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テスラのフルセルフドライビング(FSD)欧州版〜初期インプレッション・レビュー【CleanTechnica 翻訳記事】

テスラのフルセルフドライビング(FSD)欧州版〜初期インプレッション・レビュー【CleanTechnica 翻訳記事】

オランダでテスラのFSD(監視付き自動運転)が承認されました。日本への導入に向けて、認証の共通化が行われている欧州での配信開始は朗報です。現地テスラオーナーの第一印象を伝える、アメリカのメディア「CleanTechnica」の記事を全文翻訳で紹介します。

【元記事】Tesla Full Self-Driving Europe — Initial Impressions Review by Chanan Bos
※記事中写真は元記事から引用。

目次

ついにFSDが欧州に到着!

ちょうどテスラが予告していた4月10日、ついにオランダの道路当局(RDW=オランダ道路交通局)がテスラに対し、FSD(監視付き自動運転)の承認を与えたとするプレスリリースを発表しました。ただし、アップデートの配信がいつ始まるのかは発表されていませんでした。全体像はまだ完全には明らかではありませんが、最初にアップデートを受け取った2人はインフルエンサーだったようです。この2人は翌日の夜にアップデートを受け取り、同時にアーリーアクセスプログラムの対象者であることを知らせるメールも受け取っていました。2024年式モデル3スタンダードレンジに乗っている私は、少しがっかりしながら眠りにつきました。

ところが翌朝、自分の車がすでにアップデート2026.3.6を17%ダウンロードしているのを見て驚きました。このアップデートにはFSD v14.2.2.5が含まれており、イーロン・マスクがXで述べたところによると、実際にはv14.3(※)ですが、命名ルールが異なるものです。
※訳注:v14.3は、その時点で米国で配信されていた最新版

オランダ国内の重複しない2つのコミュニティを対象にした独立した調査では、それぞれ約150人のテスラオーナーが回答しましたが、アップデートを受け取った人は合計で約20人にとどまりました。TeslaFiのようなトラッカーサイトではさらに少なく、アップデートを受け取った、またはインストールした車はわずか10台未満でした。つまり、この記事は非常に早い段階での、かなり限られたユーザーによる第一印象レビューです。

欧州版FSDの実力は?

公平を期すと、私はここしばらく米国を訪れる機会がなかったため、米国版FSDを試すことも、Waymoを体験することもできていません。できたのは、多くの動画を見て印象をつかむことだけでした。結論から言えば、私自身の第一印象も、感想を共有してくれた他の人たちの印象も、欧州版FSDはほぼ完璧に近いというものでした。個人的には、車が一度でもミスをするところは見ていません。郊外でも、地方道でも、工事中の高速道路でもそうでした。これは非常に印象的です。同じ場所では、きちんと塗られていなかった白線に対して、オートパイロット(※)はかなり苦戦していました。
※訳注:オートパイロットはFSDの前世代の運転支援で、現在の日本のテスラ車でも同世代の技術を使用。ソフトウェア2026.8からはオートステアリングに改名。

とくに印象に残ったのは、FSDがオランダの交通ルールを忠実に守っていることです。たとえば、高速道路から出るときは、出口車線に入る前にウインカーを出し、出口車線では、車線変更可能な破線を過ぎて実線に到達するまでウインカーを出し続ける必要があります。FSDはそれを実行しました。

一方、テスラが2023年末にHighland(最新型)のモデル3で導入したインテリジェントウインカーは、これまでその動作をしたことがありません。この機能は車線変更や右左折に応じて、必要な時間だけウインカーを出し続ける機能で、ほとんどの場合は正しく作動します。ただし、ラウンドアバウトと高速道路の出口は例外です。高速道路の出口については、単に車線変更として認識し、車線変更が完了するとウインカーを消していました。今もその動作は変わっていません。しかしFSDは違います。先ほど述べたように、法律を文字通り守っているように見えます。

これは非常に細かい点です。それでも、FSDの公道走行を認めるにあたってRDWがテスラに対してどれほど厳格だったのか、そしてなぜこれほど時間がかかったのかをよく表していると思います。

運転支援とはまったく別物の機能

FSDのリリースに関するオランダ語記事のコメント欄を見ると、欧州ではオートパイロットを好まない人が多く、その印象のままFSDについても判断してしまっているように見えます。しかし、FSDを試したことがある人なら分かるように、これはまったく別物です。違いは明らかです。

