世界の自動車販売に占めるEVの割合がついに19%に!

2023年6月の世界におけるプラグイン車の登録台数が126万台となり、自動車市場全体の19%のシェアを獲得しました。BEV単体で13%となります。アメリカのメディア『Clean Technica』から全文翻訳でお届けします。

世界の自動車販売に占めるEVの割合がついに19%に!

【元記事】 World EV Sales Now 19% Of World Auto Sales! by José Pontes on 『Clean Technica
※ 記事中グラフ画像は Clean Technica の元記事から引用。

ハイブリッドを含めると1/3が電動化車両

2023年6月の世界におけるプラグイン車(PHEV+BEV)の登録台数は前年同月比で38%増加し、126万台に上りました。内訳を見ると、プラグイン車は自動車市場全体の19%のシェアを獲得しました(BEV単体で13%)。これは世界の自動車市場が確実にEVシフト期に突入していることを意味します。さらに、プラグインではないハイブリッド車も90万台あるため、世界の登録台数のほぼ3分の1が電動化車両ということになります。

今年度(1〜6月)ではプラグイン車の市場シェアが15%(BEV単体で10%)に達しています。

BEVは、3月のプラグイン車登録台数の7割を占め、年初来累計で見ても7割のシェアを維持しています。

余談ですが、燃料電池車(FCEV)は前年比25%減となっており、2023年も販売台数減で終われば、2年連続の減少となります。2021年が燃料電池車のピークだったのでしょうか?

6月に世界で最も売れたEVトップ20

6月のベストセラーを見ると、上位は予想通りのメンツでした。テスラ・モデルYが他を圧倒し、次いでテスラ・モデル3がBYD Song(宋)やQin Plus(秦プラス)を抑えて2位に。テスラは四半期末に登録台数のピークを迎えるため、ランキングが上昇しやすいという側面もあります。とはいえ68,850台と例年以上の成績だったとも解釈でき、テスラのミッドサイズセダンは22年3月以来の好成績を記録することができました。

プラグイン車の世界販売台数トップ20(2023年6月)

記録的な成績といえば、注目は1万9740台を登録した10位の五菱Bingo(ビンゴ)です。この小型EVは五菱のサクセスストーリーになりつつあるようです。12位には最近デビューしたBYD Seagull(シーガル)がランクインしており、BYDで最も小さなモデルが間もなくトップ10入りすると予想されます。

15位のLi Xiang(理想汽車)L7の登録台数は13,107台。フルサイズSUVで首位の座についているBYD Tang(唐)を抜き去る勢いです。その他の記録的な成績といえば、トップ20にぎりぎりランクインした18位のBYD Destroyer 05(デストロイヤー05)の10,224台と、17位のDenza(デンツァ)D9、19位のMG 4の9,764台です。

今月のサプライズのひとつは、Geely(吉利汽車)の新ブランド、銀河(ギャラクシー)のL7が正式にローンチしたことです。この新たなPHEVモデルはデビューとともに世界第20位のポジションを獲得しましたが、果たしてこの順位をキープすることができるのか疑問です。

トップ20圏外でも話題はたくさんあります。まずは大型モデルから、順にコンパクトモデルへと話を進めていきます。Li XiangはL7が成功したにもかかわらず、同社の他の巨大モデルも、エスカレードのようなL9の登録台数が8,451台、L9より少しマイルドなデザインのL8 SUVは9,618台と、好調を維持しています。

ミッドサイズカテゴリーでは、Leap Motor(リープモーターまたは零跑汽車)のSUV、C11が3ヶ月連続で記録を更新したのが最大のニュースです。新しく登場したEREVバージョンのおかげで8,934台の登録台数を記録し、苦境に立たされている同社にとってありがたい結果となりました。

