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世界遺産の高野山でBYDの電気バス「K8」が運行開始/なんばから高野山上まで電気モビリティで観光はいかが?

世界遺産の高野山でBYDの電気バス「K8」が運行開始/なんばから高野山上まで電気モビリティで観光はいかが?

誰もが一度は聞いたことがあるはずの聖なる地「高野山」。西暦816年に空海(弘法大師)が開山したこの地で、2026年4月24日、BYDの電気バス「K8 2.0」が運行を開始しました。昨年の立山黒部アルペンルートへのBYD電気バス導入時(関連記事)同様に取材会を催すという連絡を受け、シーライオン6に乗って(試乗は別レポートでお届け予定)取材に向かいました。

目次

大阪なんばから高野山まで電気モビリティが接続

2026年4月24日は南海電鉄の新型観光列車「GRAN天空」が運行を開始した日でもありました。「GRAN天空」は大阪市内のなんば駅から高野山近くの極楽橋駅までを結ぶ観光列車で、車内では豪華な食事やモーニングティー、アフタヌーンティーを楽しめるプランも用意されています。

極楽橋駅から高野山駅まではケーブルカーがつなぎ、高野山内の主要スポットを結ぶ交通とを、BYDの大型電気バス「K8 2.0」が担当します。つまり、なんばから高野山内までのすべてを電気エネルギーで巡れるのです。納入された「K8 2.0」は6台で、すべて「GRAN天空」と共通性を感じる、豪華な朱塗りの外装となっています。

NANKAIグループでは2004年に環境対策の基礎として同グループの「環境理念」を制定。環境に対する方針を明確にするため「環境方針」を定めています。現在では新たに制定した「社会的使命」などと連動を図るため、「環境理念」と「環境方針」を統合し、「環境に配慮した事業活動を通じて、地域とともに持続可能な社会の実現に向けて行動」するという主旨の「NANKAIグループ環境基本方針」を新たに定めていて、今回の電気バス導入にもそうしたグループ全体での方針が貫かれています。

電気バス運用の実績を考慮して「K8」を選択

南海りんかんバスの和田純一社長(左)と、BYDジャパンの石井澄人副社長(右)。

筆者はBYDジャパンからの知らせを受けて運行開始当日の様子を現地で取材。南海りんかんバス社長の和田純一氏は、囲み取材のなかで今回の「K8 2.0」導入について以下のように感想を述べました。

「当グループでは2023年から電気バスを導入しています。電気バスというのは二酸化炭素を一切出さないバスであり、とくにこの高野山は、クリーンな空気に包まれた信仰の聖地でございますので、そういう雰囲気の維持にもつながるということ、また南海グループ沿線では一番の観光地でございますので、ステークホルダーをはじめ、環境経営をPRするうえでは、電気バスを導入するのに最適な場所であると考えています。
BYDのK8を選んだことにつきましては、航続距離やメンテナンス、さらに高野山は冬には―10度以下になる寒冷地ということで、そういった面での実績をお持ちでしたので、選ばせていただきました。和歌山県では電気バスの導入が初となりましたので、業界内でも話題となり、会合などではそうしたお話もさせていただいています。
新車導入、充電設備の設置などコストは掛かっていますが、国の補助金制度などを上手に利用しながら導入となりました。電気バスの場合はエンジンのメンテナンスコストが掛からないのが、大きな利点だと思っています」

通学する小学生が初めての乗客に

「K8 2.0」は高野山駅を始点に高野山内の観光ポイントをたどりつつ奥の院までの約7kmを走行するのが通常ルートです。また、運行を担当する南海りんかんバスは、この営業ルートのほかに近くの小学校の送迎バスも運行しています。そして、なんと今回導入された「K8 2.0」の最初の乗客は通学の小学生たちだったとのこと。その小学生たちも電気バスならではの静かな走りに驚いていたとのことでした。

「K8 2.0」は314kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを車体後部とルーフに搭載、左右後輪に装備された出力100kWのインホイールモーターで駆動します。充電は最大90kWのCHAdeMO規格急速充電で行い、普通充電には対応していません。カタログスペックの航続距離は240kmとなっています。

筆者は乗客として乗車しましたが、高野山周辺のワインディングロードを走っている際にも、重量物であるバッテリーをルーフに積んでいると感じさせない安定した走行フィールでした。そして、なによりも高い静音性と低振動が快適です。

排ガスが出ない電気バスは観光地に最適

ディーゼルバスはどうしてもノイジーですし、振動もあります。観光地を巡るバスの場合は、車窓から見える風景を楽しめることが重要。振動やノイズなどを気にせずに乗れることはすごくいいと感じます。

また、ディーゼルバスの場合は排ガスも発生します。バス車内で排ガスの臭いを感じるのはもちろんですが、それ以上に周囲で感じる排ガスの臭いのほうがきついのです。観光地を歩いていたり、自家用車で走っていたりしたときに感じるディーゼル臭も一気に興ざめです。ディーゼルエンジンは標高が高くなる(空気が薄くなる)と黒煙などが発生しやすくなります。高野山は標高800~900m程度なのでさほど影響はありませんが、高地の観光バスは排ガスを発生しない電気バスの存在価値が上がります。

夜間の充電だけで1日約100kmを運行

今回の6台納入に合わせて南海りんかんバスでは高野山駅にダイヘン製の急速充電器を設置しています。1基で2口のケーブルを備えたタイプの充電器で、出力は最大50kWとなっています。高速道路などに設置されている複数口タイプの急速充電器で2台を接続した場合は、1台に振り分けられる出力が低下しますが、高野山駅に設置されたものは予約式で、1台の充電が終了するともう1台の充電が始まる方式とのこと。高野山内の運行では1日の走行距離が100km前後のため、営業終了後に2台を充電しても十分に満充電となり、営業中に充電する予定はないとのことでした。

ダイヘン製充電器は白いケースが標準なのですが、そのままでは景観を損なうということで、充電器はもとよりキュービクル(高圧受電設備)や配線カバーにいたるまで目立たない茶色に塗り直されていました。

バス運転手の方に「K8」のフィーリングについてうかがったところ「力強くて運転しやすい。回生は3段階ですが、お客様が乗った状態では最強は強すぎてギクシャク感が出るため使いづらい。2段目くらいで使うのがいい。今まではクラッチ付きのMT車に乗っていたので、ATは何かと運転が楽ですね。でも、何度も間違ってそこにはないクラッチペダルを踏みにいっちゃいました」と語ってくれました。

観光地などでは運行時のクリーンさは非常に重要です。クリーンということを考えると燃料電池バスも十分にクリーンですが、インフラ整備に莫大なコストが掛かることを考えると電気バスが最適解となるのは必然です。

BYDジャパンの石井澄人執行役員副社長は今回の南海りんかんバスへの「K8 2.0」の導入について「ご存知のように高野山は1200年前に空海が開山した聖地です。空海は当時、世界の最先端である中国へ行って学んで日本に帰ってきています。そうしたことを振り返ると(中国に本拠をもつメーカーである)我々としても親しみを感じます。BYDとしてもここから改めてエコロジーな商品をアピールできる。本当に静かな、祈りの地で使っていただけることをうれしいと感じます」とまとめました。

取材・文/諸星 陽一

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この記事を書いた人

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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