テスラ2020年第4四半期株主総会の質疑応答をレポート(全文翻訳版)

先日お伝えしたテスラの2020年第4四半期決算発表に引き続き、オンラインの質疑応答が1月27日(現地時間)にありました。テスラCEOのイーロン・マスク氏と各部門の役員への事前質問に加え、ライブでの質疑応答も行われました。全編を日本語訳でお届けします。

テスラ2020年第4四半期株主総会の質疑応答をレポート(全文翻訳版)

Teslaからの参加者

Elon Musk – CEO
Zachary Kirkhorn – CFO
Martin Viecha – IR シニア・ディレクター
Jerome Guillen – 自動車部門トップ
Drew Baglino – パワートレイン&エネルギーエンジニアリング副部長

電話会議の参加者

Colin Rusch – Oppenheimer(オッペンハイマー)
Dan Levy – Credit Suisse(クレディ・スイス)
Alex Potter – Piper Sandler(パイパー・サンドラー)
Joseph Spak – RBC Capital Markets(RBCキャピタル・マーケッツ)
Emmanuel Rosner – Deutsche Bank(ドイツ銀行)
Ben Kallo – Baird(ベアード)
Gene Munster – Loup Ventures(ループ・ベンチャーズ)

動画アーカイブ

Tesla Q4 2020 Earnings Call (Shortened fixed version) 【YouTube/CleanTechnicaチャンネル】

INDEX

トピックス豊富な長編レポートとなりますので、簡単にINDEXを入れておきます。

  1. 2020年はテスラにとって飛躍の年
  2. 自動運転も大きく進展
  3. 生産量より速く世界の需要が拡大中
  4. 太陽光発電でもマーケットリーダーに
  5. 市場はまだFSDを過小評価している
  6. 新しいバッテリー技術の進展は?
  7. 2021年中にレベル5自動運転を実現?
  8. 2022年には10GWhの4680セル生産を目指す
  9. カスタマーサービスの目標は「ノー・サービス」
  10. FSDライドシェア実現の鍵は?
  11. FSDなど先進技術のOEMは?
  12. 中国市場への戦略は?
  13. 電池生産能力を超えた成長はできない
  14. サイバートラックの開発状況は?
  15. FSDの規制への対処は?
  16. 原料の高騰にどう対応するか?
  17. クレジット販売はビジネスの核ではない
  18. 人材確保に課題はない?
  19. 商用車への展開は?
  20. テスラCEOはいつまで?
  21. BEVがFCVに勝てる理由は?

Tesla Q4 2020 Earnings Call

2020年はテスラにとって飛躍の年

Elon Musk

2020年はあらゆる意味でテスラを形作る年となりました。困難な状況の中で、過去に生産したトータルの数とほぼ同じ50万台の車両を1年で生産・デリバリーしました。30億ドルを新しい工場建設などの支出に当てた後のフリーキャッシュ・フローは28億ドルで、業界でトップのGAAP営業利益を出し、プラスの純利益とキャッシュ・フローも過去最高額でした。

生産規模に関して。モデルYの生産をフリーモントで始め、生産スピードはほぼ最速値に達しました。上海でのモデル3生産は増加し、安定して週5,000台を生産しています。上海工場は引き続き急成長していきます。

すべての車両にヒートポンプを付けました。キャスティングで作られた単一部品のモデルYの製造を増やしました。史上最大の機械を使い、リアパーツを単一のキャスティングで作っています。中国でモデルY用の工場を作り、ベルリンとテキサスでも建設中で、今年後半に生産がはじまります。

ベイエリアにバッテリー工場を買いました。まだ試験段階ですが、世界でトップ10に入る規模のバッテリーセル工場になると思います。

新しいモデルSとX(プラッド)は現在生産に入っています。モデルSのデリバリーは2月、モデルXはその後に始まります。モデルSはトライ・モーター(3つのモーター)を積んでいて、インテリアも刷新しました。それから量産車としては2秒以内に60mphに到達する初の車になります。一度に7人まで乗車できます。新しいモデルの価格は1万ドル高くなります。

自動運転も大きく進展

Elon Musk

FSD(Full Self-Driving)には大きな進展がありました。現時点で約1,000人がベータ版を使っています。急激に進歩していて、人間の能力を今年超えられる自信があります。

