EV創世記【緊急連載 第1回】世界を覆うEV狂乱/舘内 端

世界の電気自動車(EV)シフトが本格化しています。なぜ、世界はEVを選ぶのか。EVとはどんな自動車で、これからどうあるべきなのか。日本におけるEV普及の先駆者である自動車評論家の舘内端氏が読み解く連載企画。第1回は連載『EV創世記』を始める理由を語ります。

EV創世記【緊急連載 第1回】世界を覆うEV狂乱/舘内 端

EV狂乱

みなさんは最近のEV狂乱をどう思っているだろう。25年以上もEVにかかわってきた私でさえ驚くようなEV騒ぎだ。

ドイツから始まったEVシフトは英国に飛び火し、フランス、イタリアを巻き込み、早くから環境問題に取り組んできたスウェーデンのボルボが今や遅れ気味にさえ見える。

環境意識の高いヨーロッパの急速なEVシフトはわからないではないが、米国のGM、フォードのEVシフトは何なんだ。私の未来予測を見事に吹き飛ばしてくれた。「えっ、えっ、ほんと?」と頭を抱えてしまっている。

どうしてこんなになってしまったのか? この騒動の理由は何だろう?

付け加えれば、日本の自動車メーカーのEVシフトの遅延も気になる。量産EVの先達である三菱、日産の存在感も今や薄くなってきた。残りは推して知るべし。完全な立ち遅れだと各誌が論評している。

これは、どうしてなのだろう?

AUDI e-tron に試乗する舘内さん。

EV狂乱のわけ

待て、待て。日本勢の遅延といったが、それはEVシフトが当たり前で、当然という考えがあるからだ。しかし、なぜEVシフトは当たり前なのか?

こうした疑問に答えられないわけではない。EVシフトの理由は、地球温暖化・エネルギー問題の深刻化だ。そう思う。そのように私は30年近く前から発言してきた。

世界の主要国のすべてが、あらゆる対立を超えてこの件に関しては一致している。スーパー独裁国のロシアも中国も、さらに米国も世界に歩調を合わせようとしている。いや、それどころか我先にゼロCO2の感じすらある。これなら国連は不要だ。

激しく対立する国同士を、対立を超えて一致団結させる(魔)力が存在しているのだ。私には何か神的な力が働いているような気がしてならない。その力とは? おそらく、いや確実に「科学」である。科学は力なのだ。

科学の力

EV創世記【緊急連載 第1回】世界を覆うEV狂乱/舘内 端

みなさんは「1+1=2」って信じているだろうか。自分できちんと確かめたことがあるだろうか。もちろん私も信じているし、リンゴ2つを使って何度も確かめた。

しかしながら、リンゴの大きさ、重さはバラバラである。それでも1個と1個で2個となる。

「2個となる」って、そういうことにしようと決めているわけだ。こうした「決めごとのことを科学という」というのは、大変に乱暴な論旨だが、世界中でこうした科学=決めごとは信じられている。いわば共通の言語だ。

そして、温暖化もその結果の気候変動も、大きな原因が大気中のCO2の増加で、CO2が増えると温暖化は進み、気候変動は激しくなると予想できる。だから世界が向かうべきはCO2ゼロだとされている。

これは科学の答えだから、科学信仰国家は反論できない。世界の一致団結は科学の力なのである。

EV狂乱とは、みんなで科学を信じている証といえる。つまり、今回の「EV創生」は、世界が改めて科学への固い信仰を表明した結果ということになる。

連載『EV創世記』を始めるわけ

今回、EVsmartブログで始めることにした連載『EV創世記』は、まあ、こんな感じで世界のEV史を紐解き、EVシフトの理由や必要性を論じていくのだが、寛大にお付き合い願いたい。

それでも世界中を探しても、これから私が述べていくようなEVの話はないし、ウィキペディア(Wikipedia)を探しても見つからない。つまり、こんなEVの話を知っているのはみなさんだけ。これを読んであちこちで自慢してもらいたい。

手始めに少しだけEVの始まりに触れておくと、その起源は19世紀の中頃、エンジン車よりも数十年早いとされている。ただし、「世界初」には諸説あり、どれが世界最初のEVかは定まっていない。まるで「卑弥呼の国探し」のようだ。なので、「初…」とか「EV年表」にはあまりこだわらないことにする。

