日本も2030年代半ばにガソリン車販売禁止の方向へ〜世界の動きや理由とは【まとめ】

日本政府がガソリン車の新車販売を2030年代半ばに禁止する方向で最終調整に入ったことを、毎日新聞などが報じています。自動車メーカーなどとの意見調整でどのような結論になるかはまだ未知数ですが、化石燃料自動車の販売禁止はすでに世界の大きな流れになっています。EVsmartブログのアーカイブから、参考になる記事をピックアップしてみました。

日本も2030年代半ばにガソリン車販売禁止の方向へ〜世界の動きや理由とは【まとめ】

15年もあれば世界は変わる

16年前、2004年に自宅を新築した時に買った東芝のプラズマディスプレイのテレビを、昨日、ソニーの液晶テレビに買い替えました。2004年当時はまだ夢の技術だった有機ELにしようかとも思いましたがまだ少し割高だったので、というか「液晶はこんなに安くなったんだなぁ」と改めて感服しつつソニーの液晶を選んだ次第です。

日本政府が、「地球温暖化対策の一環として、ガソリン車の新車販売を2030年代半ばに禁止する方向で最終調整に入った」ことを毎日新聞などが報じています。「2030年代半ば」といえば、今からざっくり15年ほど先の話ということになります。テレビはもちろん、携帯電話やデジタルカメラや印刷など、10年もあれば「世界が変わる」ということは、21世紀を生きる私たちにとってはすでに常識。いよいよ、自動車も大きく変わろうとしている、ということですね。

ICE車販売禁止に関する世界の動向

ガソリンなどの化石燃料を燃やしてエンジンで走る自動車は、内燃機関=Internal Combustion Engineの略で「ICE」車と呼ばれます。2030年代を中心にICE車(混在するとややこしいので、この記事では以降「エンジン車」とします)の新車販売を禁止するのはすでに世界の大きな流れになっていて、日本はむしろ少々出遅れていました。

世界がモビリティの電動化に向かっていることへの理解を広げるのは、このEVsmartブログの大きなテーマでもあり、関連記事を今までにもたくさん発信してきました。今回の報道を受けて、世界の動きを知り、なぜこうなっているのか、どうなるべきなのかといったことを考察するために、いくつかのアジェンダに沿って参考となるアーカイブ記事をご紹介していきます。

最初に、エンジン車販売禁止について、世界の動きを確認しておきましょう。

各国のガソリン車禁止・ディーゼル車販売禁止の状況(2020年11月18日)

まず、世界各国のエンジン車販売禁止への動きをまとめた記事です。欧州や中国をはじめ、アメリカのカリフォルニア州などが、おおむね2030年から2035年をメドにエンジン車販売禁止を打ち出していることがわかります。

カリフォルニア州知事が2035年までに新車のガソリン車販売禁止を指示(2020年10月6日)
カリフォルニア州がゼロ・エミッション車以外のトラックを販売禁止へ(2020年7月5日)

いち早くZEV規制を導入し、低排出車普及を牽引してきたともいえるカリフォルニア州の動きを紹介する記事です。

アメリカはトランプ政権の下でパリ協定から離脱するなど、脱炭素を目指す世界の動向に逆行するところもありましたが、政権が変わり、環境への姿勢も大きく変化するのではないかと思われます。

中国海南省政府が2030年以降石油燃料車販売禁止への計画を発表(2019年3月16日)
習近平主席が国連演説〜中国の2060年ネットゼロ表明は実現できるのか?(2020年10月12日)
「NEV」と「CAFC」〜電気自動車シフトに向けた中国のデュアル規制と自動車販売最新動向【まとめ】(2020年8月8日)
中国が化石燃料車工場への投資を規制、新エネルギー車で世界をリードへ(2019年2月1日)

今後しばらくは、世界最大の自動車マーケットになるであろう中国の動きです。

単独の記事としては取り上げていませんが、中国政府はすでに新車販売における新エネルギー車(NEV)の割合を2035年に50%にまで高めることを発表しています。中国が規定するNEVにはハイブリッド車(HV)が含まれるようなので、現段階における日本のスタンスにも近い印象です。

