EV(電気自動車)シフトは再エネシフトが伴うことでより有意義になります。中国は2026年3月に承認した「第15次五カ年計画」において、10年間で非化石燃料に由来するエネルギーを倍増する計画を発表し、4月にはより具体的な期限や基準を公表しました。「朗報」として伝える「CleanTechnica」の記事を全文翻訳で紹介します。
【元記事】China Plans To Double Renewable Energy By 2035. That’s The Good News. by Steve Hanley
「非化石エネルギー倍増」がより具体的に
2026年4月17日、中国国家発展改革委員会の王昌林副主任は、第15次五カ年計画に盛り込まれていた「非化石エネルギー倍増」の方針について、具体的な内容を説明しました。多くの専門家は、今回の説明により、2035年を見据えた目標がより明確になったと見ています。この計画は十分ではないとの批判もありますが、中国は過去の五カ年計画で掲げた目標のほぼすべてを達成してきました。しかも多くの場合、予定より数年早く達成しています。
王氏はこのなかで、中国は2030年までに非化石エネルギーの供給量を大幅に増加させ、2035年には2025年比で2倍にすると述べました。さらに同氏は、チベットでの大規模な水力発電計画や、砂漠地帯に建設する再生可能エネルギー拠点が、クリーンエネルギーによる発電を後押しすると説明しています。
中国はまた、チベットで出力50MWの集光型太陽熱発電施設を建設することも発表しています。この施設は標高4,550メートルの場所に建設される予定で、同種の施設としては世界で最も高い場所にあるものになります。
専門家は従来より意欲的な目標と分析
今回の発表により、第15次五カ年計画で簡単に触れられていた「非化石エネルギーを倍増させる10年行動計画」の内容が、より明確になりました。ブルームバーグによると、当初の計画発表の時点では、この「10年」がいつからいつまでなのか、また「倍増」が発電設備の容量を指すのか、それとも実際に供給・利用されるエネルギー量を指すのかなど、いくつかの点がはっきりしていませんでした。この発表は、こうした曖昧な点を補うものとみられています。
ブルームバーグによると、今回示された「10年間でクリーンエネルギーの使用量を倍増させる」という目標は、中国がこれまで掲げてきた目標よりも意欲的なものになる可能性が高いと分析されています。従来の目標は、非化石エネルギーのシェアを2025年までに全体の25%、2035年までに30%にするというものでした。
エネルギー・大気浄化研究センターのラウリ・ミリビルタ氏とベリンダ・シェーペ氏の試算によると、エネルギー需要全体が年2.5%前後で増える(人工知能を支えるデータセンターの建設競争を考えると、控えめな見方)と仮定した場合、非化石エネルギーの使用量が2035年に倍増するペースで増えれば、2029年には非化石エネルギーのシェアが29%に達するとしています。
専門家らは、第15次五カ年計画が公表された直後の3月6日、この曖昧な記述について「仮にこの計画が2025年から2035年にかけて非化石エネルギーの総使用量を倍増させるという意味であれば、中国の既存目標よりもかなり意欲的なものになる可能性がある」と分析していました。
昨年秋、中国の習近平国家主席は、国連で「中国が経済全体で温室効果ガスの排出量を減らし、今後数年で再生可能エネルギーを6倍に拡大する」と述べました。ニューヨーク・タイムズはこれを、「現在、世界最大の汚染国である中国にとって、世界的に大きな意味を持つ瞬間」と評しました。
中国が、太陽光発電と風力発電の技術で世界をリードする輸出国であることは、ほぼ間違いありません。パキスタンは、中国製の太陽光パネルのおかげで「判断を誤った、まったく不要な米国の対イラン戦争」による世界への経済的な打撃を軽減(※)できました。以前、パキスタンはカタールからのLNG供給に完全に依存していましたが、ホルムズ海峡での惨事が始まる数か月前に、LNG船20隻分の契約を取り消していました。