舘内氏が1994年に製作したEVフォーミュラカー『電友1号』。

EV史をひもとく前に、私が「EV創世記」なる連載を始める理由に、少し触れさせていただこう。

というのは、最近、EVがどこの国で生まれ、だれが作り、その構造はどうだったのか。そして、何度もすたれ、何度も生き返り、現代に至っているのか。といったEVの創生について私自身が関心を持つようなったからだ。なぜって、EVの行く末が心配だからである。

生まれたEVにも興味があるが、EVを生んだ時代と、その時代の背景にある思想や哲学にこそ強い関心がわいている。どんな時代がEVを生んだのか。そしてすたれた原因は何か。

すたれた原因を、EVの使いにくさとか、台頭したエンジン車の機能が高かったからというのは一面的だ。これは、多くのみなさんとメディアと評論家が判断の基準にしている機能主義、効率主義、つまり近代的な価値観に基づいた一面的な判定に過ぎない。

もちろん間違ってはいない。しかし、それだけでは卑弥呼の国の秘密に迫れず、EVの誕生と栄枯盛衰は語れないと思う。なぜって、卑弥呼も「生の人間」で、EVを生み、育てたのも人間であり、人間って機能だけでは語れないからだ。

EVという技術と生活で使う文化が何度も廃れては再生されてきたのはなぜか。何が人々をそうさせたのか。多面的な探求がなされなければEVの行方は考えられない。 このことを連載のベースにおこうと思う。

ヒントは「近代」というキーワードにある

私自身、子供のころから、大人になっても「歴史」にはうとくてさほど興味はなく、日本史も世界史も落第点だったのだが、環境・エネルギー問題が深刻になり、そこに自動車が深くかかわっていることに気づくと、そうも言っていられなくなった。

これらの問題には歴史的背景があるに違いないと思った。世界の、日本の歴史を知りたくなった。1980年代後半からのことである。

日本がバブっているころ。六本木のディスコが賑わっているころ、日産GTR、セルシオ、ユーノスロードスター等、日本のビンテージカーが生まれたころ、東洋ゴムの協賛、協力のもとに私は「21世紀の自動車社会を考える会」なる大きなフォーラムを開催していた。そこで改めて現代の思想、哲学に触れることになった。これまでの自動車の疑問を解く筋道を知ることになり、ようやく複眼で「自動車」を考えられるようになった。

そこで学んだヒントの一つが「近代」というキーワードであった。現在のすべては「近代」がもたらしたと開眼させられた。がしかし、近代を知るには前近代も、日本の近世も知らなければならない。この連載では「近代」を客観的に見つめる眼差しでEVの創生を考えていきたい。

かなり難しそうだが、まあ、人に自慢をするなら少しくらい難しい方がいい。次回は、20世紀末のフランスで感じたEVの魅力についてお話ししよう。お楽しみに。

(文/舘内 端)

【編集部より】

舘内端氏の緊急連載『EV創世記』は、10日〜2週間に1回程度の不定期連載でお届けする予定です。

舘内氏も参加するオンラインミーティング『EV言いたい放題』開催

Click to link.

舘内端氏が代表理事を務める一般社団法人日本EVクラブでは、6月26日(土)17時〜、オンラインミーティング『EV未来プログラム』を開催します。第2回のテーマは『EV言いたい放題』です。zoom のウェビナーで実施され、参加は無料ですが事前に下記Peatixサイトからの申し込みが必要です。

