フォルクスワーゲン『ID.4』のPCA特典改定〜ポルシェやアウディ店舗で無料充電可能に

フォルクスワーゲンジャパンが8月からの納車開始を予定している2023年モデルの電気自動車『ID.4』購入特典の改定を発表しました。PCAで利用可能な店舗はフォルクスワーゲンのみとなっていたのが、アウディ、ポルシェの販売店などでも最大12カ月間、無料&時間無制限で充電できるようになります。

フォルクスワーゲン『ID.4』のPCA特典改定〜ポルシェやアウディ店舗で無料充電可能に

※冒頭写真はフォルクスワーゲン木更津のPCA90kW器で充電中の様子。

グループ各社の販売店に急速充電ネットワークを展開

2023年8月1日、フォルクスワーゲンジャパンが新型『ID.4』2023年生産モデル購入特典の改定を発表しました。2022年11月のID.4発売に伴ってフォルクスワーゲンが加入したプレミアムチャージングアライアンス(Premium Charging Alliance = PCA)において、従来の発表では「初回登録料、最大12か月分*の月額会員費に加え、フォルクスワーゲン販売店舗における急速充電器使用料を最大12か月間(車両登録月を1か月目とし、12か月目の月末までの最大12か月間)、毎月60分まで無償で付帯」とされていたのを、PCAに加盟するアウディやポルシェを加えた全加盟店で、「最大12カ月間、時間無制限で無料充電」に充電できるようになりました。

もともと、日本導入モデルとなったID.4の「Launch Edition」では、PCA加盟全ブランド店舗での「会員価格での利用」が特典となっていましたが、今回の改定では「時間無制限で無料充電」となったので、2023年モデルのアピールに向けた大盤振る舞いと言えそうです。

ただし、この特典変更に伴って、従来は最大12か月間月額会員費(毎月90分までの充電器利用料金含む)を無償としていた、株式会社e-Mobility Power(eMP)が提供する日本全国の充電ネットワークで利用できる「Volkswagen充電カード」について「月額会員費特典を本年10月31日までの車両登録ならびに充電カード申し込みをもって終了」にすることも発表されました。

さらに、「Volkswagen充電カード」のサービスそのものが「2024年12月末日をもってサービスを終了する予定」であることも発表されています。eMPネットワーク提携の自社カードについては、ホンダが設定していた「Honda Charging Service」の充電カードを、2023年9月末で新規受付停止、2025年3月31日をもってサービス終了することを発表しています。

2年目以降はPCAだけにするのもアリ?

ホンダが充電カードを廃止する理由は「おしらせ」でも説明されておらず取材していないのでわかりませんが、フォルクスワーゲンについては、拡充しつつあるPCAネットワークで十分にユーザーへの利便性は提供できるという判断であると読み取ることができます。

ちなみに、ホンダもフォルクスワーゲンも、サービス終了後も引き続きeMPネットワークの充電サービスを使いたい人は、eMPが発行する充電カードを契約してね、といった主旨のアナウンスをしています。参考までに、eMPカードの料金と、PCAの料金を表にして紹介しておきます。

PCA料金表

料金(税込)月額会員プラン都度会員プラン
基本料金1,800円無料
充電料金急速充電(150kW)
75円/分
急速充電(150kW)
200円/分
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急速充電(90kW)
45円/分
急速充電(90kW)
120円/分
登録料金2,000円不要

eMP会員料金

プラン名急速・普通
併用プラン
普通充電
プラン
ビジター料金
月額料金(税込)4,180円1,540円---
都度利用料金
(税込)
【急速】
27.5円/分
---eMP設置90kW以上
77円/分
(5分まで385円)
eMP設置50kW以下
55円/分
(5分まで275円)
提携充電器
充電器により異なる
【普通】
3.85円/分
【普通】
3.85円/分
【普通】
8.8円/分
(15分まで132円)
提携充電器
充電器により異なる
登録手数料1,980円1,980円---

ID.4を購入して、PCA充電が無料&時間無制限の特典は「最大12カ月分」なので、オーナーの方は2年目以降、何らかの会員になるかどうかの決断を迫られることになるでしょう。

急速充電するためと考えてPCAとeMPの料金を比べてみると、eMPの月額料金が高いことがわかります。一方で都度料金の分単価はeMPのほうが安くなっています。

細かいですが、試しに計算してみると。月額料金の差額は2,380円。最大出力90kWの充電器での都度単価はPCAが45円、eMPが27.5円なので、差額は17.5円。136分充電すると、月額料金の差額分となります。つまり、毎月必ず2時間7分以上急速充電をするという方であれば、eMPカード会員になるほうがお得ということですね。

一方で、まだ詳細な制度は決まっていないものの、EV充電のための高速道路一時退出を認める動きも進んでいます。PCAの充電施設数をフォルクスワーゲンの広報ご担当部署に確認したところ、フォルクスワーゲンだけで147拠点147基、アウディとポルシェもあわせたトータルでは、274拠点286基とのこと(2023年7月末現在)。詳細に検証はしていないですが、今後も拠点は増えるでしょうし、いざとなれば「高速を下りてPCAで充電すればいい」という判断ができるようになる可能性は高いでしょう。PCA加盟各社には、ぜひそのようなニーズを想定した拠点拡大を進めてほしいとも思います。

ちなみに、先行して独自急速充電インフラ整備を進めているテスラスーパーチャージャーが、80カ所でもうすぐ400基を超えるところなので、PCAの拠点拡大はかなりハイペースで進んでいると評価できそうです。

ID.4が搭載するバッテリー容量(ネット値)は、エントリーモデルのLiteで52kWh(一充電航続距離435km ※WLTC)、Proでは77kWh(一充電航続距離618km ※WLTC)と大容量です。毎月必ず2〜3回以上は片道200〜300km以上の遠出をするという方でなければ、また自宅など拠点で基礎充電できる場合、毎月2時間以上(1回30分として4回)の急速充電をすることは少ないでしょうから、いざとなれば「eMPネットワークの充電器はビジター利用する」と割り切って、2年目以降はPCAだけでEVライフを楽しんでいくという決断もアリですね。

「274拠点286基」というように、ひとつの販売店に充電器が1基だけという場所が多いのはちょっと悩ましいところですが、PCAネットワークの充電器を利用できるのは、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェという3ブランドのEVのみ。充電待ちに遭遇するケースはまだ少ないでしょう。

ちょっと余談にはなりますが、PCAに加盟する各社販売店の充電器は、販売店がコストを負担して設置しているそうです。利用者限定なので国の充電インフラ補助金は使っていません。グループを挙げて電動化に本気であることの現れであり「早く複数台設置を進めなきゃいけないくらいEVが売れるといいですね!」と、賛辞&エールを送りたいと思います。

それにしても、4,180円というeMP会員の月額料金はやっぱり高いなぁと感じます。小学校の給食費(約4,000円)と同じくらいで、iPhoneの36回分割払いより高い(私の12ProMaxで3,654円ですね)のはいかがなものでしょう。

プアマンの個人的な感覚で恐縮ですが、いろんなサブスクを含めて月額料金として許容できるのは1,000〜2,000円くらいまでかなと感じています。月額料金を設定しているのは「充電インフラの拡充と維持コスト捻出のため」と聞いたこともありますが、これからどんどんEVユーザーが増えていこうとする中で、はたして4,000円を超える月額料金が適切なのか。また、この月額料金がEV普及を阻害する一因にならないかということをちょっと懸念しています。

がんばれ、フォルクスワーゲン。がんばれ、eMP、です。

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文/寄本 好則

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					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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