プラゴが予約可能な急速充電器などを発表〜EVと充電の新しいライフスタイルを提案

電気自動車(EV)の普及に不可欠な充電器の設置事業などを手がけるプラゴは、2022年9月29日、予約が可能な急速充電器の設置を中心にした、今後の事業計画を発表しました。EVユーザー待望の予約機能付き充電器は、これからどう普及するのか。社長インタビューとあわせてお伝えします。

プラゴが予約可能な急速充電器などを発表〜EVと充電の新しいライフスタイルを提案

1万基を目指して予約機能付き充電器を設置

もはやEVsmartブログでは言わずもがなですが、宿泊やレジャー先などで車を長時間停めるのがわかっている時に、充電器の予約ができるといいなあと思うこと、ありますよね。まあ、十分な数の充電器があれば予約の必要性もないのですが、過渡期には必要な機能かなと思います。

かねて、ユアスタンド(関連レポート)が予約可能なシステムを提供していましたが、また新たに、急速充電器まで予約可能なサービスが登場しました。充電サービスを手がけているプラゴ(本社・東京)が9月29日に発表した、予約機能付きの充電器です。プラゴはこの急速充電器と普通充電器を合わせて、2025年までに1000施設、1万基目指して設置する計画です。

発表会で登壇した、大川CEO(左)と、チーフ・デザイン・オフィサーの山﨑晴太郎氏(右)。

プラゴは2022年3月から、東京の二子玉川にある複合商業施設「二子玉川ライズ」で、急速充電器の事前予約システムの実証実験を進めてきました。ここで得られたノウハウを活用し、いよいよ本格的な事業として、事前予約機能を備えた充電インフラ整備に取り組みます。

設置する充電器は、普通充電器が約8000基、急速充電器が約2000基の割合になる計画です。なお急速充電器は、新電元が開発した50kW器をもとに、デザインやソフトウエアをプラゴで手がけた『PLUGO RAPID』を投入します。普通充電器(ケーブル付きではなくEV用コンセントを内蔵)の『PLUGO BAR』は4kWまで対応しています。市販EVに車載の充電ケーブルはほとんど3kW対応なのが実態なので、少し余裕があるという感じでしょうか。

利用料金は未定ですが、基本的には予約料金と充電器の使用量の組み合わせになりそうです。ただし予約料金の有無や充電器の使用料金は、設置場所ごとに違いが出ます。

予約は、独自に開発したスマホアプリ『Myプラゴ』を使います。『Myプラゴ』は、充電器の検索や空き状況確認、さらに予約から決済まで可能なアプリです。予約は、急速充電器の場合は60分単位で(急速充電1回の設定時間も従来一般的だった30分ではなく60分になっています)60分以上前から、普通充電器の場合は1日単位で3か月先まで可能になる予定です。

すでに発表されている開設予定場所と充電器の数は以下の通りです。

導入予定施設サービス提供開始予定導入充電器
三井ショッピングパーク
アーバンドック ららぽーと豊洲
2022年10月普通充電器 2基
三井ショッピングパーク 
ららぽーと堺
2022年11月普通充電器 10基
テラスモール湘南2022年11月急速充電器 1基
普通充電器 2基
アトリオドゥーエ碑文谷
スイング碑文谷
2022年12月急速充電器 1基
普通充電器 1基
ルミネ立川2022年12月急速充電器 1基

これからプラゴは、この予約機能付き充電器を使って『マイ充電ステーション』構想を広める考えです。この考え方、ちょっと興味深いというか、納得感の高いものだったので紹介したいと思います。

マイ充電ステーション構想で充電難民を解消

欧米先進国には負けているとはいえ日本でも徐々にEVユーザーは増えています。なのですが、台数の多い都市部では集合住宅が多いため、自宅駐車場に普通充電器がない「充電難民」が多いのが現状です。

プラゴとEVsmartが共同で、東京都のEVユーザーを対象にWEBアンケートを実施したところ、こうした「充電難民」は42.1%を占めていました。

加えて、従来の充電インフラ整備では「経路充電」と「目的地充電」を重視しているので、自宅での「基礎充電」の拡充はなかなか進んでいません。そんな「充電難民」を解消するためにプラゴが提唱したのが、「自宅以外の基礎充電」を便利に使うことができる『マイ充電ステーション』です。

『マイ充電ステーション』のポイントは、「ながら充電」ができることと、予約機能で確実に充電器を確保できることです。

プラゴは、「生活ルーティーンの中に確実に使える充電ステーション」があれば、集合住宅など駐車場への普通充電器の設置が難しい人たちのEV購入を促進することができるという認識を示しています。

基礎充電拡充のポイントになる集合住宅に関しては、今年度、東京都が新築マンションなどへの充電器設置を義務付けることを発表したものの、既存の住宅は対象外です。

プラゴの大川直樹・代表取締役CEOは既存マンションへの普通充電器の設置について、「社会課題なので進めてほしいが、合意形成に至らないこともある。既存マンションは650万戸あるので一足飛びに設置するのは難しいが、(マイ充電ステーションの)充電器が住居の近くにあればいい」と話します。