オンラインミーティング『EV言いたい放題』申し込みページ

もちろん、舘内さんも参加します。

この記事のコメント(新着順)19件

  1. 世間一般ファッションのようなEV議論や水素議論が多い中で、皆様の議論が的を射たものであること感心しました。水素派の方は、現在①多くの水素源が化石燃料であること、②オフサイト型の水素ステーションへは、「化石燃料から製造した水素」を重いカードルに充填して、大型のトレーラに積んで軽油を使って運び、③到着したら電気を使った圧縮機でさらに圧縮して、④給ガス時には-42℃まで電力を使って冷却している ことをご存じないのかと。また、EV派の方は、①リチウム資源がごく限られ湖沼からの塩類からの抽出は今後難しくなる、②ペグマタイトにしか産しないリシア輝石からのリチウム資源が限られ、生成には湖沼塩類からの約2倍のエネルギーが消費される、③カリフォルニアのダックカーブに象徴される再エネ電力とEVの不整合が生じる、④そもそもEV製造にかかわる排出CO2量はガソリン車の約2倍である、⑤全固体リチウム電池までの在来型の陰極材は限られたグラファイトで製造されさらなる拡大は難しい、しかも成形技術は中国に全く独占されている といった事実もご存じないのかと、勝手に思っています。しかし、小生EVには反対ではありません。社会として適正運用を行うV2L(V2H、V2Bなど)、V2Gを社会システムとして、早く実装していけば「明るい未来」が来るのかもしれません。
    アフリカ大地溝帯でリチウム資源調査をやったり、タンザニアの鉱山でグラファイトを探していた者の意見です。

    1. Geo_Panda様、コメントありがとうございます。水素についてはおっしゃる点はその通りだと思います。

      その他の点に関しまして、、
      >①リチウム資源がごく限られ湖沼からの塩類からの抽出は今後難しくなる

      現時点でのリチウムの需要はだんだんと塩水から(Brines)の供給と同等から上回りつつあるということをおっしゃっているのだと思います。
      https://physicstoday.scitation.org/doi/10.1063/PT.3.4745
      実際にこのあたりに詳しいBenchmark Mineral IntelligenceのAndrew Miller氏によれば、まだ開発の余地はあるということで、不足に懸念のあるような発言はありません。

      >②ペグマタイトにしか産しないリシア輝石からのリチウム資源が限られ、生成には湖沼塩類からの約2倍のエネルギーが消費される

      こちらはスポジュメン鉱石ですね。こちらもいくつもの鉱業の会社が投資を行っており、様々な評価が行われています。
      https://piedmontlithium.com/wp-content/uploads/PLL-Presentation-June-2021-1.pdf
      スポジュメン鉱石をメインとする企業なので(手前味噌)的な意味合いは当然割り引いて考えるべきだと思いますが、引用されている文言で、フォルクスワーゲンが、スポジュメン鉱石経路のリチウムはサステナブルであると発言しています。過去にはBMWもそう言っていましたね。
      私はあまり詳しくないので、もしよくご存じでしたら、こちらの手法についてもう少し補足いただけないでしょうか?
      https://www.mogroup.com/insights/blog/mining-and-metals/the-outotec-lithium-hydroxide-process–a-novel-direct-leach-process-for-producing-battery-grade-lithium-hydroxide-from-spodumene/
      リチウム界隈では、スポジュメン鉱石からダイレクトにLiOHを生成するプロセスが数年前から話題にされており、これによりコストと排出が削減できると言われています。テスラはPLLからスポジュメン鉱石を購入する契約を明らかにしています。
      https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1728205/000172820520000031/ex99_1.htm

      >③カリフォルニアのダックカーブに象徴される再エネ電力とEVの不整合が生じる

      これは、大きな問題ですね。
      カリフォルニアでは、巨大な蓄電設備の建設が相次いでいます。
      https://pv-magazine-usa.com/2020/08/13/vistra-approved-to-build-a-grid-battery-bigger-than-all-utility-scale-storage-in-the-us-combined/
      https://www.energy-storage.news/news/manufacturer-reveals-involvement-in-worlds-biggest-battery-energy-storage-s
      Moss Landingでは、300MW(原発一基分が1000MWですから、3分の1のサイズ)の蓄電設備が稼働中で、計画としては↑のURLにありますが、ここ数か月で+100MW、今後については計1500MW(原発1.5基分)くらいの蓄電容量の許可が出ています。なおここには1000MWのLNG火力もあります。
      https://www.utilitydive.com/news/cpuc-proposes-optimal-2030-system-portfolio-tripling-battery-storage-more/573075/
      ↑カリフォルニア州の電力を統括するCPUC(日本では経産省のようなお役所です)によれば、各電力会社に対し蓄電設備の設置を義務付けているそうです。