ヨーロッパで電気自動車の売上とシェアが拡大中【最新情報/2020年10月期】(2020年12月1日)

EVsmartブログではヨーロッパの動向を注視しており、プラグイン車(電気自動車とPHEV)の販売シェアに関する記事は毎月アップデートしているところです。最新記事では、新車販売におけるプラグイン車のシェアが2020年はいよいよ10%を超えることがほぼ確実になっている現状をお伝えしています。

EUで巨額の罰金に直面する自動車メーカーをPAコンサルティングが予測(2020年2月10日)
EUが「2030年には2021年比で37.5%のCO2削減」の規制案を決定(2019年1月1日)

世界のエンジン車販売禁止の流れに対応できないとどうなるのか。その一例が「罰金」です。HVだけでは対応が難しい欧州では、2021年以降、日本メーカー各社にかなり厳しい現実が待っていそうです。

EUは脱炭素社会実現のためにかなり高い目標を掲げていることも、理解しておくべきでしょう。

イングランドですべての新築住宅に電気自動車用充電器設置の義務化を検討中(2019年9月11日)
ロンドンで超低排出ゾーン規制=Ultra Low Emission Zone(ULEZ)が始まる(2019年4月9日)
ドイツ・ハンブルク市がディーゼル車の一部街路への乗り入れを禁止(2018年7月13日)

脱炭素社会の実現≒モビリティ電動化推進への方策は、エンジン車販売禁止だけではありません。イギリスをはじめとする欧州各国でのさまざまな動向をお伝えする記事も、ぜひチェックしてみてください。

日本の現状や動向は?

では、日本の現状はどうなのでしょう?

電気自動車の普及率(2015年12月現在)

日本の電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及状況をまとめた記事です。5年前の記事ですが、日本の現状はさほど変わっていません。

東京都「ZEV普及プログラム」に電気自動車ユーザー目線で5つの提言(2020年2月28日)

日本が掲げている目標はどうなのか。一例として、東京都が2020年2月に発表したビジョン『ゼロエミッション東京戦略』および『ZEV普及プログラム』について整理した記事です。

東京都『ZEV普及プログラム』より引用。

具体的には、2030年には乗用車の50%をZEV化、2050年には全ての自動車をZEV化することを明示しています。「ZEV=Zero Emission Vehicle=排出ガスを出さない自動車」なので、HVは含まれません。

日本政府としては、「次世代自動車戦略2010」で、2020年に電気自動車とプラグインハイブリッド車を15〜20%に、2030年には20〜30%にする目標を示していますが、2020年の現状を見ても目標は絵に描いた餅になりつつあります。今回報道されたエンジン車販売禁止が具体化すれば、大きな一歩になることでしょう。

トヨタ自動車が開催した「電気自動車の普及を目指して」説明会の意味をじっくりと考えてみた(2019年6月23日)

報道によると、日本におけるエンジン車販売禁止については、「経済産業省が今月10日、自動車メーカーなどとの会議を開いたうえで」正式に表明されることになっています。はたして、どのような内容になるのでしょうか。

予測するために注目するべきなのは、やはり日本最大の自動車メーカーであるトヨタの姿勢です。HVの普及で世界をリードしてきたトヨタも、さらなる電動化推進には意欲的で、2019年6月には「電気自動車の普及を目指して」と題したメディア向け説明会を実施しました。その中で、電動車普及へのマイルストーンとして、2030年に電動車販売台数を550万台以上としていた目標を、「2025年に550万台」と5年前倒しすることを表明しています。

とはいえ、このマイルストーン説明のグラフを見ると、2050年になってもHVの比率が高く、EVはFCVよりも少なめに見積もられているのが気になります。

HVは低炭素(=低燃費)ではありますが、あくまでもガソリンを燃料とするエンジン車であり、脱炭素には寄与できません。日産が国内で勢いに乗っている「e-power」もまた、日本では「電気自動車の新しいカタチ」と宣伝していますが、正しくはシリーズハイブリッドというエンジン車。e-powerを電気自動車というロジックは世界には通用しないでしょう。

モビリティ電動化を目指す世界の動きの中で、日本が今後も自動車産業におけるプレゼンスを維持していくためにも、HV(e-powerを含む)は、残念ながらガラパゴス技術になりつつあることは、認識しておくべきだと感じます。

10日に予定されている会議の後、どのような正式発表がされるのか、引き続き注目したいと思います。

電気自動車にするべき理由とは?