企業の価値はどう決まるのでしょう。テスラに関しては理論上500億~600億ドル相当のFSDを搭載した車両群があり、ロボタクシーにも使え、その稼働時間は個人利用の週12時間から、60時間まで上昇します。これは単純に5倍になるということですが、例えば実働が2倍になったら、企業には2倍の収益が入るということです。

まとめると、2020年はテスラにとってターニング・ポイントになった年でした。収益については、まだ始まりだと考えています。2021年はもっとエキサイティングな年になります。新しい商品をたくさん出すし、先進的な工場も稼働を始めます。物流の観点からもベルリンとテキサスの工場は貢献してくれるでしょう。会社のファンダメンタルズも大幅に向上します。将来に関してはとても楽しみにしています。

生産量より速く世界の需要が拡大中

Zackary Kirkhorn

イーロンが言ったように2020年は非常に良い年でした。将来のために投資をしつつもキャッシュ・フローは第4四半期で19億ドルに達しました。負債も減らすことができ、営業利益も6四半期連続でプラス。クレジットを除いた車両部門の売上総利益も上昇しています。

第4四半期の車両部門売上総利益は主に2つの影響を受けました。1つはフリーモントでの生産を改善するための投資。新しいモデルS、X、単一キャスティング部品のモデルY、モデル3のヒートポンプがこれに当たります。2つ目に、コロナの影響で効率が悪化、またサプライ・チェーンが不安定になったことでロジスティクスと労働コストの影響がありました。

サービス部門は成長しています。さらに規模を拡大していくエネルギー部門の収益では、ソーラールーフの規模拡大のコストとPPAビジネスのリースの影響がありました。先に述べた投資開発費用はかかりますが、OPEXの収益に対する比率は下がり続けています。最後に、コンバーチブル・ノートの早期決済により、今期は支出に1億ドルの支払利息分が追加されました。

以上すべてを考慮に入れても、営業利益が増え続け、自分達が業界をリードし続けるという見立ては変わりません。長期で見た規模と技術への投資からの恩恵を受けて、2021年は最も有意義な1年になると思われます。

ローンチするものを考えると、今年出てくる結果は幅広いものになるでしょう。長期での平均成長率は50%を予測していますが、2021年は物理的(商品生産量)にこれを超えるかもしれません。生産レートが上がり、生産量は今年後半に向け上昇します。生産増大に伴う非効率性も今年は出てくるでしょうが、長期で見れば必要な過程になります。

第1四半期を具体的に挙げると、上海のモデルYが生産量に関してプラスに働きますが、新しいストラクチャーを持つSとXの生産量は少なくなるでしょう。また、世界中で不足している半導体と貨物量関連については全力で取り組んでいますが、一時的に影響が出るかもしれません。コストを削減しながらも、引き続きスーパーチャージングとサービス拡大には大きく投資していきます。生産量よりも世界の需要の方が速く上がっているので、長期の視点を持ちながらもできるだけ素早く動いていきます。

事前質問への回答

太陽光発電でもマーケットリーダーに

Martin Viecha

では事前質問への回答を始めます。まずはSay Technologiesから。太陽光発電(ソーラー)部門でテスラがマーケット・リーダーになっていない理由はなんですか?

Elon Musk

実は昨年ソーラー部門に関しては四半期ごとに大きな成長が見られ、(2020年第4四半期は)2018年の第4四半期以来のベストなものになりました。残念なことに、ソーラー部門の社員も含め、全社を挙げてモデル3生産に注力しなければならない時期が数年ありました。しかし今はソーラーにも注力し、急激に成長しています。テスラがマーケット・リーダーになるのにそんなに長い時間はかからないと思います。

Zackary Kirkhorn
ソーラー戦略に関して重要なのが、業界トップのコスト構造を構築し、価格面でのリーダーになることです。昨年はコスト構造の構築を終わらせました。

Elon Musk
それから重要なのはテスラ・パワーウォール、テスラ・レトロフィットソーラー、テスラ・ルーフをもっとうまく統合することです。今年末までにはできる自信があります。ザックが言ったように、複雑なインストール過程と時間を減らすことに注力していて、進歩が見られます。

