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スズキが「キャリイ」を改造したEV軽トラで実証実験/エンジン軽トラ程度の価格ならすぐにでも買いたい

スズキが「キャリイ」を改造したEV軽トラで実証実験/エンジン軽トラ程度の価格ならすぐにでも買いたい

スズキは2025年の「人とくるまのテクノロジー展」に、EVシステムを搭載した軽トラックの『キャリイ』を展示しました。現在、この『キャリイ』によって、日本各地4カ所、6軒の農家で実証実験が行われています。

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EV軽トラを実際に活用する浜松市内の農家を取材

2025年の「人とくるまのテクノロジー展」でこの軽トラックが展示された際に実証実験の話を聞き、ぜひとも実際に使う方を取材したいと思っていたのですが、約1年の時を経て実現しました。

実証実験は静岡県浜松市、静岡県湖西市、愛知県豊川市、熊本県阿蘇郡の4カ所、6軒の農家で行われています。今回訪れたのはスズキのお膝元でもある静岡県浜松市で農業を営む、本間悠太さんとお母様の本間伸世さんのお宅です。本間さん宅では母屋と離れの屋根に発電容量が合計で約10kWのソーラーパネルを設置。6.4kWhの定置型蓄電池とV2H機器を設置して、電力エネルギー自給自足のシステムを構築しています。

本間家が太陽光発電を導入したのは15年ほど前のこと。また、消毒のための薬剤散布にドローンを使うなど、新しい働き方を積極的に取り入れています。今回、そうした従来からの取り組みが評価されて実証実験のモニターに選ばれたそうです。

エネルギーインフラとしてEV軽トラを活用する可能性

スズキはこの実証実験を通して、車両のバッテリーに貯めた電力の家庭での使用、家庭の蓄電池から車両へ充電する、といった使い方も含めて検証を行っています。これはバッテリーEVを単なる移動手段だけではなく、エネルギーインフラとして活用する可能性の確認で、 最終的には、軽トラックバッテリーEVの潜在需要や再生可能エネルギーの地産地消の可能性を検証し、より実用的で使いやすい商品やサービスの開発につなげていくことを目的にしています。

農家さんの必須モビリティといえる軽トラがEVになり、そのバッテリーをエネルギー地産地消に活用できるのであれば、そのポテンシャルは小さくないでしょう。

実証実験に使われている軽トラックのキャリイはエンジンや燃料系を撤去してEアクスルとバッテリーを搭載したコンバートEV軽トラック(EV軽トラ)です。4WDモデルなのでトランスファーを備えます。つまり、トランスファーより前側はEV化、トランスファーより後側はコンベンショナルなガソリンエンジン軽トラのまま。農作業での利便性を考慮して低速トルクを重視したセッティングとなっているとのこと。

バッテリーリーンの思想で手頃なEV軽トラ実現を目指す

荷台の下にEアクスルやバッテリーを配置。バッテリーのスペースは思ったより小さい印象でした。

バッテリー容量やモーター出力は非公表ですが、開発担当者によると「バッテリーリーン(過剰に大きなバッテリーを搭載せず、小さなバッテリーでエネルギー効率を最大化する考え方)な設計として、必要十分なバッテリー容量を探っています。もちろん、バッテリーや電動パワートレインの配置は、荷台スペースや積載性に影響がおよばない設計となっています。

V2H機器はエリーパワーのシステムを使用(駆動用バッテリーもエリーパワー製)。今回の実証実験では、1つめが家庭への電力供給、 2つ目は家庭から車両への充電の検証が目的。従来は働くクルマであった軽トラックを、移動手段としてだけではなくエネルギーを蓄え活用する存在へと進化させることをねらっています。

帰宅したら充電ケーブルをさし込むのが日課。V2H活用前提なので充電口は急速充電のみ。普通充電口はありません。

とくに農業分野では、昼間に太陽光で発電した電力を蓄電し、それを車両や家庭で有効活用することによって、エネルギーの地産地消のモデルの実現可能性の検証が行われています。単なる電動車の評価にとどまらず、現場で本当に使えるのか、またエネルギーとしてはどのような価値を持つのかという観点で検証し、ちょうどいい電動化、現場にあった使い方を具現化し、商品やサービスとして提供していくのが、今回の実証実験の最終的な目的です。

