ハリアーのアップデートはPHEV追加が最重要ポイント
2022年9月26日、トヨタがハリアーを一部改良してプラグインハイブリッドシステム搭載モデルを新たに設定することを発表しました。車名は「ハリアー Z」とグレードを示す「Z」が表記されるだけ。発表された写真を見るとボディに「PLUG IN HYBRID」のエンブレムはあるようですが、ことさらに「PHEV」を強調した車名とはなりません。プラットフォームを共有するRAV4の場合、プラグインハイブリッドモデルの車名は「RAV4 PHV」とプラグイン車であることがアピールされていましたが、あれから約2年が経過。「プラグインハイブリッドモデルは、もう普通のクルマだよ」というトヨタからのメッセージのようにも思われます。
今回のマイナーチェンジでの改良点は、以下の3点が挙げられています。
●プリクラッシュセーフティに交差点右折時の対向直進車及び右左折時の対向方向から横断してくる歩行者を検知する機能を追加した予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」を全車に標準装備。
●コネクティッドナビ対応のディスプレイオーディオを採用。12.3インチの大画面ディスプレイを設定したほか、車載ナビを搭載。クルマがWi-Fiスポットになる、「車内Wi-Fi」を採用。
●12.3インチTFTカラーメーター+マルチインフォメーションディスプレイを採用。
そして、もう一つのトピックが、「Z」グレードにプラグインハイブリッドシステムを搭載して、「E-Four」と名付けられた電気式四輪駆動を採用したPHEVモデルが追加されることでした。
「Z」グレードには従来から設定されていたハイブリッドモデルもラインナップされています。ハイブリッド車のなかでは上級グレードの「Z“Leather Package”」が5,148,000円〜(価格は税込 ※以下同)。PHEVモデルは6,2000,000円〜なので、ハイブリッドモデルとの価格差は約100万円。Z(PHEV)は、上質なインテリアなどが特徴の都会派SUVとして人気のハリアーのなかでも、最上級グレードに位置付けられたことになります。
RAV4PHVとの価格差も約100万円
ちなみに、先行して2020年にPHEVモデルが投入されたRAV4 PHVの価格は、エントリーモデルの「G」が4,690,000円〜。ベンチレーションシートなど豪華装備の「BLACK TONE」で5,390,000円〜なので、ハリアーのPHEVはRAV4PHVよりも約85〜150万円ほど高価な設定になっています。
SUVのPHEVモデルといえば、三菱のアウトランダーPHEVも販売好調が伝えられています。あと、プジョーの3008 HYBRID4と競合車種のポイントを比較する表を作ってみました。
トヨタ ハリアー PHEV | トヨタ RAV4 PHV | 三菱 アウトランダー PHEV | プジョー 3008 HYBRID4 |
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全長 全幅 全高(mm) | 4740 1855 1660 | 4600 1855 1690〜1695 | 4710 1860 1740 | 4450 1840 1630 |
乗車定員 | 5名 | 5名 | 5〜7名 | 5名 |
車両重量 (kg) | 1950 | 1900〜1920 | 2010〜2110 | 1880 |
駆動方式 | 四輪駆動 | 四輪駆動 | 四輪駆動 | 四輪駆動 |
バッテリー容量 | 18.1kWh | 18.1kWh | 20kWh | 13.2kWh |
急速充電 (チャデモ) | 非対応 | 非対応 | 対応 | 非対応 |
AC100V コンセント | 標準装備 | 標準装備 | 標準装備 | 非装備 |
車両本体価格 | 6,200,000円〜 | 4,690,000円〜 | 4,621,100円〜 | 6.614.000円〜 |
EV走行換算距離 (WLTC) | 93km | 95km | 99〜103km | 64km |
表内、アウトランダーPHEVの価格はベースグレードである「M」のものです。7人乗り設定も選べる「G」が4,904,900円〜、7人乗りの「P」が5,320,700円〜なので、価格帯としては4,690,000〜5,390,000円のRAV4PHVがガチンコのライバル車。ハリアーのPHEVモデルは、RAV4PHVやアウトランダーPHEVよりは、やや高級車路線に設定されたモデルと言えそうです。
ヴィークルパワーコネクターは標準装備
