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東名300km電費検証【28】プジョー『E-3008』/冬季でも約400kmの航続距離性能を確認

東名300km電費検証【27】プジョー『E-3008』/冬季でも約400kmの航続距離性能を確認

市販EVの実用的な電費(燃費)性能を確かめる「東名300km電費検証」シリーズ。第28回はプジョー『E-3008』の結果をお伝えします。外気温10℃以下の環境でも実質約400kmの航続距離性能を確認。プジョーの誠実さを感じました。

【インデックスページ】
計測方法や区間などについては、下記インデックスページ参照。
電気自動車の実用燃費「東名300km電費検証」INDEXページ/検証のルールと結果一覧

目次

100km/h巡航で約400kmの航続距離性能

日本に導入されているE-3008は、GTアルカンターラパッケージの1グレードのみです。基本的なスペックを確認します。全長4565mm、全幅1895mm、全高1665mm、ホイールベース2740mm、車重2160kg、モーターの出力は157kW/214ps、トルクは343Nm、バッテリー73kWh(ネット値)、一充電走行距離604km(WLTP、EPA換算推計値は483km)、車両本体価格は760万円(税込)、国のCEV補助金は89万円(2026年4月現在)です。「試乗レポート」は先行して紹介しています。

今回の注目点は、プジョーがフラッグシップと謳うE-3008は冬季(外気温10℃以下の環境下)にどれほどの記録を残すのか、ステランティス傘下の全ブランドの中で初めてCHAdeMO急速充電性能で50kWを超え160kWとされる充電性能はどうなのか、同じくらいの大きさのライバルと比較するとその性能はどうなのかといったポイントです。

E-3008の一充電走行距離604kmを、バッテリー容量の73kWhで割った目標電費は8.27km/kWhになります。2026年3月某日、計測日の外気温は最高14℃、電費検証に臨んだ深夜は7~9℃でした。

各区間の計測結果は下記表の通り。目標電費を上回った区間を赤太字にしています。

【今回の計測結果】

往復の電費は、各区間の往復距離を、その区間の往路と復路で消費した電力の合計で割って求めています。

目標電費を超えたのは、下り勾配で電費が伸びやすい往路のD区間、復路のBとC区間の3区間でした。往復では80km/hが6~7km/kWh台、100km/hが5km/kWh台、120km/hが4km/kWh台になりました。

各巡航速度の電費は下表の通りです。「航続距離」は実測電費にバッテリー容量をかけた数値。「一充電走行距離との比率」は、604kmの一充電走行距離(目標電費)に対しての達成率です。

各巡航速度
の電費
km/kWh
航続距離
km
一充電走行距離
との比率
80km/h7.11519.486%
100km/h5.45398.066%
120km/h4.40321.053%
総合5.45397.866%

(注)80km/hの電費は、80km/hの全走行距離(97.4km)をその区間に消費した電力の合計で割って算出、100km/hと120km/h、総合の電費も同じ方法で求めています。

総合電費の5.45km/kWhで計算すると、満充電からの実質的な航続距離は約400kmになります。100km/h巡航も同値になりました。そして80km/h巡航はカタログスペックの一充電走行距離を14%下回る約520kmになりました。

「東名300km電費検証」企画の独自の基準として、この表の100km/h巡航と総合の達成率が90%台だと優秀、100%を超えると相当優秀な実測電費性能であると判断できます。E-3008はどちらも66%でしたので、優秀と評価するのは少し難しい結果でした。冬季の実航続距離は3割減ほどと見積もっておいた方が良いかもしれません。

巡航速度比較では、80km/hから100km/hに速度を上げると23%電費が悪化します。さらに120km/hにすると38%減になります。反対に120km/hから80km/hに下げると航続距離を1.6倍(162%)に伸ばすことができる計算です。

ベースの速度比較する速度比率
80km/h100km/h77%
120km/h62%
100km/h80km/h131%
120km/h81%
120km/h80km/h162%
100km/h124%

ここで一充電走行距離が500km〜600kmほど、輸入車、2輪駆動、計測時の気温条件がほぼ一緒、という条件で「メルセデス・ベンツ EQA250+(以下、EQA)」、「ボルボ EX30 Ultra Single Motor Extended Range(以下、EX30)」、「ヒョンデ KONA Lounge(以下、KONA)」の記録と比較してみます。なお、EQAは2024年5月、EX30は2024年4月、KONAは24年3月の計測で、車両のスペックは当時のもの、車両本体価格とCEV補助金は2026年5月現在の金額です。

