スバルのEV『ソルテラ』発表に感じた「日本市場も電動化」への意気込み【御堀 直嗣】

速報でお伝えしたスバルの新型電気自動車『ソルテラ』のワールドプレミア。長く電気自動車普及に取り組んできた自動車評論家の御堀直嗣氏は、どんなメッセージを読み取ったのか。独自の視点からの解説をお届けします。

スバルのEV『ソルテラ』発表に感じた「日本市場も電動化」への意気込み【御堀 直嗣】

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SUBARUの理念を踏襲する電気自動車へ

SUBARUがはじめてグローバルに投入する電気自動車(EV)『SOLTELLA(ソルテラ)』のワールドプレミアが、11月11日午前9時30分(日本時間)から行われた。これは米国東部時間の19時30分であり、人々が一仕事を終えて世間の動きに注目する時間帯だ。カリフォルニアなど西部はさらに3時間前の16時30分となる。SUBARUが販売の柱とする北米市場でより多くの消費者に訴求するには適切な時間帯といえるだろう。

中村知美CEO。

登壇した中村知美社長は、「街中から大自然の中まで場所を選ばずどこへでも行け、乗る人の人生を豊かに、そして笑顔を作り出すSUBARUならではの一台」と、ソルテラを紹介した。続けて「物を作る会社に止まらず、お客様の笑顔をSUBARUはこれからも作り続けたい」と、電動化への道でも貫くSUBARUの思いを力強く語った。

ソルテラは、トヨタとの共同開発によって生まれ、トヨタは先にbZ4X(beyond Zero=ゼロを超えた価値)として概要を発表している。そのトヨタとの協業についても、中村社長は、「小規模なSUBARUが、時代と技術の変化に遅れることなく対応するには、限られた経営資源を、特徴をもちながら伸ばすべき部分に選択と集中する必要があり、パートナーとの協業を活用していく」との認識を示した。それによってSUBARUらしい個性あるクルマで、カーボンニュートラルに貢献していきたいと述べたのである。

トヨタとの提携は「2005年にスタートし、19年に新たな資本業務提携を行い、両社にとって、新たなモビリティ社会と笑顔のために、いいクルマを創りたいとの思いは変わらず、対等な関係での共同開発を目指した」と、開発の経緯を紹介した。そこでの合言葉は、「仲よくケンカしよう」であったという。開発チーム全員が、正直に、妥協せず、納得するまで議論を繰り替えしながら開発に挑み、SUBARUとトヨタの強みをそれぞれ惜しむことなく持ち寄り、互いに切磋琢磨し、よいEVが完成したことを嬉しく、また誇りに思うという。

SUBARUのやりたいことを実現できた

そのなかで目を引くのは、SUBARU独創のX-MODEもトヨタが採り入れ、X-MODEの新たな機能であるグリップコントロールを新開発してbZ4Xに搭載していることだ。4WD技術では、SUBARUはもちろんのこと、トヨタもランドクルーザーはもとより、現行のRAV4でも新開発するなど、それぞれに自信を持つ分野だ。それでもSUBARUが永年こだわってきたシンメトリーAWDの知見が、EVでもトヨタの合意を得て活かされた一例だろう。

技術内容は、SUBARUもトヨタも共通性が高い。それでも、たとえ諸元が同じでも乗り味の異なるクルマ作りが可能であることは、2ドアスポーツカーのトヨタ86とBRZがすでに体現している。その思想は、新型GR86やBRZにも通じているはずだ。ならば、さらに制御によっていかようにでも特性を調整できるEVであれば、ソルテラとbZ4Xの乗り味が、両社の思想を体現することは考えられる。

一目で違いを表すのはフロントグリルの意匠ではないか。ワールドプレミアで公開されたソルテラは、SUBARUブルーに塗装されていた。そしてSUBARU車の証といえるヘキサゴングリルを継承しながら、凹凸の少ないシームレスな造形で表現されていた。ドイツのアウディが、e-tronでもシングルフレームグリルにこだわることに通じる造形ではないか。

そのうえで、ソルテラの価値の一つは先進感だと開発責任者の小野大輔は語る。SUBARU初の全自動駐車支援、12.3インチ画面を備えたコネクティビティでは、スマートフォンと連動したリモート操作機能が紹介された。

開発責任者の小野大輔氏。

不安なく使えるクルマとして、十分な一充電走行距離と、ゴルフバッグなら4つ、大型スーツケースは3つ、また後席を倒せばマウンテンバイクを積載でき、センターコンソールに設けた収納など、実用性の高さも示した。レガシィツーリングワゴンが、リゾートエクスプレスとして高い人気を誇ったように、EVでも、出かけた先での笑顔をSUBARUは大切にすることが、実用性をきちんと語った様子に表れている。