私は、欧州の道路を走っているほとんどのEVのADASを試してきました。この4年間で、そのうちいくつかはかなり長く使ったこともあります。その経験からかなり自信を持って言えますが、オートパイロットと同等、あるいはオートパイロットよりうまく機能しているように感じるものはあっても、FSDに近いものはありません。

このシステムは、まるで実際の人間のように振る舞います。FSDは、A地点の駐車場からB地点の家まで、実際に連れて行ってくれます。それ(NOA=ナビゲーション オン オートパイロット)ができるシステムは、ほかにはありません。

また、Waymoの動画も数多く見てきましたが、今では個人的に、FSDのほうが他の車への反応がはるかに速いことを確認しています。追い越し、狭い道で相手の車を先に通す判断、相手がためらったときに先に進む判断などです。あるときは、2台の自転車を一度に大胆に追い越し、その後、巨大なトラックとすれ違う直前にぎりぎりのタイミングで元の車線に戻りました。車内にいた全員が感嘆していました。

私は最初の3回の走行を撮影しました。短い走行が2本、長めの走行が1本です。上のX投稿で確認できますが、Xを利用したくない方のために、3本目の長めの動画はYouTubeにも公開しています。

まだ問題点も残る

とはいえ、FSDがすでに完璧だという印象を与えたいわけではありません。何よりもまず、FSDの運転はまるで年老いたおばあさんのようです。乗り心地を良くするために、制限速度を大きく下回って走ることが多く、後ろを走る一部のドライバーの忍耐を試すことになります。もし私が後ろのドライバーだったら、私自身も試されていたかもしれません。

アクセルペダルを踏めば、少し速く走らせることはできます。しかし、それにはリスクもあります。なぜなら、ドライバーには見えていなかった何かを車が先に見つけ、予測し、減速する可能性があるからです。たとえば、あなたがよそ見していた一瞬だけ、車の陰にいる小さな子どもが見えていたような場合です。

オンラインに投稿されているFSD V14の動画を見たことがある方なら、カメラのフル解像度を使っていなかったV13と比べて、視覚認識がどれほど人間離れしたものになっているかをすでにご存じかもしれません。実際、人間には見通しにくい茂み越しでも、テスラが車や自転車をはっきり識別している動画を見たことがあります。

話を戻しましょう。アクセルを踏めば、おばあさんのような運転をしばらく抑えることはできます。しかし、事故を引き起こすリスクがあります。これまでのところ、私がアクセルを踏んだのは高速道路で一度だけです。そのときは、車がまったく理由もなく遅く走っていることが完全にはっきりしていました。

欧州版FSDには、この「おばあさん運転」のような挙動を抑えるための設定が2つあります。1つ目は速度オフセットです。制限速度を超えて走ってよいと車に指示でき、制限速度を最大50%まで上回る設定が可能です。

この設定用のボタンが画面上にあります。また、以前のオートパイロットと同じように、スクロールホイールを使うこともできます。良い点は、現在の最高速度もすぐに確認できることです。

ただし、制限速度を40%上回る設定にして、50km/h制限の道路で70km/hまで出せる状態になっていても、実際に53km/hを超えて走ったのを私は一度も見たことがありません。

これはおそらく、私が「contextual maximum speed(※)」と呼ばれる別の欧州版FSDの設定をオンにしていたためです。この設定は、交通の流れに合わせるために車が上限速度を超えて走ったり、交通状況に合わせて制限速度より遅く走ったりできるようにするものとされています。

※訳注:画像内のContextual Max Speed(状況に応じた最高速度)説明の和訳は以下の通り。
「Contextual Max Speedを有効にすると、システムは視覚情報に基づいて、最高速度の設定を動的に調整します。これには、監視付きFSDが安全で自然な交通の流れを維持できるように最高速度を引き上げることや、危険な走行速度につながる場合には最高速度が変更されないようにすることが含まれます。
車両の速度については、常にあなたが責任を負います。必要に応じて介入するか、右側のスクロールホイールを使って最高速度を調整してください」。(訳注ここまで)

ただし、この設定が正確にどのように機能するのか、単に最高速度のオフセットを上げる場合と比べてどう違うのかは、現時点ではまだ少し不明です。

米国では、この仕組みは大きく異なります。米国では、多くのFSDドライバー(あるいはFSD監視者と呼ぶべきでしょうか?)を落胆させる形で、速度コントロールが取り上げられました。その代わりに、速度と挙動のプロファイルを選べるようになっています。Slothから始まり、Chill、Standard、Hurry、そして最後にMad Maxがあります。Mad Maxは、ロサンゼルスのような攻撃的な運転環境では重要です。

