EV用急速充電器トラブル対処の秘訣「まずは落ち着け」〜電欠寸前実体験からの教え

ホンダの商用軽EV『N-VAN e:』で箱根駅伝の5区やら6区やらを駆け抜けた木野さんのレポートに大きな反響をいただきありがとうございます。実は、電欠寸前で辿り着いた大磯PAの急速充電器でさらなるトラブルに遭遇。経験から学んだ対処法で切り抜けたのでした。合い言葉は「まずは落ち着け」です。

急速充電器トラブル対処の秘訣「まずは落ち着け」〜電欠寸前実体験からの教え

駆け込んだ大磯PAの急速充電器には先客が

11月下旬のとある朝、私とEVsmartブログ著者陣のエースである木野さんは、ホンダがデリバリーを開始して間もない軽商用EVの『N-VAN e:』で東京=箱根を往復する試乗取材に出かけました。

N-VAN e: のバッテリー容量は約30kWh(カタログスペックは29.6kWh)ですから、標高874mの国道1号最高地点を越える山登りのルートで、平均電費が6km/kWhでも28kWhを使うとすれば「170kmくらいは走れるはず」と皮算用。芦ノ湖畔の箱根駅伝ゴールで折り返し、小田原厚木道路の大磯PA(スタートから約130km)、あわよくば東名海老名SA(同約150km)で充電して東京に帰着する目論見でした。

ところが、芦ノ湖畔では土砂降りの雨に見舞われ、朝からずっと5〜10℃程度と寒い一日だったこともあって大苦戦。電欠ギリギリで大磯PA(上り線)に辿り着いたのは、木野さんの後編レポートにあった通りです。その木野さんの記事で触れられている「実は、大磯PAの急速充電器では、さらに冷や汗が出るトラブル」とは何だったのか。

【N-VAN e: 集中試乗レポート】
ホンダ『N-VAN e:』試乗記【烏山大輔】電動化時代の働くクルマは1人乗りが基本(2024年11月27日)
ホンダ『N-VAN e:』試乗記【木野龍逸/前編】電池残量も回生量も見えないのが少し残念(2024年11月28日)
ホンダ『N-VAN e:』試乗記【木野龍逸/後編】実質的なバッテリー容量は22kWh程度か?(2024年12月2日)

まず、駆け込んだ急速充電器の区画に、先客の日産リーフが停まっていました。ドライバーの方がケーブルを繋ぐ操作をしていたので「充電を始めるところなのか」と30分待ちを覚悟したのですが……。認証機(充電器の隣に旧JCNの認証機があるタイプでした)の表示をのぞき込んでいたリーフのドライバーさんが、おもむろにケーブルを充電器に戻したのでした。

聞くところによると、大磯PAにも赤いマルチを設置予定とのこと。

「充電終わりですか?」とお声がけして近付くと、その方は参ったなぁという表情で「充電器が故障してますね」とひと言。「もう少し走れるので近くの急速充電器まで行きます」と、再出発して行きました。

強めの雨が降っていたこともあって細かく写真を撮っていなかったですが、認証機の液晶画面を見ると「充電器の異常で使用不可」といった悲しい言葉が表示されています。隣で木野さんが「高速充電ナビ」を確認して「故障中になってますね」と、さらに絶望的な報告も……。

先客リーフの方はまだ走れる状況だったようですが、わたしたちのN-VAN e: の航続可能距離表示は0km。「安全な場所に車両を停車し確実に固定してください」と表示が出ている状況なので、どうしようもありません。普通に考えてしまうと、急速充電器が目の前にあるのに路上救援を呼ぶしかない? あるいは、高速SAPAの急速充電器近くに設置してあるはずの緊急用の200Vコンセントを使わせてもらえる(N-VAN e: の車載充電ケーブルはオプションですが、広報車には搭載してありました)のか? といったピンチです。

それよりなにより、この時の私はトイレに行きたくなっていて、我慢の限界が近付いていました。木野さんが充電区画からクルマを動かしてしまわないように「まずは落ち着こう」と言い残して急ぎ足でトイレに行って……。

充電器機種によって場所などは異なりますが、コールセンターの電話番号が表記されています。

充電器前に戻った私が最初に選んだアクションは、充電器にステッカーで表示されている「お客様相談窓口(コールセンター)」に電話することでした。

その結果、電話に対応してくれたスタッフの方の指示に従って、充電器本体の液晶を操作して「故障リセット」を選択。故障状態は解消して、無事に充電することができたのでした。

