和歌山県の高野山で行われたBYDのバス「K8 2.0」の納車式を取材するため、BYD SEALION6(シーライオン6)で往復しました。往路はAWDで電費と燃費に注目。復路はFWDに乗り換えて、可能な限りEVとして走ってみました。
往路はAWDモデルで快適なロングドライブ
以前、シーライオン6は試乗しているのですが、AWD(四輪駆動)モデルは初試乗。加えて、前回はメディア向け試乗会で短時間の試乗だったため、長距離を試すことはしていませんでした。今回は片道500kmオーバーのロングランです。
まず、走りのフィーリングや機能からレポートしていきましょう。往路の試乗車はAWDです。ステアリングにはチルト&テレスコピックの調整機構が付き、シートも運転席は8ウェイなので、ドライビングポジションはかなり正確に合わせられます。シート形状からはさほどスポーティさを感じませんが、しっかりしたホールド性が感じられます。
BYDオートジャパンの本社がある横浜から本日の宿泊地である和歌山県紀の川市まで、一般的なルート検索で表示される距離は約530km、高速道路を中心にした経路で移動します。試乗車は前日から使用していたこともあり、出発時に表示されていたバッテリー残量(SOC)は93%、ガソリンによる航続距離は818km、電気も合わせると894kmとなり、目的地までの移動には十分です。

走行時のエアコンは23℃のオート設定でオン、回生ブレーキは強、「目標SOC設定」は25%でスタートしました。目標SOC設定というのは、SOCが何%になったらエンジンを始動して充電を始めるかという値で、25%がもっともバッテリーを多く使えるもので25%未満の設定はできません。
往路では強い雨に見舞われることもありましたが、走りは安定したものでした。駆動方式がAWDであることも手伝って、高速での安定性は抜群。新東名高速道路には120km/h規制の区間も多く、ACCを120km/h設定しての巡航も快適です。
先進運転支援の制御に感じた「○や△」
ただしACCの動作には若干の不満もありました。まず、先行車に追いついたときの減速の立ち上がりです。もう少し早い(近づき過ぎない)タイミングで減速を開始し、初期の減速を強くして欲しいのです。今の減速感は「弱-弱-弱-弱-強-強」といった感じですが、「弱-弱-中-中-中-中」という具合で効いてくれると安心感が高くなります。
またACCを作動させて巡航している際に微妙な加減速を感じることがあります。おそらくACCが速度を一定に保つために加速と減速を繰り返しているのだと思いますが、この制御はもう少し緩くていいと思います。例えば101km/hになったときに即座に100km/hに戻さなくてもいいのです。たとえば95〜105km/hなど実際の速度幅にもう少し余裕をもって、緩やかに設定速度へ戻してくれた方がずっと快適です。
レーンキープ機能はICC(インテリジェント・クルーズ・コントロール)の名前で呼ばれ、ACCとは別に設定されたスイッチで起動します。ACCやICC使用時にウインカーを作動させても加速はされず、とても使いやすいと感じました。
一部車種ではACCやレーンキープ機能を使用している際にウインカーを作動させると、クルマ側が追い越しをするのだろうと判断してすぐに加速し始めることがありますが、シーライオン6はそうしたこともなく淡々と同じ速度で走り続けます。もし追い越しで加速が必要ならドライバーが操作します。そもそも車線変更はウインカーを作動させてから3秒後以降に動作に入るのが法規に沿った方法なので、ウインカーを作動させた瞬間に加速されても困ってしまいます。
また、短時間の試乗ではあまり気にならなかった改善を期待したい点がありました。それは、前席用USBポートの位置です。シーライオン6のフロントにはタイプA、タイプCがそれぞれ1口ずつ用意されています。シーライオン6のセンターコンソールはインパネと一体化されていて、その下の部分にUSBポートが配置されています。ここにUSBケーブルやUSBメモリーを挿すのが非常に難しく、もはや苦行レベルなのです。
もっともセンターコンソールにはワイヤレス充電が備わっていますし、Apple CarPlayやAndroid Autoでスマホをつなぐこともできるので、不便を感じない人もいるでしょうが、私のスマホはワイヤレス充電に対応していませんし、USBメモリーに音楽データを入れていたので、けっこう不便だと感じました。
パーキングエリアの充電スポットで残念な光景を目撃
和歌山への移動途中、伊勢湾岸自動車道の刈谷パーキングエリアで休憩。昼食をとるタイミングで急速充電器に接続しました。大雨が降っていたのですが、運のいいことに急速充電器とフードコートのある建屋との距離が非常に近く、しかもフードコートから充電スペースを確認できました。シーライオン6はスーパーハイブリッド(PHEV)なので、充電しなくても走れます。もしピュアEVが充電に来て待機するようなことがあれば、シーライオン6を移動させて充電スペースを譲るつもりでした。