そして「SUBARUのやりたいことを実現できた」と、小野は胸を張ったのであった。

ちなみに、ソルテラという車名の由来は、ラテン語の太陽を意味するソルと、地球や大地を示すテラを組み合わせ、大地に降り注ぐ太陽の光を意図し、これからのSUBARUのEVの礎となるEVであると中村社長は説明した。先に試乗した感触から、「SUBARUらしさが凝縮され、SUBARUの所有者も、これからSUBARUに乗るかもしれないお客様にも、満足してもらえる仕上がりであることを確信した」と中村社長は述べ、「トヨタと競合することで、改めてSUBARUらしさを発見、確認する貴重な場にもなった」と、開発を振り返ったのである。

新たなスバリストの獲得へ

中村社長や、小野開発責任者の言葉は、力にあふれていた。それは、SUBARUらしいEVができたという自信と手ごたえがあるからだろう。また発売は両社とも2022年半ばとしているが、SUBARUは日本、米国・カナダ、欧州、中国等の順でプレス資料に表記し、一方トヨタは、中国、米国、欧州、日本などという表現をする。ちょっとした言葉づかいではあるが、ここからもSUBARUが軸とする北米市場はもちろんのこと、日本市場も視野の中心に置いてワールドプレミアを迎えたのではないかとの印象がある。

実はSUBARUは、トヨタと提携する前に日産と提携関係があり、その際に、当時日産がNECと開発を進めていたラミネート型リチウムイオンバッテリーを期待しながら、独自にEV開発を行ってきた経緯がある。試作車のR1eでは、2008年の洞爺湖サミットに際して行われたEVキャラバンに参加してもいる。

さらには、自動車雑誌の記事化のため、そのR1eに乗って江の島までドライブした経験が私にはある。当時は、都内から江の島まで行くだけでも精一杯だったが、モーター駆動の力強さと、回生による速度調整の快適さに足を延ばしすぎ、バッテリー残量ぎりぎりで宿泊先のホテルへ到着した。そこでごく普通の200Vコンセントから充電させてもらった。その際、SUBARUの技術本部では我々の行動を監視しており、いつまでも充電せず走り続ける様子にハラハラした、と後で教えられた。

また、三菱自動車工業と相前後し、プラグイン・ステラも2009年に短期間ながら発売してきた。そうした経緯があるからこそ、SUBARUからの本格的なEV市販化は待ちに待った出来事なのである。

トヨタbZ4Xと同様に、急速充電は150kWに対応している。そこまでの高性能化が現在の車載バッテリー容量で必要かどうかはともかくも、少なくとも全国のSUBARUディーラーに50kW以上の急速充電器を整備する計画など、同時に発表してくれたなら、期待はさらに大きくなっただろう。

顧客の気持ちに寄り添って車両開発を行う姿が、スバリストを喜ばせてきたはずだ。そしてソルテラの誕生によって、新たなスバリストが加わる可能性がある。

SUBARU初のEV=ソルテラの発表に際し、SUBARUのスローガンである「安心と愉しさ」を継承し、クルマの電動化だけでなく事業全般で2050年のカーボンニュートラルに貢献すべくあらゆる側面で対応を進めていくと、中村社長は語った。これまでのSUBARUの弱点(燃費の悪さ)を、ここから一気に挽回してほしいものである。

(文/御堀 直嗣)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. これまで4WDと水平対向で差別化を図って大成功を収めてきたスバルなだけに、電動化でも独自路線かなと思いきや、トヨタの共同開発と言う事で少しがっかり。
    四輪インホイールモーターとかで攻めてくるかなと密かに期待していたのですけどね。
    コストの争いもあるので独自路線は難しいのでしょうね。

    1. 飯塚様、コメントありがとうございます!今は、トヨタさん・スバルさんはじめ各社、国内メーカーは電気自動車へのノウハウ蓄積、サプライヤーの選定・準備、生産体制の拡充(電池含む)というところの第一ステップに立っていると認識しています。これから、独自性は各社出してくると信じています!

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					御堀 直嗣

御堀 直嗣

1955年生まれ65歳。一般社団法人日本EVクラブ理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。1984年からフリーランスライター。著書:「快走・電気自動車レーシング」「図解・エコフレンドリーカー」「電気自動車が加速する!」「電気自動車は日本を救う」「知らなきゃヤバイ・電気自動車は新たな市場をつくれるか」「よくわかる最新・電気自動車の基本と仕組み」「電気自動車の“なぜ”を科学する」など全29冊。

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