HW ELECTROがハイエースサイズのEVバン『ELEMO-L』先行予約開始~先取り試乗も好感触

ユニークな商用電気自動車を輸入&日本に最適化して販売するEVベンチャーのHW ELECTROが、最大積載量1250kgのEVバン『ELEMO-L』のWEB先行予約を3月21日(火)からスタートします。先取り試乗した印象も上出来でした。

HW ELECTROがハイエースサイズのEVバン『ELEMO-L』先行予約開始~先取り試乗も好感触

まずは左ハンドル仕様で個人カスタマーにアピール

商用EVベンチャー「HW ELECTRO」が、いわゆるハイエースサイズのEVバン『ELEMO-L(エレモ・エル)』をお披露目したのは、2023年1月に幕張メッセで開催された東京オートサロン2023でのことでした。

あれから2カ月。HW ELECTROから「かねてのプラン通り、3月21日からELEMO-Lの先行予約販売をHW ELECTROのWEB上で開始します!」という知らせが飛び込んできました。車両本体価格は450万円(税別)~。かつて日産が販売していた商用EV『e-NV200』は補助金を使うと新車価格300~400万円程度だったので少し高めではありますが、最大積載量はe-NV200は600kgだったので倍以上。本気で使える頼もしいEVバンが、いよいよ日本にも登場したと評することができるでしょう。

ELEMO-L 主要スペック
全長×全幅×全高(mm)5457×1850×2045
荷台床高610mm
最大積載量1250kg(乗員2名含む)
バッテリータイプLFP
バッテリー容量43.5kWh
一充電航続距離(WLTC)210km(予測値)
最高速度90km/h
充電最大受入出力急速充電/50kW
普通充電/6kW
乗車定員2名
ハンドル位置

タフで安全性が高いLFPバッテリーの容量は43.5kWh。一充電航続距離はCENNTRO社のベース車諸元表によると270km(電費は約6.2km/kWh相当)となっていますが、WLTCモードの国交省審査値では210km(予測値)となるようです。ともあれ、かなり荷物を積載した状態で電費が4.0km/kWhになったとしても174km、おおむね150km程度は電欠の不安なく走れるでしょう。バッテリーを増やせば航続距離を延ばせても車両価格が高くなるので、実用的には必要十分、バランスのいいバッテリー容量だと思います。

ひとつ要チェックなポイントが、ローンチエディション、というか先行予約を受け付けるモデルは左ハンドル仕様のみとなっていることです。

【関連サイト】
『ELEMO-L』先行予約サイト(3/21の先行予約開始までは404エラーが出ます)
HW ELECTRO公式サイト

移動オフィスやキャンピングカーのベースにぴったり

HW ELECTROでは東京オートサロンでも、荷室をウッディーなプライベートスペースに架装したELEMO-Lを展示していました。後部左右に少しタイヤハウスが飛び出ているものの、ほぼフラットで、幅1720mm(タイヤハウス部は1330mm)、奥行2890mmという大きくてシンプルな荷室は、カスタマーの思いや夢を膨らませてくれる空間です。

蕭偉城(ショウ・ウェイチェン)社長はオートサロンでのインタビュー時にも「まずはキャンプ用途など、ライフスタイル中心の提案を BtoC で行っていき、BtoB 展開は右ハンドルを導入してから本腰を入れていきます」と話していたので、計画通りの日本導入スタートということになります。

シンプルでフラットな荷室が使い方の夢を広げてくれます。
上下に開閉するユニークなサイドドア。

質感や加速、ブレーキなどの印象は好感触

2月中旬、HW ELECTROの広報ご担当者にお声がけいただいて、青海にあるHW ELECTRO本社近くでELEMO-Lに試乗することができました。実は、1月の東京オートサロンには行けてなかったので、私自身はELEMO-Lと初対面でした。

ELEMO-Lは、先行して発売されている小型商用EVの『ELEMO』や、軽商用EV『ELEMO-K』と同様に、アメリカに本社を置くCENNTRO社が中国で生産したベースモデルを輸入して、日本で一般的なタイプ1(J1772)の普通充電とチャデモ規格での急速充電に対応し、安全装備などを日本向けに整えて発売されます。