Solar Roof(テスラ公式ウェブサイトから引用)

市場はまだFSDを過小評価している

Martin Viecha
2つ目の質問は、現テスラ車オーナーは次の車両にFSDを移植できますか? そうすれば顧客がより離れなくなり、中古車のFSDの売り上げ増にも貢献すると考えます。

Elon Musk
今のところそれは考えていません。私達はFSD付きの車両価格を、無しのものよりもどんどん引き上げています。市場はFSDの価値を低く見ています。議論の余地はありますが、株式市場もFSDがどれだけ素晴らしいものになるのか過小評価していると思います。もうすぐサブスクリプションの提供を始めます。気になっていた人への答えですけど。

新しいバッテリー技術の進展は?

Martin Viecha
3つ目の質問は、バッテリー電極のドライコーティングの進捗はどうなっていますか? バッテリーデイにイーロンはまだ完成されていない、と発言していましたが。

Elon Musk
アンドリュー、どう?

Andrew Baglino
事実です。バッテリーデイに発表したセル生産システムには新しいプロセスと設備があります。よって生産規模を上げるにつれ予見できないことや、まだ見ぬ挑戦が出てくるでしょう。

ただKatoビル側のチームは今までに出てきた生産上の問題をすべて解決し、これからも生産Sカーブを登りながら改善を続けていくでしょう。同時に、セルエンジニアチームも設計を改良し、その理解が深まっています。おかげでドライブプロセスや4680の設計が、私達のパフォーマンスやコスト・ターゲットに見合うという自信が出てきました。規模の面に関しては、Katoビルに10GWh分の設備が投下されています。

生産スタッフの雇用はほぼ終わっています。サプライ・チェーンは確立され、チームはフルの生産規模で動く準備ができています。その間、2022年の目標である100GWh規模を可能にする設備生産や4680設計のためのエンジニアリングには自信を持つことができました。

2021年中にレベル5自動運転を実現?

Martin Viecha
次の質問は、2021年中にレベル5自動運転を実現できるという自信の根拠を教えてください。またそこにDojo(テスラが開発中のスーパーコンピューター)の必要性に関しても。

Elon Musk
テクノロジーのロードマップと、各ベータ版の進捗状況を見ると自信が出ます。複雑な交差点を通り抜け、人を移動させるだけではその車が素晴らしいとは言えません。今は稀なケースが起こった時や事故に対して、99.9999%の信頼性を得るために改善を施す段階なんです。人間よりも100~200%性能が良くなくてはなりません。路上に出ているすべての車からトレーニング・データを集めているため、このビジネスは急速に進歩しています。ソフトウェアも急激に進化しています。

とても大変な挑戦です。動画のラベリングをしようとしています。動きが推測できるよう、動画ラベリングでトレーニングするにはいくつかアップデートが必要ですが、パフォーマンスが劇的に上がります。今作っているラベリングソフトウェアでかなり効率的に動画のラベリングができるようになります。究極の目標はオートラベリングです。

Dojoはトレーニング用のスーパーコンピューターです。私達にとってベストなのは、自分達でニューラル・ネット・トレーニングコンピューター全体を作り上げることで、もしかしたらそれをサービスとして提供するかもしれません。これ自体にビジネスの可能性があるんです。

2022年には10GWhの4680セル生産を目指す

Martin Viecha
次の質問。4680セル生産は、GWhベースでどのくらいの値になっていますか? また2021年中期から後期でどのくらいになりますか?

Elon Musk
2022年にはトータルで100GWhを目指しています。これに関しては指数関数的に数値が上がるので、そこまでの過程は重要ではありません。ただ、2022に200GWh規模の設備を導入して、そのうち30%は達成できるはずです。

Zachary Kirkhorn
その通り。S字カーブの生産ラインの前半では少し下方に外れる部分もありますが、1カ月やそこらで数値が劇的に変わるんです。私達はS字カーブ上をできるだけ速く動いています。

カスタマーサービスの目標は「ノー・サービス」

Martin Viecha
個人投資家からもう1つ質問です。テスラは車両サービスをどのように改善していますか? テスラのカスタマーサービスは素晴らしいと評判でした。今はサービスセンターと呼ぶのも難しく、予約を取ろうとすると数週間かかります。

