発売当初のモデルSに関わるバイトをやってたことも
テスラ・モデルSが登場し、イーロン・マスク氏が来日してその最初のユーザーに直接キーを手渡すイベントとともに日本でデリバリーが開始されてすでに11年となります。テスラの最初の市販モデルだったテスラ ロードスターに続く2台目のモデルとして登場したモデルS。ここからモデルX、モデル3、モデルYとバリエーションを広げていくわけですが、そのモデルS、それも初期モデルを今になって手に入れるという暴挙に出ました。その顛末をお話ししていきたいと思います。
2010年代、筆者は某自動車雑誌の編集部に籍を置いていました。ちょうど三菱i-MiEVや日産リーフの登場前夜というタイミングもあり、その雑誌でもEVまわりの積極的な取材を日々行っていました。JEVRA(全日本電気自動車レース協会)の立ち上げからレースの現場での取材であったり、アメリカで行われているパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムの取材を始めたり、当時の雑誌の担当領域から、EVモータースポーツを追いかけるという、現在の私の仕事の流れのひとつが構築されるきっかけになりました。
2011年の東日本大震災を機にその編集部を離れてからも、EV関連の取材を続けていたわけですが、たまたまテスラとのコネクションもでき、一時はテスラの業務を手伝うアルバイトもしていました。業務内容はあまり詳しくはお伝え出来ませんが、テスラのショールームができ、ロードスターが販売され、さらにモデルSがローンチされるタイミングあたりまで、各地で開催されるモーターショーや各種イベントに出向いたり、実際にモデルSを頻繁に乗る機会がありました。
この時のインパクトはけっこうなもので、モデルSについては、いつかは所有してみたいと思っておりました。そうしたこともあり、時折中古車情報サイトなどをちらちらのぞき見することも多くありました。モデルSの中古車相場は順調に下がっては行きました。ただ、それでもしがないフリーランスにはなかなか手の届く値段ではありませんでした。
自分にとって生涯最後の愛車になるかも
ここ数年は多忙により、その中古車市場のチェックもしない時期も続いていたわけですが、そんな折、日常使用していた35年落ちの国産旧車が故障。一応修理工場に持ち込んだものの、それなりの費用がかさむことと、パーツの供給もないことから今後は不安というアドバイスを受けました。
まぁ、年式的にも仕方ないかというところですが、クルマがなければ仕事にはならないわけで、代わりのクルマを探さねばなりません。これまでの車歴を振り返ってみると、平均保有年数は6年強。年齢も年齢だし、サブスクやリースなど「愛車」としてクルマを所有する概念自体変わり始めている昨今、自身にとって最後の所有車になるかもなぁとも考えていました。
そのため「最後の所有車として乗りたいクルマは何かな?」と考えたところモデルSはどうかな? という考えに至り、再び中古車市場をチェックしてみると、安いもので300万円を切った個体も販売されていることに気が付いたわけです。
当時、自分が関わっていたのはモデルSの極初期モデルで、オートパイロット機能もデュアルモーターもないタイミングで、トップモデルがP85だったわけです。たまたま目に入った個体がまさにP85でした。チェックした個体が市内の中古テスラ専門店の出品であり、たまたま時間があったことから、なんとなく見に行ってみようかな、と問い合わせなどもしないまま、そのお店にふらっと立ち寄ったのでした。
10年落ちのモデルS買っちゃったよぉ
テスラの中古車を見に行くなんてことはこれまでなかったし、自動車系メディア業界にいるからといって、ショップを知っているわけでもない。問い合わせもアポイントメントもない全くの飛び込み客。
テスラとはその後、テスラジャパンのスタッフの入れ替わりもあって縁遠くなってしまっていたため、近々の状況は全くウォッチしていない。ということでテスラの販売網や充電環境などを知りたい、また、テスラの中古車購入の注意点などを知りたいというのがありまして、こちらもまずは話を聞いてみようということでの訪問でした。
自分が欲しいモデルは、当時乗っていた初期型モデルで、価格的にシングルモーターで十分。できれば走行距離は低め、バッテリーの劣化を考えてバッテリー搭載量は多めのモデル。そんなところである、と飛び込んだショップの担当者に伝え、中古車サイトで見た車両が気になっているという話をしながらテスラ周りの近況を訊いていきます。
中古車サイトに出ていた個体はモデルS P85(リアにカーボンスポイラーも装着するパフォーマンスモデル!)。2015年モデルで、走行距離は4.8万km。価格は284万円(お店に出向くとプライスタグは301万円でした。私がサイトを見たタイミングで歳末のセールとして値下げをしたのだそうです)でした。ネットの中古車情報では記載がなかったのですが、なんと乗車定員5名+2名モデルでした。当時から気に入っていたポイントのひとつでもあります(ラゲッジルームのシートを使うような予定は全くないのですが……)。
もちろん、モデルSの初期モデルなんてのは、店頭に並べてあるはずもなく、ショップのヤードの奥の方にひっそりと置いてありました。実際に見させてもらいましたが、このタイミングでは12Vの補器バッテリーが上がっており、なんとなく周囲を見るだけでした。それでも赤い糸が見えるような、そんな思いが湧いてきました。
「あ~、頭がグラグラしてきた」と思ったらいつの間にか購入する方向で話が進んでいました。過去にもこういった感じで話が進んでしまった経験はあるんですけどね~。ま、クルマが気に入っていればおのずと話はそっちの方向に進むわけで。ただ一つ残念なのは、極初期モデルでありながらスーパーチャージャーの無料充電が付与されていない、という点です。実のところ、私は集合住宅住まいで基礎充電はできないし、EVオーナーになったことはないので、実費としていくらくらいの充電料金がかかるのか、全く見えていません(そこは今でも気にかかっている点ではあります)。
バッテリーの劣化も気になるところ。さすがに10年落ちの保証ナシのバッテリーですからね。当時航続可能距離は400kmを超えているイメージだったので、350kmくらいあれば良いかな、300kmあたりだったら見送りという考えでしたが、とりあえず充電中の状態で300kmは超えていたので、そこはまぁ合格点としました。
ということで、まもなく納車となります。モデルSとの生活に向けて、充電環境など情報入手のためにネットでもろもろを調べている日々なのですが、なんと、この契約をした後に、掘り出しもののモデルSが中古車情報サイトに出てくるようになりました。恐ろしいことに200万円を切る個体まで現れて……。もう中古車情報サイトにはいかないようにしています。
納車されたら、またレポートをしたいと思います。
【編集部注】モデルS日本発売から、もう10年以上経つんですね。EVはリセールがウィークポイントなんてことも言われますが、逆にいうと高級EVの中古車がお買い得です。はたして、青山さんはどんなEVライフを過ごすことになるのでしょうか。引き続きレポートをお届けしたいと思います。(寄本)
取材・文/青山 義明
30万kmまで🙆🫶🫶🫶