ハリアーのPHEVモデルは、RAV4PHVと同様にチャデモ規格の急速充電には対応していません。アウトランダーPHEVは伝統的に急速充電可能になっていますが、実際のところ、エンジンでも走れるPHEVで高速道路SAPAにわざわざ停まって急速充電を行うメリットは大きくありません。自宅ガレージなどの拠点に200Vの充電設備を整えて、日常的な走行を電気にシフトするのが、賢明なPHEVの活用法と考えておきましょう。
ちなみに、表内の「EV走行換算距離」は、日本のWLTCモードによる国土交通省審査値で、バッテリーに蓄えた電力だけで、EVとして走行できる一充電航続距離を示しています。ただし、日本のWLTCモードでは高速走行を審査に含めておらず、実用的な電費は「8掛け」程度で考えておく必要があります。エアコンを使いながら高速道路を走行しても実用値に近いアメリカのEPA基準の数値を見ると、日本WLTCで「95km」となっているRAV4 PHV、アメリカではRAV4 PRIMEの航続距離は「42mi=約68km」で、おおむねWLTC値の72%程度になっています。ハリアーのPHEVモデルも72%程度だとすると、実用的なEVとしての航続距離は67km程度と考えておくことができます。(2022.9.28 追記)
200Vの充電用ケーブル(7.5m)はもちろん標準装備されます。また、AC100Vが出力できるコンセントのほか、普通充電ソケットからAC100V1500Wを取り出すことができる「ヴィークルパワーコネクター」が標準装備されています。このヴィークルパワーコネクター、プリウスPHVやRAV4PHVにも標準装備されている優れモノ。EVやPHEVは非常時の電源にも活用できると言われていますが、大きくて重くて高価な別売の外部機器がないと電気が取り出せないのではいざという時に使えません。普通充電口から手軽に交流100V電源を活用できるコネクターは、アウトドアレジャーなどの際にもすごく便利です。
エンジンなどのパワートレイン、プラットフォームを共有しながら、エクステリアもインテリアも見事に個性が異なるRAV4PHVとハリアーのPHEVモデル。RAV4PHVには子どもと一緒にちょっとヤンチャな外遊びとか似合いそうだし、ハリアーのPHEVでは、地元グルメにこだわったグランピングで大人の休日を楽しむなんてのがジャストフィットしそうです。トヨタから発売される、電動車のバリエーションが増えたことを祝福したいと思います。
ちなみに、RAV4PHVが発表された時には、月間の販売目標台数が300台とされていて、「え、少ないんじゃないですか?」と感じました。今回、ハリアーPHEVモデルの発表では目標台数などが明記されていなかったので、広報ご担当部署に確認してみたのですが。現状は、コロナ感染拡大や半導体不足の影響で、車種を問わず「工場出荷まで数か月から半年以上」といった中、生産や販売台数を明示できる状況ではない、ということでした。
ちなみに、トヨタが発表している「生産遅延に基づく工場出荷時期目処の一覧」で、ハリアーの工場出荷目途は「詳しくは販売店にお問い合わせください」となっていました。車種によっては「ご注文いただいてから6ヵ月以上」と明記されているので、もしかするとそれ以上? だとすると、発売されたばかりの新型モデルであるハリアーのPHEVであれば、「バックオーダーを抱えていない分だけ早めの納期が期待できるのでは?」と希望的質問を試みてみましたが、当然、そんな確約はできるはずはなく。
ハブボルトの不具合でリコールとなり販売中止を余儀なくされている電気自動車『bZ4X』のその後も心配です。世界の電動車シフトがいよいよ加速する中、トヨタからのさらなる朗報に期待しています。
(文/寄本 好則)
記事を色々と拝見していて、何となくですが寄本さんの記事を書く上での「立ち位置」が理解出来てきたように感じています。
ある程度の地方に住んでいると、「子供の教育機会向上」「重い荷物を運ぶ」「家族数人で移動する」ためにどうしても車が必要という場面があり、車なしでは生活の質が著しく低下します。
私の場合、個人使用の原付(二種)と併用することで妻と共用で一台のみ保有している車の年間走行距離を4000キロ程度に抑えています。
ここの皆様からすると「車もBEVにしては?」という流れになるかと思いますが、マンション住まいの関係上充電設備がありません。かといって現在うまくいっている住民同士で争いになる可能性を言い出す勇気もなく、という所です。
なので個人的にはホンダやヤマハがこれから出してくる電動原付バイク+燃費のいいICE軽自動車が、今後10年の私にとっての最適解となりそうです。
ぬるい!と言われるかもしれませんが、ベストではなくできる限りのベターを追求するしかないというのも本音ですね。
いつかあのトヨタさんが、PHEVのCMで、「モーター走行の気持ちよさ」と「パワーコネクターの利便性とこれが与える新しい価値観」を、”前面に押し出した”PRする世界が来ることを期待したい(米国だけでもいいから)