BセグサイズのコンパクトSUV、スズキ初の電気自動車「e VITARA(eビターラ)」で、横浜=奈良往復の約1000kmを長距離ドライブ。EVとしての気持ちよさや航続距離性能はOKながら、充電カード問題で試練に直面。カーライフエッセイスト、吉田由美さんのレポートです。
横浜〜奈良へ、途中充電は2回を想定

こんなに長距離ドライブする予定ではありませんでしたが……。幕張メッセで開催されていたクラシックカーのイベント「オートモビルカウンシル2026」に行ったら、翌日から開催される奈良の薬師寺で開催されるクラシックカーのイベント「コンコルソ・デルガンツァ」にも行きたくなってしまい……、スズキ初の電気自動車「e VITARA(eビターラ)」の長距離試乗を口実(?)に行くことにしました!

コンコルソ・デルガンツァの会場にて。
今回試乗したeビターラは上級仕様のZグレード(2WD)で、61kWhのリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)を搭載し、カタログスペックの一充電走行距離はWLTCモードで約520km。奈良市内の薬師寺までの片道は約500km。とはいえ、実電費や余裕をもって走りきることを考えて、片道2回程度の充電を想定して走ることにしました。
ちなみに、eビターラの最大出力は128kW(174馬力)、最大トルクは193Nmです。前日、幕張メッセから横浜に戻り、出力100kWの急速充電器で充電。バッテリー残量64%/走行可能距離269kmから30分の充電で94%/400kmにして準備万端。翌日に備えました。

「エコ」モード&「イージードライブ」オンで出発
約500kmのロングドライブ。とはいえ、大半が高速道路走行です。アクセルを踏んだ瞬間感じるのは、電気モーターが生み出すスムーズな加速。ドライブモードは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3つ。とりあえず少しずつ全部のモードを試してみましたが、アクセルペダルを踏み込んですぐの反応の違いがわかります。
しかし、高速道路ではACCを設定してしまうので、ドライブモードの違いはほとんど関係ありません。が、電費を考慮して基本は「エコ」。暑い日は「エコ」だとエアコンの消費が抑えられてしまうので、そういった場合には「ノーマル」に設定。

アクセル操作のみで加減速できるワンペダル「イージードライブ」のスイッチもありますが、高速道路走行中は「ワンペダル」オフで走行します。また、回生ブレーキの効き具合は「弱、中、強」でディスプレイの設定メニューから選択できます。ストップ&ゴーの多い市街地ではむしろ積極的に「エコ」「イージードライブ」オン、効き具合も「強」にすると、最強のエコドライブになります。そして、2WDには「スノーモード」があります。これは雪だけではなく、雨が降って滑りやすい路面でも活躍してくれそう。
とても自然でクールなドライビングフィール
印象的だったのがステアリングフィール。軽すぎず、重すぎず、ちょうどいい手応え。挙動が自然で扱いやすく、直進安定性も高い。長距離移動では、本当に楽ちんでした。ただ、全体的な操作フィーリングとしては、低重心で安定している反面ドライバーとの対話感はよくいえば穏やか、悪くいうと少しクールな印象。
最高出力128kW、最大トルク193Nmというスペックから想像していた以上に、体感は軽やか。高速道路での合流や追い越しも、とにかく自然。
しっとりした乗り心地は、このクルマの大きな魅力。ただ、荒れた路面や段差などでは約1.8トンという車重を意識する場面もありました。大きな不快感ではありませんが、もう一段しなやかさがあれば、さらに完成度が高まるはず。このあたりは、今後の進化に期待したいポイントです。
質のいい静かさが印象的でした

Zグレードの内装は、なかなかの上質さ。ブラウンのソフトパッドやピアノブラックの加飾など、しっかり作り込まれています。ただ、価格が約450万円ということを考えると、スイッチ類や素材の組み合わせに、もう少しだけ上質感が欲しい部分も。
しかし、なんといっても印象的なのが静かさ。それも、質のいい静かさを感じました。長距離を走るほど、この静粛性が効いてきます。音や振動の激しさによって、明らかに疲れ方が変わりますから。
スズキの充電カードが浜松SAで使えない?
カタログスペックの一充電走行距離は520km。ロングドライブでもかなり安心できるかなと。
ただ、今回のように片道約500kmの道のりで、さらに高速走行中心だと実際の航続距離はカタログスペックの80%程度と考えておくのが無難。そして、ある程度余裕をもって急速充電を行うために、今回は途中2回の充電を想定しました。ことに、新東名高速道路は御殿場から浜松いなさJCT(ジャンクション)間の約145kmは、最高速度120km/hで、さらにアップダウンが大きい区間。大きなエネルギー損失が予想されます。
とはいえ、土曜日の朝でしたが、交通量はそれほど多くはなかったので、ACC(アダプティブクルーズコントロール)を使って快適&安全に走行できました。

横浜から約220kmを走り、浜松サービスエリアで最初の休憩&1回目の充電。
メーターの表示は、電池残量15%/航続可能距離64km。最大出力90kWの急速充電器で30分充電して、63%/249kmに。
ところが、この浜松SAの急速充電ステーションで想定外の問題に直面しました。試乗車には「スズキ充電サービス」の充電カードが用意されていたものの、このカードは「エコQ電」という充電サービスに対応していて、高速道路SAPAに設置されているe-Mobility Power(eMP)ネットワークの急速充電器のほとんどでは使えないことが発覚。

