日中が合同で次世代超高出力充電規格『チャオジ』の発表イベントを開催

2020年6月19日、急速充電器の規格策定などを手がけるCHAdeMO協議会が、日中共同で規格制定を進めている新規格「Chaoji(チャオジ)」の開発状況について日中合同の発表会を開催。2020年内にチャオジ規格を制定する目標を明確化するとともに、2022年頃から新規格対応の充電器や電気自動車が登場する見通しが示されました。

日中が合同で次世代超高出力充電規格『チャオジ』の発表イベントを開催

※冒頭写真は、日本側代表の姉川尚史氏(チャデモ協議会会長)と中国側代表者によるオンライン除幕式の様子。

互換性の高い「チャオジ」で世界規格統一を目指す

6月19日、16時から東京で開催された説明会は、中国側の発表会場とオンラインでつないで実施されました。中国の会場では、共同開発の相手になる中国電力企業連合会(以下、中電連=中国の電事連に相当)や中国最大の電力会社である国家電網の幹部など、関係機関から多数の人が次々に登場し、中国国内における期待の大きさがうかがわれました。

日本側の代表として、チャデモ協議会の姉川尚史会長から、チャオジが「今年中に正式に発行される段階になった」という宣言コメントがあり、オンライン除幕式を実施。中国側の参加者を映し出す映像にはお祝いムードが溢れていました。

姉川尚史チャデモ協議会会長
吉田誠チャデモ協議会事務局長

現状としては、「チャオジは技術の規格が固まったことになります。これから自動車メーカーや充電器メーカーなどのチャデモ会員に技術の内容を展開し、意見を反映し、提言をできるかぎり採り入れて、中国とのすり合わせをして、年内には最終規格として発行したいというところです。技術的にはほぼ目安はついています」(吉田誠チャデモ協議会事務局長)ということです。

日中の急速充電器は、日本は「CHAdeMO(チャデモ)」、中国は「GB/T」という別々の規格を採用しています。また、欧米では「CCS(コンボ)」と呼ばれる規格(ヨーロッパとアメリカではプラグ形状などが異なる)が進められており、テスラはアメリカや日本で独自規格のスーパーチャージャーを展開するなど、世界全体では大きく分けて少なくとも4〜5種類の急速充電規格が並行して広がりつつあります。

チャオジは、各規格から発展させるための互換性を重視して開発。日本発のチャデモや中国のGB/Tはもとより、将来的には欧米で広がりつつあるコンボも含めた高出力充電規格として、世界統一を意図しています。

Chaoji調和に向けて〜チャデモ協議会資料

ところで、日本ではチャデモの高出力規格を「チャデモ3.0」と呼んでいますが、仕様の中身はチャオジと同一のものです。日本ではこれまでチャデモの名前で出していたので、現行の「2.0」からバージョンを上げて「3.0」という名称にしただけで、深い意味はないそうです。

念押しですが、チャデモ「3.0」とチャオジは、呼び方が違うだけです。名称が複数あるとややこしいので、この記事では「チャオジ」で統一して書いていきます。

実際にチャオジ対応の車を作る場合には、既存のチャデモ規格やGB/T規格などの充電器と互換性(アダプターやマルチアームなどによって旧規格の車両でも充電できるようにするなど)を持たせることになりますが、チャデモ協議会によれば、この時に必要な要件もチャオジの仕様書に明記されているそうです。同様に、充電器を作る場合の互換性もチャオジの仕様に含まれています。

とはいえ、チャオジに関する以前の記事でも説明した通り、日本と中国は共同開発に合意して進んでいますが、コンボ規格を進めるドイツはまだ高出力規格の共同開発には賛同していません。

発表会で質疑応答の時間があったので、チャデモ協議会事務局長の吉田誠氏に確認してみました。コンボ側は規格統一に賛同はしていないものの、チャオジ規格を推進する会議などには、日中はもとより、ドイツ、アメリカ、イギリス、インド、韓国、オーストラリアなど11カ国から59の企業や団体が参加。ヨーロッパのメーカーは、規格統一を拒否するというよりは、どちらになってもいいように対応を進めているのではないかということでした。

現在までにインドが強い興味を示しているほか、タイやインドネシア、台湾なども大きな関心を持って会議に参加しているそうです。今後、中国やインドが世界の中でも最大級の自動車市場になるであろうことは、チャオジにとって追い風といえるでしょう。