今まで、何台かの中国製EV商用車に試乗したことはありますが、ブレーキが甘かったりして、正直、大手メーカーの量産商用車に比べて質感の仕上げなども甘めと感じることが少なくありませんでした。

でも、ELEMO-Lは、エクステリアやインテリアの質感、運転操作のインターフェースなど「かなり上出来」というのが第一印象でした。荷室があって後方が見えないのでバックする時にはモニターに表示されるカメラ映像が頼りだったりしますが、感覚としてはまさにハイエースのロングを運転している感じです。

EVらしい加速はスムーズで、ブレーキの効き具合にも頼りなさはありません。最高速度は90km/hに制限されていますが、お台場の一般道ではそんなスピードは必要なく。高速道路でも80~90km/h巡航と覚悟を決めておけば、さほど不満を感じることなく、安全運転を楽しめることでしょう。

エンジン車のバンに比べるとまだまだ価格は高めです。でも、ちょっとリッチな方が趣味クルマとして電気キャンピングカーを作りたいといったニーズを考えると、かなり魅力的なBEVだと感じました。

チャデモ対応がスムーズにいきますように

試乗したデモカーは海外仕様だったので、充電口は欧州のCCS2(コンボ2)規格のままでした。日本にCCS2で急速充電できる場所はほとんどなく、当面はタイプ2→タイプ1のアダプターを使い、普通充電のみで試乗などの対応をしています。もちろん正式な発売までにはチャデモ規格の急速充電に対応(充電口なども換装)するため、今まさに準備を進めているところということでした。

日本のチャデモ急速充電、ことに輸入EVではいろんなトラブルが頻出しています。今回、ELEMOシリーズとしては初めての急速充電対応となるので、当初は思わぬ不具合が出ることがあるかも知れません。これはもう、メルセデス・ベンツやテスラでさえも巻き込まれていて、どちらかというとチャデモ規格や充電器メーカー、ひいては国内充電インフラ拡充を担う e-Mobility Power に何かと改善の余地があるのではないかとも思える課題です。

意欲的EVベンチャーである HW ELECTRO には、万が一何か不具合が見つかった際には、迅速&丁寧な情報発信をしてほしい、とお願いしておきます。EVユーザーにとっては、適切な情報がなく「電池残量ギリギリで立ち寄った急速充電器が使えない!」というのが最もシリアスなトラブルなので。

最後に、デモカーにはまだ装着されていませんでしたが、日本仕様のELEMO-LにはAC100Vが使えるコンセントが装備されることになっています。いわゆるV2Lですね。非常時の電源にとアピールされているものの、高価で重い別売機器がないと電気が取り出せないEVも多い中、手軽に電気を使えるコンセントがあるのは高評価。キャンピングカーや移動オフィスとしての利便性も高まります。

HW ELECTRO では、スマートフォンなどのデジタル機器とインターネットを活用して、災害支援や配送ニーズの最適化、車両管理の利便向上などを実現するための「HW ELECTRO Platform Service(名称は変わる可能性あり)」を、2024年のローンチを目指して開発を進めているとのこと。「商用EVこそ電気自動車普及のポイント!」と狙いを定めて意欲的に車種を拡大してきた蕭社長の心意気を感じるチャレンジです。

※YouTube動画埋め込み

先行予約を開始するELEMO-Lのデリバリー開始は、今年6月ごろになる予定。販売台数は当面500台を目標にするそうです。夏の終わり頃には、どこかのキャンプ場で素敵に架装されたELEMO-Lのキャンピングカーと出会えるかも知れません。

取材・文/寄本 好則

この記事のコメント(新着順)1件

  1. う~ん、値段は悪くないのですがでかすぎる。
    eNV200が出た時に何故に1ナンバーなのかと残念に思っていました。
    観音開きのテールゲートが原因だったのですが
    室内寸法はガソリン車のそれと同じです。
    NV200自体軽バンと同程度の奥行とタイヤハウスが邪魔で容量的な利点はありませんでした。
    国内展開されそうなタウンスターは欧州生産ということもあってさらにでかくなっているようですね。
    こうなってくると4ナンバーであるキャラバンの重要度が高まってきます。
    乗り降りはしずらいという欠点はありますがBEV化すればエンジンの振動はなくなりますから期待できます。

    ELEMO-Kがそうであったように
    ELEMO-Lではショートボディ化したバージョンがあればなぁ、と思います。

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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