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国のEV補助金増額で「300〜400万円台」が大激戦/実質価格帯別に選択肢となる車種をチェックしてみた

国のEV補助金増額で「300〜400万円台」が大激戦/実質価格帯別に選択肢となる車種をチェックしてみた

国のCEV補助金が見直され、令和8年(2026年)1月1日以降に車両登録する車種ごとの補助金額が発表されました。普通乗用車(BEV)への補助金額は最大90万円から130万円に増額されて、実質価格のコストパフォーマンスが大幅に向上。新型車の登場も相次いでいて、日本におけるEVの選択肢が急拡大しています。価格帯別に注目車種をチェックしてみました!

目次

EVへの補助金が「最大130万円」に大幅な増額

一般的に「国のEV補助金」と呼ばれるのは、経済産業省が所管する「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」のことを指します。2025年12月18日、経産省が「日米関税協議の合意も踏まえて、種別間の競争条件の公平を図る観点」から補助金額の見直しをすることを発表しました。

経産省発表資料より引用。

ポイントは、従来は90万円だったEV(普通乗用車)への補助上限額が、130万円に増額されること。プラグインハイブリッド車(PHEV)への補助上限額も、60万円から85万円に増額されます。一方で、今までは255万円と大きかった水素燃料電池車(FCEV)への上限が150万円に減額されました。

ただし、経産省によると「車種毎の補助額は、EV等の国内市場が、ユーザーにとって安心・安全で持続的に発展していく環境を構築する観点から、メーカーの取組を総合的に評価し、決定する」ということで、メーカーや車種によって補助金の上限額が異なります。

経産省の発表を受けて、ユーザーからの補助金申請受付など、CEV補助金に関する業務を担当している一般社団法人次世代自動車振興センター(NeV)が公式サイトで「補助対象車両一覧」を更新。銘柄ごとの補助金交付額(車両登録日:R8.1.1以降)を発表しました。

トヨタ「bZ4X」(冒頭写真)は上限最大の130万円、日産リーフやアリアは129万円、年明けに正式発売が予定されているスズキ「eビターラ」は127万円など国産メーカー製のEVへの補助金額が大幅に増加したほか、テスラのモデル3、モデルYも127万円となります。一方、日本国内でBEVの車種拡充を進めてきたBYDの各車種には35〜45万円、EVシフトに前向きなボルボの車種は36〜46万円など、特定ブランドのEVへの補助金がしょっぱい傾向が、より顕著になった印象です。

CEV補助金は「一定期間内に購入した新車」限定であり、一定期間(原則として4年)の保有義務があるといった制約はありますが、新車でEVを購入する方のほとんどが利用するはず。つまり「車両価格ー補助金額=実質的な車両価格」であるということになります。今、日本国内で購入できるEVの車種バリエーションは着実に増えつつあります。はたして、価格帯別にどんなEV車種の選択肢があるのでしょうか。コツコツとリストを作成して整理してみました。

実質価格300万円以下の電気自動車

プラグインを使った表にすると文字組が崩れて見づらかったので、リストの表は画像にしました。写真をクリックすると拡大表示する設定にしておいたので、スマホなどで文字が小さい! って場合は拡大してごらんください。

300万円以下のリストは、乗用車と軽貨物で分けてみました。最安は三菱「MINICAB EV」の186万3000円です。200万円台で購入できるのはやはり軽EVが多いですが、ヒョンデ「INSTER」やBYD「DOLPHIN」もこの価格帯で購入できます。一充電走行距離が400kmを超えると、日常的な場面で電池残量の不安を感じることはほとんどなくなるはず。ヒョンデやBYDのEVではオプション価格の上乗せも少なく、軽EVと比較してコストパフォーマンスは段違いといえます。

ヒョンデ インスター

INSTERは上限58万円の「小型(5ナンバー)・軽自動車」のカテゴリーに分類されて補助金額が56万2000円です。まだ正式発売前であるものの、普通乗用車であるスズキ「eビターラ」の補助金額は127万円となり、ベースグレードの「X」では272万3000円と300万切りを果たすのも注目ポイントです。

スズキ eビターラ

実質価格300万円台の電気自動車

300万円台になると、実用的&魅力的なEV車種がズラリと並び、四捨五入すると130万円レベルの補助金額となったトヨタ「bZ4X」や日産リーフ、スバル「ソルテラ」といった国産車種が顔を出してきます。eビターラは4WDモデルでもこの価格帯に収まるのが強力です。

日産リーフ

スバル ソルテラ

一充電走行距離はWLTCモードのカタログスペックで、この価格帯になると400〜500kmは当たり前のレベル。ソルテラ(ベースモデルのFWD)は746kmという驚きの数字になっています。改めて長距離試乗などで検証する必要はありますが、実用的には500km台後半くらいを期待しておくのがよさそうに思います。

実質価格400万円台の電気自動車

400万円台は質量ともに最激戦区の様相です。今、日本国内で販売台数が伸びているテスラ車が、モデル3、モデルYともに登場し、モデル3では「ロングレンジAWD」までが400万円台に入っています。bZ4XのFWDや、モデルYのRWD、ソルテラの4WDまでが400万円台前半というのは、激しく魅力的だと感じます。