Jerome Guillen
ベストなサービスとは、ノー・サービス(サービス無し)です。車両のクオリティと信頼性を改善するため多くの努力を重ねてきました。過去2年で、サービスの要請はその前に比べて3分の2になりました。顧客がサービスに来る頻度が減り、ノー・サービスになるのが目標です。サービスが必要になったら、できるだけ面倒ではないものにします。力を入れているものの1つとして、モバイル・サービスの増加があり北米では40%以上のサービスがこの形態です。今年はその数値を50%に押し上げたいと考えています。

また50%のサービスは2時間以内に終わります。サービスをできるだけ迅速にしているんです。サービスの予約に関しては改善していきます。北米には140のサービスセンターがあります。そのうち100のセンターでは、予約を10日以内に取ることができます。またサービスセンターでの待ち時間も短いものにします。北米では12月に11のセンターをオープンしましたが、今年前半でさらに46のセンターをオープンします。

電話に関してですが、すべてのコミュニケーションをテスラアプリで行いたいと考えています。電話よりもアプリの方が相当優れているからです。車両の警告を直接感知して、サービス予約ができます。それに顧客とサービスチームのコミュニケーションがすべて記録されます。そこに写真も入れられます。クレジットカード情報をいちいち書き込まなくても支払いができます。

これから数カ月でアプリには機能がさらに追加されます。サービスマンがどこにいるのかトラッキングし、何が起こっているのか分かる機能など、便利に感じてもらえると思います。アプリには最大限の投資をしています。他の企業もそうしていると思いますし、これが未来の形です。

FSDライドシェア実現の鍵は?

Martin Viecha
機関投資家からの質問です。1つ目。現在のFSDを商業用のレベル4、5のライドシェアリングで使えるようにするには、何が鍵となりますか?

Elon Musk
さっき話した、車載ニューラル・ネットを動画に移行することです。そのためには全体のスタックを動画用に変えなければなりません。フレームレートをシンクロさせた、8つのカメラを同時に動かします。そうすると8つのサラウンド動画ができます。それから動画のスニペット全部にラベリングをしてトレーニングを施し、そのニューラル・ネットに車を動かさせるんです。過去には単一カメラの単一フレームでラベリングをしていて、カメラを繋げたり、動画を使ったりはしていませんでした。

単一カメラ・単一フレームから始まり、8カメラの単一フレームになり、そこに時間軸を入れたのが現段階の動画です。その結果は急激に改良されているFSDベータ版で見られますし、さらに多くの人にベータ版を使ってもらおうとしています。私には、人間より100%安全な車への道のりが明確に見えています。

FSDなど先進技術のOEMは?

Martin Viecha
機関投資家から2つ目の質問、テスラにはソフトウェアアプリケーション、具体的にはFSDやオートビダーをライセンス化して第三者機関のOEM企業に提供する計画はありますか?

Elon Musk
ソフトウェアのライセンス化にはオープンな立場を取っています。OEM向けにオートパイロットのライセンス化も議論しました。ただ、その前にテスラのオートパイロットで完全自動運転が可能だと証明する必要があります。今年後半にはそうできると考えています。

オートビダーも同じです。こちらに関してはそこまで深く考えていませんでしたが、テスラの理念としては壁を作ることはありません。他の会社にスーパーチャージャーネットワークも使ってもらって良いですし、自動運転ソフトウェアやオートビダーに関しても構いません。

中国市場への戦略は?

Martin Viecha
次の質問は、中国と他国市場を比べた際に、商品、顧客の嗜好性、FSD戦略で違いは何か、また中国EV市場では戦略を変える必要がありますか?

