テスラ2024年第1四半期の台数速報〜前期を下回るもQ1実績で世界一は確保

世界の電気自動車市場を切り拓いてきたテスラ社が、2024年4月2日(現地時間)、2024年第1四半期の生産台数と納車台数の速報を発表しました。生産、納車はいずれも前期を下回り、前期の決算で予告した通りの結果になりました。速報をお伝えします。

テスラ2024年第1四半期の台数速報〜前期を下回るもQ1実績で世界一は確保

生産、納車のいずれも前期から減少

電気自動車(EV)メーカーのテスラ社は2024年4月2日に、2024年第1四半期(1~3月)の生産台数と納車台数の速報値を発表しました。

生産台数は、『モデルS/X他』が2万995台、『モデル3/Y』が41万2376台で、合計43万3371台となり、前期の49万4989台から12.5%減少しました。前年同期比でも1.7%減です。

納車台数は、『モデルS/X他』が1万7027台、『モデル3/Y』が36万9783台、合計38万6810台で、前期比20.2%減。前年同期比では8.6%減でした。

なお今期から、テスラ社の台数は、『サイバートラック』の生産が始まったことから「モデル3/Y」と「それ以外」で集計されるようになりました。サイバートラックの台数は公表されていませんが、今はまだ全体の台数に大きく影響しない程度の数と思われます。

生産台数などが前年同期を下回ったのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックでテスラ社の工場が生産停止した2020年の第2四半期以来、およそ4年ぶりです。

速報発表を受けて、テスラ社の株価は一時6.8%下落しました。

生産台数推移

写真をクリックすると拡大表示します。

納車台数推移

台数減少の要因はさまざま

テスラ社は1月の決算発表時に、2024年の台数の伸び率は2023年に比べると「著しく低くなるだろう」と予告していました。ギガファクトリー・テキサスで次世代車両の立ち上げに取り組むためというのが理由です。

実際には、ギガファクトリー・テキサスに加えて、フリーモント工場で新型モデル3の生産ライン増強の準備があったこと、「紅海の紛争による航路迂回」とベルリン工場での放火で工場閉鎖を余儀なくされたことも原因だったと説明しています。

加えてイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は2月、X(旧ツイッター)に、「ほとんどの人は真冬に車を買いたがらないため、テスラは1000ドルのインセンティブを提供している」と投稿して、販売台数の減少を示唆していました。

またロイター通信は、大きな市場である中国ではライバル車が新型車を次々に投入している一方で、テスラ社のモデルが古くなっていること、米国では高金利で高額商品の消費意欲が減退していることを理由に挙げています。

テスラ社は販売のカンフル剤として昨年から値下げを繰り返していたほか、今年2月には北米で1000ドルの一時的な値引きも実施しました。

ただ、テスラ社の値引きはいったん終了しているようで、3月下旬から4月にかけて、北米では1000ドル、欧州では2000ユーロ、値上げを実施しています。

複数要因があるとすると、来期の業績も簡単に回復するとは言えないかもしれません。

BYDの落ち込みで台数世界一は確保

来期は、さらに状況が厳しくなるかもしれません。中国メーカーが低価格路線を定着させている様子が見えるためです。

一番大きなニュースは、スマホ大手のシャオミが発売した「SU7」でしょうか。3月29日に発売した直後から売れ始めたらしく、開始後の24時間で9万台近くの予約が入ったそうです(関連記事)。

またロイター通信によれば、BYDは同社のEVの中でもっとも廉価な「シーガル」の価格を5%引き下げ、6万9800元(約9700ドル)からとしました。とうとう1万ドルを切ってきました。

ほかに、日本などで「ATTO3」と呼ばれている「ユアン(元)・プラス」は12%近くの引き下げ率になったそうです。大きいですね。

もっともBYDの販売台数も頭打ちになっているようで、ロイター通信などは4月2日、2024年第1四半期のEV販売台数が前期比43%減の30万114台だったと報じました。このためテスラ社の第1四半期実績は、世界一ということになりました。

ちなみにBYD、過去最高の販売台数になった前期は52万6409台で、2023年通期では300万台を超えました。CNNは、このうち157万台がEVだったと伝えています。

販売が伸び悩んでいるから値下げを実施してきたのだと思いますが、それにしても大きな減少です。もっともBYDは、数値発表の前週に、2024年の販売目標を23年の20%増、360万台と発表。強気の姿勢を維持しています。

中国メーカーが低価格路線を突き詰めていくのか、それとも他の方法を考えているのか。いずれにしても世界のEV市場は、短期的にはなかなか厳しい競争状態になるのは間違いなさそうです。そういえばルノーやフォルクスワーゲンも、EVの価格を2万ユーロ程度に引き下げるための開発を進めています。

それでも、ロイター通信によれば、ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージング・パートナー、ジーン・マンスター氏はテスラ社の長期的な見通しについて、楽観的な姿勢を見せています。

EVが売れているのか、売れていないのか。視点によっていろいろなことが言えるのは確かですが、少なくとも激減しているわけではありません。

それにテスラ社の販売減がモデルの老朽化にあるのなら、新しくなったらまた伸びるのかもしれません。まあ、次期モデルの投入は2026年以降になりそうですが。

そんなわけで、台数減や値下げ攻勢が決算にどう影響しているのかが、次の注目ポイントです。テスラ社の第1四半期決算の発表は、現地時間で4月23日の予定です。

文/木野 龍逸

この記事のコメント(新着順)2件

  1. ポケモンカードでドアが開いてしまうという話を見ましたがアンチのデマですよね?

  2. BYDは前年同期比では13.4%増加しているようですし、欧州や東南アジアでも増加傾向ですよね。
    販売が芳しくないのは、日米だけといった感じがします。

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					木野 龍逸

木野 龍逸

編集プロダクション、オーストラリアの邦人向けフリーペーパー編集部などを経て独立。1990年代半ばから自動車に関する環境、エネルギー問題を中心に取材し、カーグラフィックや日経トレンディ他に寄稿。技術的、文化的、経済的、環境的側面から自動車社会を俯瞰してきた。福島の原発事故発生以後は、事故収束作業や避難者の状況のほか、社会問題全般を取材。Yahoo!ニュースやスローニュースなどに記事を寄稿中。原発事故については廃棄物問題、自治体や避難者、福島第一原発の現状などについてニコニコチャンネルなどでメルマガを配信。著作に、プリウスの開発経緯をルポした「ハイブリッド」(文春新書)の他、「検証 福島原発事故・記者会見3~欺瞞の連鎖」(岩波書店)など。

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