テスラ モデルY

テスラ モデル3

CHAdeMO規格対応の市販EVとして抜群の充電性能をはじめ、しっかり作り込んだ魅力満載のヒョンデ「IONIQ 5」もこの価格帯。

ヒョンデ IONIQ 5

ボルボ「EX30」や、MINIの各車種といった個性的かつファンの多い魅力的なブランドのEV車種も400万円台にひしめいています。また、4WD車種の選択肢がグッと増えていることもポイントです。

ボルボ EX30

MINI COOPER. E

私自身としては「マイカーに400万とか500万は出せないなぁ」というライフスタイルではあったのですが、最近はエンジン車の価格も高くなっています。また「マイカーはもうEVしか買わない」と決めていて、2023年の末に「300万円で300km」を掲げてヒョンデKONAを購入しました。でも、今回の補助金増額の恩恵は強力。最激戦区の400万円台には「400万円で500km超え」を手に入れられる魅力的なEV車種が並んでいて、「これなら、ちょっと頑張っちゃおうかな」という気持ちにもなりそうです。

実質価格500万円台の電気自動車

今回のリスト作成では、CEV補助金を適用しても600万円を超える、メルセデス・ベンツやBMW、アウディといったドイツ御三家の車種や、日産アリアB9といった「高級車」は対象外としています。それでも、500万円台の一覧を見ると高級車の気配が漂っています。

日産アリア

BYD SEAL

テスラのモデルYや、BYDのSEALやSEALION 7といった車種では4WDのグレードが500万円台前半に登場。ボルボ EX30のUltra Twin Motor Performance、日産アリアのB6 e-4ORCEといった4WDの上級グレードも、補助金を活用すると500万円台に入ります。

MINI John Cooper Works Aceman E

また、MINIのJohn Cooper Works Aceman EやCOUNTRYMAN. Eといった個性的な車種もこの価格帯で並びます。

逆にというか、デビュー当時、物欲を激しく刺激されたフィアット500eが500万円台だったことには、「ああ、やっぱりキミは高級車なんだね」と感じた次第です。

フィアット 500e

購入車種検討&補助金活用の留意点

私はかねて、日本でEV普及が進まない最大の原因は「欲しくて買えるEV車種の選択肢が少ないから」と叫び続けてきました。でも、今回リストを作成してみて、実質価格は500万円台以下のEV(グレード別も含む)はなんと67車種もありました。300万円台以下に絞っても、24車種の選択肢があります。2026年にはBYDの軽EVや国内メーカーからさらなる新型EVのデビューが見込まれていて、EVには「欲しくて買える車種がない」という時代は終わろうとしています。

先日、新型bZ4Xの試乗記で「CEV補助金を使えばbZ4Xの「Z」4WDが、ハイブリッド車のRAV4「Z」よりも安くなる」と紹介したように、ライフサイクルコストを考えるまでもなく、エンジン車よりEVのほうがリーズナブルな時代が確実に近付いています。今後はさらに「補助金抜きでもリーズナブル」なEVが増え、日本でEVを拒絶する理由は「EVへの無知」とか「ただの食わず嫌い」ってことになっていくのでしょう。

今回の記事では、できるだけ多くの方に「自分がEVを買うなら」とイメージしていただけるよう、具体的な車種を写真付きで紹介してみました。気になる車種があったら、ぜひ近くの販売店などで試乗してみてほしいと思います。テスラやヒョンデのようにディーラー網を展開せずに日本でEVを販売しているブランドでも、試乗拠点の拡充には注力しているので、公式サイトなどで確認してください。

販売価格は「車両本体価格」です

実際にEVの購入を検討してみようかなという方のために、いくつか留意点を挙げておきます。まず、リストの車両価格は、各ブランドの公式サイトなどで確認した「車両本体価格」です。テスラやヒョンデ、BYDといったEVに特化したブランド車種の多くはほとんどの機能や機器が標準となっているのに対して、ブランドによっては「EVとして必要でしょ」と思われるような機能や機器がオプションになっていて、実際の購入額はもっと高くなるケースがあることに留意してください。

とくに、EVを初めて購入するという方は、自らのEVライフに思いをはせながら、しっかり車種を比較しながらの試乗や見積もり(各社公式サイトでオンライン見積もりできるケースがほとんど)を行うことをオススメします。

新年度には補助金額が変わる可能性があります

今回の試算は、NeVの公式サイトで公表されている「令和8年1月1日以降車両登録分」の「銘柄ごとの補助金交付額」をもとにしています。

例年、年度が変わる4月以降は新たな補助金額が設定されるので、原則として今回の補助金額の適用は「令和8年(2026年)3月31日までに登録する車両」になると思われます。冒頭で触れたように、今回の上限変更は「日米関税協議の合意も踏まえて、種別間の競争条件の公平を図る」大きな観点に基づく施策なので、数カ月で大きく変わることはないと思いますが、購入時、車両登録が4月以降になる場合は、NeVの情報更新に留意してください。

国も補助金は無尽蔵ではなく、期間もいつかは終わります。つまり、上限が大幅に増額された今、EV購入の大きなチャンスといえるでしょう。ひとりでも多くの方が、ライフスタイルのEVシフトを実現してくれることを期待しています。

文/寄本 好則

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この記事を書いた人

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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