世界の自動車メーカー電気自動車シフト情報【まとめ】2021年2月〜ジャガーもフォードも本気です

世界の自動車メーカーが電気自動車への注力を加速するニュースが増えています。フォルクスワーゲンを筆頭に欧州メーカーはすでに多くの車種を発売済み。世界はどう動いているのか。日本はどうするのか。理解して考察するために役立つよう、各社の情報をまとめてみました。

世界の自動車メーカー電気自動車シフト情報【まとめ】2021年2月〜ジャガーもフォードも本気です

【2021年2月19日初出】

世界基準の「電動化」にハイブリッド車は含まない

自動車の電動化シフトや新たな電気自動車登場のニュースが相次いでいます。EVsmartブログでは重要なトピックをニュース記事としてご紹介するよう奮闘していますが、さまざまな情報をバラバラに発信するだけでは、なかなか全体像をつかめません。そこで、主要各社の電動化戦略や状況について、シンプルにポイントをまとめた記事をアーカイブしておくことにしました。下にご紹介する一覧表を見れば、世界の電動化シフトがもうどうにも止まらないことなど、おおまかな状況を捉えていただけるかと思います。

たとえば、トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーは、ガソリン車である「ハイブリッド車(HV)」も「電動車」と位置付けていますが、ヨーロッパやアメリカなど世界の自動車メーカーが定義している電動車とは、外部から充電可能なプラグイン車、つまり完全な電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)です。

もちろん、低炭素モビリティの多様化を進めるためにHVは大切ですし、すべての自動車をプラグイン車にするべきだとは言いません。とはいえ、仮にHVに依存し続ける日本のメーカーがEV開発に遅れを取っている間に、世界市場のスタンダードがEVをはじめとするプラグイン車になってしまったら、日本の自動車産業は生き残ることができるのか、と考えると心配です。ハイブリッドは、本当の電動化を先延ばしにする理由にも世界のメーカーへのカウンターパンチにもなりません。

世界の自動車業界の全体像を知っておくことは、今はまだエンジン車に乗っているユーザーの方が電動車に乗り換える時期や車種を選択するためにも役立つでしょう。

この記事は、『ヨーロッパで電気自動車の売上とシェアが拡大中』や『各国のガソリン車禁止・ディーゼル車販売禁止の状況』と同様に、ある程度の期間ごとに情報を更新しながらアップデートしていきたいと思います。

名門ジャガーが100%電気自動車とすることを宣言

このような【まとめ】記事を作っておこうと考えたのは、出光タジマEVの超小型EV発売やテスラモデル3の大幅値下げなど大きなニュースが続いたここ数日の間にも、世界の自動車メーカーから電動化に関する要チェックなニュースが相次いだからです。全部を個別の記事として発信するには制作リソースが不足気味だし、伝えたいニュースバリューも薄まります(苦しい言い訳……)。

2021年2月15日、イギリスの名門自動車メーカーであるジャガーランドローバーが『JAGUAR LAND ROVER REIMAGINES THE FUTURE OF MODERN LUXURY BY DESIGN』と題したリリースを発信。まず、イギリスの名門であるジャガーブランドは、2025年までにエンジン車を放棄して、100%電気自動車とすることを表明。オフロードSUVを主力とするランドローバーブランドでも、今後5年間で6車種のEVを投入するとともに、PHEVを含めた電動化を強化して、2030年までには60%をEVとする方針を示しました。

Jaguar I-PACE

一方で、ジャガーブランドのフラッグシップEVとして開発が進められていた次期ジャガーXJは開発中止。ジャガーをオールエレクトリックラグジュアリーブランドとして再構築する決意が示されました。そもそも、静かで加速がスムーズな電気自動車は高級車にうってつけのパワートレインといえます。EV100%の高級車ブランドとしてラインアップを再構築する上で、エンジン車のフラッグシップであった「XJ」のまま電動化するだけでは不十分だと判断したと理解できます。オールエレクトリックの「シビれるジャガー」が、どんな世界を切り開いてくれるのか楽しみです。