Elon Musk
今のところ中国のEV市場では(テスラが)リーダーとしてうまくやっています。中国で一番売れている電気自動車を出しているのだから、ほとんどのことは正しくできているはずです。ただ、中国では1~2%の顧客しかFSDオプションを購入していません。中国外に比べてかなり低い数値です。よってこの部分を強化する必要があります。中国のテスラオーナーは世界の中でも最も目が肥えた人達です。グレード4のFSDを出し、実用化されたら買ってもらえるはずです。今年後半にできたら良いんですけど。

【関連記事】
テスラ モデル3が中国で2020年の電気自動車ベストセラーに〜中国製大衆車EVが追撃(2021年1月31日)

電池生産能力を超えた成長はできない

Martin Viecha
次の質問です。社の収益を長期で考えるには、バッテリー容量のユニットあたりの利益を見るというのは理に敵っていますか?

Elon Musk
そうですね。現在、電気自動車の基本的な制約とは、使えるセルの数なんです。工場にあるセルのGWh数を越えた成長はできません。テスラでは車の効率性を劇的に改善し、スタンダードレンジでもかなりの航続距離を走れます。今は200(マイル、1マイル=約1.6km)台後半で、300マイルにもうすぐ届くでしょう。

ただ基本的には会社の成長はセル生産にかかっています。しかし、テスラがセルの自社生産をしているのは、成長を加速させるためであって、サプライヤーからの調達を少なくしようとしているわけではありません。はっきり言いますが、セルの購入量は増やしたいんです。CATL、パナソニック、LGなどのセル・サプライヤーには、生産できる分のバッテリーはいくらでも買うと明確にしてきました。生産量を増やすようにも促しています。車を手の届きやすい価格にしなければならないので、セルの価格には上限がありますが。

はっきりさせておきたいのは、自分達のセル生産はサプライヤーからの供給量を削る目的ではなく、補完するためだということです。サプライヤーにも増産してもらい、そこで補えない部分を自分達で生産するんです。セルの出力が車両の出力になり、自動運転の収益に関してはその影響が倍になります。長期では、会社の価値をそのように測れると思います。

サイバートラックの開発状況は?

Martin Viecha
次は個人投資家からの質問ですでにカバーした4680セルに関するものですが、機関投資家からの最後の質問になります。サイバートラック開発はどの程度まで進んでいますか? 2021年のデリバリーはどうなりますか?

Elon Musk
サイバートラックのエンジニアリングはほぼ終わりました。これ以上の設計変更はありません。サイバートラックを作るのに必要な設備をもうすぐオーダーします。非常に大きく、多くの貨物が積まれる車なので、リアの部分を作るようにさらに大きな機械を使うでしょう。モデルYには6,000トンのキャスティング機械を使っているのに対し、サイバートラックのリアには8,000トンのキャスティングを使います。6,000トンですでに世界最大だったんですけど、8,000トンですからそれより相当大きくなります。すごい車両になります。運が良ければ今年最後の方に少しデリバリーができるかもしれませんが、大量生産は2022年になると考えています。

Q&A

Martin Viecha
それではQ&Aに移りましょう。

司会
初めの質問はオッペンハイマーのColin Rusch氏からです。どうぞ。

FSDの規制への対処は?

Colin Rusch
FSDに関する規制とそれにどう対処するかを話してもらえますか? ターゲットが完全に定まるものではないとは思いますが、今年、来年の動きとしてFSDリリースにどう影響が出るのか理解を深めたいです。

Drew Baglino
イーロンも前に言いましたが、アメリカでも(FSDは)盛り上がりを見せていて、ルールで制限をしようというのではなく、規制側と一緒に本当に信頼性のあるものだと証明する必要性が出てくる、と考えています。世界の他の地域でも、盛り上がってきています。欧州では今スローダウンしていますが、新しいグループでレベル3を越えようとしています。中国もレベル4、今年後半にはレベル5に取りかかるようです。よって2021年は規制側でも大きな動きが見られると思います。私達はアメリカでリーダーシップを取っていますし、より広くリリースする前に信頼性が高いことを見せていきたいです。

原料の高騰にどう対応するか?