E-3008
FWD
EQA
FWD
EX30
RWD
KONA
FWD
全長(mm)4565446542354355
全幅(mm)1895183518351825
全高(mm)1665161015501590
車重(kg)2160202017901770
Cd値0.280.280.280.27
システム出力(kW/ps)157/214140/190200/272150/204
システムトルク(Nm)343385343255
バッテリー容量(kWh)7370.56964.8
一充電走行距離(km)604591560541
目標電費(km/kWh)8.278.388.128.35
車両本体価格(万円、税込)760777579489.5
CEV補助金89863647
実質価格671691543442.5

各車の電費と航続距離に加えて、総合のみ一充電走行距離との比率を加えた表が下記です。

車種E-3008EQAEX30KONA
気温7〜9℃16〜20℃9〜13℃7〜9℃
80km/h電費7.117.646.866.55
航続距離519.4538.5473.10424.7
100km/h電費5.455.665.265.48
航続距離398.0399.2363.10355.0
120km/h電費4.404.654.644.59
航続距離321.0327.8320.50297.5
総合電費5.455.755.455.43
航続距離397.8405.4375.90352.1
一充電走行距離との比率66%77%73%65%

E-3008は全長が最も長く、最も重いのですが、ライバル達と同等の記録を残してみせました。EQAは気温が最低でも16℃と高い影響があったかもしれませんが、全ての項目でトップを記録、総合では唯一、航続距離の400km超えを達成しました。

EX30のみが後輪駆動(RWD)、E-3008よりも370kg軽いのですが、最もパワフルなことが響いたのか、電費面ではその軽さを十分に活かしきれない結果となりました。KONAは軽い車体とCd値の0.01のアドバンテージを活かし、ライバル達と比肩する総合電費を記録する性能を持ち、かつ圧倒的なコスパの良さが特筆に値します。

この4モデルの総合の比率は65%から77%でした。このクラスの現状のBEVの性能は、冬の航続距離としてはカタログスペックの一充電走行距離から3割減くらいと言えるかもしれません。寒さに強いバッテリーや次世代の省電力暖房技術などの登場により、冬でもカタログスペックとの差が一段と小さくなっていく未来に期待したいと思います。

フラッグシップなのにステアリングのトルクセンサーが残念

東名300km電費検証では、毎回同じ区間を3つの速度で定速巡航するため、巡航中は基本的にACC(アダプティブクルーズコントロール)を使用します。さらに交通量の少ない深夜に走行することで、渋滞に遭遇する可能性を極力低下させ、ブレが出ないよう留意しています。

E-3008のACCはステアリングホイール左スポークのスイッチで操作します。設定速度は+と−のスイッチを押すと1km/hごとに、長押しすると5km/hごとに変わります。その右スイッチで先行車との車間距離設定を3段階で調整できます。左側の一時停止と再生のようなマークがあるスイッチは、文字通りACCの停止と再開を担っています。
ACCによる先行車への追従時の車速調節制御は上手いのですが、停車は少し強めのかっくんブレーキで停まることが残念でした。

LKA(レーンキープアシスト)は、車線維持能力が高く、車線内で右に左にと動くこともなく快適で、感覚的にはほぼ自動運転レベルを実現しています。この検証コース中で最もきついカーブである鮎沢PA手前の300Rも難なく曲がっていき、その後の左右連続カーブも車線を踏み外すことはありませんでした。

さらにACCを開始した際に走行している車線内位置をキープする「レーンポジショニングアシスト」が秀逸です。例えば左車線(第一走行車線)を走っている時は左寄り、真ん中の車線(第二走行車線)を走行する時は車線の中央でACCを開始・再開することにより、隣車線の車両との間隔をなるべく大きく保つことができます。この機能があり、かつ前述のように走行車線内で左右にふらつくこともないので、とくに大型トラックの隣を走っている時に、間隔が近くなって怖い思いをすることなく、安心して走行できました。

このように優秀なE-3008ですが、とても残念なのはドライバーがステアリングを握っているか否かの判定がトルクセンサーによるものになっており、頻繁に「ハンドルから手を離さないでください」の青色の注意表示が出ることです。ハンドルに手を添えていても状況次第では10数秒ごとに警告が表示されるため、それなりのストレスに感じます。