※訳注:パキスタンは2024年に17GW、2025年に15GWの太陽光発電設備を導入。設備利用率を20%と仮定した場合、年間電力需要の1/3以上にあたる150TWhを供給する計算に。
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再エネ大国でも、石炭依存は続く
イェール・クライメート360に寄稿したイザベル・ヒルトン氏は、「再生可能エネルギーを推進する一方で、中国は依然として石炭依存から抜け出せずにいる」と題した記事で、次のように分析しています。
「2021年、習近平氏は、中国が気候変動対策に取り組む姿勢を示すため、2つの重要な約束をしました。
同年4月の気候サミットで、習氏は、中国が2025年まで石炭火力発電を「厳しく管理」し、その後、段階的に減らしていくと発表しました。
また同じ年に、中国経済のエネルギー強度、つまりGDPを1単位生み出すために排出するCO2の量を、2030年までに2005年比で65%削減するとも約束しました。
今月、中国が今後5年間の計画を発表した際、この2つの約束はいずれも達成が危ぶまれているように見えました」
2015年には、中国では一次エネルギーの69%を石炭が占めていました。2024年には56%まで下がりましたが、それでも米国の8%を大きく上回っています。ただ、実際に消費された石炭の量は、過去最大になっていました。理由は単純で、中国の電力需要が増え続けているためです。石炭使用を減らす努力を続けているにもかかわらず、習氏の約束から4年後、中国は世界のその他の国々を合わせた量よりも40%多い石炭を消費していました。
もし中国が2025年に、過去最高となる300GWの太陽光発電と100GWの風力発電を導入していなければ、石炭消費量はさらに多くなっていたはずです。これにより、中国の電力需要の増加分は、おもにクリーンエネルギーでまかなうことができました。
しかしヒルトン氏は、中国が数十年にわたって再生可能エネルギー技術の製造に投資してきたことは、産業政策として大きな成功だったものの、石炭への依存が続いているため、その成功が温室効果ガス排出量の大幅な削減にはつながっていないと述べています。

許可と建設の急増を受け、昨年中国では50基以上の大型石炭火力発電所が稼働を開始(出典:CREA / Global Energy Monitor. Yale Environment 360 / Made with Flourish)
現在、中国は再生可能エネルギーを最も多く導入している国であり、温室効果ガスを最も多く排出している国でもあります。そして、石炭を最も多く使っている国でもあります。
この矛盾した状況を説明する理由の一つが、エネルギー安全保障への国としての懸念です。
石炭は、中国が輸入に頼らずに済む唯一の化石燃料です。世界のどこかで精神状態が安定しない権力者がいつ何をしようとも、中国の政策担当者にとって、石炭だけは十分に確保できると分かっている燃料なのです。
石炭が支えるエネルギー安全保障
新型コロナや、干ばつによる水力発電の減少などで電力供給が逼迫したとき、石炭は中国にとって、最後の頼みの綱になります。2024年、中国は94.5GW分の新たな石炭火力発電能力の建設を始めました。これは、その年に世界で新たに建設が始まった石炭火力全体の93%にあたります。
昨年、中国では50カ所を超える大型石炭火力発電所が運転を開始しました。その結果、こうした石炭火力発電施設の多くは、採算を取るために必要な水準を大きく下回る稼働率にとどまっています。それでもなお、依然として建設を進める動きは続いています。
第15次五カ年計画は、こうした望ましくない流れを正し、中国の気候目標を再び軌道に乗せる機会でした。しかし政府は、その機会を逃したように見えます。
この計画では、再生可能エネルギーの生産と導入を引き続き進めることが約束されています。また中国は昨年、世界のその他すべての国々を合わせた量を上回る太陽光発電と風力発電を導入しました。
しかしヒルトン氏によると、それ以外の動きには、あまり前向きとは言えないものもありました。
