BYDは2022年に電気自動車150万台を達成できるのか?

多くの競合他社とは違い、BYDはバッテリーや半導体チップなどを含めた垂直統合がかなり進んだビジネスモデルのおかげで、自らの運命をうまくコントロールしています。勢い、商品、能力を持ち合わせたBYDが2022年に電気自動車を含めた新エネルギー車両の150万台販売目標を達成する可能性は非常に高いです。

BYDは2022年にNEV150万台を達成できるのか?

元記事:Will BYD sell 1.5 million NEVs in 2022? by Lei Xing

中国のEV普及にとって2022年が重要な年になる

2022年は中国の新エネルギー車両(NEV)市場にとってまたしても当たり年になりそうです。

中国汽車工業協会(CAAM)が2月18日に出した最新データによると、1月に43万1,000台のNEVが売られ、昨年同月比で135.8%増となりました。NEVは自動車セールス全体の17%を占め(2021年1月は7.15%)、シェアも約10%増となっています。

この結果は2021年に350万台のNEVが売れ、前年比で2.5倍の急増した後に続いて出てきました。中国乗用車協会(CPCA)も乗用車の新車販売を毎月報じていますが、その最新の業界予測で、今年は乗用車セールスが550万台と見込んでいます。昨年末に500万台としたCAAMより少し強気な予測です。

コンセンサスはNEVかNEPV(新エネルギー乗用車)のみか、いずれにしろ最低500万台です。NEPVは中国のNEVセールスの大部分を占め、2022年1月のシェアは97%で、2021年通年では95%でした。

今年熟成してきている話題の1つで確認が待たれているのが、中国及び世界でトップのNEVメーカーでライバル同士のBYDとテスラが、バッテリー供給で合意したというものです。両社とも2021年に続き、2022年にも再び大きく成長すると見られています。BYDは昨年の60万台弱から倍以上の120万台、テスラも最低50%の成長、昨年の世界合計デリバリー数94万台から150万台という目標を掲げています。

セールス量の領域でこのライバル関係をさらに面白くしたのが、2月11日にBYDがソーシャルメディアに投稿した2022年の目標で、年末までに300万人のNEV顧客を獲得するとしています。

BYDは2021年末までに150万台強のNEVを売りました。今年中に300万人の顧客を獲得するには150万人を新たに得る必要があり、この数字はテスラのものと一致するのです。BYDのNEV販売にはBEVとPHEV両方が含まれるのに対し、テスラはBEVしか販売をしないので完全にフェアな比較ではありませんが、いずれにせよ両社ともに潜在的な台数は大きなものです。

BYDは2022年に150万台のNEVを売れるのか

まず、BYDはここ数週間から数カ月にかけて好調で、確かに勢いがあります。先月、新しい標語の「テクノロジー、グリーン、フューチャー」を発表した数日後に、グループ企業と自動車ブランドロゴも刷新しました。また1月後半にはBrand Finance Global 500 において世界最速で成長している自動車ブランドに選ばれました。

1月には12月の9万2,823台とほぼ同数の9万2,926台を売り上げ、補助金がフェーズアウトする過程で駆け込み需要が起き、12月に全体で過去最高の50万台以上を売った業界のトレンドにも逆らう形になりました。公式目標のNEVセールス120万台を達成するには、BYDは単純に月10万台を販売すれば良く、季節性、今の勢い、30万台と言われる未処理の注文分を考えると容易に達成できそうです。月間販売台数が10万台を越え、BYDが完全なNEVブランドになるのも時間の問題です(NEVの1月の販売シェアは98%でした)。