中京地区に入っていたこともあり、昼食は「ひつまぶし」を選択。パーキングエリアの食事としてはちょっと高級ですが、満足するには至らない味でした。この日はゴールデンウィーク直前ということもあったのか、道中も交通量は少なく、またパーキングエリア利用者も少ない印象で、充電ステーション(90kW/4口)には空きスロットもいくつかありました。
ところが、そこでとても残念な光景を見かけてしまったのです。充電スロットにやってきたリーフが充電ケーブルにつなぐことなく駐車だけで利用。乗っていた男女がトイレに入って行きました。充電スペースには「EV優先」や「EV専用」という文言を見かけますが、それはEVという車種が優先や専用という訳でありません。

さて、この日は大雨だったため、食事休憩(&急速充電)を終えた車内の窓がすべて曇っていました。前後ともにデフロスターを全開にして曇り取りをしますが、なかなか解消しません。のちほど調べてわかったのですが、これは多くのBYD車で起きている現象とのこと。充電時や充電量に余裕があるときは、エアコンを作動させたまま駐車するほうがよさそうです。ただしPHEVの場合はエンジンが始動する可能性があるので、注意が必要でしょう。
往路走行の電費と燃費を確認
途中、事故による大渋滞に遭遇しましたが、低速でもACCが作動するので、さほど苦にはなりません。シーライオン6は「シリーズ・パラレル」方式(※)のPHEVで、低速走行ではシリーズ状態です。つまりSOCが下がっていてもエンジンを始動してモーター駆動なので、走りがスムーズです。低速走行の場合はSOCが設定値25%を下回ることもあり、今回も17%という数字を示したこともありました。
※編集部注:EVモード(モーターだけで駆動)、シリーズハイブリッドモード(モーターで駆動してエンジンで発電)、シリーズ・パラレルモード(モーターとエンジンを併用して駆動)の3つを自動で切替。

往路の総走行距離は595km(前日走行分を含む)で、給油量は34.7リットル、充電は1回でSOC42%分でした。シーライオン6のバッテリー容量は18.3kWhなので7.9kWh分です。前日のスタート時は満充電だったので75%(13.7kWh)の電気も使っています。これを合計すると使った電力量は21.6kWh です。
横浜スタート時のSOCは93%でメーターに示された航続距離は894km、うちガソリンで走れる距離は818kmなので、電気では76kmを走れるという計算になります。この76kmは目標SOC設定の25%までの値なので68%分(12.4kWh)です。この数値から計算すると電費は6.1km/kWh。21.6kWhの電気を使ったので、電気で走った距離は131.8kmでした。
さらに、総走行距離の595kmから131.8kmを引くと463.2km、給油したガソリン量(34.7L)で割るとエンジン走行分の燃費は約13.3km/Lです。
シーライオン6はDセグメントのクロスオーバーSUVです。PHEVとして考えると納得レベルの燃費と言えるでしょう。
高野山へのワインディングロードで感じたこと

さて、2日目は高野山で電気バス「K8 2.0」の取材を行いました(関連記事)。高野山へのアクセスはなかなかタフなワインディング。きつい勾配の区間もありましたが、モータートルクには不満など感じませんでした。上り坂ではスムーズな加速感を堪能し、下り坂では回生ブレーキで電力を取り戻せるのが、電気自動車の醍醐味です。
ただ、試乗会のときにも感じたのですが、タイヤの性能が今一歩で、ワインディングなどではもう少しグリップの高いタイヤであると走りが引き締まると感じました。
https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/byd-k8-electric-bus-koyasan-world-heritage-route/
復路はできるだけ「電気で移動」を目指す