エラー表示例。
やむを得ず、掲示されていた案内に従ってビジター充電(eMPネットワークの充電カードを使用せずに充電器を利用すること)。スマホでQRコードを読み込み、クレジットカード番号を入力して充電を開始。しかし、ビジター利用なので90kW器の場合「1分99円」という高額!
それにしてもスズキのお膝元である浜松で使用できないとは……。トホホな気分。
しかし、待ち時間にチラッとサービスエリア内を探索して、プレミアムメロンパンをGET。
【関連記事】
4WDも選べるスズキのEV「eビターラ」長距離試乗レポート/庶民の味方のフラッグシップ~EVとしての実力は?(2026年2月28日)
一般道のコンビニ90kW器でも充電カードは使用不可
さらに亀山から先は山道に入るため、亀山周辺で充電器を探したところ、亀山ICを降りて数kmのコンビニなら出力90kWの急速充電器で、なおかつエコQ電カード(=スズキの充電カード)が使えそう。
しかし、行ってみるとエコQ電カードは使用できず。ここでもまたQRコードを読み込んでの支払い。13%/57kmから30分の急速充電で62%/243kmに。充電量は29.29kWhで、一般道だと、ちょっとだけ充電料金が安い(1分77円)。
というわけでさらに先を急ぎ、13時ごろ、目的地に到着。想定通り2回の充電でした。
夜の急速充電器探しをするハメに……

薬師寺でのクラシックカーイベント「コンコルソ・デルガンツァ・ジャパン」はお天気にも恵まれました。春の太陽の下で70台の選ばれたクラシックカーを見るのも楽しいけれど、夜も見どころたっぷり。国宝・薬師寺とのコントラストは素晴らしいものでした。ガラパーティや、レッドカーペットをランウェイする姿は、まさに映える演出。

そして私は日帰りの予定でしたが、主催者様のご厚意でキャンセルが出たホテルの部屋を譲っていただき、そのまま奈良泊。
しかし、その前に私はやることがあります。宿出発までにできるだけ多く充電しておくこと。宿泊するホテルにEV用の充電器はなく、奈良から亀山に向かう道路は、大きな街を通らないため。
調べてみると奈良市内でエコQ電カードが使えるのはわずか2箇所のみ。奈良県庁内の急速充電器が使えるとエコQ電のホームページに書いてあり、宿泊するホテルからもそう遠くないので行ってみましたが……。到着すると真っ暗。街灯もない場所で、夜に急速充電をする人がいないことを感じさせます。しかも、肝心のエコQ電カードがなぜか使えない……。

ホテルにEV用充電器があれば、こんな苦労はしなくて済むのですが……。
どうやらここの急速充電器は最近入れ替えられたようです。仕方がないので、近くで90kWの急速充電器を探したけど辿り着けず。隣のコンビニでかろうじて50kWの充電。しかもこれまで同様、QRコードを読み込むスタイル。なかなか面倒くさい。
ここは32%/127kmから19分の充電で、57%/233km。充電量は15.2kWhで、この日は終了。
復路はちょっとヒヤヒヤの急速充電2回

清水PAで復路2回目の充電。
翌朝は出発前に薬師寺に行き、みなさんにご挨拶をし、同日〆切原稿があったため、早々に会場を後にしました。が、この後も2回の充電が待っています。
まずは刈谷PAで急速充電。90kWで30分。残量10%ぐらいで充電を促すマークが出るも、ギリギリまで攻めて電池残量は8%/31kmでピットイン。気温は25℃。30分後、56%/218kmまで回復。
さらにもう一回。清水PAで充電。こちらも90kW。さらにヒヤヒヤしながら5%/45km。気温は21℃。30分の充電で51%/205kmに回復。充電量は29.2kWh。
その後も、海老名SAで充電をしようと思い、ピットインしましたが、工事のため50kWの急速充電器しかなく、充電せずにそのまま横浜まで戻ることに。
目的地を音声で「メルセデス・ベンツ横浜中央」に設定しようと思ったら、どうやらeビターラでは設定できず。うーむ、輸入車メーカーは設定できないのでしょうか? 謎……。
充電スポットは数とともに使いやすさが大切

横浜に到着し、メルセデス・ベンツ横浜中央にて100kWの急速充電を使用。17%/68kmから始めて30分で69%/271km。さらに追加で24分充電し、93%/365kmに。充電量は29.2kWh。ちなみにここは、エコQ電カードが使用できるし、急速充電器が2台あって充電待ちになることが少なく安定して充電もできるし、ストレス無し。こんな感じで使えるところがもっとあればいいのに。
それにしても今回、初めて充電カード問題に遭遇しました。今後はもっと充電スポットが増えるとは思いますが、自分の行動パターンと予算に合わせて充電カードを選ぶことをおすすめします。
ちなみに2日間の走行距離は1063km。eビターラの試乗距離は、9日間で1790kmにも及びました。

今回も勉強になりました!
取材・文/吉田由美






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