この注意表示を見逃したままにするとさらに約10秒後にオレンジ色の「ハンドルを保持してください」の警告表示が警告音とともに出ます。これらの表示を消すためにはステアリングを少し左右に振る必要があります。ステアリングを握っているのに、握っていないと判断され、その解除のために滑らかな走行を阻害する左右振りをしなければなりません。E-3008はプジョーのフラッグシップでもありますので、接触センサー(静電式)の採用、もしくはトルクセンサーの高感度化により、ストレスがより少なくなる性能を備えて欲しいと感じました。

スピードメーター表示とGPSによる実速度の差は2~3km/hと小さめで、実速度を100km/hにする場合は、メーター速度を102km/hに合わせました。

80km/h
巡航
100km/h
巡航
120km/h
巡航
メーターの速度
km/h
83102123
ACC走行中の
室内の静粛性 db
60〜6761〜68
新東名62
62〜65

巡航時の車内の騒音(スマホアプリで測定)は、これまで最大音量のみでしたが、今回より各巡航速度の最低音量も可能な限り測定・記載し、静粛性の高さを静かさの方でも示せていけたらと思います。

100km/h巡航では御殿場ICと駿河湾沼津SAの区間で新東名を走ります。新東名は東名よりも路面がきれいなため、分けて記載しています。音量を言葉で表すと64dBまでは「サー」で十分に静か、65〜69dBが「ザー」で少しうるさい、70dB以上は「ゴー」で声を張らないと会話が難しいレベルというような感じです。

各速度の騒音は上の表の通りで、電費比較であげたライバル達と比較すると、EQAとは同等、EX30とKONAは一部70dBを超えていましたので、この2車種よりは少し静粛性が高いという具合でした。

風切り音は80km/hではほぼ聞こえないレベル、聞こえるのはタイヤのパターンノイズのみという感じです。100km/hはドアミラーあたりで「かさかさ」と静かに鳴りはじめ、新東名の120km/hではそれが「ガサガサ」と大きくなり、場合によってはパターンノイズよりも風切り音の方が大きく感じられたほどです。

150kW器30分で34.4kWhを充電

この写真は駿河湾沼津SA下りでの1枚です。今回はここでの充電は行いませんでしたが、誰も充電していませんでしたので、写真だけ撮らせていただき、すぐに一般駐車エリアに移動しました。

E-3008はステランティスグループのEVとして初めて、チャデモ規格で最大160kWの急速充電性能を与えられたことがトピックの一つです。駿河湾沼津SA上りにおいてSOC 26%から開始した150kW器での30分の充電で、34.4kWhをチャージできました。EQA(充電性能は最大100kW)は150kW充電器30分で41.52kWhをチャージできたので、これ以上の結果を期待していましたがEQA超えはなりませんでした(外気温が10℃程度低かったので、あくまでも参考値です)。

充電後、E-3008のSOCは71%、メーター表示の航続距離は194km分が増えて、291kmになりました。34.4kWhは総合電費の5.45km/kWhで計算すると約187km分になります。

充電結果

●クリックすると拡大表示します。
※「外気温」は車内メーター表示の温度。
※「充電時最大出力」は、車両もしくは充電器で確認できた数値。
※「航続距離表示」は、エアコンオン時に確認。
※「充電器表示充電電力量」は充電器に表示、もしくはアプリなどに通知された電力量。表示がない場合は不明としています。

E-3008には急速充電をより効率的に行えるように事前にバッテリーを温める「バッテリープレコンディショニング」機能があり、これを駿河湾沼津SA上りに到着してから充電開始前までに15分ほどオンにしました。しかしID. Buzzのように「終了まであと何分」のような表示は確認できず、この機能をフル活用できたのかは不明でした。
※編集部注:プレコンディショニングでバッテリー温度を適温とするための時間は一般的に30〜40分程度とされています。

なお、ステランティス・ジャパンのCHAdeMO急速充電テストでは最大130kWでの充電と「30分でSOCほぼ0%から90%への充電」を確認しているとのことでした。E-3008は車内で充電出力が表示されませんので、充電器の方で確認していましたが、その最高は73kWだったことからも、今回はE-3008の性能を完全には引き出せなかった可能性が高いです。

充電中のセンターディスプレイ。中央に「充電量」の表示があります。kWの出力表示はないのですが、ドライバーディスプレイ側に「充電速度458km/h」の表示はあります。バッテリープレコンディショニング機能は、30〜40分間の起動が推奨されていますが、今回15分にしたのは、駿河湾沼津SA下りで適温まで温め、その後の120km/h巡航を行って駿河湾沼津SA上りに到着した際にはまだバッテリーが適温のままだったID. Buzzの経験があったため(120km/hではバッテリー温度が下がりにくいと推測)少し油断していました。E-3008では同じような状況にはならなかった可能性が高く、あと15分早く起動させるべきでした。