      >④そもそもEV製造にかかわる排出CO2量はガソリン車の約2倍である

      これは良く知られている事実です。しかし、
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/electric-is-cleaner-mazda-lca/
      私が検証したように、製造時排出は、走行時排出の差によって、9年間で逆転することが分かっています。また製造にかかる電力の低排出化、そして走行にかかる電力の低排出化により、総合的なライフサイクル排出量は確実に電気自動車のほうが少なくなることが分かっています。

      >⑤全固体リチウム電池までの在来型の陰極材は限られたグラファイトで製造されさらなる拡大は難しい

      そうですね、全固体電池については当サイトでも、独立した専門家にコメントをいただいていますので、よろしければご覧ください。
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/solid-state-battery-mr-amazutsumi-interview/

      >社会として適正運用を行うV2L(V2H、V2Bなど)、V2Gを社会システムとして、早く実装していけば「明るい未来」が来るのかもしれません

      おっしゃる通りですね。

    2. Geo_Panda様、なお当サイトではリンクをたくさん貼りすぎると自動的にスパムとご判定されるリスクがあります。もしリンクを付けてご投稿をいただいたのに、投稿が2-3日お待ちいただいても表示されなければ、一度リンクなしでその旨をご投稿いただければ、スパムフォルダを確認いたしますのでお知らせくださいませ。

  2. 初めましてこんにちは。
    我が家では、太陽光発電(2006年製京セラ(出力3.9kW))+蓄電池(2019年製長州産業(容量6.4kWh))+BEV (2011年式三菱アイミーブM (容量10.5kWh))を運用しています。
    家庭用200Vの充電器を使うと、最大30A (3kW/h)の電流で充電するので、自宅でフル充電するのに4時間弱ですから、晴天の日中なら電力会社の電気なしで充電可能です。
    ※太陽光パネルの出力は3kWに達しないことが多いので、電力会社の電気なしでと考えると、家庭用蓄電池は必須です。

    テスラ3のバッテリーが小さいモデルで54kWhかつ家庭用充電器が32Aらしいので、単純計算でフル充電に17時間必要ですから、カタログスペックで400km走れるBEVの運用は、夜間電力を利用しないとちょっと難しいですね。

    現状の日本では、BEVはCO2発生源を火力発電所にしただけとの批判ももっともなので、グリーン電力を心置きなく増やせる仕掛け(設置場所の然るべき規制とか、太陽光発電の電力が余った時の利用方法とか)があると良いですね。

    1. sakura-zはんに同じくソーラー付き一戸建て在住者ですー!京セラソーラー3.5kW+田淵電機EIBS7蓄電池7kWh+i-MiEV(M)10.5kWh
      現在自営業(電気管理技術者)で近場の仕事をこなしており昼間は自宅へ戻れるため卒FIT後も余った電力の売電は少なめですが…もう一台の2年後買替にリーフ中古30kWh狙うてますー…これならかなり自家消費できそうですし仮に一日で充電が終わらへんでも翌日充電で満タンになりゃよろし。

      変に政治批判してるより、電気主任技術者として自力で何とかできることを考えるのが趣味ですー今後進展でもありゃまた発言するかもですが。

  3. 安川様
    水素を化石燃料の改質や水の電気分解でしか生産できない限り、少なくとも車の燃料としての将来性はないということを、データを交えてお教えいただきありがとうございます。
    結局は電気しかないということで、世界中がリチウムイオン電池の高性能化やコストダウンに躍起になっている理由がよくわかりました。
    それにしても、日本人が発明したリチウムイオン電池のインパクトは凄いですね。

    1. bun134様、再度のコメントありがとうございます。水素は、おそらく再エネが買い取り抑制(海外ではcurtailmentと言って日常的に行われています)されるほど余剰になった際に、発電事業者が無駄を防ぐため、蓄電に加えて水素を電気分解して貯めておく、という使われ方はあるように思います。そのため、ここから先は私見ですが、日本の国として投資すべきなのは、格安で輸入液化水素をどうやって持ってくるか、ではなくて、どうやって最も高効率で水素を電気分解して貯蔵し、長周期での蓄電設備に仕上げるか、というあたりではないのかなと思います。この生成した水素は、水素燃料電池車で燃やしちゃうより、電力需要のピーク時に発電して売電したほうが高く売れるので、そういう使い方がメインになるのではないかと思います。