最後に、なぜ世界は今、エンジン車を販売禁止してZEV≒電気自動車にシフトしようとしているのか。その理由について考察するための参考記事を。

電気自動車シフトの必要性を社会課題解決の視点から考える(2019年8月17日)
電気自動車は本当にエコ? エコじゃない?(2018年1月19日)
電気自動車は火力発電の電力を使うから意味がない?(2018年2月22日)

ポイントとしては、低炭素と脱炭素には絶対的な断層があり、脱炭素を実現するためには電気自動車が最善の方法であるということですね。ただし、自動車を電動にするだけでは脱炭素にはほど遠く、再生可能エネルギー普及や、自動車の使い方を含めたライフスタイルが一緒に進化しなきゃいけない点も大切です。

(文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)22件

  1. ストロングハイブリッドをガラパゴスとするのは認識の誤りです。
    トヨタが行ってきたハイブリッドの進化はモーター稼働域の拡大です。モーター稼働域を多くすればするほど燃費がよくなります。そしてその究極に完全電動化があるのです。それが技術の正常進化というものです。
    欧州メーカーはトヨタがハイブリッド車を電動化につなげるとは思わず馬鹿にしていました。ハイブリッドをガソリンエンジンの改良型と思い込んでそれを見切りました。逆に欧州メーカーは純電気自動車の開発投資が全く回収できず、仕方なく電気自動車にエンジンと発電機を付けてプラグインハイブリッドとして売り出し始めています。苦肉の策です。
    内燃車と電気自動車をつなぐ、技術上経営上、その橋渡しとしてトヨタはハイブリッド車を位置付けていたのです。初代プリウスからそれを連想することは難しく世界中がある意味トヨタに騙されていました。
    少なくとも日本人ならそこに気付いてあげてもいい時期だと思いますが。

    1. ねろ 様、コメントありがとうございます。はい、そういう見方もできると思います。
      一方日本国内メーカーについては、ストロングハイブリッド→BEVへの移行への時期を長めに見ていたところ、自動車メーカーではなく政府や消費者のほうが速くEVシフトを始めてしまった、という誤算はあると思います。実際に新車の開発期間は5年とも言われていますが、これから2030年を目指して開発する場合、もう2サイクルしか残されていません。これから毎年新型の電気自動車やPHEVを開発し販売し、同時に巨大工場をいくつも立ち上げる(BEVは少なくとも既存の生産設備は使えない)というのは非常に時間的制約が大きいともいえると思いますし、その結果、最終的な電動化が遅れる可能性も無きにしも非ずではないでしょうか?

  2. EVもFCVも二次電池の飛躍的な技術進歩があれば、すぐにでも市場化が進むと思っていますし、それは乗用車もトラック・バスも同じです。
    あとはエネルギー源供給の配置インフラからどう進歩するかでしょう。
    私はこの意味でこの5年以内に大きな変化が起きると考えています。
    例を言えば、現在のガソリン補給インフラ(ガソリンスタンド)が採算的に維持できなくなる時、ガソリンや軽油燃料車は商品価値が大きく落ちるという現実です。
    どの自動車関連産業もこの変化にどう対応し生き残るかは喫緊の課題に既になっているのです。

  3. 物流業がストップするんじゃない?
    電気自動車が万能みたいに書いてあるけれどデメリットが事実大きすぎる。
    都市部はバス→電車等にシフトすれば良い話だが地方はどうするの?
    通勤、買い物、送迎。車は贅沢品ではなく足であり必要不可欠な存在だ。
    地方にも電車等を網の目状に張り巡らす?経営とか予算の関係であまりにも現実的では無い。
    馬でも乗れってのか?
    バカみたいな話だ。