JCNの認証機がある急速充電器の場合、通常の操作で充電器本体の液晶を操作する必要はありません。故障と液晶表示されている認証機にはユーザーが再起動できそうなボタンなどはないこともあって、本体のエラーを解除するという基本的な対処が「盲点」になっていたことにも気付かされました。

充電器がエラーになった時にやるべきこと

簡単なことですよね。でも、予期せぬエラー表示に遭遇するとパニックになってあわててしまい、充電を諦めてしまうケースは結構あるのではないかとも思います。充電器のエラー表示は私もしばしば目にするので、そんなに珍しい状況ではありません。5月に奈良へ往復した際の復路、足柄SAのABB製150kW器で「Out of order(故障中)」の表示に遭遇。この時もコールセンターに電話して遠隔で再起動してもらいました。まあ、再起動まで「5〜10分程かかる」と言われたので、隣に並んだ90kWの青いマルチでとっとと充電したのですが、後で念のため確認したらちゃんと復活してました。

この日も冷たい雨が降っていました。

ケーブルの再接続でいけちゃうことも

あと、詳細な状況は記録していないので曖昧ですが、ケーブルを接続して充電開始、すぐにエラーで停止なんて状況に見舞われても、もう一度落ち着いて充電器に表示された手順に従ってケーブル接続や充電開始操作を行うと、無事に充電できたといった経験も一度や二度ではありません(いろんな車種の長距離試乗やってるなかで、何度もある、といった程度ですけど)。

EVのシステム電源を入れたままってミスもありがち

急速充電を開始する際は、EV側のシステム電源をオフにする必要があります。でも、私はわりとせっかちなので(思い返せば、日本一周したEVスーパーセブンで急速充電のケーブル繋いだまま走り出しそうになって同行のTさんに呆れられたこともありました)、とくにリーフに乗ってた頃は電源を切り忘れたまま充電を開始してエラー停止! ってことがしばしばありました。何度もやらかしているくせに、真夜中に残量ギリギリでSAPAの充電スポットに駆け込んだりした時、エラーが出て涙ぐみそうになったこともあります。ケアレスミスって、なくするのは難しいしなかなか慣れないものなんですよね。

このケースの対処法は簡単。EV側のシステム電源をオフにして、もう一度充電開始操作をすればOKです。

というわけで、急速充電器エラーへの対処法を整理しておきましょう。

①まずは落ち着く。
②車両のシステム電源をオフにしているか確認。
③ケーブル再接続など充電開始操作をもう一度試してみる。
④コールセンターに電話。
⑤緊急用の200Vコンセントの有無を確認して利用する(車載ケーブルが必要)。

で、全部ダメなら救援を呼ぶしかない、ってことですね。

あ。それ以前に、SOCが20%とか切る前に余裕をもって充電しておく習慣を身に付けることも大切です、と、これを機会に自分に言い聞かせておこうと思います。残量があれば本当に充電器が故障してても別の充電器を目指せます。

あと、今のマイカーは警告が出るのでなくなりましたが、充電口を開けたまま再スタートしてしまうケアレスミスもしばしばやらかしてました。あとは、そうそう、普通充電器の場合、EV側でタイマー設定してると充電が開始されていないことがある(これも私がしばしばやらかすケアレスミス)ので注意してください。ま、どれもこれもEVをよくご存じの方にとっては笑い話って感じのあるあるネタですね。

シウマイ弁当買って車両返却前の充電を行うために立ち寄った海老名SAでは、ケーブルが駐車区画にはみ出している場面に遭遇。トラブルの元なので、充電後はきちんと片付けましょう。

なにはともあれ「まずは落ち着け」っていうのが、簡単だけど、結構大事なポイントです。読者のみなさんにおかれましても、ちょっとしたエラーにはあわてず騒がず対処して、安全で快適なEVライフをお楽しみください。

それにしても、今回試乗で期せずして残量0%から充電したことでくっきりと確認できた N-VAN e: の実用バッテリー容量が22kWh程度だった事実は、かなり、すごく、とても残念に感じています。いろんな方に「軽バンEVで約30kWh。急速50kW、普通6kWで充電できるから快適に使えること間違いなし」とオススメしてきましたが、ひとまず前言は撤回。改めて検証や取材を進めたいと思います。いや、ADASなど最新の機能を備えた22kWhの軽バンEVだとしたら、それはそれで素敵だと思うのですが、30kWhで評価するのは違うよねってことで。

とにもかくにも、がんばれ日本のEV、です。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)1件

  1. 急速ではないですが、この前エネチェンジの6kW充電器では単にブレーカーが落ちてて使えないということもありました。共通鍵持ってればブレーカーボックス開けられるのでブレーカーを投入すると使えました。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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