3日目はクルマをFWDに乗り換えて東京(ゴールは東名高速・港北パーキングエリアに設定)を目指します。復路のテーマは「電気だけで移動するとどうなるか?」です。以下のような条件を付けて、充電を繰り返しつつ東京を目指しました。
①「目標SOC設定」は25%。
②50km/h規制などがない場合は80km/hのACC走行。
③遅い先行車がいる場合はある程度までは加速して追い越す。
④基本はSOCが25%となりハイブリッド走行になったら次の充電スポットで充電する。
⑤ピュアEVに配慮して、充電区画の空きがなくなったら速やかに充電を中止して移動する。
宿泊していたホテルルートイン紀の川にはエネチェンジの6kW普通充電器が2口設置されていました。シーライオン6のバッテリー容量は18.3kWhでSOC25%までしか使えないので、3時間もつないでおけば確実にフル充電になります。今回の取材にはシーライオン7など複数台のBEVとPHEVが参加していたので、充電器をうまく使い分けました。私が復路で使用したシーライオン6のSOCは出発時100%です。
道の駅の44kW器で最初の充電

車載ナビの案内に従って走行すると名阪国道走行中にSOCが25%となり、メーター内にHEVのマークが点灯しました。HEVマークが点灯したということは、エンジンが始動しているわけですが、振動やノイズはペースが早い走行では気づかないレベルです。
名阪国道沿いの「道の駅 針T・R・S(針テラス)」という施設を発見。急速充電器のマークを確認できたので、最初の充電となりました。
ここの充電器はかなり古く、モニターも曇っていました。さらに、認証がうまくいかず何度かやり直しとなりました。それでもなんとか充電に成功。出力は44kWですが、シーライオン6の受電性能が18kWなので何の問題もありません。

私は試乗車に用意されていたe Mobility Power(eMP)の充電カードを利用しましたが、ビジターでも1回(30分)を500円で充電可能とのこと。今の時代、44kWはちょっと残念な出力ですが、受電性能がそれほど高くないEVやPHEVなら30分で500円というリーズナブルな価格設定はうれしい限りです。
ここは充電器が1基1口しかないため、EVが来たときに備え充電器から離れずに待機して終了を待ちました。針T・R・Sに流入する際に回生されたのでしょう。充電開始時のSOCは26%になっていて、30分の充電で67%まで回復しました。このタイミングで使ったガソリン量は約0.5リットルでした。
鈴鹿市内の名店で「ひつまぶし」のリベンジ

午前11時過ぎ、針T・R・Sを出発して東に向かいます。時間の関係もあり車内での話題は昼食をどうするかで盛り上がります。次に充電を行えそうな場所と食事を組み合わせると、どうしてもサービスエリアやパーキングエリアになります。そうした施設で食事をしたい方もいるでしょうが、私はできればしたくないのです。そうした思いをもちながら、「どこで食べるのが美味しいかなあ?」と考えて思い出したのが、鈴鹿サーキットに通っているときに利用していた鈴鹿市の鰻屋さん「きみのや」でした。名阪国道から国道1号などを経由して「きみのや」を目指しました。

往路で満足できなかったリベンジで、「きみのや」でもひつまぶしを注文。往路では2300円程度だったのですが、こちらは3400円とちょっと高め。それでもひつまぶしをこの値段で食べられれば十分にお得な感じです。しかも、圧倒的に美味しいのであります。
「きみのや」を出発した際のSOCは30%。ナビが誘導する伊勢湾岸道のみえ川越インターを目指し、途中で充電しようとしましたがナビが誘導する23号線沿いには急速充電器はなく、国道1号方面に回らないとなりません。そうした事情もあり、一般道での充電はあきらめ高速道路に入ってから充電とすることにしました。目指すは湾岸長島パーキングエリアです。
充電スペースへの案内看板が隠れているなんて……

