量があったほうがいい。そこは用途に応じて考える必要があります。具体的な容量については、現時点ではまだお話しできません。

(インタビューここまで)

EV市場を奪うのではなく育てる

日本のEVシェアはまだ数%にとどまっています。山本氏は「2%や3%はあまりにも低すぎる」としながらも、内燃機関車をすべて置き換えるべきだとは考えていません。まずはEVで十分便利に使える人たちに、その価値を知ってもらうことが大切だという考えです。

加速の気持ちよさ、運転のしやすさ、駐車中でもアイドリングなしで使えるエアコン、ペットモード、自宅充電、非常用電源。EVの価値はスペック表の航続距離だけではありません。

今後はBYDやホンダの軽EVなど、競合も増えていくでしょう。山本氏はそれを脅威というより、市場を一緒に育てる存在と捉えています。既存のわずかなEVシェアを奪い合うのではなく、2%を10%、20%へ広げていく。その中でEMTAを選んでもらう、という発想です。

第一弾の軽EVは、価格、バッテリー容量、航続距離、急速充電性能など、まだ肝心なスペックが明かされていません。とはいえ、軽EV専用プラットフォーム、V2H / V2L、日常用途に合わせたバッテリー思想、そして日本市場主体の開発体制という方向性は、日本でのEV普及において極めて重要です。EMTAが日本の軽EV市場にどんな現実解を示すのか、引き続き注目していきます。

取材・文/畑本貴彦

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この記事を書いた人

1986年生まれ。福岡県出身。テスラモデル3注文を機にテスラに関する情報を集めだすも、日本語での情報が少ないことに気づき、2019年からテスラ専門ブログ・フォーラム「テスカス」を立ち上げる。

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