設置が進めば投資対効果を見込めるタイミングがくる

もっとも現実には、利益が出にくく設置費用がかかる充電器を、誰が、どうやって増やすのかが大きな課題です。この点については発表会でも記者から質問が出ていました。大川CEOはこう答えています。

「投資対効果の試算はしている。総論としては、設置場所によるが、どういう場所であればどのくらいの稼働率が見込めるかのマーケティングデータをもとに、設置のコンサルテーションをしながら、その場所で想定される稼働率、今後のEV普及にあわせてどうなるかを試算して投資対効果を出していく。EVが少ない中だとなかなか投資対効果を見込めないが、まずサービスを作ることが大事なので、施設側に費用負担なしの実証実験としてサービスを作っていって、稼働率を見ながら、投資対効果を描けるタイミングで所有権を施設に移すなど(を考えている)。そこはパートナー企業と、どうすれば社会実装が進むかという方策を話している」

当初は実証実験というか、プラゴによるサービス提供として開始し、EVの普及が進んで収益が出ることが見込めるようになった段階で所有権を移譲するという手順ですね。

鶏と卵の関係はどちらかを先に進めるのが第一歩ですが、考えてみると、EVが普及しないことには充電ステーションのビジネスモデルも成り立ちません。見方を変えると、EVさえ増えれば充電ステーションの増え方にも拍車がかかるはずです。

相乗効果で普及が加速するのかどうかですが、もし普及しなければ日本は世界に取り残されていって、今以上の泥沼の経済停滞を経験することになりそうなので、なんとかなってほしいなあと思うのであります。

「ながら充電」に最適な50kW急速充電器

発表会後、大川CEOと、チーフ・デザイン・オフィサー(CDO)の山﨑晴太郎氏にインタビューをすることができました。『マイ充電ステーション』のコンセプトや今後の見通しなどがよくわかるので、少し詳しくお伝えします。

まず、施設によって普通充電器と急速充電器の設置計画が違う理由について、大川CEOはこう説明しました。

「大前提は、客によってどういうニーズがあるかで構成を変えていくべきだと思っている。例えば映画館のように滞在時間が長い場合は普通充電器のニーズがあるし、施設によって利用実態が違う。我々のアプローチは、まず急速1台、普通2台のような基本パッケージとして付けさせていただき、EVの普及率や稼働率、利用実態を見ながら構成を変えていく」

急速充電器の出力に50kWを選んだ理由についても聞いてみました。大出力になる傾向がある中で、なぜ従来の50kWなのでしょうか。大川CEOはこう言います。

「ひとつは、『ながら充電』をデザインしたいというのがある。今は150kWの急速充電もできるが、仮に充電時間が10分になったとして、10分の時間をどうデザインするかも難しいと思っている。むしろ今回は充電時間を従来の30分から、60分に伸ばしている」

「EVへの充電は、ガソリン給油とは根本の概念が変わる、給油は3分で終わるが、どんな急速でも10分はかかるわけで、これはかなり違う。(給油と同様にその場で)10分待つんですかという部分は、もう少しデザインした方がいいと思っている。あとは、どうしても設置コストが上がるので、まずは50kWでスタートした」

現状の急速充電の30分という時間をどう使うかは、これまでも経路充電ならトイレ休憩や食事など、それぞれのユーザーが時間の使い方を工夫してきました。一方で、30分だとけっこう忙しいという感想を、少なくないEVユーザーが持っているのも事実だと思います。

【関連記事】
EVユーザーの本音を聞きたい! PART.2~目的地充電は予約したい、よね?(2022年5月17日)

そう考えると、50kWで1時間というのは、バッテリー容量が30kWh前後の車であればSOCがかなり少なくても満充電になるし、大容量バッテリーでも相当な電気量が入ります。当然、設置コストも安いし、ゴルフ練習場やショッピングモールなど施設側にとっては、滞在時間が長くなることのメリットも期待できます。

EVユーザー側でも、買い物のついでにSOC80~90%くらいに回復するのは満足感が高くなりそうです。今後は、10分待つのか、1時間で他のことをするのかは大きな検討課題になりそうです。

充電器の設置で他社と競争するより協力したい

ところでEV用充電器の設置は、最近になってエネチェンジやユビ電、テラチャージなどによる大量設置の計画が明らかになっています。施設側にとっては選択肢が複数あるわけで、ちょっとした設置競争になりそうです。ではプラゴの優位性はどのあたりにあるのでしょうか。

大川CEO「量と質だと思う。重要なのは設置してからだと思っている。設置の数を追う必要はない。ちゃんと置いたところの充電器が使われる、すなわち設置した施設さんもあってよかったと感じていただける実績を作らない限りはやる意味がないと思う。(それが可能な)サービスの開発から実装、運用まで一貫している会社は少ないと言う印象を持っているので、そこが我々の特徴なのかなと思っている」

また大川CEOは、「かなり引き合いはいただくので、それほど競争関係が激しいという感じではないかなと思っている。我々も競争するつもりはない。みんなで作っていけばいい」という考えを示しました。