1か月前にFSDのデモ走行を体験した際、テスラの担当者は、現在の欧州版FSDはChillとStandardの中間あたりに設定されていると話していました。ただし時間が経つにつれて(EUの状況を考えると、かなり時間がかかるかもしれませんが)、テスラはアップデートを重ね、車がより積極的に判断して動けるようにしていく可能性が高いでしょう。

とはいえ、欧州版のソフトウェアはまだ少しずつ成熟している段階なので、テスラはきわめて慎重に進めなければなりません。

駐車機能はまだ課題だらけ

もう1つ広く報告され、私自身も経験した問題が駐車です。正直なところ、そもそもFSDが駐車スペースを見つけて、きちんと駐車できるのかどうかさえ疑わしく思えてきました。

ほとんどの場合、駐車場内をただうろうろするだけで、白線がはっきりした絶好の空きスペースがいくつもあるのに、ことごとく見逃してしまいます。駐車場を一通り回ったあと、FSDは勝手に外に出ていき、そのまま冒険に旅立っていきました。

一度だけ、駐車を試みようとしたことがありました。しかし車は白線をまたぐように進み、中途半端なところで何度か切り返したものの、最後は諦めてしまいました。

私の理解では、米国のV14.3でも、駐車機能はまだ安定しているとは言えないようです。成功することもあれば失敗することもある、という状態です。ただしロボタクシー風の到着オプションでは(駐車や路肩停車など)いくつかの候補を提示してくれ、比較的うまく処理できているようです。つまり、駐車機能はまだ改善途上にあります。

興味深いことに、1か月前にテスラの担当者同乗でFSDのデモ試乗をした際には、到着後すぐに駐車しました。停めた場所は障害者用スペースでしたが、それでも駐車自体はできていました。もっとも、テスラの担当者も少し驚いていたため、安定して再現できる動作ではなかったようです。

確認できた他の問題

自分の経験から、もう1つだけ気づいた点があります。少なくとも2回、信号待ちの先頭になった場面で、FSDは不自然なほど停止線の手前で止まりました。オランダでは、これは問題になります。道路に車両検知用の磁気センサーが埋め込まれていて、このセンサーで信号を待っている車がいることを認識するからです。十分に停止線の近くまで進まないと、信号によってはいつまでたっても青に変わりません。

FSDを試した他のドライバーからは、何度か介入が必要だったという報告もあります。たとえば、左車線に出て追い越そうとしたために曲がる場所を逃したケースや、バスレーンに入ってしまったケースがありました。

別のケースでは、高速道路に入るための分岐で車線を誤り、そのまま高速道路に合流できませんでした。FSDが慎重すぎて、合流車線でバスと並走し続け、合流のタイミングを逃してしまったためです。

信号が青になっても発進しないケースもいくつかありました。画面上では青信号を認識していることが表示されていたのに、です。また、合流の手前でまもなくなくなる車線に移ってしまったケースも1件ありました。

ただ、全体像も踏まえておく必要があります。ここで挙げた問題は、複数の人が昼夜を問わず長時間FSDを試した結果として集まった報告です。全体としては、誰もが非常に好意的な印象を持っています。実際に安全上重大な問題は見ていないと思います。あったのは、不便に感じる挙動だけです。

問題が起きた場合は、FSDを解除するタイミングで、テスラチームに送る短い音声メッセージを録音できるようになっています。

欧州全域への展開

FSDを受け取ったオランダの人たちにとって、次の大きな疑問は「いつ駐車できるようになるのか」です。しかし、それ以外の欧州の人たちにとっての疑問は、「いつFSDを利用できるようになるのか」です。

オランダでは、配信は段階的にゆっくり進んでいます。今朝は、アップデートを受け取り始めたという報告が増えていますが、まだ広く配信されているとは言えません。テスラは新機能の展開において、配信を慎重に進める傾向があります。そのため、全員に行き渡る前に、バグ修正のためいったん配信を止める可能性もあります。

他のEU諸国での展開については、少なくともあと1か月はかかりそうです。RDWがFSDを承認したその日に、テスラはすでに、第39条の手続きを使ってEU全域で承認を得るため、ブリュッセルに申請を進めていた(※)ようです。ここで可決されれば、テスラはその直後に複数の国でFSDの配信を開始する可能性があります。
※訳注:第39条は、EU加盟国が独自のルールをEU全体に適用させるための規則で、加盟国の過半数が賛成すればEU全域でFSDが承認。RDWは既に4月13日にEUに対して5月に申請する予定を通知済みで、最短で6月に投票が行われる可能性がある。

