豪雪の山形県飯豊町で「冬のEVフェスタ!」開催〜子供たちが電動カートを満喫

2022年3月6日、「日本で最も美しい村」に選ばれている山形県飯豊町で、電気自動車イベント『可能性のタネをまこう! 冬の飯豊EVフェスタ!』が開催されました。当日は降りしきる雪の中、参加した小学生たちが電動レーシングカート試乗会などを楽しみました。

豪雪の山形県飯豊町で「冬のEVフェスタ!」開催〜子供たちが電動カートを満喫

小さな村から電気自動車普及を発信!

山形県南西部、最上川の源流部に位置する飯豊町(いいでまち)は人口約7000人。景観や文化を守りつつ自立を目指す「日本で最も美しい村」連合にも加盟している自然豊かで小さな村です。福島との県境の飯豊連峰の山懐に抱かれて、県内、すなわち日本有数の豪雪地帯でもあります。そんな静かで小さな村で、3月6日、電気自動車をテーマにしたイベント『可能性のタネをまこう! 冬の飯豊EVフェスタ!』が開催されました。

会場は2023年4月の開学を予定して、すでに校舎が完成している「電動モビリティシステム専門職大学」です。飯豊町では、この大学に隣接する「飯豊電池研究所」を中核として、リチウムイオン電池、ひいては電気自動車やバイオマス発電など再生可能エネルギー普及の利活用を進め、バッテリー産業の拠点となるべく「飯豊電池バレー構想」を進めています。同じ日のイベント終了後には、電動モビリティシステム専門職大学への入学を検討する高校生と保護者を集めた大学説明会(こちらの詳細は別途レポートします)も開かれました。

後藤幸平町長

「飯豊電池バレー構想」は、現在4期目を務めている後藤幸平町長肝いりのプロジェクトでもあります。バッテリーや電気自動車に関する企業や人材を集めて育て、ひいては社会の脱炭素化に貢献できる村にしたい! ということです。そのためにも、まずは村民をはじめとする地域住民の一人でも多くの方々に、EVの知識を広げ、楽しさを知ってもらいたい。つまりは、東北の小さな山村からEV普及を発信するぞ! というのがEVフェスタの目的です。

ERK試乗や講演会を実施

当日のイベント準備は雪かきから始まりました。

『冬の飯豊EVフェスタ!』で実施されたのは以下の4つのプログラムです。

親子 Kids ERK(子ども用電気レーシングカート)組立体験教室&雪上試乗会
小学4〜6年生対象。親子参加でERKの組立(といっても簡単なパーツの加工やタイヤの取付など)を体験しながらEVの仕組みを学び、特設の雪上コースでERKの運転を楽しみます。

ERK雪上ドリフト&雪上試乗会
高校生以上が対象。大人用の高出力ERKにスパイクタイヤを装着。ERKのドライビングに習熟したドライバーが雪上ドリフト走行を披露するのとともに、参加者が雪上特設コースでの試乗体験を楽しみます。

EV講演会「なぜEVなのか? 本当にEVシフトは起こるのか?」
一般社団法人 日本EVクラブ代表で自動車評論家、EVsmartブログで『EV創世記』を連載中の舘内端氏が講師。加速する世界のEVシフトの現状とともに、脱炭素化のためになぜEVが必要なのか、EVでなければダメなのかといった知見を解説。

SDGsって何? カードゲームでSDGsを学ぼう!
飯豊町地域おこし協力隊のメンバーが講師となって、SDGsの考え方を地域活性化に活かし、実現する方法について考えるカードゲーム「SDGs de 地方創生」をプレイします。

「もっと乗りたい!」〜子供たちも大満足

豪雪地帯とは聞いていましたが、3月だというのに当日は朝から大雪、かと思うと、ひとしきり晴れ間が覗いたりもする、荒れ模様の天気ではありました。

「親子 Kids ERK 組立体験教室&雪上試乗会」には近隣の小学生、5組の親子が参加。まずは室内での組立教室でEVの仕組みを学んだ後、敷地内の特設コースで子ども用ERKの試乗を楽しみました。

実は、ERK試乗は全面圧雪路のコースを設営する予定だったのですが、さすがにこの時期には予想していなかったほどの大雪(しかも前日には雨が降り……)に見舞われて、最低地上高が低いレーシングカートで走行できるコース作りは断念。急遽、敷地内の舗装路に適度に雪を残した状態の特設コースを設定して実施されました。

それでも、雪けむり(というか、水しぶき?)を巻き上げながら疾走するERKのドライビングに子供たちは興味津々。試乗を終えても「もっと乗りたい!」と声を上げていました。定員10組のところ5組の参加だったこともありスタッフの判断で「特別にもう1回ずつ乗っていいよ」となって大はしゃぎ。雪上での電気の走りを満喫する笑顔が印象的でした。

高校生以上を対象とした「ERK雪上ドリフト&雪上試乗会」では、キッズ用にあえて除雪したコースに加えて少し多めに圧雪路を残したコースを走行。それはそれは楽しそうでしたけど、走るほどにシート回りなどに雪が溜まって大変でした。イベント開催に協力した日本EVクラブでは、室内スケートリンクで走る『ERK on ICE』を開催していますが、さすがに屋外での雪上走行イベントは初開催。「バッテリーの冷却はバッチリだけどね」とスタッフも苦笑い、なのでした。

前日の雨で雪が緩んだこともあり、圧雪路コース設営は断念。

バッテリー雪冷システム?

舘内さんの「EV講演会」には、約10名の地域住民のみなさんが参加。時間は13時〜14時30分の90分間と、まさに大学の講義並みにボリューム満点な講演に、熱心に耳を傾けていました。

EV普及の「導火線」となる人を増やす

新型コロナ対策で定員を絞った上に、大雪という天気もあって参加者の数は少なめではありました。また「飯豊町」をちゃんと「いいでまち」と読める日本国民はそんなに多くないだろうなぁと思われる山村でのイベントです。

日本でのEV普及を進めるためには、手頃で魅力的なEVが数多く発売されることが必要不可欠。唯一の切り札と言ってもいいでしょう。とはいえ、発信力は小さいながらも、こうしたイベントによってEVの必要性や魅力に触れて、理解を深めた市民がひとりでも多くなっていくことは、メーカーなどが発売した新たなEVを評価して受け入れ、EV普及の輪を広げていく「導火線」になっていくのだろうと思います。

今回、最寄り駅である山形新幹線赤湯駅前で同行の取材スタッフである木野さんが手配してくれたレンタカーは久しぶりに運転するピュアエンジン車だった(個人的に、取材先でも可能な限り、せめてシリーズハイブリッド車を借りるようにしています)のですが。「日本で最も美しい村」の雪道を走りつつ、「ああ、こういう道こそEVがいいなぁ」と感じる取材になったのでした。

(取材・文/寄本 好則)

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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