      私の推測では、日本の政策として、石油の代替エネルギーは水素だ→水素は輸入するしかない→輸入しても最初は使う人がいない→まずは車に入れて走らせればいいんだろ?というところから始まっているように思います。
      石油の代替エネルギーは水素ではなく、実は再エネです。そして、本来国力を注ぎ込むべきは、輸入水素や、それを運ぶ・貯蔵する・充填するインフラではなく、水素による長周期蓄電だと思うのです。

  4. 今後、ある時点でガソリン車の生産は禁止してEVに一本化しようという空気が世界中で蔓延しつつありましすが、ちょっと異常ではないでしょうか。
    そもそも、EV普及の動機はCO2の削減(実効性は甚だ疑問ですが)だそうなので、であればトヨタ社長が推す水素エネルギー車も候補に残すべく国として真剣に検討して欲しいです(お役人も水素の方が利権が大きそうなのですでに推してはいますが)。
    電池の巨大量産化投資ができなかった日本のEVはもう勝ち目がないので、むしろ水素エネルギー車に特化した方が未来が明るくなる気がします。
    トヨタミライの技術はすばらしいし、実用的な水素エンジンも完成しているようですので、ガラパゴスでもいいので日本はEVと水素の2本立てでいって、EVは大して儲からなくても、新興国とかEVに一本化した国では真似ができない車用燃料電池や水素エンジン車+ハイブリッド技術で稼ぐような戦略が必要です。

    1. bun134 様、コメントありがとうございます。

      >水素エネルギー

      これ、実態は、ほとんどが天然ガスからの改質による、水素製造に頼っています。ほぼ100%です。これでは燃費の良いガソリン車くらいまでしか排出を削減できませんので、実質のCO2削減効果はありません。
      もちろん水を電気分解して水素を作ることもできますが、この場合、水→電気→水素→電気→動力、という流れになります。一方電気自動車は、電気→充電→放電→動力、となり、どちらも電気からスタートすることになります。では同じ電力量でどのくらい走れるか、というと、水を電気分解して水素を得て走行する燃料電池自動車は、電気自動車のおおよそ1/3くらい走行できます。つまり、燃料電池自動車は燃費が3倍悪いわけです。電気代が3倍かかるのに(もちろん、ガソリン車より燃料費がかかるようになります)水素自動車を購入するか、というとそのはずはありませんので、電気分解への道はあまり近くはありません。

      では国はどうしようと考えているかというと、海外(主にオーストラリア)で石炭を燃やして水素を生成し、それをマイナス269℃の超低温まで冷却して液化し、液化水素の状態のまま日本まで運んで輸入しようとしています。液化水素はその超低温のまま、日本全国に輸送して水素ステーションに配備し、超低温に保ちつつ保管する、という形なのです。これはもちろんうまくいく可能性があるわけですが、現時点ではそもそも石炭を燃やして水素を作る大規模プラントは存在せず、それを運ぶ液体水素タンカーもまだ実用になる100分の1の規模のタンカーしかできていません。そのため、これから100倍のサイズの船を作る予定にしているのです。そのうえで、コスト計算は国の役人さんが計算したものだけで、実際にここまで大げさな仕組みを作り上げ、いくつもの世界初を成し遂げたうえで、電気自動車より確実に安くなるかは分かりません。
      現時点で、水素燃料は電気と異なり、供給・輸送・貯蔵の三つのインフラが、日本を含めどの国にも存在しません。ここから、インフラを普及させずして、自動車だけ作っても売れることはないでしょう。

      さて最後に水素エンジンですが、これは完成しているとは言えない状況です。
      当然分かっていることですが、水素は電池と同じく、エネルギー密度が高くはありません。現時点では
      https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1322009.html
      満タン50kmくらい走行できるということです。

  5. わたくし、管理人さんに認知されていたんですね、お恥ずかしい(笑)
    このような記事を書くと良く「アンチ」だと言われるのですが、わたくし自動車なんてガソリンだろうが電気だろうが水素だろうが何でもよい単なるクルマ好きです。

    わたくしのカーライフ上BEVはそぐわないのですが、趣味車でずっと2シーターオープンカーに乗っておりまして、万が一700万円以内でBEVの2シーターオープンカーが世に出ればデザイン次第で買います!遊園地の電動ゴーカート楽しかった!重量はともかくバッテリーの積載位置から考えて慣性モーメント、低重心・・絶対楽しいですよね!