中国のエネルギー需要は、増え続けています。最近まで中国は、自国はなお発展途上国だと主張し続けており、そのため排出量の上限を設定する必要はないと説明していました。
その代わりに重視していた指標が、習近平氏が強調した「エネルギー強度」の目標です。エネルギー強度は、GDPを1単位生み出すために必要なエネルギー量を測る指標です。つまり、基本的には効率を示す指標です。エネルギー消費の伸びがGDPの伸びよりも小さければ、エネルギー強度は下がることになります。
効率を上げるだけでは排出削減につながらない
中国は2006年の第11次五カ年計画で、初めてエネルギー強度の目標を設定しました。それ以降、すべての五カ年計画で重要な目標とされ、中国のエネルギー利用効率は着実に改善してきました。
しかし、効率が上がったからといって、必ずしも排出量が減るわけではありません。中国のエネルギー需要は増え続けています。そのため、エネルギー利用の効率は高まっているにもかかわらず、排出量は増えてきました。この1年半は排出量がやや減っていますが、エネルギー強度の改善が鈍れば、その流れは反転すると見られています。
過去5年間、中国で続いてきた大幅な需要増加は、その多くが、同じように急速に拡大する再生可能エネルギーの供給によってまかなわれてきたように見えます。
そして、悪い知らせです。中国は初めて、エネルギー強度の目標を達成できませんでした。この5年間で17%の改善を目指していましたが、実際の改善幅は12.4%にとどまりました。GDPの伸びを考えると、同じ期間に排出量は13%増えたことになります。
そうなれば、中国がパリ協定での約束を果たす見通しや、2030年までに中国の炭素強度を2005年比で65%削減するという習近平氏の約束は、達成から大きく遠ざかることになります。
政策担当者は、第15次五カ年計画で目標を改めて引き上げることで、その遅れを補うこともできたはずです。しかし実際には、エネルギー強度の計算方法を変更しました。習氏の目標を達成できなかったことを分かりにくくする狙いがあったのかもしれません。
さらに、今後5年間の目標も、以前より緩いものにしました。
ヒルトン氏は、もっと率直に言えば、中国は数字をごまかしているのだと述べています。
石炭を手放せない既得権益
中国が石炭を手放したがらない理由の一つがエネルギー安全保障だとすれば、もう一つの大きな障害は、制度の中にある既得権益です。石炭を産出する省は、雇用と地域経済を守りたいと考えています。
また地方政府にとっては、排出量を抑えることよりも、安定した電力供給の方が重要です。こうした事情は、国全体の気候目標とぶつかることがあります。
中国政府は、電力網のバランスを保つには石炭が必要だと主張し続けています。需要がピークに達したときや、再生可能エネルギーの発電量が落ちたときに、供給の不足分を埋めるためだという説明です。
しかし、石炭火力発電所は本来、安定して動かし続けることを前提に設計されています。必要なときだけ動かすような使い方は、最もよい方法でも、最も効率的な方法でもありません。
石炭火力発電所を稼働させるには、数時間かかることがあります。いったん本格的に発電を始めると、需要が下がっても簡単には出力を落とせません。この問題を避けるため、多くの事業者は需要が十分な時間帯にも発電所を動かし続け、短い時間ですぐに電力を供給できる状態にしているようです。
業界では、こうした状態を「運転予備力」と呼びますが、これはエネルギー利用の面でも、炭素排出の面でも非効率です。発電所は燃料を使い、CO2を出しながら動き続けることになるためです。
再生可能エネルギーを優先する仕組みに変えるため、これまで何度も制度改革が試みられてきました。第15次五カ年計画でも、政府は再生可能エネルギー分野の拡大を続ける姿勢を示しています。そして、それを「気候政策」の柱と位置づけています。
しかしヒルトン氏は、電力部門で石炭が大きな役割を果たし続ける限り、再エネ産業を育てる「産業政策」としては成功しても、それだけでは排出量は減らないと分析しています。