ただし、EUでの投票が通らない可能性もあります。その場合、テスラは国ごとに個別に承認を進めなければなりません。オランダで前例ができた以上、他の国でアップデートが始まるまで再び1年半もかかることはないはずです。それでも、1か月よりは長くかかることになります。

よくある質問への簡単なQ&A

Q:FSDを使っている状態でオランダを出るとどうなりますか?
A:FSDが動作を停止する警告が表示され、運転を引き継ぐまで約15秒の猶予を与えます。

Q:別の欧州国でテスラに乗っていて、FSDを購入しています。オランダまで運転して行けば、アップデートを受け取れますか?
A: 可能性は低いです。今のところ、FSDを購入した、またはサブスク契約しているオランダ国内のテスラオーナーでさえ、その大半はまだ利用できていません。

Q:このアップデートには、オランダ向けのGrokは含まれていますか?
A: 残念ながら含まれていません。ただ、春のアップデートで入るかもしれません。

Q:走行の最後に、従来のオートパークを使うことはできないのですか?
A:できます。ただし、そのためにはFSDを解除する必要があります。

Q:今回のアップデートで、米国版のように、車から6メートル以上離れていても使える本格的なSmart Summonは利用できるようになりましたか?
A: いいえ、残念ながら使えません。多くの人ががっかりしたことに、SummonとASS(Actually Smart Summon)はこれまでとまったく同じ仕様のままです。そのため多くの場合、実質的には使えません。操作する人が車から遠すぎる、または近すぎると判定されてしまい、ちょうどよく作動する距離がほとんどないからです。

訳者あとがき/日本導入への期待とHW3問題

オランダで監視付きFSDが承認されたことで、今後数か月以内には欧州の他の国でも展開されるというスケジュール感が、現実味を帯びています。さらに、橋本社長へのインタビュー記事でもお伝えしているように、日本でも2026年末までの展開を目指していることがテスラジャパンから公表されています。
https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/japan-ev-of-the-year-2025-tesla-japan-hashimoto-interview/

監視付きFSDは、XやYouTubeなどの多くの動画が示すように、日本においても利便性と安全性の両方を大きく向上させる可能性を秘めています。日産もWayveと共同で同様の機能を搭載した市販車を2027年度に投入することを予告しており、今後数年以内には一般的な機能として多くの大衆車に搭載されることが期待できます。

【関連記事】日本の道でもほぼ自動運転! テスラ「FSD」のテスト走行を新宿の混み合った道で体感レポート【塩見智】(2026年3月17日)

ただし、明るいニュースばかりではありません。監視付きFSDの展開においては、俗にいう「HW3問題」にも触れておく必要があります。テスラのFSD技術に使われているHW(ハードウェア)は、2023年頃に前世代のHW3から最新のHW4(別名:AI4)に切り替わりました。

一方で、世界には約400万台のHW3を搭載した車両が走行していると推定され、これらの車両では最新の監視付きFSD v14は実行できません。また、将来的な監視なしFSDの実現には、HW3ではなくHW4が必要とされています。当然ながらテスラもこの問題を認識しており、HW3に対しては以下のような対応を発表しています。

●HW3でも同等の機能を実現するv14 Liteを世界で提供
●FSDオプション購入者にはHW4への換装を提供

この対応はHW3オーナーに一定の安心感を与えますが、これで全てが解決するわけではなく、依然として以下のような課題が残っています。

●市場ごとの提供時期(HW4との差)は?
●どこまでv14の性能に近づけるのか?
●監視なしの実現に必要とされる、HW4への換装時期は?

今回オランダでHW4向けにV14の提供が始まったことで、同国で7年前にHW3の車両とFSDオプションを購入したオーナーからは、同社に対して説明を求める動きもあります。署名サイトの「HW3 Claim」ではすでに5,000人を超えるHW3オーナーが署名し、問題が解決しなかった場合は集団訴訟も選択肢の一つとしています。テスラ社は、これらのHW3オーナーに対して真摯に向き合う姿勢が求められるでしょう。

【関連サイト】HW3 Claim

翻訳・文/八重さくら

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この記事を書いた人

現在は主にTwitterや自身のブログ(エコレボ)でEVや環境に関する情報を発信。事務所の社用車として2018年にテスラ モデルX、2020年に三菱アイ・ミーブを購入し、2台体制でEVを運用中。事務所には太陽光発電とテスラの蓄電池「パワーウォール」を設置し、車と事務所のほぼすべての電力を太陽光で賄うことを目指しています。

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