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BYD「フラッシュ充電」とヒョンデ「IONIQ V」に注目【北京モーターショー2026レポート】「In China, For China」の現実を再認識

BYD「フラッシュ充電」とヒョンデ「IONIQ V」に注目【北京モーターショー2026レポート】「In China, For China」の現実を再認識

日本のゴールデンウィーク期間に開催された世界最大規模の自動車展示会、北京モーターショー2026(Auto China 2026)は「知能の未来(Future of Intelligence)」をテーマに、自動車の進化と変革のポイントが「EV(電動化)」を基本としてAIを活用した「知能化」へと進んでいることを示しました。「In China, For China」の現実を伝えるレポートです。

目次

「フラッシュ充電」と「IONIQ V」に注目

BYDブースに展示されていた「My Little Pony」。
※冒頭写真はヒョンデのコンセプトカー。

昨年の上海モーターショー(関連記事)に続き、北京モーターショー2026(Auto China 2026)を取材した。今回、おもな取材目的としたのはBYDの最大1500kW出力の「フラッシュ充電(閃充)」のデモと、ヒョンデの新しいグローバルカー「IONIQ V」である。

この2点に絞ったのは、今回のモーターショーでは100を優に超えるワールドプレミア(新車の世界初公開)が行われ、そのうち半数以上が中国メーカーのモデルだという。とても一人で追い切れるものではないからだ。実際、新車発表は181モデルにもおよび、中国メーカーの発表は60%を占めた。

そのため、日本市場に関係の深い2社に絞り、今後の市場動向を探ることにした。

本当に10分でほぼ満充電になる超急速充電

「フラッシュ充電」は、BYDが3月に発表した「スーパーeプラットフォーム」技術のひとつで、最大電圧1000V、出力1500kW級の超急速充電のことだ。この性能をフルに引き出すには、専用のバッテリーやプラットフォームが必要になるため、最大1000Aの充電電流を可能とし、充電レートが10C(1C=容量を1時間で充放電する性能)という「フラッシュチャージバッテリー」も同時に発表された。

「スーパーeプラットフォーム技術」には、最大出力580kWの高性能モーターや量産型自動車用のパワー半導体(SiCパワーチップ)、SiCパワーチップを使ったメガワット級のフラッシュ充電器なども含まれる。

フラッシュ充電やスーパーeプラットフォームについて、EVsmartブログではすでに詳報記事が公開されているので、ここではBYDのディーラーで見せてもらったフラッシュ充電デモをレポートする。

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デモが行われた場所は北京市の郊外、海淀区の各社ディーラーが集中するエリア。周辺は北京市内のハイテク企業などに勤めるサラリーマンの高級マンションが立ち並ぶ。このエリアのひときわ大きな一角にBYD(王朝シリーズ、海洋シリーズ)、ヤンワン、デンツァ、ファンチェンバオの4ブランド、5店舗が入っている。

フラッシュ充電器は店舗の裏手に案内されると、事前記事やネットの投稿画像でおなじみの緑色のT字型の充電器が確認できた。ケーブルは、テスラスーパーチャージャーよりも少し太いくらい。液冷式で最大800~1000Vという高圧のためケーブルも細くできるからだろう。吊り下げ式ケーブルのおかげもあって取り回しは非常に軽い。

フラッシュ充電のうたい文句は「油田同速」「10~70%を5分」「9分で満充電」である。実際のデモでは、プラグを差し込んだら充電器や車内のディスプレイ表示を見るしかないのだが、SOCの残量バーは、WiFi環境での映画コンテンツのダウンロード速度(より少し遅い)か、Windowsの月例アップデートの速度くらいの勢いで増えていく。一般的な充電体験が通用しない速度感だ。

デモで充電した車両はデンツァ「Z9 GT」で、搭載するバッテリー容量は122kWh。この充電スピードを理解するには文章よりも動画を見てもらうのが早いだろう。

結果はうたい文句どおり、SOC10%から70%は5分以内に到達し、10分ほどでほぼ満充電に到達した。充電終了は100%まで設定できるが、回生ブレーキを機能させるため(満充電になると回生が制限される)97%で終了する設定になっていた。充電速度は70%前後まで、開始時の増え方を維持した。70%を超えたあたりから若干速度が落ちてきたものの、圧倒的な充電速度を実感できた。

会場のブースでは、マイナス30度以下の極寒環境でもフラッシュ充電が超急速の性能を発揮するデモを実施。

ヒョンデが中国向けに発表した「惑星シリーズ」

IONIQ V

続いて紹介するのは「IONIQ V」だ。ヒョンデは、このモーターショーに合わせて2台のコンセプトカーを発表している。ひとつは「アース(EARTH)」と名付けられた斬新なスタイルのミニバン。もうひとつは「ヴィーナス(VENUS)」と名付けられたスポーツセダンだ。IONIQ Vは、ヴィーナスをベースとした市販モデルという位置づけになる。

ヒョンデの「惑星シリーズ」ともいえるコンセプトカーは、中国EV市場に新しいデザインを提案する。ブースの説明員によれば「中国のEVは多種多様だが、似たようなデザインであるのも事実だ。ヒョンデは惑星シリーズで、これまでにないEVデザインを中国市場に導入する」という。