    1. あ 様、コメントありがとうございます。こちらは乗用車のみが対象です。
      また既存の車両は、そのまま乗ることができる予定です。欧州では、都市部へのガソリン車流入規制が2025年ごろから開始されますが(今でも都市によってはあります)、日本ではその予定は現時点ではありません。

  4. EV車に変わることは世界的に避けられない事だと思う、しかしガソリンスタンドが一緒に無くなる事は考えないといけないのでは?自家用車ではない機械、たとえば農機具、船など燃料が必要な動力はどうするのか、トラクターは田んぼの中を泥だらけで走り回っているが価格を知ってますか、中にはレクサスと同じくらいのものから安くても一般的な3ナンバーくらいの価格なんですよね、後継者不足な所など買い換えなんか無理な気がします、それは日本の食料自給率も下げるかもしれない事を同時に考え進める問題だと思いませんか?

  5. SHINGOさんそれですよ、往年のスズキアルト47万円以下という事実が!
    日本の軽自動車がこんなに安全装備てんこ盛りになったのはお役所のせいとでもいうか。日本の将来の敵は政財官だと言い続けてきた理由が変わりたがらないお上といえます。
    「何も変わらない者は何も変えられない」と80年代に佐野元春が歌っていたように、軽メーカーも軽を買う人も意識を変えて最廉価グレード・商用バンなど「贅を廃した」質実剛健モデルを選ぶべきでしょ。
    ※アイミーブMタイプなんか現行電気自動車で一番贅を廃してますが、それでもまだ贅沢に思える装備もあるもので。
    おりしもコロナ禍で節約が重要視され「ぜいたくは敵だ」になる可能性も十分あります。このままではエンジン車自体が贅沢品になるかもしれませんよ!?

  6. 15年ですか?

    5年もあれば?世の中は激変するのでは?(汗)

    今回のコロナウイルス騒動ですらも、予測出来ませんでしたし!

    私は、電気自動車EVは?日本は既に敗北したと(泣)

    日本は、他の自動車?空飛ぶ車にでも注力かな?(汗)

    中国の世界一のドローンメーカーも、空飛ぶ車までには発想が行かないか?

    中国は、確かに技術力は有る!
    間違いなく!
    然し、新しい物を作り出す力?が無い!(泣)

    これは、唯一!欠点として欧米諸国が指摘する事(汗)

  7. 他所のカーニュースで、電動化すると軽自動車の価格が高くなると騒いでいる記事がありましたが、五菱のEVは下手なガソリン車より安いです。
    日本の軽メーカーも見習った方がいいのでは。

  8. 日本の人口減少も数十年前から政府は認識して対策を打ってきましたが、減少を止めることは今だできていません。
    今後も毎年約50万人以上のスピードで日本人は減っていきます。
    15年もあれば世界は変わるのは確かですが、極端な人口減少と超高齢化で日本の景色そのものが変わってるはずです。
    はたして、15年後にも車いる?
    遠出してもシャッター街しか無いのに、誰が遠出するでしょう。
    今の形の車は必要とされていないと思うな。
    自家用車に関してはおそらく政府が禁止するまでもなく、誰も今のようなガソリン車は欲しがらなくなってると思う。

    1. 遠出して地方に行くのは自然観光やスキー、温泉であり、買い物じゃないでしょう。シャッター街は関係無いと思う。

  9. 記事自体の内容とは直接関係ないことなのですが、このニュースを見て気になったのは、
    「欧米中の動きに対抗」
    という表現。
    対抗?目的が違くない?と。
    さて政府の公式見解ではどう表現されるのか。

    余談ですが、もちろん個人的にはEV推しなわけですけども、上記、「対抗」というならば言葉の意味からしたらいっそ日本は国として今後もガソリンエンジン天国にする、という異なる戦略を取ることこそが「対抗」なんじゃないのかなとか思ってみたり。
    もちろん、米中と比べたら国内市場なんてちっちゃいのでそれだけでは食っていけず、結局は日本メーカーは電動対応進めざるを得ないのは理解していますが。

