日産GRANDRIVE(グランドライブ)で開催された国内OEM合同のEV取材会に行ってきました。日産の新型リーフやスズキeビターラ、ホンダN-ONE e:からレクサスRZなどが勢揃い。見て乗って感じた、本格的なEV普及に向けた「あと一歩」が何なのかを考えてみます。
国内OEM6社のEV&PHEV9車種が集結
日産自動車追浜工場内のテストコースGRANDRIVE(グランドライブ)を会場にして、国内OEM(Original Equipment Manufacturer=完成車メーカー)6社が合同で「メーカー合同EV取材会」を開催しました。3月18日の取材から少し時間が経ってしまいましたが、レポートをお届けしたいと思います。
出展されたのは9車種。このうちマイナーチェンジを受けた日産アリアは展示のみ。参加したメディアには2車種の試乗枠と、さらに2車種の撮影枠が配分されました。

【出展されたEVとPHEV】
●=EV ▲=PHEV、レンジエクステンダー
スズキ ●eビターラ
ホンダ ●N-ONE e:
マツダ ▲MX-30 Rotary-EV ▲CX-60 PHEV
三菱自動車 ▲アウトランダーPHEV
レクサス ●RZ550e “F SPORT”
日産 ●日産リーフ ●日産サクラ ●日産アリア
9車種のうちPHEVが3車種で、レクサスはあったけど、アップデートしたbZ4Xが販売好調なトヨタは出展していませんでした。
グランドライブに到着して、プレゼン&試乗会場へ向かう歩道橋から見下ろせる場所にズラリと並べられた出展車を眺め、まず感じたのは「日本で買えるEVが増えたなぁ」という思いでした。10年ほど前、国産の市販EVは日産リーフと三菱i-MiEV、あとアウトランダーPHEVくらいしかなかった頃を思うと隔世の感があります。
世界のEV普及をリードする意思統一に期待

日産車の試乗取材などで見慣れたゲストハウス前には、出展各社のフラッグが並んでいました。日産以外の広報ご担当者に聞くと「ここに来たのは初めて」との声も。
かねて繰り返しているように、EV普及を進めるためには市販EVヒット車種を積み重ねていくしかありません。それぞれのメーカーはユーザーを奪い合うライバルではありますが、各社が健全に競争して、手頃で魅力的なEV車種を増やしていくことが、本格的なEV普及のための唯一の道。着実にEVシフトが進む世界の自動車市場で日本メーカーが勝ち残る無二の方策だと思います。
各社のフラッグが風にはためく光景に、できるだけ多くのメーカーが気持ちをひとつにして「日本が世界のEVシフトをリードする」という気概を見せてほしいと期待してしまうのでした。
本格的EV普及のために必要な「あと一歩」とは?

国産EV車種が増えたなぁという感慨を覚える一方で、国産EVが集結しているのを眺めながら、日本のEV普及を本格的に進めるために、もうちょっと足りないエトセトラを実感しました。端的に列挙してみたいと思います。
車種のバリエーションがまだまだ足りない
ここ数年、メーカーや車種を問わないEVオーナーのオフ会が増えるなど、多彩なEVがズラリと並ぶ風景に出会う機会が増えています。国産EV&PHEVの主力車種が集まった合同取材会ではありますが、ここには当然、テスラやBYD、ヒョンデ、欧州各社などのEVはありません。
日本の自動車市場では圧倒的に国産が強いことを考えても、国産EVのラインナップに、テスラモデルYを凌駕し、BYD シールを脅かし、ヒョンデ インスターくらいお手頃で、MINIやフィアット 500eくらいかわいくて、メルセデス・ベンツEQSと張り合えるような車種が揃う必要があると感じてしまいました。
もっというと、日本の地方で根強いニーズをもっている軽トラックのEVがないのはもったいない。三菱自動車が2013年に発売した「ミニキャブMiEVトラック」は、残念ながら2017年に販売を終了してしまっています。2013年〜2017年の当時は、今以上にEVへの理解は広がっておらず、「10.5kWh」という搭載バッテリー容量はあまりにも控えめに過ぎました。

Ev CArS(関連記事)に並んでいたミニキャブMiEVトラック。
ミニキャブMiEVトラックは販売された期間が短くタマ数は少ないものの、中古車市場では根強い人気を維持しています。軽トラユーザーの大半は自宅にEV充電設備を設置することも可能でしょう。今のバッテリー技術を注ぎ込んで、せめて20kWhくらいのバッテリーを搭載し、EVならではのシンプルなUIを実現したお手頃なEV軽トラが登場すれば……、あと、EVへの誤解を解消する情報発信や営業マンのアドバイスを徹底すれば、新たなニーズを切り拓くことができるのではないかと夢想します。
エンジン車の呪縛から脱してほしい

RZ550e “F SPORT”
EVsmartチームでは、私と動画担当の畑本(テスカス)さんで取材会に参加。畑本さんが「まだ運転したことがない」というスズキのeビターラと、ステアバイワイヤシステムやヨーク型ステアリングを採用するレクサス RZ550e “F SPORT”(AWD)に試乗しました。eビターラはもちろん、車両本体価格950万円(税込)のRZ550eはとても素晴らしい自動車でした(個人的には手が出ない価格ですけど)。
両車を通じて、さらには国産EVの多くで感じてしまうのが、エンジン車の魅力とされてきた常識を「EVに置き換える」発想で作られていることです。クルマとして魅力的な走りや快適性が、EVだからこそのレベルで実現されているだけに、たとえばメーターパネルの表示要素やデザインがエンジン車からの流用ベースになっているのを残念に感じてしまいます。

RZ550eが備えている「インタラクティブマニュアルドライブ」は「エンジン車の常識」への呪縛を感じる象徴的な機能だと感じました。パドルシフトで回生ブレーキの強さをコントロールできるのですが、スピーカーからギミックのエンジン音が響き(アクティブサウンドコントロール=ASC)、8速の擬似的なマニュアルミッションのような挙動(シフトアップ時のトルク変動やシフトダウン時のブリッピングなど)まで再現されているのです。
これはこれで、テストコースで走るなら面白い趣向ではありました。箱根とかのワインディングでも、車内の座興として楽しめるかもしれません。でも、根っからEV派の私としてはギミックのエンジン音は邪魔だと感じます。試乗後に確認するとASCはオフにもできたので、仮に私がRZ550eのオーナーになったとしたら、ASCは常時オフで乗るだろうと思います。
「エンジン音で加速感をつかむ」とか「マニュアルシフトの醍醐味」を否定するわけではありません。でも、静粛性やスムーズな加速感が魅力のEVには、余計なことだと感じるのです。
レクサスブランドならではの高級感やおもてなしの心で、本当に魅力的なEVを作るとどうなるのか。テストコースでバリバリとエンジン音を聞いて走りつつ、ついつい「レクサスが本気になったEVを見たい、乗ってみたい」と思ってしまったのでした。
国産EVには「のびしろ」がいっぱい
日本の自動車産業はコンパクト車、大衆車の成功で世界を席巻してきました。ヨーロッパではEUが全長4.2m以下の「M1E」規格を新設するなどコンパクトEVのプレゼンスが高まる中、世界のEV普及のなかで日本の自動車メーカーが真骨頂を発揮するのは「ここから」が勝負だとも感じます。
今はまだ「エンジン車を置き換える」発想が根強いですが、それだけに日本製EVにはまだまだ「のびしろ」がたくさんあるのではないかと感じます。「魅力的なEVを開発する」のが当然になったとき、日本発のEVが世界中で支持されるに違いないと信じていたいと思っています。
取材・文/寄本好則






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