コンパクトカテゴリーに関しては、Great Wall(長城汽車)のOra Good Cat(オーラ・グッド・キャット)がスランプから復活したことが素晴らしいニュースです。今月は輸出市場での台数増と中国国内での納車台数の増加により、ここ1年半で最高の登録台数となる9,061台を記録しました。これはVW ID.3(登録台数9,245台)と同じ販売ペースです。フォルクスワーゲン系列にもグッドニュースがあり、アウディQ4 e-tronが過去最高の9,519台を記録したほか、コストパフォーマンスの王様シュコダEnyaq(エンヤック)も過去最高の7,293台を記録しました。

今年度の累計EVトップ20

累計(YTD)ランキングでは、テスラ・モデル3が2位に返り咲き、テスラが再び1位と2位を独占したことがビッグニュースでした。

プラグイン車の世界販売台数トップ20(2023年1月〜6月)

残りのランキングでは、先月3位だったテスラ・モデル3が先月2位のBYD Songを400台上回ったため、テスラのミッドサイズセダンは四半期末の爆発的な成績も相まって、中国のSUVから2位から追い落とすことができました。

4位にも順位変動があり、BYD Qin Plusが1つ順位を上げました。

その他の順位は変わらず、15位だけ初登場のコンパクトカー、五菱Bingoがランクインしました。

売れ筋ブランド

5月のBYDの販売台数は24万台を記録し、四半期末のテスラをも打ち負かす大記録となりました。とはいえテスラも健闘し、21.1万台と過去最高を記録しました。

メーカーごとのEV世界販売台数ランキング(2023年6月)

完全に別世界のトップ2社から少しランキングを降りた5位はGACで、45,028台と4ヶ月連続で過去最高の登録台数を記録しました。テスラ・ロードスターキラーと呼ばれている(笑)次期Aion(アイオン)SSRでランキングがどうこうなることはないでしょうけど、GACのもう1つの次期モデル、超空力的なAion Hyper GTスポーツセダンは、フルサイズセグメントで実力を発揮する可能性があります。GACのAionブランドにとって、今、良い風が吹いています。

8位のLi Autoもまた、ラインアップ全体が好調だったおかげで、登録台数が3万2,000台を超え、3ヶ月連続で過去最高を記録しました。新興ブランドのLi Autoはまだ供給が追いついていないため、サプライチェーンの強化に伴い、今後も頻繁に記録を更新し続けることが予想されます。しかし、来年ローンチ予定のミッドサイズモデル、L6およびL5が登場したら、本格的な成長が始まるでしょう。

ヒョンデは、アイノニック5および6が好成績を収めたことにより、ランキングの後半(11~20位)で過去最高を記録した。

ブランド・ランキングに関する今月最大のニュースは、、、あのトヨタが記録的な成績を残したことです。

トヨタの登録台数は14,529台で、2ヶ月連続で過去最高を記録したことになります。理由は主に中国での事業(bZ4XとbZ3)の拡大によるもので、RAV4 PHEVと新型プリウスPHEVが堅調に推移したこともサポート要因となっています。トヨタオワコン説を唱えていた人は、少し話を盛りすぎていたのかも知れません。

ステランティスでは(米国インフレ抑制法の優遇措置もあって)ジープのラングラーPHEVが好調な販売を見せ、グランドチェロキーPHEVも生産能力を拡大したため14,587台の登録台数を記録しました。これは、ジープが米国ライバルメーカーのフォードやシボレーを常に上回る成績を出していることを意味します。また、ジープ・アベンジャーEVが最近ヨーロッパでローンチされたため、数カ月後にはヨーロッパでの販売台数も回復すると予想されます。ステランティスは今後も登録台数記録を続伸させるために必要な材料がすべて揃っていると言えるでしょう。

メーカーごとのEV世界販売台数ランキング(2023年1月~6月)

1月からの累計ランキングでは、順位に関して大きなニュースはありませんでした。BYDがテスラを抑えており、両社合計で世界のプラグイン車市場の3分の1以上を占めています。

次元の違う上位2社の遥か下に、安定の3位にはBMWがつけており、その下には5月にフォルクスワーゲンを抜いた注目株、GAC Aionがいます。果たしてGACは3位のBMWを表彰台から追い落とすことができるのでしょうか?