フォードが2030年までに欧州で販売する乗用車の100%をEVに

2012年2月17日には、アメリカのフォードモーターから、2030年までに欧州で販売する乗用車のすべてをEVにするという発表がありました。

発表では、まず2026年半ばまでに欧州で販売する100%の乗用車をEVもしくはPHEVとするとして、さらに2030年までには完全なEVに移行するとしています。また、商用車についても2024年までEVかPHEVをラインアップして、2030年までには販売台数の2/3はEVかPHEVとする予想を示しました。

フォードについては、EVsmartブログでも先日、2月8日に電気自動車への投資を2025年までの5年間で2兆円以上へ増額を発表したことをお伝えしたばかり。今回の発表では、ドイツのケルン工場に10億ドル(約1060億円)を投資して、フォードでは欧州で初となる電気自動車製造用の工場とすることも示されました。

自動車に対して、罰金を伴う厳しいCO2排出量規制を打ち出している欧州で、フォードの電動化は一気に前進するということになります。もちろん、EVの新車種開発にも意欲を示しており、この流れが拠点であるアメリカなど世界市場へ展開していくことは至極当然の流れとなりそうです。

欧州の電気自動車生産拠点となるケルン工場。

主要自動車メーカーの電動化情報一覧

最後に、世界の主要メーカーから発表されている電気自動車シフト、電動化に関する情報のポイントを一覧表にしておきます。

まずはたたき台、的に短時間で作成したので、「もっと大事な情報あるぞ」とか、「この情報も入れるべき」といった点もあろうかと思います。お気づきのことあれば、コメントなどで教えていただけるとうれしいです。随時、ニュースなどが入り次第この表もアップデートしていきます。

原則としてアライアンスを組んでいるグループごとにまとめており、日産、三菱はルノーグループの一員でもあるのですが、日本の状況を理解しやすいよう単独で表に入れました。また、VWグループのアウディの情報とかを入れたい気もするので、今後、ブランドごとにするかも知れません。

メーカー情報
フォルクスワーゲングループ2030年までに約70車種の電気自動車を発売予定。うち20車種はすでに生産開始。
メルセデスベンツ中期経営計画『Ambition2039』で2030年までに新車販売の50%以上をBEVやPHEVにする目標を表明。
BMWすでに世界で13車種の電動車をローンチ。2023年までに25車種を提供し、うち半分以上はBEVとする計画を表明。
グループPSA(ステランティス)グループ内ブランドでパワートレインの選択性を高めた共通プラットフォームを活用し、2020年までにBEV7車種、PHEV8車種などを投入。
ルノーグループ欧州ベストセラーEVのゾエなど複数車種をすでにラインアップ。グループ全体で2025年までに10車種以上のBEVを投入するなど電動化強化を表明。
ジャガーランドローバー2030年までにジャガーブランドは100%、ランドローバーでは60%の車種をBEV(ゼロエミッション)とする計画を表明。
ゼネラル・モーターズ2035年までにすべての乗用車を電動化する目標を表明。2025年までには全車種の40%となる30車種をBEVにする計画。
フォード2030年までに欧州市場での販売をEV100%とする目標を発表。2025年までに2兆円以上を電気自動車に投資。
トヨタ電動車(HV中心)を世界で550万台以上販売し、そのうちEVとFCVを100万台以上とする目標を2030年から2025年に前倒し。
日産自動車2022年度までにBEVなどの電動車100万台販売の目標を表明(e-POWER含む)。
三菱自動車2030年までに世界販売の50%を電動車(HVを含む)にする目標を表明。

がんばれ、ニッポン! です。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. HV車を作れるメーカーは、市場がEVに変わった瞬間にすんなりEVにシフトできる技術力が有るという。しかし、市場は技術力だけでは無く、趣味趣向でも動く。安全性さえデジタル技術で克服できる時代だ。日本メーカーは、EVシフトのスピードは遅すぎる。レシプロエンジンに拘っていては、世界で起きているゲームチェンジについて行けていない。ここで果敢に挑まないと、家電メーカーの二の舞になる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事