2つ目に、BYDの商品は確かなものです。非常に人気のDolphin(EA1)ハッチバックを支えるeプラットフォーム3.0をベースにした初のAクラスSUVであるYuan Plusが13万1,800元~15万9,800元(約240万円~290万円)で先週ローンチしました。このモデルは同日にオーストラリア市場でもATTO 3として発売され、7月納車の予定です。さらにBYDのOceanネットワークからQin Plusより若干大き目なDestroyer 05セダンと『Warship』シリーズが3月に出てきます。また第3四半期にはBuick GL8とほぼ同じサイズのLanding Ship MPVがPHEVとBEV両方のバージョンで登場、第4四半期にはHanと同じサイズのBクラスセダンや新しいプラグインハイブリッドSUVも出ます。

OceanネットワークのBioシリーズからは、さらに3つのモデルが今年市場に出るようです。モデル3よりもやや大きいコンパクトセダンのSeal、五菱宏光MINI EVより少し大きい小型車両のSeagull A00-class、これまたモデルYより少し大きめで航続距離700km、Huawei製LiDAR搭載のSeal Lion BクラスSUVです。

さらにYuan Plusが属するDynastyネットワークもあります。このネットワークはすでに大ヒット中のEVであるSong、Tang、Hanを持ち、正式なローンチが3月で最近先行販売が始まったSong MAX DM-i(PHEVモデル)に加え、リフレッシュされたHan DM-i、Tang DM-i、新しいHan EV も加わります。

以下が現在市場に出ているか、今年~2023年にかけて発売されるBYDの新NEVモデルになります。

シリーズModelLaunching
Ocean ネットワーク
Bio シリーズSeagull2022年第2四半期
Dolphin発売中
Seal 2022年第1四半期
Sea Lion2022年第3四半期
Warship シリーズDestroyer 052022年第1四半期
Destroyer 072022年第4四半期
Cruiser 052022年第1四半期
Cruiser 072022年第4四半期
Landing Ship 052023年第1四半期
Landing Ship 072022年第3四半期
Dynasty ネットワーク
Qin シリーズQin Plus EV発売中
Qin Plus DM-i 発売中
Song シリーズSong Plus EV 発売中
Song Plus DM-i 発売中
Song MAX DM-i 2022年第2四半期
Yuan シリーズYuan Pro EV発売中
Yuan Plus EV2022年第1四半期
Han シリーズHan EV発売中
Han DM 発売中
Han DM-i2022年第2四半期
New Han EV2022年第2四半期
Tang シリーズTang EV発売中
Tang DM-i発売中
New Tang EV2022年第2四半期
Ming シリーズMing EV2023年
Ming DM-i2023年

2022年のBYDは、トータルで10以上の新しい、もしくはモデルチェンジしたNEVをリリース予定で、その多くが社のe-プラットフォーム 3.0を採用しています。

3つ目に、BYDの生産能力はすでに高く、さらに増強されます。今のところ車両生産用の工場が3つあり、今年さらに5つが生産開始する予定で、全部合わせると年間200万台の生産が可能となります。

以下が工場のリストで、年末に予測される年間生産台数及び、作られるモデルが含まれます。

場所
稼働開始時期
モデル
月間生産台数
深圳
2022年以前に稼働済みHang、Tang、e6
30,000
西安(第1、2フェーズ)
2022年以前に稼働済みQing、Song
50,000~60,000
長沙
2022年以前に稼働済みDolphin、Yuan Pro、e2
25,000~30,000
西安(第3フェーズ)
8月不明20,000
常州
1月Yuan Plus、Seal、Sea Lion20,000
福州(江西省)4月不明20,000
合肥6月不明40,000
済南8月不明20,000
鄭州10月不明20,000

2022年にBYDが追加する新モデルの数と生産能力を見ると、少し恐ろしいものがあります。150万台を達成しても個人的には驚かないですし、120万台はすでに約束された数字と言えるでしょう。

参照記事:BYD social media post: https://mp.weixin.qq.com/s/EZnp4Q9mi-mOpkLXwES3_w
BYD hints at sales target of 1.5 million units this year on CNEVPOST

(翻訳/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. このラインナップで生産していることがすごい。何種類も工場で生産できるって、なかなかの設備と能力が必要だし。

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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