アース(EARTH)

地球を意味するアースは、3層のデザインモデルを採用。車体下部は「大地」をイメージした力強いソリッド感のあるつくりとし、インテリアを含む、中間のフロント部からドア、リアにかけて連なる第2層が超近代的なEVをイメージしている。キャビン上部の第3層のコンセプトは「大気」であり、空間や光を演出する。

シートはフローティングタイプであり、コックピットは宇宙船のようなデザインとし、ドアは両開きでセンターピラーがなく開放感がある。

ヴィーナス(VENUS)

もう1台のヴィーナス(金星)のボディ外観は、フロントからリアエンドまでは1本のラインで描かれており、スポーツセダンともクーペともいえる形状だ。フロント部分は横から見るとサメの口のようで「シャークノーズ」と呼んでいた。タイヤハウス、サイドシル、リアバンパーなどには天然石を思わせる模様のカーボン素材を使用している。

コンセプトデザインを実装したIONIQ V

アース、ヴィーナスともにコンセプトカーなので詳細スペックは公開されていない。しかし、ヴィーナスのコンセプトデザインを実装した「IONIQ V」が、2026年中に中国で発売される予定であることが発表された。コンセプトカーの発表は、そのポイントを実装した車両の発売予定がある場合、開発へのフィードバックや市場の反応などを見る「観測気球」としての意味合いがある。IONIQ Vのように市販モデルと同時に発表されるパターンは珍しい。

IONIQ Vの判明している主なスペックは以下のとおりだ。

●サイズ:全長 4,900mm × 全幅 1,890mm × 全高 1,470mm
●ホイールベース:2,900mm(広大な室内空間を確保)
●航続距離:600km以上(CLTC)
●搭載バッテリー:LFP(CATL製)

プラットフォームは、ヒョンデのグローバルカーで採用されているe-GMPではなく、北京汽車(BAIC)の「ArcFox」のプラットフォームを利用して北京現代が設計したものを採用している。ArcFoxは取材で北京滞在中に街中で何台か遭遇した。未来感のある非常に洗練されたデザインのEVだ。

27インチ4K対応のダッシュボードをほぼ占拠する横長一体型スクリーンは、見た目だけではなく、ByteDanceのAIアシスタントやMomentaの運転支援システム(ADAS+)の機能を最大限に引き出すための重要なインターフェイスでもある。

EVグローバルモデルに中国シフトの動き?

トヨタ、日産、フォルクスワーゲンなどの既存OEM勢は、EVに関しての戦略を割り切って考え始めている。世界最大の自動車市場である中国は、既存勢の価値観や戦略が通用しない市場でもある。各OEMはグローバルEVモデルではなく、中国向け現地生産モデルにシフトしている。

中国市場では、数年前から海外OEMやサプライヤーが「In China, For China」を掲げ、現地化をアピールしている。アウディは中国向けのブランドを立ち上げたが、デザインやPRのみの現地化であり、車両そのものは既存モデルを利用した。しかし、これでは中国市場で成功するには不十分であり、各社はさらに戦略を進めつつある。

日産が、中国工場を世界の輸出拠点にすると発表しているように、各社のグローバルカーは、まずEVおよびSDVの先端市場、かつ巨大市場である中国で設計・開発し、それを各国に展開する考え方が徐々に広がりつつある。

IONIQ VはBAICのプラットフォームを流用しており、また中国でワールドプレミアを行ったため、今のところ中国国内専用モデルとして認識されている。しかし、取材した一部の担当者からは「グローバルモデルとして海外展開する可能性はある」との声もあった。

IONIQ Vがグローバル展開される可能性

もちろん中国製造または設計の車両を、EUやアメリカに展開するにはUN/ECE規則やアメリカ基準に規格を合わせる必要がある。各国のデカップリング政策もあり、簡単ではない。しかもヒョンデは独自のグローバルカー向けプラットフォームを持っている。

とはいえ、たとえばBYDは左側通行の国のための右ハンドル車を中国の常州工場に集約して生産し、輸出している。テスラも上海工場製の車両を欧州・アジア太平洋地域に輸出している。そして、グローバルOEMの工場進出を歓迎する国は多い。

どのOEMにとっても中国市場を無視することはできないのは事実だ。ヒョンデが中国製造EVをグローバル展開(日本市場を含む)する戦略を排除する理由はないともいえる。

フォルクスワーゲンは中国向け専用車のプラットフォーム「CMP(チャイナ・メイン・プラットフォーム)」をベースとした新ブランド「ID.AURA」と、第一弾モデルの「T6」を発表した。

筆者が最初に「In China, For China」というスローガンを聞いたとき、欧州メーカーが「日本は重要な市場のひとつである」というのと同じニュアンスを感じとっていた。正直なところ、本音ではあっても社交辞令みたいなものだろうと。

しかし、今回の北京モーターショーでのヒョンデの動き、欧州サプライヤーの展示を見ると「In China, For China」は次のフェーズに入ったと感じる。それは、おそらく「In China, For China, Then to the World」へとつながっていくだろう。

取材・文/中尾真二

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この記事を書いた人

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。「レスポンス」「ダイヤモンドオンライン」「エコノミスト」「ビジネス+IT」などWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアをカバーする。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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