    余談すみませんでした。

    >充電はガソリン給油より便利である・・

    この部分だけはどうしても意見が異なりますね、これは消費者それぞれであり何とも言えない、普通に考えれば「自宅敷地内に駐車場有す方のみ」がBEVが利便性に勝てる層だと思います。
    仮に敷地内に駐車場が有る方、または月極駐車場に充電設備が設置されても多くの消費者は長距離走行時などの「欠点」を考慮しガソリン車で不便で無ければわざわざBEV購入するとは限りませんよね。

    現状消費者の認識は「充電=時間が掛かる面倒な行為」です、これを覆す可能性が有るのは「自分でBEVを所有する」しか有りません、クルマはスマホのように簡単に買えるものではない高額商品ですので、一般的消費者認識からくる「充電=面倒=購入対象にはならない」と言う状況が変わるのはそう簡単では無い、つまり普及品としてスマホのようにはいかないと思います。

    1. そえとも 様、コメントありがとうございます。恐らく、勘違いされているのだと思います。

      >①「自宅敷地内に駐車場有す方のみ」がBEVが利便性に勝てる層だと思います。

      そうです!なので、日本の住宅環境において、およそ半分の世帯はこうなるわけです。つまり、50%は利便性が高いBEVを、コストが安くなれば選択しない理由はなくなります。

      >②仮に敷地内に駐車場が有る方

      敷地内にはない方、というか月極を外に借りている方ですよね。
      こういう議論って、自工会の豊田会長も良くされているのですが、「現時点で永久に何も変わらないという前提で」あれば、もちろんそうなんです。
      BEVの導入には自宅充電はほぼ必須と言っても言い過ぎではありません。
      https://blog.evsmart.net/home-charging/case-study-6-monthly-lease-parking/
      ↑このように、月極駐車場にも充電器は設置できるのです。設置すればガソリン車より利便性が高くなる。そういう方は多いんです。

      >多くの消費者は長距離走行時などの「欠点」を考慮

      これも上と全く同様です。「現在」高速道路の多くのSAPAには急速充電器が設置されていますが、それらは多くが1基しかなく、100kW以下の中出力のものばかりです。しかしこれは変化します。世界では、超急速充電器が経路充電のスタンダードになりつつあります。日本でも、テスラは日本全国に次々と超急速充電器を設置していっています。
      https://www.tesla.com/jp/findus/list/superchargers/Japan?redirect=no
      ↑28か所あり、今年も増設される予定だそうです。

      そのため、欠点が、欠点で無くなる時が近いうちにやってくるわけなんですよ。
      仰ることはもちろん理解していますので、将来の動向もしくはその速度について合意てきていないだけ、ということなのだと思います。
      将来的に全SAPAに超急速充電器ができ、自宅充電率が100%になったら、別にガソリン車選ぶ理由はないんです。そして、世界はその方向に確実に動いていっています。

  6. 最近のEVブーム、我々ごく通常の消費者から見ると脱炭素の側面から各国の政府,造り手側のメーカー・・・一方的な側面の論調しか聞こえてこない、熱狂してるのはそれに呼応した報道と、ごく一部に存在する「EV信者」のみであり、一般消費者が何を求めてるのかという市場の原理がまったく無視されているようにしか見えない。

    クルマという「便利な移動の道具」として消費者は何を基準に選択するのか?それは様々であるが、多くの消費者は「脱炭素」とか「電動化」などクルマの選択の理由として興味は無い訳で、今のEVに「充電」とう行為が伴う以上BEVを選択する消費者は少ないのが現実ではないでしょうか?

