スズキのEV軽トラ実証実験(関連記事)を静岡県浜松市まで取材に行くため、試乗を兼ねて広報車をお借りしたのがスズキの電気自動車である「eビターラ」。筆者としては初めて長距離を乗った印象をレポートします。
いきなり、USBポートの配置に疑問を感じてしまった

研究所の玄関ロビーにはJAPAN MOBILITY SHOW 2023に出展された軽ワゴンEV「eWX」などの電動モビリティが展示されていました。
スズキの広報車は神奈川県横浜市にある横浜研究所で管理されています。今回の試乗スタートはこちらからです。
さて、走り出してから充電用のUSBケーブルを差し込もうと思ったら、また例の「苦行」に遭遇しました。先日借りたBYDシーライオン6もそうだった(関連記事)のですが、eビターラはインテリアにフローティングコンソールというデザインを採用しています。ダッシュパネルからセンターコンソールボックスまでを橋渡しして橋の上にセレクトスイッチやモードスイッチなどを配置しています。

それはいいのです。問題はUSBポートの配置です。USBポートはフローティングコンソールの下に置かれています。この位置だと、手探りで挿すのが「苦行レベル」の難しさになってしまうのです。この場所を有効利用したいとか、ほかに場所がなかった、ポートを目立たせたくなかった、などの理由が考えられますが、シートに座った状態で挿せないのは使い勝手としてはNGだと感じます。利用機会が多いUSBポートは、もっと使いやすい場所にあるべき装備です。助手席乗員がやろうと思ってもかなりやりづらいですから間違った配置といっていいでしょう。
エコQ電のスポットを探して急速充電

使った後のケーブルはきちんと片付けましょう。
借用したeビターラのSOCは80%でした。この日は用事があったので直接帰宅せずに、東京の多摩地区に行きましたが、時間が余ったのでエコQ電ネットワークの急速充電器を探して充電しました。スズキは自社の充電サービスにエコQ電の充電器を選んでいるため、渡された充電カードもエコQ電のカードです。エコQ電の充電スポットはアプリを使えば簡単に検索できますし、アプリ内から経路案内も設定できます。
ただし、表示された充電スポット名を選ぶだけでは経路は表示されず、詳細ボタンを経由しないとならないのがちょっと面倒でした。ここはワンタッチで経路設定できてほしいです(私のスマホはアンドロイドなので、もしかしたらiOSではワンタッチ可能かもしれません)。
立ち寄った充電スポットは多摩ニュータウン聖ヶ丘団地(都営住宅)です。月極駐車場とコインパーキング、急速充電スポットが混在する場所でしたが、充電時に駐車料金は不要でホッとしました。設置されている急速充電器の出力は最大50kW。24時間利用可能です。

こちらに到着した時点でのSOCは71%でした。充電を開始してすぐに「80%まで10min」とメーター内に表示されたので、車両側の設定が80%上限になっていて、10分充電して自動終了するのかとも思ったのですが、SOCが80%を超えても充電は止まらず進んでいきました。30分充電したところでSOCは96%となって終了しました。71%→80%は実測で11分。80→96%が19分だったので、80%を超えてからの充電速度も十分な速さでした。
車格を考えれば十分な静粛性を実感

全体として、静粛性などの快適性能は上出来だと感じます。ただし、一般道を試乗しているとラゲッジルームあたりからときどき「カチカチ」といった音が聞こえてくるのが気になりました。おそらく、リレーなどの作動音だと思います。ちょっと不安になることもあるでしょうから、ディーラーでは「こういう音が出るけど、何も心配ない」というようなアドバイスが必要かもしれません。
EVはエンジン音がないため、さまざまな音が目立って聞こえることが多いのですが、eビターラはタイヤから発生するパターンノイズはよく抑えられていました。段差乗り越えでは共鳴音と呼ばれる響く感じの音が発生しますが、車格を考えれば十分に抑えられていると言えます。
コーナリング時の力強い加速感が気持ちいい
ハンドリングに関してはプロトタイプをサーキットで試乗(関連記事)したときから好印象でした。
今回の試乗車は4WDで、ハンドリングはFWDより優れています。4WDはFWDよりもフロントタイヤの負担が少なくなるので、ステアリングを切ったときの反応がよく、すっと曲がっていきます。それだけでも気持ちいいのですが、加速に移るとそのよさが際立ちます。4WDの場合はリヤタイヤがクルマを前に押し出してくるのでコーナリング時の加速感が力強いのです。
高速道路の走行でも風切り音などがよく抑えられていて快適です。ACCとレーンキープ機能は別々にオンオフが可能で、追従のみ、レーンキープのみ、追従とレーンキープの同時使用ができます。
高速道路の乗り心地も十分に満足のいくものでした。苦手なシチュエーションは大きなうねりのあるような路面です。サスペンションが大きく動くと、足回りがばたつく印象があります。とくに左右の片側だけが突き上げられるような路面だとブワンブワンとした走りになることもあります。ショックアブソーバーのグレードアップなどで解決できる部分なので、ここはもう少し頑張ってもらえるとさらに魅力をアップしたモデルとなるでしょう。
電費よりもデザイン性を重視
やや残念に感じたのは回生ブレーキです。eビターラの回生ブレーキはディスプレイのメニューで調整するタイプで、強、中、弱の3つから選べます。つまり、走行中には回生ブレーキ量を調整しながら走ることはできない設定なのです。
EVを効率よく走らせるには状況に応じて回生量の調整ができたほうが圧倒的に有利です。とくに長い下り坂などを下ってくるときは、パドルスイッチなどで回生量を弱くして速度を上げ、必要に応じて回生量を強くしてより多く発電させるというやり方が使えると効率よくエネルギー回生が可能です。
今回の試乗では電費が「5.2km/kWh」とあまり伸びませんでした。試乗したコースが東京=浜松間で、新東名高速を使い、120km/h規制区間では120km/hで走っていたのが大きく影響していることも事実です。空気抵抗は速度の二乗に比例するので、車高が高いクルマはどうしても不利になります。
eビターラは開発時に「電費向上とデザイン、どちらに比重を置くか」で議論があり、デザインを取ったとも聞きました。電費だけがEVの性能ではないので、それはそれでかまいません。ただ、今の日本でのEVの立ち位置、それも量販モデルの選択基準として電費はかなり大切な要素で、ユーザーがどちらを重視するかは微妙な部分。eビターラはグローバルモデルなので、着地点をどこに設定するかも難しいのでしょう。
eビターラはスズキにとって初めてとなる量産電気自動車です。USBポートの位置や回生ブレーキ操作、高速走行における電費性能など、長距離試乗で気になった点を指摘しましたが、全体としては好印象。クルマとしての走行性能や快適性、急速充電を含めたEV性能などは、現状の市販EVとして、価格を考慮すると上出来であるとも感じます。
eビターラというコストパフォーマンスが高く、4WDもラインナップして、魅力的でコンパクトな電気自動車の登場によって、日本でますますEVユーザーが増えること。そして、幅広いユーザーの声が反映されて、さらに魅力的なEV開発が進んでいくことに期待したいと思います。
取材・文/諸星陽一






コメント