Li Autoのランキング上昇も勢いが衰えず、8位に浮上しています。Li Autoは間違いなく2023年の最も熱い新興ブランドです。

ランキング後半では、ヒョンデが1つ順位を上げて12位に入りました。

アライアンスごとのプラグイン車ランキング(2023年1月〜6月)

OEM別の登録台数を見ると、首位のBYDは21.9%から21.4%へとシェアを落としました。一方、テスラは予想通り上昇し、15.2%へとシェアを伸ばしました。

1年前と比較すると、BYD(シェア6%増)とテスラ(1.6%増)は共に大きな成果を上げたと言えます。なおテスラに関してはモデルYの活躍のおかげなのに対し、BYDの場合は常に新モデルを投入し続けたことが要因でした。

3位はフォルクスワーゲン・グループで、4位のGeely・ボルボに対してリードを保っています。前年同月比で大きく躍進したのは「中華フォルクスワーゲン・グループ」で、総合6位だった前年同期比で0.5%シェアを伸ばしました。

5位のSAIC(上海汽車)(5.5%)については、最近Wuling Bingoが売れているため、販売台数の減少に歯止めをかけることができました。

SAICの下にはステランティス(4.8%)が6位につけており、7位のBMWグループ(4.3%)を大きく引き離しています。

アライアンスごとの完全電気自動車ランキング(2023年1月~6月)

BEVに限ると、首位テスラが5月の21.2%から21.8%へと上昇し、BYD(15.4%から減少して15.1%)に対して大きなリードを保っているため、BYDが今年中にテスラを抜いてBEVの王座につくことはなさそうです。

ランキング下位は順位の変動が見られ、フォルクスワーゲン・グループがSAICを上回って3位の座を取り戻しました。今年の後半もこの2社の間で激戦が繰り広げられると予想されます。

5位のGeely-ボルボは6%から5.8%に減少しました。4位のフォルクスワーゲン・グループに追いつきたいところですが、まだ道程は長いようです。それよりも、Geelyは後方から迫る6位のGAC(5.5%から5.4%に減少)に抜かれないよう注意したほうが良いでしょう。

翻訳/池田 篤史(翻訳アトリエ)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. EV市場のエポックメイキングな事象を割と細かいところまで日本語で紹介されている当サイトは興味深く拝見しています。
    自動車市場のEV化の速度と度合(どこまでいくのか)、関連産業の変化について興味を持っています。定年退職後の身ですが個人的にブログを立ち上げたところです。当方ブログで当記事をリファーさせていただくときにURLのはめ込みは可能でしょうか。

    EVシェアが19%というのはイノベーション理論でいえば既にアーリーマジョリティに差し掛かってます。量産EV市場が2010年のリーフから始まったとすれば、13年程でイノベーター、アーリーアダプターの両ステージを経過したことになり後6-7年でアーリーマジョリティの終わり、市場シェア50%に達することもあり得ようかと思います。ただし、一方で政策・制度的支援体制の動向如何という面もありますので、このあたりの動向にも注目しています。

    1. 猪本 さま、コメントありがとうございます。

      はい、引用元を明記いただければOKです。
      よろしくお願いいたします。

      日本における市場シェアの拡大。
      多くの人が欲しくて買える車種選択肢の増加次第、と思っています。

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この記事の著者


					池田 篤史

池田 篤史

1976年大阪生まれ。0歳で渡米。以後、日米を行ったり来たりしながら大学卒業後、自動車業界を経て2002年に翻訳家に転身。国内外の自動車メーカーやサプライヤーの通訳・翻訳を手掛ける。2016年にテスラを購入以来、ブログやYouTubeなどでEVの普及活動を始める。

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