FIAT 500e ~急速充電アダプター&CEV補助金の気になる新情報【誤報訂正記事】

個性的なパッケージに42kWhのバッテリーを搭載する電気自動車『FIAT 500e』に関して、気になる問題が判明しました。当初、65万円とされていたCEV補助金は45万円に変更。チャデモからコンボに変換する急速充電アダプターは、もう少し時間がかかりそうです。

気になる FIAT 500e ~急速充電アダプター&CEV補助金などに関する不都合な事実【誤報訂正記事】

納車遅れの要因は、やっぱり急速充電アダプター?

4月のメディア試乗会で乗って以来、久しぶりにFIAT 500eの広報車を借りてドライブしてきました。今回は受注生産の「POP」というベースモデル。上位グレードの「ICON」には標準装備されている前車追従式のアダプティブクルーズコントロールではなく普通のクルーズコントロールだけなのが少し不便でしたが、やっぱり魅力的なコンパクトEVです。

日本仕様の500eで最も特徴的なのは、急速充電用のアダプター(変換ケーブル)です。FIAT 500e は、北米で採用されているCCS1(コンボ規格)に対応した急速充電口を搭載しています。日本の急速充電インフラは日本発のチャデモ(CHAdeMO)規格ですから、当然、そのままでは充電できません。そこで、フィアット(ステランティス)は、チャデモ規格からコンボ規格へ変換する急速充電アダプターを開発。日本導入モデルではグレードを問わず標準装備されることになっています。

4月のメディア向け試乗会で確認した際には、すでに試作品(プロトタイプ)は完成していて、日本国内でのテストを重ねているとのこと。日本でも、欧州仕様と同様の「最大85kW」での急速充電が可能、「大黒PAの新型器でも大丈夫」であることは確認済みというお話しでした。

4月のメディア試乗会にて。

【関連記事】
フィアットのEV『500e』に試乗/世界初!「CCS1→CHAdeMO」アダプターは大丈夫?(2022年4月8日)

当初、6月25日の正式発売とともにデリバリー開始が予定されていました。でも、この急速充電アダプターの量産品入荷が遅れている影響で納車が延期されているという読者からの情報があり、EVsmartブログではステランティスの広報ご担当部署に質問を送り、関係者への取材を進めていたのでした。

まず、ステランティスからは、納車遅れの要因はやはり「急速充電アダプター量産品の入荷が遅れているため」であり、「アダプターは入荷次第お届けということで承諾いただいたお客様には早々に納車を開始します」という回答をいただき、7月9日の週末あたりから、SNSなどで「納車された!」報告を散見するようになっています。

新開発の急速充電アダプターに改善すべき点が……

CHAdeMO → CCS1のアダプターを開発&採用するのは、私が知る限り量産EVとして世界初。これが成功すれば、欧米モデルの魅力的なEVを日本に導入する際にチャデモ対応の急速充電口とJ1772の普通充電口を2カ所設けるといった改造が不要になり、ハードルやコストが下がる可能性があります。4月の発表時以来、私自身、フィアットのチャレンジに期待するとともに、いくつかのポイントについて関係者への確認取材を続けてきていました。

今回、独自取材によって判明したポイントを紹介します。

●大黒PA6口器などが採用するダイナミックコントロールはまだ非対応。

ダイナミックコントロールというのは、複数口の急速充電器において、複数台の充電車両が接続した際、状況によって充電出力を充電器側が途中で変える機能のこと。大黒PAの6口器でも対応できない車種の存在が、e-Mobility Power(eMP)のリリースでも報告されています。

とはいえ、eMPではこの新型6口器を全国各地の高速道路主要SAPAへ拡充することを計画しています。また、新電元の2本出し90kW器などもダイナミックコントロールを採用しています。車両側がダイナミックコントロール非対応の場合、そもそも充電できない症状のほか、充電器側の電源ユニット構成により、大黒PAに設置された新型6口器では20kW以下、新電元の2本出し90kW器ではおおむね56~57kW程度の出力が上限出力となってしまう状況に陥ります。

500eの急速充電アダプターは、現在のところ「大黒PAの新型6口器でも充電はできるが、出力は未確認」であることがわかりました。また「30分間の充電電力量は10kWhに届かなかった」という証言もあり、おそらくダイナミックコントロール非対応のケースである最大20kW以下でしか充電できないと思われます。

早くここで、スッキリ充電してみたい!

今後、ことに複数台設置される場所ではダイナミックコントロールを採用した急速充電器が増えていくと予想できるので、500eのアダプターがきちんと対応できるかどうかは、とても重要なポイントです。ヒョンデIONIQ 5が日本での発表当初のプログラムではダイナミックコントロールに対応できていなかったのを、数か月後のデリバリーモデルで改善した例もあります。おそらくはソフトウェアの問題でしょうから、ぜひ、アダプターをデリバリーするまでに、きちんと対応してくれることを期待します。

●アダプターの最大電流は125A。つまり最大出力は44kW程度。

次に、欧州仕様と同様に最大85kWの急速充電に対応しているかどうかです。500eのバッテリー容量は42kWhです。85kW出力で充電可能であれば、単純計算で、0%からでも30分で満充電。もちろん、バッテリー保護のための出力調整はありますが、ちょっとしたトイレ休憩のついでに充電するだけで、スムーズなロングドライブを楽しめる性能と評することができます。