チャオジを推進する側としても、コンボ規格を否定して新規格を押しつけるのではなく「市場に決めてもらえばいい」というスタンスであると、吉田事務局長はコメントしています。高出力規格としてチャオジに対応する充電インフラや電気自動車が世界に広がり「争っても無意味」となるように新規格の普及発展に努めていく意思が示されました。

チャオジ発展へのロードマップ〜チャデモ協議会資料

基本的な仕様を共通化できれば、コネクター部分が違っていてもアダプターを使ったり、充電器本体から複数の規格のコネクターに応じたケーブルを設置するなどの方法で対処できる範囲が広がり、インフラ整備などのコストも下がります。ユーザーとしても、モノを作るメーカーとしても、規格はできるだけ統一されていた方がメリットが大きいことは間違いありません。

そうは言っても、チャオジ規格が世界統一を成し遂げるのは容易ではありません。そもそも規格の標準化は単に技術的な優位性だけで決まるのではなく、関係各所との交渉やその中で出てくる意見のすり合わせ術、政治的な駆け引きなども大きく影響します。

こちらの技術の方が優れているんだ、と主張したところで意見は通らないですし、また、先行しているからそこに決まるというものでもありません。交渉術に長けた欧米勢を日中連合がどのように巻き込んでいけるのか、今後の動向に注目です。

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現状のチャオジ参加企業、団体などの一覧(チャデモ協議会資料)

チャオジは何が優れているのか?

900kWという圧倒的高出力

世界統一を目指す上で、チャオジにはいくつか優れた特徴があります。まずは、最大900kWという大出力に対応していることです。吉田事務局長によれば、現在、世界的な低圧電力供給の限界が1500V程度。一方、物理的に流せる電流量の限界は600Aとされていることから、現状で考えられる上限として「1500V×600A=900kW」という出力が設定されたそうです。現状、コンボの最高出力はアメリカのCCS1が200kW、ヨーロッパのCCS2が350kWなので、圧倒的な高出力といえるでしょう。

また、現在のリチウムイオン電池の充電時の技術的限界が3C(1時間で満充電になる出力が1C)程度であることから、例えばバッテリー容量が300kWh程度の大型バスなどに今の乗用車と同じ20~30分を目安に充電するのなら、900kW程度が必要ということもあったようです。

ちなみに、日本の低圧電力供給の限界は750Vなので、チャオジの規格が900kWとはいえ、日本で上限までの出力を使うにはハードルが高いかもしれません。まあ、最大が900kWというだけなので、それ以下で使えばいいだけですが。

高出力なのに充電プラグはコンパクト

上が現行チャデモ、下がチャオジ(チャデモ3.0)に充電プラグ。(チャデモ協議会ニュースリリースから引用)
充電口もチャオジの方がコンパクトであることがわかります。(チャデモ協議会ニュースリリースから引用)

圧倒的な高出力を実現しながら、現行のチャデモやGB/T、欧米のコンボと比べても、車両に接続する充電プラグがコンパクトに設計されているのも、チャオジの大きな強みといえます。

チャデモ「1.0」の50kW充電器でも、高速道路のSAやPAなどでは充電口が車両のどこにあっても届くよう重くて長いケーブルの扱いにうんざりすることがありました。チャデモ「1.2」の90kW充電器では、ケーブルがさらに太くて重くなっています。

チャオジではケーブルとプラグを液冷にしたことでコンパクト化できたそうです。テスラのコネクターのコンパクトさ&扱いやすさには及ばないまでも、現行チャデモよりも扱いやすくなることは、EVユーザーとしても大歓迎です。今後、電気自動車が幅広いユーザーに支持される乗りものになっていくためにも、充電ケーブルを扱いやすくすることは大事な課題といえるでしょう。

900kWという超高出力はどう使うのか?