  10. やっと日本もこの規制に入ったか…世界に比べりゃ遅きに失した感ありありですが。
    今でこそ電気屋の僕も元は応用化学を学んだ人間、石油の成分や分留クラッキングなど石油化学の知識はあります…30年前当時からすでに「石油は燃料としてでなく化学原料の一つである」認識があり、何億年もかけて生成された石油をガソリンとして使うのは勿体ないと意識してました。それが電気自動車乗りになねとき脳裏に思い浮かびましたね。
    ここはエンジン車好きの方々に石油成分の話をします。
    ガソリンや灯油の成分は今後もし余ったとしてもナフサとして合成樹脂原料になるので特に問題はないかと。余りがちなのは重油など石油重質留分であり火力発電所で使われる石油はC重油という硫黄分など不純物を大量に含むもの…当然車載燃料には向かず固定施設で不純物除去設備で処理してから燃やす、あるいは燃焼管理で有害ガス発生を防ぐんです。
    ガソリンは軽質成分からの分留がメインですが高価につき触媒を用いて重質成分をクラッキング処理して作ってました。そうやって成分受給調整してるんです。
    だから単純にガソリンが売れなくなっても工業製品原料や他の用途に回して石油輸入を抑えることで解決しますよ。あとは化学エンジニアや分留工場などが考えることでしょう。
    そんな僕はいまや化学物質過敏なので正直エンジン車に乗ろうとは思えません。光化学スモッグを理解している方にしかわからないでしょうけど。
    今回の政府方針を機に電気軽自動車が普及することを願ってます。

  11. 確かに車からだす炭素はEVないかもしれませんが、製造過程、廃棄過程無視してますよね?
    あと発電時も…
    それに環境負荷という面でいけばなおさらに

    なぜこんなにもHVをガラパゴスいうのでしょうか?
    ヤリスの炭素排出量はEVにも迫る勢いですよ?
    バッテリーの問題が解決しなきかぎりHVが一番現実的です。

    1. EVはまだまだ 様、コメントありがとうございます。
      製造過程、廃棄過程や発電時の排出を考慮した計算を、LCAと呼んでいます。ライフサイクルアセスメントの略です。LCAの論文としてはマツダさんが出されているものが有名ですが、それについて解説および分析をした記事をご紹介します。
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/electric-is-cleaner-mazda-lca/
      結論としては、小型乗用車では、9万キロ以上走行するなら、電気自動車のほうがLCAで見ても排出が少なくなりました。また以下のような分析も出ています。
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/technische-universiteit-eindhoven-research-shows-electric-cars-are-greener/

      ヤリスHVの排出が少ない、というのは素晴らしいことです。しかし、自動車メーカーは、一車種の排出を低減することを求められているわけではないのです。米国や欧州、中国での排出規制は、フリートすなわち、その会社が販売する車全体の平均をした排出量を削減することを求めており、大型セダンやSUVなども含めて排出の低減が必要なのです。これは、現在のハイブリッド技術ではなかなか達成することが困難であることが分かっています。
      試しにレクサスRX 450hとテスラモデルXロングレンジプラス、レクサスUX 250hとテスラモデルYロングレンジの比較をしてみます。燃費基準は米国EPA基準を用いています。
      https://www.fueleconomy.gov/feg/Find.do?action=sbs&id=41974&id=43413&id=42222&id=42916
      レクサスRX 450h: 3.3gal/100mi=12.9km/l=180g/km
      テスラモデルX LR+: 32kWh/100mi=5.03km/kWh=92g/km (日本の排出係数463g-CO2eq/kWh)
      レクサスUX 250h: 2.4gal/100mi=17.7km/l=131g/km
      テスラモデルY LR: 28kWh/100mi=5.75km/kWh=81g/km

      (日本の基準で)大型のSUVではハイブリッド車は電気自動車の1.9倍、中型のSUVでは1.6倍排出が多いのです。
      ちなみに日本の軽自動車の平均燃費は約16km/l程度。これだと排出は145g/kmとなります。7人乗れる車幅が199cmもあるテスラモデルXより、日本の軽自動車の排出は多いのです。
      残念ながら、HV技術だけでは、今の排出基準を満たすことは難しいというのが客観的な見方だと思います。