500eスペックのバッテリー総電圧は352Vなので、日本に設置されている90kW器で標準的な最大電流の200A流れるとすると、出力は352V×200A=70.4kWになります。日産リーフの40kWhモデルの急速充電最大出力は50kW、62kWhのe+は70kW程度ですから、500eはリーフベースモデルに近いバッテリー容量で、e+並みのスピードで急速充電できる、ということになります。

スペックに「125A, 600V Vdc Maximam」と明記されてます。

でも、今回関係者への取材で判明したのが、このアダプターのスペックは、電流値が「最大125A」ということでした。つまり、352V×125A=約44kWが、仕様としての出力値になります。充電が進んでSOCが増えると電圧はもっと高くなるでしょうが、その分、バッテリー保護のために電流値が制御されるため、この約44kWが実質的に日本仕様500eの、アダプターを介した急速充電最大出力といっていいかと思います。

EVsmartブログでは、4月の試乗会でステランティスジャパンの担当者に確認して、「欧州仕様と同じ最大85kW対応」、そして「大黒PAのダイナミックコントロールでの充電も大丈夫」とお伝えしていました、が……。ごめんなさい。間違ってました。お詫びして訂正いたします。

まあ、バッテリー容量42kWhのEVなので、出力44kWの急速充電で実用上ことさらに不便はないでしょう。とはいえ、高出力急速充電性能を期待して購入を決めた方もいるのではないかと思います。フィアットには改めて、このアダプターの性能=日本仕様500e の急速充電性能について、きちんとアナウンスしていただきたいところです。

ちなみに、すでに500eを納車された知人は「普通充電が速い!」と讃えてました。普通充電は最大11kWに対応、CCS1 の差し込み口の上部は日本の普通充電と同じ J1772のタイプ1規格なので、電源側のパワーさえきちんと整えれば、問題なくグイグイ充電可能、なはずです。
(あ。ここまで書いて、普通充電ケーブルのスペックを確認するのを忘れていたことに気が付きました。どなたか、すでに納車されたぞ! って読者の方いらしたら、表記の内容など教えていただけるとうれしいです)

●形状などに改善点があり対応中。

独自入手したアダプター、チャデモ接続側の写真。なるほど、急速充電器ガンの倍くらいはありそうです。

別の関係者の話から「急速充電器の一部機種との不具合があり対応を進めている」ところであることもわかりました。また、「形状やサイズなど、現状で判明している課題の改善をデベロッパーにリクエストしているところ」でもあるようです。

先日、近所のディーラーで聞いた話によると、現状、試作品のアダプターは「コードレス掃除機か!」と思うほどデカくて重い、そうです。なんとか、形状やサイズ、そしてダイナミックコントロール対応の課題は解決して欲しいですね。

なにしろ、世界初のチャレンジですから、いろんな課題が出てくるのは当然といえば当然のこと。でも、日本のユーザー(少なくとも私)は、500e と、この急速充電アダプターに期待しています。フィアット、というかステランティスにはぜひ困難を乗り越えていただいて、素晴らしい急速充電アダプターを完成させてくれるよう願っています。

テスラのチャデモ用アダプターも最大電流は125Aの仕様です。

CEV補助金は45万円に減額

最後にもうひとつ、ちょっと悲しい速報です。先日、別件でCEV補助金額について次世代自動車センター(NeV)への確認を進めていたところ、現状「65万円」となっている500eへの補助金額は3ナンバー車を対象とした額であり、5ナンバーで給電機能非搭載の500eへのCEV補助金上限額は、正しくは「45万円」であるという事実がわかりました。

差額はなんと20万円……。私の取材を受けたNeVのご担当者がステランティスに確認。誤って3ナンバー車として申請していたという、これはかなり初歩的なフィアットのミスだったようです。

まさに今日明日(7月13日ごろ見込み)にも正式に補助金額の変更が決定される様子なので、ステランティス(フィアット)からも追って正式な発表があるはず。すでに成約されている方に、どういう対応になるかは気になるところです。

日本ではまだ黎明期のEV普及、いろんなことが起こります。頑張れ、フィアット。負けるな500e! です。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)3件

  1. 500e乗りですが、こちらの記事から本国仕様で普通充電11kWと理解しており、出先でよく8kWで充電して調子良いと思っていたのですが、問題無く充電出来るのですが充電終了して走っていると、充電システムを点検してください。とエラーが出ることがあります。1日位で自然消えてしまいます。しかし、今回エラーが出ている時には充電出来ない事がわかりました。ディーラーに問い合わせたところ、本社からは日本仕様では6kWまでの対応だからと返事してきたようです。本国仕様で輸入されていて6kWまでとは意味がわかりません。さてランティスには真面目に対応して欲しいと思います。

  2. テスラ充電器にJ1772アダプター付けて充電出来た(充電スピードけっこう早い)。って言ってる方がいますね。
    自分は納車されましたが、まだ自宅に200Vコンセント工事終えてないので、歩いて2分のコインパ普通充電器で今度初充電チャレンジしてきます。

  3. 先週末に納車も終わり、リース契約も終わっているのでCEV補助金の減額の件は影響が出ないと信じております。チャデモアダプターの件は「形状やサイズなど、現状で判明している課題の改善をデベロッパーにリクエストしているところ」というお話ではまだまだ時間がかかりそうですね。あと、急速充電は85kWに対応しているというお話でしたのでチャデモアダプターにより、テスラと同様に制限がかかってしまうのも少し残念な気がします。早期にチャデモアダプターが配布されるといのですが。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

執筆した記事