タイヤ・ホイールは19インチ

E-3008のタイヤサイズは前後ともに235/55R19 105Vで、メーカーはミシュラン、商品名はe.Primacyです。e.Primacyは、「ミシュラン史上最高の低燃費性能を誇るプレミアムコンフォートタイヤ」と謳われており、「EVに最適」とも紹介されていますので、E-3008にベストマッチなタイヤのひとつと言えそうです。

ステランティス・ジャパンの誠実さ

今回E-3008は冬の高速道路でも満充電から約400kmの航続性能があることを確認できました。東京からなら充電なしで名古屋超えが可能な距離です。このクルマの形が好きだけど、どうしてもノンストップで大阪超えが必要などもっと足の長いクルマが必須という方にはハイブリッドの選択肢もあります。

今回の検証においてE-3008、というよりもプジョー(ステランティス・ジャパン)に感心したのは、バッテリー容量の73kWhがネット値だと明確にしてくれたことです。より大きなグロス値の方が単純に数字として大きく見えますし、この電費検証企画においても目標電費が低くなるなど有利になります。そもそもユーザーが使用できないバッテリー容量を含むグロス値の表示は、ある意味ユーザーを欺いているような感じもするので、できれば全てのメーカーがネット値、もっと言えば両方の数値を公表するのが公平ですし、ユーザーのためにもなるのではと思います。

国土交通省などの公開資料では、駆動用バッテリー容量についてグロス値かネット値かのどちらを公表すべきかを直接定めた統一ルールは確認できません。とはいえ、グロス値とネット値、ことに実際にユーザーが使用できるネット値を明確に示してくれるのは誠実だと感じます。

この写真のドライバーディスプレイではSOC86%で航続距離379kmであることが確認できます。エンジン車の給油口位置と同じように、バッテリーマークの左横に三角マークがあり充電口の位置を示してくれています。

E-3008のCEV補助金は、令和8年(2026年)12月31日までの登録分は89万円ですが、来年の1月1日以降の登録では69万円に減額の予定です。試乗記でお伝えした通り、より大きな96.9kWhバッテリーを搭載したE-3008が必要な方を除き、この航続距離性能に納得できたら、ぜひ早めにディーラーでの試乗をオススメします。

プジョー「E-3008」主要スペック

プジョー E-3008
GT アルカンターラパッケージ
車両型式ZAA-P64ZK03
全長(mm)4565
全幅(mm)1895
全高(mm)1665
ホイールベース(mm)2740
トレッド(前、mm)1630
トレッド(後、mm)1635
車両重量(kg)2160
前軸重(kg)1170
後軸重(kg)990
前後重量配分54:46
乗車定員(人)5
最小回転半径(m)5.4
プラットフォームSTLA-Medium(ステラ ミディアム)
交流電力消費率(WLTC、Wh/km)149
一充電走行距離(WLTCkm)604
EPA換算推計値(km)483
バッテリー総電力量(ネット値、kWh)73
バッテリー種類NMC
バッテリー冷却方法水冷式温度調節システム
急速充電性能(kW)160
急速充電時間150kW器で20-80%が約30分
普通充電性能(kW)11
V2X対応非対応
モーター数1
駆動方式FWD
モーター型式ZK03
モーター出力(kW/ps)157/214
モータートルク(Nm)343
フロントサスペンションマクファーソンストラット
リアサスペンションマルチリンク
ブレーキ(前後)ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前後)235/55R19
タイヤメーカー・銘柄ミシュラン e-プライマシー
荷室容量(L)520-1480
フランク(L)なし
0-100km/h加速(秒)非公表
最高速(km/h)非公表
Cd値(空気抵抗係数)0.28
暖房システムヒートポンプ
生産工場フランス・ソショー工場
車両本体価格 (万円、A)760
CEV補助金 (万円、B)89
実質価格(万円、A - B)671

取材・文/烏山大輔

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この記事を書いた人

1982年生まれ、長崎県出身。高校生の時にゲームソフト「グランツーリスモ」でクルマに目覚め、 自動車整備専門学校を卒業後は整備士、板金塗装工、自動車カタログ制作、 自動車雑誌カーグラフィック制作、ALPINA総輸入代理店のNICOLEで広報・ マーケティングと一貫してクルマに関わる仕事に従事。 現在の所有車はインテグラ・タイプR、ハイゼットとガソリン車のみだが、BEVにもFCEVにもとても興味を持っている。

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