テスラ2021第2四半期の台数実績速報〜20万台超えで過去最高ペースに

テスラ社は2021年7月2日(現地時間)、第2四半期(2021年4月~6月)の生産台数と納車台数を発表しました。『モデルS/X/3/Y』を合計した生産台数、納車台数はともに四半期で初めて20万台を超えて過去最高となり、新型コロナの影響が収まりつつあることを感じさせるものでした。

テスラ2021第2四半期の台数実績速報〜20万台超えで過去最高ペースに

【参考情報】
Tesla Q2 2021 Vehicle Production & Deliveries(2021年7月2日 ニュースリリース)

※冒頭写真は建設中のベルリンギガファクトリー。

四半期ベースで過去最高の20万台を生産&納車

テスラ社は現地時間の7月2日、2021年第2四半期の生産台数と納車台数の速報値を発表しました。生産台数は『モデルS/X』が2340台、『モデル3/Y』が20万4081台で合計20万6421台、納車台数は『モデルS/X』が1890台、『モデル3/Y』が19万9360台で合計20万1250台となり、生産台数、納車台数のいずれも20万台超えで過去最高になりました。

前年同期の『モデル3/Y』の生産台数は7万5946台なので、約2.7倍になっています。

第1四半期では、新型に切り替わった『モデルS/X』が1台も生産されないという特異的な状況でしたが、無事に生産が始まったようです。とは言うものの、昨年までの2年間に『モデルS/X』は四半期で1万5000台~1万6000台、2018年には四半期で2万5000台前後を生産していたので、元に戻ったと言うにはまだ少し早そうです。

またアメリカのCNBCは、納車台数が19万台~23万1000台になるというアナリストの予想より少し台数が少なかったと評価しています。それでも、このまま生産が続けば、4車種合計で年産75万台という今年の目標は余裕でクリアできそうです。

発表当日、テスラ社の株価は前日の終値677.92ドルから一時的に698.46ドルに上りましたが、すぐに落ち着きを取り戻し、678.9ドルで引けています。取引のボリュームは約2710万株で、ここ数日の1800万株前後に比べて多かったことを考えると、株価上昇の期待があったのかもしれません。

6月10日にロイターは、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が『モデルS プラッド』について、「これはまさに、持続可能なエネルギーの車が最速であり、最も安全であり、あらゆる点で最高にカッコエエ(kick-ass)車になっていくということだ」と語ったことを伝えています。kick-assの日本語訳は読者の皆さまの感性でご想像ください。

さらにマスクCEOは、次の四半期に『モデルS』は週に1000台のペースで生産されることを期待しているとも話しているそうです。週に1000台だと、四半期の3か月では12000台です。この計画が達成できた時に、『モデルS』が完全復活したということになりそうです。

●生産台数推移

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●納車台数推移

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半導体不足の影響は継続中

今後のテスラ社の生産がどうなるかは、他の自動車メーカーと同じく、世界的な半導体不足の影響をどこまで緩和できるかにかかっています。テスラ社は生産/納車台数速報のリリースで、「私たちのチームは、世界的なサプライチェーンとロジスティックの問題を乗り越え、素晴らしい仕事をしました」と自賛しています。

一方でアメリカのCNBCは7月1日、マスクCEOがツイッターで装備品の見直しをしたことや車の価格上昇の理由を説明していることを紹介し、「価格の上昇は、業界全体に広がる主要なサプライチェーンの価格圧力によるものだ。原材料は特に」というツイートを引用していました。

マスクCEOのツイートは、テスラのインベスターと自己紹介をしている人が、テスラ社が価格の引き上げをする方針をしている一方で、『モデルY』のランバーを取ってしまったのは気に入らないという趣旨のツイートへの返信でした。

返信の中でマスクCEOは、助手席のムービングランバーは誰も使ってなかったと説明し、使ってないものを付けるのはコストにとっても製品(質量)にとっても価値がないと述べています。それはそうですね。ユーザーはいつでもわがままなので、意見を集約するのは難しいということではありますが、装備が減って価格据え置きになれば不満が出るのも仕方ありません。

またマスクCEOは、6月上旬に半導体不足についてツイッターで、次のように述べています。

「私たちの最大の挑戦はサプライチェーン、特にマイクロコントローラーチップにある。このような状況は過去に見たことがない。品不足への恐怖がすべての企業の注文過剰を引き起こしている。トイレットペーパーが不足するのと似ているが、壮大な規模になっている。とは言え、これは長期的な問題ではない」

マスクCEOは第1四半期のオンライン会見で、マイクロコントローラーチップについては新たなサプライヤーを獲得できたこともあり、解決に向かっていると述べていました。

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しかし6月になってもまだ、最大の課題として認識しているということは、完全に問題がなくなるまでにはしばらく時間がかかるということかもしれません。

付け加えるなら、半導体はコストアップの要因になるので最終的な利益にどう影響するのかは気になります。テスラ社は価格改定で対応するようですが、これで吸収できているのかどうかはまだわかりません。価格が上がったときの消費者の反応も不透明です。このあたりは、次の四半期決算で少し見えるかもしれません。

ベルリン工場(ギガファクトリー)も稼働が間近

テスラ社は現在、カリフォルニア州フリーモントと、中国・上海の工場で生産を行っています。この他、ドイツのベルリンや、アメリカ・テキサス州の工場も2021年後半には稼働予定です。ベルリン工場が完成すれば『モデルY』を年産50万台のペースで生産できます。

ベルリン工場の建設については、環境保護団体から建設差し止めを求める訴訟が起こされていましたが、最近、裁判所は請求を棄却したようです。もっとも工場建設のための手続きに時間がかかっていて、当初の予定よりは後ろ倒しになっていることも報じられています。
TESLARATI
ロイター

巨大な工場を建設するときには、問題はいろいろと起こるものです。それでもベルリン工場では求人もしていて、始動に向けて一歩一歩、前に進んでいるのは間違いありません。

筆者には応募する気力も英語力も、そもそも募集している職種の能力もないのでしませんが、ベルリンで働きたいという方は挑戦してみてください。それで、可能ならいつかその感想をお聞かせください。EVsmartブログでインタビューしたいと思います。ベルリンに限らず、アメリカでも中国でも、テスラで働いている人のお話は聞いてみたいところです。

【参考】
テスラ公式 求人ページ

そんなこんなで、ベルリンやテキサス州の工場が稼働すれば生産能力は一気に増大します。フル稼働で生産をするかどうかは別にして、少なくとも当面の需要をさばくことは可能でしょう。

気になるのは、ベルリン工場で生産するモデルに搭載する電池が何になるかですが、ふたを開けるまで楽しみにとっておきたいと思います。

以上、生産・納車台数の速報でした。次のテスラ社の企業情報は7月下旬の決算発表をお待ちください。

(文/木野 龍逸)

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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