さらに山﨑CDOも、「戦うものでもないというか、戦ってはダメだとも思う。こういう世界を作っていこうと言うときに、人間とか企業の利害関係だけで未来の体験を犠牲にすべきではないと思っているので、我々は手をつないだりとか協力という方に意思が向いている」と話しました。

山﨑CDOはまた、予約機能の意義や今後の見通しについてこう話しています。

「ほんとにたくさん(充電器が)あれば、予約と言うシステムがいらないはずなんです。(充電器を設置する場合に)レストランで言えば席数がとても多い店を作りますか、それとも席数は少ないけど予約ができてサービスの豊かなレストランを作りますかと言う、その違いかと思う。だから両方あっていいと思う」

予約機能について、この考え方は納得感がありました。山﨑CDOは、「人気の施設の人気の時間帯と言うのは絶対にある」ため、充電器の数が増えても予約の需要はなくなることはないと言います。確かにそうかもしれないなあと思います。

他方、最近はレストランなどで予約だけしてお店に来ない人が増えていることが問題になっています。こうした問題への対応について大川CEOは「ケースバイケースになる」と言います。予約者が来ない場合に、どのくらいの時間が経過したら充電器を開放するかや、課金をどうするかなどは料金設定にも影響するため、データを蓄積する中で変化していくと思われます。

そして大川CEOは、「予約システムといっても一言で言っても凄く難しい。ようやくここに来たと言う感じです」と話しました。二子玉川での実証実験ではかなりの改善点が見つかり、変更してきたため、「当初の仕様がどういうものだったかわからない」(山﨑CDO)そうです。

実地で改善してきた成果としてどんな充電サービスになっているのか、楽しみになってきました。稼働したら試してみたいと思います。

最後に、ちょっと気になった今後の計画に触れておきます。プラゴでは、充電ステーションに人が集まるだけでなく、ステーションを起点にしてマイクロモビリティーで移動したり散策したりすることもできる、人間中心のスペース『プラゴ プレイス』の整備を計画しているそうです。

すでに場所の検討もしているそうで、遊休地をどう利用するかという相談も受けているとのこと。大川CEOは、「来年中にはできるのでは。『もう、ここで』みたいな話もある。そんなに未来の話ではない」と話しています。

シェアオフィスというか、ノマドワークというか、そんなこともできる場所なのかなあとか想像しています。

プラゴのこれからにちょっと期待がふくらみます。

(取材・文/木野 龍逸)

この記事のコメント(新着順)4件

  1. プラゴの充電器設置計画や充電料金制度は判りかねますが、既にアイミーブ(M)10.5kWhに慣れてる僕は正直30kW中速充電器+4kW充電器数台連立でもエエんやないかと思います。その根拠は日産SAKURA/三菱eKXEVの充電能力MAX30kW/2.9kWから。
    ただでさえ物価高騰に対して庶民収入が追つ付いてへんのに高額EV買いづらいやないですか!?それによって「EV=ブルジョワの買いもん」イメージつくんがイヤやでホンマ!!(爆)
    それやから軽EV「だけ」売れてる気ぃせんでもないですわホンマ。

    たしかに予約制の普通充電器はあってエエと思います。ショッピングモールやったら1時間以上の滞在は大いにあり得ますんで。
    あとチャデモ充電器は時間経過後10分以内に戻って来んかったら追加料金設定すりゃエエやないですか!?自動的に10分55円とか取られたら気が気ではなくなり「急速充電より普通充電」心理が働くようになるから。

  2. 充電器が増えることに異論を挟む余地は悲観論者は別にして
    ないと思いますが。
    認証方式は統一して、あるいは相互乗り入れして充電器すべてを使えるようにしてほしいと思います。
    自動車各社が発行しているカードは基本的にe-モビリティ対象ですがそれ以外の方式ではそれぞれの認証方式が乱立していて色々とめんどうですし、
    普通充電器の認証で○○○○○○walletなるものが出てきて結果的に使えなくなってしまった普通充電器が山のようにあります。
    こういうの、やめてほしいです。

    1. おっしゃる通り認証方式が乱立しており、統一して欲しいです。
      eMPのカード内でも各自動車会社ごとに料金プランが乱立し狂っています。
      そもそも、プラットフォームごとの充電カードや独自アプリのような日本独自の謎方式がEV普及を妨げている元凶の1つです。
      その場でクレジットカードやSUICA等交通系での支払が高額な手数料問題で難しいというのなら、多くの人が既に保有しているETCやSUICAで認証だけして実際は口座引落しにするとか色々策はあったはずなのに何故もっとシンプルな課金システムが作れなかったのか残念すぎます。
      国内で規格争いしてるうちに外国の統一規格がやってきてチャデモと一緒にひっくり返されるんじゃないでしょうか。

  3. 高速道路上ではないショッピングセンターなどの商業施設に設置する急速充電器なら50kwというのは十分だと思います
    60分というのも素晴らしい
    10%→80%までの充電を想定するとそれ以上充電時間が必要な車両というのも少ないと思いますので

    普通充電の方は充電器でなく充電コンセントらしいですがこれから発売するEVにどれだけ普通充電ケーブルが標準で付属するかは未知数ですね
    場合によっては結構持ってない人が多いみたいな状態もあり得るのでは

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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