  12. 記事の内容とは外れてしまうので恐縮ですが
    脱炭素を声高に言うのであればそこそこ対応してきている普通車よりも
    走行距離がけた違いに多い営業車やもっと大型のバス/トラックの規制を進めていった方が効果的と思われるのですが世界的に見ても対応が遅いように思われます。
    勿論ベンツやボルボ、三菱ふそう、日野等々やっていないわけではないのはわかってはいるのですが、、、
    このクラスになると導入費用と運用費用のバランスが普通車とは変わってしまうのでしょうか?
    カングーZ.E.とかいったクラスのBEVもそうですが、日産がeNV-200をやめてしまったのが惜しまれますし、三菱が電トラをやめてしまったのも残念なことです。
    バンもいつまで生産しているか不安です。

    別の機会に「作る側と使う側両方から見た電動営業車」という記事をリクエストします。

    1. 総消費エネルギー、総CO2排出量を比べて見てください。
      ガソリン車の禁止についても、10年後に移行できるシナリオが、まだできていません。LCAに裏付けされたCO2削減の技術開発、新たな産業や事業を創出しないと、たくさんの人の仕事が無くなります。
      トレンドだけでの判断は、将来を危うくする可能性もあります。

    2. CO2削減を意識するものより 様、コメントありがとうございます!
      実はLCAに注目すると、9万キロ走行すれば電気自動車はガソリン車より総排出が少なくなるのです。
      https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/electric-is-cleaner-mazda-lca/
      そのため、電気自動車に移行することにより、総排出の削減に貢献できるのです。

      >>新たな産業や事業を創出

      ここはとても大事ですね。
      ただ、日本は鎖国しているわけではありません。日本が新しい産業や事業を創出せずに、売れない商品やサービスを作り続けて、ピボットが遅れれば、困るのは我々の子孫の世代ではありませんか?考え方によっては、今ちゃんと先を見通せるところまで、我々が血を流して努力しないと、無責任ではないでしょうか?

    3. 恐れ入ります、期待してお待ちしております。
      先駆者e-CANTERのマイナーチェンジの記事の中で運用コストが大幅に削減できたという事業者からのコメントを見ましたが
      ガソリン車との価格差を埋めるだけの値打ちはあったという内容だったと思います。
      ここがポイントですね。
      政府は環境対策としてのBEVを謳いますが、利益を追及している事業者は
      正直なところ「儲けはちゃんと出るのか」が肝心なところ。

      私事で恐縮ですがガソリン車のミニキャブバンで仕事をしていた時はひと月5000㎞走行してガソリン代、オイル交換、その他整備費用が月に10万円近くかかっていましたがMiEVバンに本格的に切り替えたら三菱電動車両サポートプレミアムプランプラン基本料金込みで3万円で済んでしまいました。
      その他整備もほとんどありませんから2年でプライベートも含めて155000㎞走りまして今は出番もなく車庫でお休みしています。
      劣化したバッテリーはメーカー保証で交換していただきました。
      困ったことといえばやはり走行可能距離が実質的に100㎞無かったので充電回数が増えたことでバッテリーを痛めたこと、交換要件を満たす直前は実質50㎞走れなかったのが仕事で使うことができず、交換要件を満たすまで仕事以外で走らさざるを得なかったことでしたね。
      私がチョイスしたのはLEJ製16kWhでしたので充電に時間を要したことで
      こればかりは東芝SCiB10.5kWhにしておくべきだったと後日MiEVトラックを手にいれてから後悔しました。
      もし容量が1.2倍になったSCiB13kWh版が実現していたらメーカーとしての売り上げにも貢献したであろうと思うと残念です。

    4. 軽貨物さん、
      大型トラックの場合、単にコスト増だけでなく車両重量増が積載量減につながります。ハイブリット車も同様。
      しかし、それを克服したメーカーが勝者になると思います。

  13. このままでは米国、欧州、中国市場で売る車が無くなる、という経産省の意向でしょうね。携帯の二の舞を避けたいとの危機感が有るのかも。
    中国もHVはOKとはなってますが実情は純EVの方が人気あるみたいですね。
    恐らくバイデン勝利で全米にZEV規制が施行される流れになりそうなのも一因かも。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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