湾岸長島パーキングエリアに入ったときにはSOCは25%でした。ここでまたひどい光景を目の当たりにします。パーキングエリアに入って最初の分かれ道にEV充電スペースの案内看板があるのですが、その看板が仮設のデジタルサイネージに電力供給するためのソーラーパネルで隠れてしまっていました。どっちに進んでいいかわからず、結局クルマから降りて確認するハメになりました。
湾岸長島パーキングエリアではSOCを65%まで復活させました。お土産として伊勢名物の「赤福餅」を買おうとしたのですがここの売店で扱っていないとのこと。次の刈谷パーキングエリアでは売っているということで刈谷パーキングエリアにも寄り、SOCは40%までしか減っていませんでしたが、せっかくなので急速充電器に接続して80%まで充電しました。

その後、浜松サービスエリア、静岡サービスエリアで充電(基本的には各スポットで約30分)。次の足柄サービスエリアで食事をしながら充電するか? それとも高速道路を降りるか? と同乗者と話し合い、私たちが選んだ答えは後者でした。

静岡サービスエリアにて。
御殿場インターでいったん高速道路を降りて食事をし、ふたたび御殿場インターから流入。足柄サービスエリアで最後の急速充電を行って、ゴールに設定した港北パーキングエリアへ到着しました。
すでに暗くなっていた足柄サービスエリアでの気づきをまたひとつ。充電口のリッドを開けても照明が点かないのです。そのため充電プラグを差し込みづらいのです。そして、なんとプラグを差し込むと照明が点灯します。「充電していますよ」とアピールしても仕方ありません。点灯するならリッドを開けたときで、プラグを差し込んでからは消灯してもかまいません。

6回の充電と4.8Lのガソリンで507kmを走破

出発時「0」にリセットしたトリップメーターは507km。急速充電は6回(約180分)で49.9kWh。使用したガソリン量は4.8Lでした。
急速充電の料金はあまりにも複雑なので「eMPの充電カードを所有していないユーザーが従量(kWh)課金で利用した場合」を想定した参考値になりますが、利用機会が多かった高速道路における従量課金のビジター料金である143円/kWhで計算すると充電代が7136円、ガソリン代が169円/L(紀ノ川での価格)として4.8Lで811円になりました。
また、ルートイン紀の川での普通充電料金は10分55円なので、3時間(180分)として990円。復路のエネルギーコスト合計は8937円です。
一方、往路のガソリン代は5864円で、電力使用量が21.6kWhなので143円/kWhで試算すると3089円。合計で8953円。なんと、ほぼ変わらないという結果になりました。しかし充電時は1回が約30分なので6回充電で約3時間を要しています。やはりPHEVは長距離移動で充電するのはムダが多いということが確認できました。
eMPの会員になれば急速充電器の都度利用料金は27.5円/分と安くなりますが、4000円を超える月額会費も必要です。先だって充電できた電力量に応じた「kWh(従量)課金」の導入開始が発表されましたが、高速道路のビジター利用の場合は「143円/kWh」と高額(一般道は110円/kWh)で、対応している充電器が限定されています。
高速道路では現状eMPだけですが、一般道沿線で急速充電のサービスを提供している事業者はますます多様化していて料金システムもさまざま。PHEVの場合は、充電器の選び方によっては、電気で走ろうとするとかえって出費がかさむこともあるでしょう。私自身、本音としては「よくわからない」状態ですが、どこの充電カードを利用するか、どの充電器を利用するかが、PHEVを気持ちよく乗りこなすためにとても重要なポイントであることを実感できました。

港北PAにゴールした筆者とシーライオン6。
また、高速道路はいったん降りると基本的には料金がかさむようになっています。各インターチェンジの料金所で人がチケットを渡し、料金を徴収していた時代ならこうした料金体系にすることもわかりますが、ETC時代の今ではおかしな話。高速道路上のサービスエリアやパーキングエリアでは、急速充電料金も食事代もガソリン代も割高であることも、個人的には合点がいかないポイントです。電動化が進むなか、このあたりも含めてユーザー本位でしっかり正常化していかないと「日本のモータリゼーションは崩壊してしまうのではないか」という危機感を抱くロングドライブとなりました。
取材・文/諸星 陽一






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