『バッテリーの劣化から考える電気自動車選び』という記事で紹介した、現在、市場に出回っているおもな電気自動車各モデルの最大充電速度のチャートをご覧ください。

過熱したリーフの最大充電速度(出力)は推定値です。

テスラモデル3が250kW、ポルシェタイカンが270kWに対応していますが、市販の乗用車タイプの電気自動車が受け入れ可能な出力は、おおむね100〜150kW程度です。今後、ある程度電池が進化するとしても、乗用車サイズのEVが搭載する電池容量は多くても100kWh程度が合理的でしょうから、900kWという超急速充電はさほど必要ではありません。

発表会でも、900kWという超高出力は、トラックやバスなどの大型EVを考慮した仕様であるという説明がありました。ただし、現在のバッテリー価格やEVの特性を考えると、大型トラックやバスが長距離を走りながら急速充電器を使用する状況が急激に増えるかと言われると、微妙なところがあると感じます。内燃機関と電動の適材適所はあるのではないでしょうか。

ただし、900kWまでいかなくても、例えば300kWや500kWの出力で、なおかつ互換性をもつチャオジ規格の充電器には、新規設置のメリットがあると言えそうです。

吉田事務局長からは「開発から市場投入まで2年程度かかるとして、チャオジを採用した電気自動車(EV)が出てくるのが2022年頃、それに合わせて充電器が出てくるのではないか。そして2030年代半ばくらいまでに、現在の急速充電器の規格がチャオジに準拠したものに切り替わっていくことになるだろう」という見通しが示されました。実際に市場で運用される出力がどのくらいになるかはさておいても、プラグやケーブルがコンパクトになるのであれば、新規格への進化は喜ばしいこと。少しずつでも進んでほしいと思います。

はたして、自動車メーカーや充電器メーカーが前向きに取り組んでくれるのか。記者会見で日本のメーカーの反応を質問したところ「デモ機を設置してもいいという大型車メーカーや、バラバラに作るよりはいいと賛同している乗用車メーカーも複数あり、(規格統一が)やりやすい土壌は作れているのではないか」(吉田事務局長)ということでした。

いくら素晴らしい規格が決まっても、実際にその規格を採用した電気自動車や急速充電器が発売されなければ、日本の中でチャオジはまさに「絵に描いた餅」になってしまいます。たとえば、最大出力が400kW(400A×1000V)のチャデモ「2.0」は、すでに規格が発行されて何年か経っていますが、日本では対応した電気自動車や急速充電器がありません。

高出力のチャオジ規格がきっかけとなって、日本製の電気バスやトラックが続々と登場するのであれば、有意義なことだと思います。乗用車にも100kWで急速充電できる車種が出揃い、チャオジでもチャデモ「2.0」でもいいので高速道路のSA、PAなどにも5台とか8台が同時に充電できる急速充電スポットがあちこちに登場する、といった近未来が訪れるよう、日本メーカーの奮起に期待したいところです。

(取材・文/木野 龍逸)


4 thoughts on “日中が合同で次世代超高出力充電規格『チャオジ』の発表イベントを開催”

  1. こんにちは。アイミーブないのが悲しいですが(T_T)過熱したリーフのジョークは笑っちゃいましたwww幸い飲み物なかったので吹きませんでしたが。
    今後日産三菱が出すであろう電気軽自動車は90kW以上出るようにして欲しいですね、当然東芝SCiBなら過熱問題が起きにくくリーフのジョークにはならないでしょうが。
    とはいえ高圧電気屋的にあまり急速充電が普及するのも不安の種。配電設備の増強が必要ですからね…むしろそれを防ぐべく集合住宅・工場・事務所・商業施設・テーマパークなどの駐車場設置への普通充電器(目的地充電)が重要じゃないですか!?少なくとも「過熱したリーフ」の悲劇を減らす有効手段として。
    太陽光発電所へのV2H型充電設備設置で電圧変動を抑制する手段も電気技術者として要望したい手立て。むしろ法整備で太陽光発電所へV2H設置義務化などしてしまえば電力面の苦労も半減しますよ!?電力OBが言うから間違いあるまい。
    あと現在発売されている電気自動車の直流電圧(電池電圧)は日本だと殆ど400V以下(アイミーブMに至っては270V!)なので今後発売される電気自動車はだんだん電圧が上がっていくんでしょうか!?

  2. Chaoji、大型車向けということなら
    すでに生産されているe-Canterが思い浮かびます。
    セブンイレブンの配達用に採用されているということで、
    車輌のChaojiコネクター対応と配送先のセブンイレブンに充電器を設置するのがよろしいかと思います。
    乗用車対応はその後でゆっくりやってください。
    e-Canterの最大航続距離は精々100km程度でしたから高速道路のSAPAには不要でしょう。
    道の駅も同様です。

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