Colin Rusch
原料市場のインフレに関する質問です。サプライ・チェーンと、低金利の影響を受けている原料をどう扱っていくのか話してもらえますか。

Jerome Guillen
サプライ・チェーンに関しては、特にアジアと北アメリカ間において、コロナによる混乱と運送に対処するのが優先です。ただ価格についても注意深く見ています。

ザックが言った年50%の成長を支えるのに十分な量を確保するだけでなく、適切にリスクを共有しながら良い価格を維持できるよう、自分達にとって望ましいサプライヤーと長期の契約を結ぶところです。

クレジット販売はビジネスの核ではない

司会者
次の質問はクレディスイスのDan Levy氏です。どうぞ。

Dan Levy
2つ質問があります。1つ目、2021年にクレジット販売はどうなりますか? 2つ目は資本金について。2020年に多くの資本を集めました。期日の来た支払いに充てる以外の使い道は? また流動性資産が増えたことによって得られるもの、そうではないもの……流動性資産の増加により、建設規模や垂直統合の進行、FSDの開発をスピードアップできるのか? という質問です。

Zachary Kirkhorn
クレジット販売の予想を立てるのは非常に難しいです。2020年のクレジット販売は予想を上回りました。長期で言えば、クレジット販売はビジネスの核にはなりませんし、その計画もありません。しばらくの間は大きい利益を出し続ける可能性はありますが、そうではないかもしれません。第4四半期に得たクレジットからの収益は、予め予測していたものではないです。クレジット販売の契約は四半期中にランダムにできたものです。よって予測も困難なんです。

2つ目の資本に関する質問ですが、いくつか考えているものがあります。今日の会の始めに話しましたが、現時点では負債を減らすのが重要です。早期決済に関しては、選択の余地はありません。第4四半期ではそのうち20億ドルを減らしました。第1四半期では14億ドルを支払いに充てます。負債を減らすのは重要なので、この数値はさらに上がるかもしれません。これは支払利息を減らすのにも役立ちます。

将来のための投資にも使っていきます。オースティンとベルリンで見られますが、現在はその場しのぎではなく、最終目標の規模を明確にして投資をできていて、過去にはこれができませんでした。資本効率の観点からするとこれは非常に重要で、過去にできなかった贅沢です。

さらにジェロームが触れたように、サービスの拡大も会社の将来戦略において重要です。よって第3四半期から第4四半期にかけてサービスセンターとモバイル・サービスの数はかなり増えました。ここに投資をし、さらに将来需要の先を行けるようスーパーチャージングネットワークにも投資をします。短期ではコストがかかりますが、長期で見ると顧客のためにも会社のためにも正しい戦略です。

人材確保に課題はない?

司会者
次の質問はパイパー・サンドラーのAlex Potter氏です。どうぞ。

Alex Potter
サプライヤーからのセル購入について話していましたが、最新モデルの車両に使う4680セルをサプライヤー側も作れる必要があるということでしょうか?

Elon Musk
その必要はありません。彼らと4680のフォームファクターを作る話は実際しているのですが、必要ではないんです。新しいモデルSは18650セルを使っています。これは最先端のセルで、これから最低数年は使い続けようと思っています。ただ最終的には複数のフォームファクターに依存せず、一貫した(同類の)ものを使うようにしたいです。

ただこれはサプライヤーに出す要件ではありません。セルの選択肢が狭まるだけです。現時点ではサプライヤーに単一のフォームファクターを要求するよりも、様々なフォームファクターからできあがるセルを自分達でどうにかする複雑さの方を選びます。将来的には、規格の揃ったフォームファクターを使う方が理に敵っていますが。

Alex Potter
なるほど。もう1つ質問ですが、規模拡大に関する質的な質問です。資金へのアクセスも重要ですが、適切な能力を持った人材へのアクセスも大事です。人材確保の面で、社の成長を妨げるような問題に直面したことはありますか?

Elon Musk
成長率を妨げる要因になり得ますね。会社の最終的なサイズには影響は出ませんが、成長率に制限が出ます。成長率とは、素晴らしい人材を適切なエリアに配置し、トレーニングを施して軌道に乗せるということです。2万人の従業員が必要な工場があるとして、2万人を一気に採用できるわけではありません。彼らは元々違うことをしてきた人達です。今までやってきたのとは別の仕事を始める、もしくは他の地域から引っ越してくるかもしれません。これには時間がかかります。そうは言いましたが、これから長い間、年平均成長率は50%を超えていけると考えています。50%に固執しすぎたくはないのですが、今年に関してもそこが最低ラインとみています。来年もです。50%を大幅に超えると思います。

商用車への展開は?