希望が持てる動きも
中国で続く再生可能エネルギーと石炭のせめぎ合いは、系統用蓄電池のコストが近年大きく下がったことで、解決に向かう可能性があります。中国では最近、揚水発電によるエネルギー貯蔵も増えています。蓄電池の導入量だけを見ても、この4年で20倍に増えました。
こうした蓄電の仕組みは、石炭火力を待機させておくよりも、コストが安く、効率が高く、気候への負荷も小さいです。そして導入が進むほど、石炭を使い続ける理由は、まして拡大を続ける理由は、さらに弱くなっていくのは確実だとみられます。
ヒルトン氏は最後に、次のように述べています。
「投資家にとって懸念されるのは、中国が最近進めてきた石炭火力の増設によって、長期的に使われない資産が生まれ、そのコストが数兆ドル規模に達する可能性があることです。
一方で、気候への負担が増えることは、すべての人類に関わる問題です」
訳者あとがき/再エネはこれからも世界で増え続ける
中国の「再エネと同時に石炭火力発電所も増やしている」という2面性は、多くの識者や専門家が指摘しています。一方で、2025年には中国でも設備容量ベースで再エネなどのクリーンエネルギーが化石燃料を追い抜き、いまも指数関数的に増え続けていることも、また事実です。
中国で再エネなどクリーンエネルギーの発電設備容量が1,494GWに到達、化石燃料の1,420GWを上回る。
同国では15年に石炭が64%を占めていた一方25年には過去最低の42.7%まで低下、設備容量だけでなく発電量での逆転も時間の問題とみられています⚡ https://t.co/RD6KPe3Eg4 pic.twitter.com/GwfYfH5Nar
— 🌸Sakura Yae/八重 さくら🌸 (@yaesakura2019) February 21, 2026
太陽光発電などの再エネは他の発電方法と比べて設備利用率が低いため、設備容量に対して発電する電力量が少ないという特徴があります。
一方で、本記事でも指摘されている通り、近年は蓄電池とともに価格が大きく低下。太陽光発電に蓄電池を含めても、化石燃料よりも安価になる事例が増えています。
さらにIEA(国際エネルギー機関)によると、2025年末、遅くとも2026年の半ばには再エネが石炭を抜き、発電量においても世界で最大の電源になると予想しています。
日本では再エネの適地が少なく世界と比べて不利という意見もありますが、米国ローレンス・バークレー国立研究所、米国カリフォルニア大学バークレー校、京都大学の研究者らが共同で発表した「2035年日本レポート/電力脱炭素化に向けた戦略」では、日本においても電気代を下げつつ2035年に再エネで約7割、原子力を含めたクリーンエネルギー全体で約9割を賄えるという試算もあります。

2035年までの電源構成、総設備容量の推移(出典:2035年日本レポート/電力脱炭素化に向けた戦略)
【参考論文】
2035年日本レポート/電力脱炭素化に向けた戦略
ほぼ全ての化石燃料を海外に依存する日本では、ガソリン代や電気代は、原油やLNGの国際価格、為替、産出国の情勢に大きく左右されます。政府はいまもイラン情勢により高騰した燃料価格を抑えるため、ガソリン補助金に毎月1,000億円単位の支出を続けています。
つまり、化石燃料に頼り続ける限り国際情勢に振り回され、補助金で価格を抑えながら、海外へ巨額のお金が流れ続ける構造は変わりません。
仮に電力の多くを、燃料を買い続ける必要がない再生可能エネルギーや原子力などのクリーンエネルギーでまかない、自動車もEVへ移行していけば、海外に流れていた燃料代の一部を国内の発電設備、送電網、蓄電池、充電インフラ、地域の雇用に回せる可能性があります。
電気やガソリンは、私たちの毎日の暮らしに直結しています。だからこそ、思い込みや印象論ではなく、最新のデータと科学的根拠に基づいて、これからの現実的な選択肢を考えることが大切です。
翻訳・文/八重さくら






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