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【北京モーターショー2026レポート】中国製電気自動車が新興国市場を席巻する予感

【北京モーターショー2026レポート】中国製電気自動車が新興国市場を席巻する予感

今年の「北京モーターショー」会場は38万平方メートルという驚異の展示面積となりました。世界トップレベルの広大な会場では、自動車メーカーやブランドの多彩なEVをはじめ、自動運転やAI関連の「知能化技術系サプライヤー」が存在感を放っていました。注目のトピックをレポートします。

目次

存在感を増す知能化技術系サプライヤー

新会場の首都国際展覧中心。

毎年4月に上海と交互で開催される「北京国際汽車展覧会(通称:北京モーターショー)」が今年も開催されました。今年の会場は従来の展示場に併設する形で誕生した新会場「首都国際展覧中心」が加わり、合計38万平方メートルという驚異の展示面積となりました。モーターショー会場として世界トップレベルの広さです。自動車メーカーやブランドをはじめ、部品サプライヤーや自動車メディアなど約2000以上の出展者が集結、出展台数は初公開車種181台、コンセプトカー71台を含む計1451台と公表されています。

会場が拡大されたことを受け、自動車メーカーやブランドと同じホール内で、同じ規模のブースを出展するサプライヤーが今まで以上に多く見受けられました。サンオーダやCATL(寧徳時代)といった車載バッテリー大手だけでなく、Momentaやホライズン(地平線)、WeRideなどの自動運転系ベンチャー、そしてUnityやiFLYTEKなどのデジタルコックピット関連企業も大々的に出展して注目を浴びました。

昨今の中国メーカー製EVでは音声認識による各種操作が一般的になっていますが、一方で乗員が発話する文章はシステムが認識するために極力簡単かつシステマチックでないといけないという課題があります。その常識を変えようとしているのが、音声認識技術で長年の経験を持つ「iFLYTEK」です。

同社は2000年代初頭より音声認識や機械学習を活用した翻訳機の開発に注力しており、自動車分野においても中国市場で展開している9割以上の自動車メーカーが同社の技術を採用しているといわれています。

今回の出展では新たな言語認識モデル「星火(スパーク)」を展示、我々が日常会話で発するような、よりハイコンテクストな文章もしっかりと認識して操作できるとアピールしています。たとえば、これまでの音声認識では「冷房の温度をXX℃に設定して」という必要がありましたが、新たなシステムを活用することで、車内外の温度や天候、乗員のこれまでの好みを考慮して「ちょっと暑い」程度の発話でも最適な環境にしてくれるそうです。

また、iFLYTEKは先述のとおり通訳・翻訳シーンにおいて一定の経験があるので、海外進出を目論む自動車メーカーにとっての大きな課題だった「ローカリゼーション」も容易になるとのことでした。

「他とは違うEV」をアピールするためのエンジン開発

これからのEVの進化にはエンジンとの柔軟な連携が重要になるのかもしれません。そう感じさせたのが、ジーリー(吉利汽車)と仏・ルノーグループの駆動系開発合弁「ホース・パワートレイン」のブースです。同社はこれまでも主にPHEVやEREV(レンジエクステンダー付きEV)に搭載するエンジンにおいて新たな提案を行なってきており、昨年の上海モーターショー2025では1.0Lクラスの水平対向エンジンを出展したことで話題を集めました。

今回の目玉は「X-RANGE C15」という排気量1.5Lのユニットです。あまりの薄さなので説明員に「水平対向エンジンか?」と確認しましたが、どうやら直列4気筒を横倒しにした構造らしく、発電機や補機類、冷却系統までも一体化した、超コンパクトなユニットとなるそうです。従来のエンジンは基本的にフロント搭載が一般的でしたが、小型化により搭載位置は自由、たとえばフランク空間を最大限活かしたいのであれば、リアシートの下にだって搭載できると言います。

また、「Direct Drive」仕様ではハイブリッド専用トランスミッション(DHT)まで一体化し、リアのサブフレームに直接マウントすることで後輪を直接駆動させられるとのこと。BEV専用で設計したボディであっても、リアの駆動ユニットを丸ごと置き換えるような形でHEVやPHEV、EREV化が可能とアピールします。従来の「中国はエンジンが作れない」という評価はすでに過去のものとなっており、エンジン技術を獲得するだけでなく、どのようにEVの設計や技術を組み合わせ、新たな提案をするかのフェーズに入ってきていると感じました。

世界戦略を拡大するBYD

BYDの「閃充」ブース。

BEVとPHEVの二刀流で戦うBYDも、2026年第1四半期の中国国内販売台数は前年同期比30%減の約70万台を記録と苦戦を強いられています。今回はホールひとつを丸ごと使い、BYD 4ブランドのブースに加えて1.5 MW級の「閃充(フラッシュ充電)」とレベル2+の運転支援機能「天神之眼」に関する技術展示を展開しました。

シール08

シーライオン08

BYD本家のラインナップでは「海洋シリーズ」の旗艦セダン&SUV「シール08」「シーライオン08」と、「王朝シリーズ」の旗艦SUV「大唐」、そしてミドルSUV「元PLUS」がお披露目されました。特にシーライオン08や大唐は昨今の中国メーカーにおける流行である「全長5メートル超SUV」に追随したもので、BYDの本家としてこのクラスのSUVを送り出すのは初となります。

大唐

また、元PLUSは日本を含む海外市場では「ATTO 3(アット3)」として販売されているモデルで、今回は2代目へのフルモデルチェンジが発表されました。2代目モデルではボディを4665 x 1895 x 1675 mm(ホイールベース2770 mm)へと拡大し、インテリアもシンプルなものに刷新されました。