司会者
次の質問はRBCキャピタルマーケッツのJoseph Spak氏です。どうぞ。

Joseph Spak
イーロン、あなたは2018年に電気自動車バンのツイートをして、ダイムラーや(トヨタ)スプリンターと仕事をするのも面白いかもしれないと言っていましたね。その後この件に関しては何も聞いていませんが、多くのスタートアップが電動バンを出そうと動いているのが見られます。多くのプロジェクトを抱えているのは分かっていますが、この市場に関して今どう考えているのか教えてもらえますか? 興味があるのでしょうか?

Elon Musk
テスラはどこかの時点で必ず電動バンを作ります。ただ覚えていてほしいのがバッテリーセルの生産量には制限があるということです。生産量を拡大できなければ、評価を得るのも難しいんです。プロトタイプは簡単です。現時点で新商品を多く出さない理由として、例えば、セルの現況を考えるとセミは今出せません。セミは今作ろうと思えば簡単に作れるのですが、十分な量のセルが生産できないんです。自分達で4680を大量生産できるようになれば、セミ用にもセルが確保できるでしょう。ただ、セミは乗用車に比べて5倍のセルがいるのに、5倍売れるわけではない。なので、今セミをやると理屈が通らない。ただセルの制限問題が解決できたらすぐに取りかかります。バンに関しても同じです。

Joseph Spak
過去の発言についてもう1つ。約2年前、オートノミー・デイに、次世代のテスラチップに取り組んでおり、2年で出せると言っていましたね。これに関して最新情報はありますか?

Elon Musk
はっきり言って、現時点でVer.1コンピューターのFSDの能力を、ソフトウェアがフルで使いこなせていません。本当にパワフルなコンピューターで、個人的にはレベル5のFSDをVer.1コンピューターだけでできると考えています。Ver.2コンピューターは、Ver.1の約3倍パワフルになります。さらに、より解像度の高いカメラと組み合わせる必要があります。

多くの変更点を同時に加えなければなりません。ただVer.2のチップに関しては焦っていないです。今のところ良い感じで進んでいます。しかし現行のシステムでFSDを作れるので、新たなチップを導入するとなると遠回りになります。ソフトウェアはFSDに不可欠なものですが、そのソフトウェアに関して遡って変更をしなければならないんです。

よってチップに関してはあまり心配していません。改善できる余地はありますが、ゲームチェンジャーにはなりません。ソフトウェアを動かし、すべてのニューラル・ネットを動画にするのがゲームチェンジャーです。

テスラCEOはいつまで?

司会者
次の質問はドイツ銀行のEmmanuel Rosner氏です。どうぞ。

Emmanuel Rosner
最初の質問は、セルの自社生産に関してです。規模を拡大するのに加え、価格・コストを半分にし、航続距離を50%増やすのが目標だと強調されていましたが、その方向にはすでに進んでいますか? 目標を達成するまでのタイムラインを教えてください。これに関連して、より安価な、テスラのエントリーモデルに関するタイムラインもどう考えていますか?

Elon Musk
3年くらいでできる自信があります。余裕を持たせて4年ですかね。

Zackary Kirkhorn
バッテリーデイに道筋を説明しましたが、その軌道に乗っています。

Elon Musk
バッテリーデイの時より上を目指していますが、最低でもその日のプレゼン通りには進んでいます。

司会者
次の質問はロバート・W・ベアードのBen Kallo氏からです。どうぞ。

Ben Kallo
10年前、マス市場に出せる車を作ったら、CEOから降りてチーフ・アーキテクトになると話していましたね。色々なことに手をだしていますが、その辺のことを知りたいです。

Elon Musk
しばらくはテスラのCEOでいるつもりです。エキサイティングなことがまだまだあって、離れがたいんです。終わったものやまだ途中にあるプロジェクトも本当に楽しんでいます。何年も会社を経営するでしょう。現時点で他の人がCEOになるべきではないです。テスラのCEOとしてやるべき仕事量は尋常じゃない、