    BEVが次世代の主流となりえる車で有るならば、今頃リーフは大ヒット車、トヨタは即座に参入しその強力な販売網でシェア奪ってます、更に自動車産業の構造改革が瞬く間に起こり、交通インフラやエネルギー構造変換も急速に起こっているでしょうね、その予兆も無いのはBEVが消費者に受け入れられていないという事でしょう。

    個人的には現在の「EVシフト」は的外れな言葉であり、今後はクルマの選択肢の一つとしてBEVのシェアが伸びてくるであろう・・が正しいと思う。

    1. そえとも 様、いつもコメントありがとうございます!

      >多くの消費者は「脱炭素」とか「電動化」などクルマの選択の理由として興味は無い

      これは「現在の日本においては」おっしゃる通りだと思います。消費者の意識変化は少しずつ起こっていますよ。
      https://ec.europa.eu/clima/citizens/support_en
      ↑消費者の意識も変わりつつあります。一番この点で進んでいるのは欧州の消費者です。
      https://www.robeco.com/en/media/press-releases/2021/robeco-survey-reveals-big-investor-shift-on-climate-change-and-decarbonization.html
      ↑日本でも、変化に敏感な若者の意識は変わってきています。
      https://www.robeco.com/en/media/press-releases/2021/robeco-survey-reveals-big-investor-shift-on-climate-change-and-decarbonization.html
      ↑消費者より早く時代の流れをキャッチする必要のある投資家は、すでにほとんどの機関投資家が脱炭素を書くべからざる重要なファクターとして認識しています。

      >今のEVに「充電」とう行為が伴う以上BEVを選択する消費者は少ない

      充電はガソリン給油より便利であることは、以前もお伝えしたと思います。多くの方は、ガソリンを給油するより、充電のほうが短時間で済みますし、わざわざガソリンスタンドに行かなくていいという点は利便性が高いと言えます。
      自宅充電ができない方にとっては、仰る点はその通りではないかと思います。しかし、日本の約半数の世帯にとっては、自宅充電は設置すれば済むだけの話であり、それほどハードルが高いものではありませんよね。

      >更に自動車産業の構造改革が瞬く間に起こり、交通インフラやエネルギー構造変換も急速に起こっているでしょうね、その予兆も無い

      当サイトでもお伝えしている通り、テスラは年々1.5倍のペースで販売を伸ばしています。
      https://www.tesla.com/ja_jp/inventory/new/m3?redirect=no
      ↑日本ですら、テスラの新車はすべて売り切れとなっており、予約しないと購入できない状況が続いています。
      自動車産業の構造改革は待ったなし、だと思います。その予兆は、すでに起こり始めており、最も早い大手自動車メーカーではアウディが、2026年に新規エンジン車の開発を終了し、その後電気自動車専業になる予定です。このほか、ジャガーランドローバーとMINIも、電気自動車専業を宣言しています。さすがにこれを「予兆なし」とは言えないように思います。

    2. そえともさんは、現在の日本のマジョリティ層以降の層のお話をされています。
      一方で安川さんは、現在の世界のアーリーアダプター層と日本のイノベーター層、及び未来のお話をされてますね。
      どこを見て話されているかが異なっているだけで、どちらも正解に思えます。
      故に、そえともさんは勘違いはしていず、BEV所有者ではなさそうなのに国内の現状分析を的確にされていると思います。

      テスラ車所有者は、基本自宅充電で遠出時はスーパーチャージャーが使えますので、BEVを不便に感じる事が皆無なのでしょう。よってBEVに心酔する傾向が強いのかもしれませんね。
      国産EVだと仰る通り遠出時はほぼ1基しかないSA/PAの充電器を使いますので、不便さを肌身に感じられるシチュエーションが多くあります。

      日本の高速道路の充電インフラは5年位停滞中ですので、この先世界と同様に未来に向かう事が出来るのかは、個人的には期待薄です。

    3. シーザー・ミラン様、コメントありがとうございます!