2代目BYD 元PLUSの内装。

プラットフォームは初代のビッグマイナーチェンジである「アット3 EVO」同様にRWDベースとなり、800 Vシステム+第2世代ブレードバッテリーを採用することで「閃充」にも対応するとのこと。

2代目BYD 元PLUS。

低迷する国内販売とは対照的に、海外販売は2026年第1四半期で約32.1万台を記録と、前年同期比55.8%増の成長を見せています。海外販売の目標としてBYDは2026年に150万台と掲げており、2代目元PLUSはそのための重要なモデルになることでしょう。

注目を集めたワールドプレミア3選

デンツァ Z

BYDは他にも、すでにプロトタイプを公開していた「騰勢(デンツァ)」ブランドのスポーツEV「Z」の量産モデルをお披露目しました。個人的に今回のモーターショーで一番興味を持ったのはこのZです。

3モーター構成によって最高出力は1000 hp超を実現、0-100 km/h加速は1.9秒としていますが、筆者が感銘を受けたのは日常使いでは絶対に持て余すようなスペックではなく、ボディタイプがオープンカーであるという点です。オープンカーはその美しいフォルムと無限に広がる開放空間を手にする代わりに、ボディ剛性を犠牲にした存在です。

もちろんオープンカーはそんな小さなことを気にするような乗り物ではないものの、デンツァ Zは電池パックをボディの構造体として活用する「CTB(Cell-to-Body)」技術によってかなり高いボディ剛性を得られていることでしょうし、ハンドリングの面でどのような体験をもたらしてくれるかが気になるところです。デンツァ Zでは先立ってプロトタイプとして公開された2シータークーペに加え、今回の4シーターオープンの2種類のボディタイプを用意すると見られます。

外資系メーカーで顕著となっているのが「現地化」です。価格と技術の先進性で優位に立つ中国勢と競争すべく、多くのメーカーが次々と現地企業とのパートナーシップを強化、新たなEVを開発しています。ドイツメーカーではフォルクスワーゲン(以下、VW)が積極的で、「ID. AURA T6(BEV)」「ID. ERA 9X(EREV)」「ID. UNYX 08(BEV)」、それぞれ第一汽車との「一汽VW」、上海汽車との「上汽VW」、そして江淮汽車(JAC)との「VW安徽」が製造を担当するEVを北京モーターショー2026の目玉として展示しました。

ID. AURA T6

ID. ERA 9X

ID. UNYX 08

とくにID. AURA T6は新興EVメーカー「シャオペン」と共同開発した「CEA(Chinese Electronic Architecture)」プラットフォームを採用、NOA(Navigation on Autopilot)のソフトウェアは中国の自動運転ベンチャー「ホライズン」と共同で開発したものを搭載しています。

この「現地化」の流れに、イギリスの「ランドローバー」や韓国の「ヒョンデ」も参戦を表明しました。ヒョンデはかつて中国で年間110万台(2014年)を販売していましたが、韓中関係やEVシフトへの乗り遅れが影響して年々悪化、2025年の販売台数はたったの12.5万台となりました。そんなヒョンデの起死回生の一策が、中国向けの新たな「アイオニック」です。

アイオニック V

第1弾モデルの「アイオニック V」はヒョンデらしい近未来的な見た目はそのままに、物理ボタンレスなコックピットや助手席までをカバーする27インチセンターディスプレイなど、中国のトレンドを取り入れた設計が特徴的です。

アイオニック Vのインテリア。

製造と販売はこれまで同様、北京汽車との合弁会社である「北京現代」が担当する一方、プラットフォームはお馴染みの「E-GMP」となります。VWは「シャオペン(小鵬)」や上海汽車のプラットフォームを流用していますが、ヒョンデが自社プラットフォームを使用すると決めたのは自信のあらわれと言えるでしょう。

日本ではBEVとFCEVしか販売していないので新エネルギー車のイメージが強いですが、一方で中国では現状「アイオニック5 N」と現地生産SUV「イオ」しかBEVを販売しておらず、そのほか8車種は全部純ガソリン車となります。イオも2025年10月に中国市場を想定したモデルとして投入されましたが、販売台数は228台を売った2025年12月がピークで、そのあとは月間100台以下が毎月続いている状況です。アイオニック Vがヒットしなければいよいよ先が無いでしょうし、なんとしてでもここで挽回しなければなりません。

イオ

中国製EVは海外展開の拡大へ

個人的にはあまり「元年」という表現を使いたくないのですが、2026年は中国EVにとっての「輸出元年」と言えるほど、これまで以上に海外展開が拡大される予感がします。

中国の高級車ブランド「紅旗(ホンチー)」も初のグローバルモデルを発表した。

前向きな要因としては海外展開にあたってローカリゼーションがAI技術によってさらに簡単になる点や、価格における優位性が挙げられます。一方でネガティブな点として国内市場の値下げ競争による疲弊と優遇政策の削減が挙げられ、多くの中国勢が海外に活路を見出しています。

自動車市場が先進国ほど成熟していない新興国を中心に中国勢は進攻を強めており、日本勢にとっては中国市場と新興国市場の両面で中国勢を相手しないといけません。

取材・文/加藤ヒロト(中国車研究家)

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この記事を書いた人

下関生まれ、横浜在住。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶ傍ら、さまざまな自動車メディアにて主に中国の自動車事情関連を執筆している。くるまのニュースでは中国車研究家として記事執筆の他に、英文記事への翻訳も担当(https://kuruma-news.jp/en/)。FRIDAY誌では時々、カメラマンとしても活動している。ミニカー研究家としてのメディア出演も多数。小6の時、番組史上初の小学生ゲストとして「マツコの知らない世界」に出演。愛車はトヨタ カレンとホンダ モトコンポ。

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