私は普通のCEOよりも技術的な仕事を多くやっています。週に7日、朝起きてから寝るまで昼夜関係なく働いていて、もう少し自由時間があったら良いなとは思いますが。本当にハードです。でもミッションは終わっていないし、持続可能エネルギーで世界に本当の爪痕を残すにはまだ長い道のりが待っています。テスラの目標は、始めから持続可能なエネルギーの普及を加速させることなんです。

でも、今日路上にある電気自動車の割合は本当に小さいです。世界の車両群の1%かそれ以下でしかありません。この1%からの道のりは長いですし、太陽光にも長い道が待っています。価格競争面でも優れた風力、太陽光、地熱発電が出てくるのはエキサイティングです。それから大量の蓄電システムも必用です。

持続可能エネルギーの将来を支えるのは3つの柱になると思います。まず太陽光、風力、地熱、水力、その他の持続可能エネルギー発電です。個人的に原子力には反対していません。悪天候に影響されない、よく設計された原子炉があるなら良いと思います。それから2つ目は蓄電システムです。ほとんどの持続可能エネルギー源は止まる時があるのでバッテリーが必要です。風はいつも吹いているわけではないし、太陽も常に出ていません。なので多くのバッテリーが必要です。またバッテリーは長持ちする必要があります。最後に、交通の電動化です。これら3つがあれば、エネルギーと環境の面において明るい未来が待っているでしょう。長い道のりですが、この仕事をするのにまだまだ燃えています。

BEVがFCVに勝てる理由は?

司会者
最後の質問はループ・ベンチャーズのGene Munster氏です。どうぞ。

Gene Munster
セミを出すタイミングに関するアップデートを聞けて嬉しく思います。それに関連して、まず初めの質問は、セミ・トラックは基本的に想定内の高速道路上を走ることになります。よってセミが完全自動運転を初めて使う車になりますか?

Elon Musk
その可能性はかなり高いです。2番目がどれになるかは分かりませんが、そうだと思います。

Jerome Guillen
セミと他の車両に搭載されるハードウェアの違いはまったくありません。

Elon Musk
その通り。ソフトウェアのパラメータを、モデル3、Y、X、Sそれぞれの自動運転用に変えなければなりません。FSDに、自分がどの車両を運転しているのか教えるんです。「今はセミ・トラックの中にいますよ」という感じで。

Gene Munster
トレーニングを改めて施す必要はありますか?

Elon Musk
いえ。コントロール機能が違ってくると思います。例えば普通の車ができるターンをセミができないとか……路上でセミの縦列駐車はしないですよね。大きなトラックとして動きに制限があることを車が理解する必要があります。

Gene Munster
なるほど。さらに質問ですが、バッテリー電気自動車がなぜ水素燃料電池車に勝てるのか説明してもらえますか?

Elon Musk
もちろん。正直、乗用車に関してのこの質問は百万回も聞かれました。初期のロードスターの時代……ロードスターを出す前からです。人々は水素の方がバッテリーよりも良いエネルギー貯蔵法だと言っていました。でも実際には違うんです。液化した水素の密度は非常に低いです。発泡スチロールレベルになる。しかし液体としてキープするのは現実的ではないので密度がより低い高圧ガスとして保存することになります。これには巨大な燃料タンクが必要になり、圧力も相当高くなる。基本的に扱いづらいんです。究極の化学エネルギー貯蔵メカニズムを作れと言われたら、自分だったらプロパンかメタンでも使いますね、水素よりよっぽど良い。それを燃料電池にするなんて、より複雑になります。どうかしています。

私達は長距離のトラックをバッテリーでやる自信があります。現在使っているセルでキログラム当たり何ワットアワーになるのか、500マイル走るのには重さを何キロにするのか、積める量にどのような影響が出るのかなどの計算はできています。正しくやれば、積載量にはほとんど影響がありません。こうして長距離トラックが可能になります。ジェローム、何か付け加えることは?

Jerome Guillen
同意です。それからトラックのリージョナライゼーションが見受けられるのですが、テスラのセミはこれに完璧にマッチすると思います。それから、他の車種も路上にもうすぐ出てきます、楽しみです。

Elon Musk
基本的に、バッテリーで長距離トラックを作るのに問題はまったく見えません。問題はセルの供給です。それだけが問題です。

(翻訳・文/杉田 明子)

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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