EV軽トラで日々の仕事はこなせている

作業場には出荷を待つジャガイモがたくさん積まれていました。

本間家ではガソリンエンジンの軽トラックも所有していますが、現在はほぼこのEV軽トラで日々の業務は間に合っているとのことです。悠太さんはEV軽トラについて次のような印象を持っています。

「まず燃料代を考えなくていいのが一番のメリットです。今まではガソリンの残量をチェックして、どのタイミングでスタンドに行くかを考えながら仕事をしていましたが、今はそうしたことを考えなくていい(自宅に戻って充電ケーブルをさし込むだけ)のが楽。とはいえ、あと何kmで電気がなくなるとは出てきますし、充電量が減ってメーターの残量警告灯が点灯するとけっこうドキドキします」(悠太さん)

EV情報を表示するディスプレイ。バッテリー温度も表示されるようです。

お母さんの伸世さんは「そうそう、あと何kmって表示が出てそれで家までの距離を考えるとギリギリだったりするとドキドキしちゃいますね。でも帰ってこられなかったことはないです。あと、EV特有の音(編集部注:近接警報音)がするので、息子が帰ってきたのがわかるのもいいと感じています」とのこと。

本間家では大根やジャガイモ、キャベツなど重めの農作物を栽培し、それを地域のJAが運営するファーマーズマーケットに卸しています。積載量は「おおむね100〜300kg」とけっこう重い状態で走り、1回の配送で回る距離は「大体35km」とのこと。ガソリン軽トラの場合は週に1度は給油していたそうですが、今はすっかりその手間はなくなっているとのこと。そのころのガソリン使用量は月に60〜80リットル程度だったのが、今はゼロになっているんですね。

大きな作業場もある本間さんのご自宅。

ちなみに、バッテリー容量や一充電走行距離性能は非公表ですが、悠太さんに質問してみたところ「荷物を積んで35km走行後のバッテリー残量は30%くらい」とのこと。概算すると、電費が「5km/kWh」程度として搭載するバッテリー容量が10kWh程度。かつて三菱が発売していたEV界伝説の名車でもある「ミニキャブMiEVトラック(東芝製SCiBで10.5kWh)」と同じくらいではないかと推察できます。

大きな戸建てながら毎月の電気代は安上がり

運転席のメーターはエンジン車のまま流用でカーナビなどもありません。各種データをスズキに送るためのデータロガーが設置されています。

軽トラックを使わないときはいつもV2H機器に接続し、効率よく運用できるようにしています。電気代は月に7000円程度しか支払っていないとのことです。このシステムが導入されたのがまだ寒い時期(暖房に電気は使っていないとのこと)だったので、夏のエアコン使用でどれくらいになるか? は期待と不安が入り交じった状態だといいます。

現在の本間家でのシステムだと、朝イチでエコキュート(ヒートポンプ給湯器)が稼働してお湯を沸かし貯めるため、そこでの電力使用量が一番大きいとのことでした。

また、本間家での今の心配ごとは1年間の実証実験期間が終わったらこのEV軽トラを返却しなくてはならないということ。2月から始まった実証実験ですでにEV軽トラの利便性や経済性を味わってしまった本間家としては、実証実験後にEV軽トラを返却し、その後ガソリンエンジン軽トラに戻ることに不安があるというのです。なにしろ、毎月節約できていた60〜80リットルのガソリンを給油しなくてはならなくなるのが大きな出費に繋がってしまいます。

希望としては補助金を使うなどしてガソリンエンジンの軽トラと同じレベルの価格で購入できるようになれば、返却後にはすぐにでも購入したいとのことでした。

軽トラにEVの選択肢を

収穫後の荒れた畑の中も、4WDパワーでたくましく走行!

筆者は軽トラックこそEVとの親和性が高いモデルだと思っています。軽トラックの使われ方では走行距離が短いパターンが多く、バッテリーを大きくせずとも成立することが多いと考えます。

バッテリー室を作り、そこに入れるバッテリーの数で容量を調整するなど用途に合わせた仕様が作れるといいでしょう。また、果樹園の収穫などで使われるような極低速走行もEVの得意分野です。すべての軽トラがEVになればいいわけではありませんが、軽トラのジャンルにEV軽トラは必要なものだと考えます。

取材・文/諸星陽一

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この記事を書いた人

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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