      >この先世界と同様に未来に向かう事が出来るのかは、個人的には期待薄

      重要なのは、ここですよね。
      私の認識はもちろん私見ではありますが、そうではない、という意見です。
      というのは、すべての業界・事業においてボーダーはなくなってきているからです。
      日本が人口問題で働く人口不足になったら、海外から外国人が流入し、日本企業も海外の人材を直接、海外に在住のまま雇用するようになります。
      テスラが日本国内で充電スタンドを増設し続ければ、テスラの売り上げは増加し続け、その結果テスラの充電ネットワークを使えるようにした中国車が流入し、販売を増やしていきます。すでに中国車は、テスラモデル3が日本最大の台数規模で、輸入されてきています。最初は月数百台でも、そのうち桁が変わってしまうと思います。
      そうなれば、日本市場を重要視している自動車メーカーは、「充電スタンドが車の一部だ」という事実に気付き始めるでしょうし、生き残りをかけて充電スタンドを設置していくと思います。そうしなければ、生き残れないのです。だってBEVは安くて性能が良いのですから。

      それらの変化がどのくらいの速度で起こるかはなかなか予測が難しいと思います。しかし、BEVの未来が来ない、と考えるのは、さすがにないかな、と考えています。

  7. 日本人の多くは、EVイコールエンジンが電池に変わっただけの車という認識を持ってしまっているから、ここの認識がもう古いという内容の記事にならないかなぁ。特に国土の広さが、日本と比べ何倍もあるアメリカ人がEVをどう評価しているのかという点から論じてほしいな。

  8. 日頃から世界をクルマを透して見ているモータージャーナリストの方々は、地球温暖化を食い止めるために世界はEV化に進んでると理解してるようだが、まちがった 解釈です。

    じつはクルマ以上にCO2を発生してるのは「発電」です。発電を化石燃料から再生可能エネルギーにしたら、化石で最安の石炭発電より太陽光・風力発電のほうが、圧倒的に安くなった。つまりガソリン車よりEVのほうが走行コストは圧倒的に安く、環境にもやさしい存在となった。さらに性能もEVのほうがガソリン車を圧倒的に上回る。こうなると自動車会社は、早いとこEVにシフトしないと生き残れなくなる。

    日本だけEV化がすすまないのは、再エネ発電を悪者にしたい電力会社の意向にそって賦課金制度をつくった経産省のお役人の狙い通り、日本では再エネ発電コストはもっとも割高となり、電気代に上乗せ負担となるので、国民はEVを敵視するようになった。

    1. 完全に同意します。
      そう、EVのほうが高性能だからEVが欲しいのです。

      それに発電は再エネによって最終的にかなり低い環境負荷になりますが、「そもそも燃やしちゃってる」ICE車はそこから先に行きようがない

    2. 再エネ賦課金の恩恵にあずかる自宅ソーラー付一戸建て在住i-MiEVユーザーですー!
      電力会社が嫌いなら完全オフグリッドハウスを目指せばよく、当家も京セラ3.5kWソーラー+田淵電機EIBS7蓄電池+i-MiEV(M)10.5kWhで仮に災害停電に遭うても2日程度は何とかなる体制ですが。
      確かにi-MiEVは低速トルクの太さとアイ譲りの優れたボディの相乗効果で高性能になっており、前から欲しかったところへ思わず中古が手に入った次第。さらに自身化学物質過敏体質なんで排気ガス問題もクリア。医食同源思想のある僕にはベストマッチですわホンマ。ましてコロナ禍で健康への意識も猶更高まってるから今更ICEへ戻るつもりなどあれへんですが!

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この記事の著者


					舘内 端

舘内 端

1947年群馬県生まれ。日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務後、レーシングカーの設計に携わりF1のチーフエンジニアを務めるとともに、技術と文化の両面からクルマを論じることができる自動車評論家として活躍。1994年に日本EVクラブを設立(2015年に一般社団法人化)し、EVをはじめとしたエコカーの普及を図っている。1998年に環境大臣表彰を受ける。2009年東京~大阪555.6kmを自作のEVに乗り途中無充電で走行(ギネス認定)。2010年テストコースにて1000.3kmを同上のEVで途中無充電で走行(ギネス認定)。著書には『トヨタの危機』(宝島社)、『ついにやってきた!電気自動車時代』(学研新書)など多数。

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