スマートドライブが仕掛けた『移動の進化』カンファレンスで実感した電気自動車の必然

2019年11月15日(金)、虎ノ門ヒルズ(東京都港区)で『MOBILITY TRANSFORMATION CONFERENCE』が開催されました。テーマは「移動の進化への挑戦」。「MaaS」や「CASE」といった近未来のモビリティを論じる基調講演で実感したのは、近未来の社会で走っているのは当然のように「電気自動車」を前提として語られていることでした。もうすでに、電動化の是非に彷徨う時期は過ぎ去っているのかも知れません。

スマートドライブが開催した『移動の進化』カンファレンスで実感した電気自動車の必然

スマートドライブというベンチャー企業

今回のカンファレンス(主催:Mobility Transformation 実行員会/後援:経済産業省)を企画したのは、株式会社スマートドライブというベンチャー企業です。数日前、基調講演に同社代表の北川烈氏らとともに、ジャガー・ランドローバー・ジャパン(JLJ)のマグナス・ハンソン社長が登壇することを知り、急遽取材を申し込みました。午後はすでに別件予定があったため参加することができたのは午前中の基調講演だけでしたが……。

『スマートドライブ』は、代表の北川氏が東京大学大学院在学中、2013年に創業したまだ新しい会社です。車載センサーから集めたビッグデータによるさまざまなソリューション開発を手がけるベンチャー企業で、2018年には総額17億円の資金調達をして事業を拡大するなど、急成長を遂げているとともに、社会的な注目を集めています。

株式会社スマートドライブウェブサイト

午前中の基調講演は、以下のようなプログラムで実施されました。

『SmartDriveが思い描く移動の進化とは?』
株式会社スマートドライブ 代表取締役社長 北川烈氏

『アカデミック・パネルディスカッション』
インテル株式会社 事業開発・政策推進ダイレクタ兼 チーフサービスアーキテクト 野辺継男氏
森・濱田松本法律事務所 弁護士 佐藤典仁氏
株式会社スマートドライブ 代表取締役社長 北川烈氏

『JAGUARが見据えるフューチャーモビリティとは』
ジャガー・ランドローバー・ジャパン株式会社 代表取締役社長 マグナス・ハンソン氏
株式会社ローランド・ベルガー パートナー 貝瀬斉氏
株式会社スマートドライブ 代表取締役社長 北川烈氏
モデレーター/キャスター 瀧口友里奈氏

EVsmartブログとしては、JLJのハンソン社長のスピーチで、ジャガーやランドローバーの「アイペイスの次に展開するEV戦略」的なことが聞けないかと期待したのですが、約2時間の基調講演で語られたのは、そんな「小さな話」ではありませんでした。

私なりの気付きをEVsmartブログ読者のみなさんと共有するために、ポイントをまとめてみます。

未来って、実はもう始まっている

プログラムごとの細かなレポートをすると長くなるので、キーワードを提示しながら解説を加えていきます。ちなみに、カンファレンスのオフィシャルページでメールアドレスを登録すると、後日、公式なカンファレンスレポートのお知らせを配信してくれるとのこと。興味のある方はこちらを活用してください。

【オフィシャルサイト】
『MOBILITY TRANSFORMATION CONFERENCE』

進化した世界で走っているのは電気自動車

モビリティの進化について語られる中でまず「あれ?」と感じたのは、とくに何の前置きもなく、進化した世界で走っているのが「電気自動車」であることでした。

なぜでしょう? 北川氏は自らアイペイスをドライブした体感として「気持ちよさ」を強調していました。とはいえ、ジャガーが誇るV12エンジンだって気持ちよさは抜群です。

個人的な考察ですが、まず、電気自動車の気持ちよさは「操作性に優れている」点が重要なファクターであることです。つまり、AIが操るツールとして、ICE(エンジン車)よりもEVのほうが優れているのです。また、地球が突きつけられている課題を克服するためには、「低炭素」ではすでに手遅れで「脱炭素」を実現することが必須。モビリティの進化に取り組む登壇者の知性が、目指すべき「脱炭素」実現のために必然的なツールとして「電気自動車」を選んでいるということでしょう。

日本社会はもう「気が付いている」

夢物語のような「移動の進化」がはたして本当に実現するのか? その疑問への答えを意味する話題もありました。

まず、北川氏が自らのプレゼンテーションの中で「今まで100年間で起きたのと同じくらいインパクトのある社会の進化が、これから30〜40年の間に起こる」という見解を提示。スマートドライブとして目指しているキーワードが「日常的な移動の効率化」と「新しい出会いや消費」であることを挙げました。

モビリティの進化は「日常的な移動の効率化」に役立つものになるべきであり、効率化した時間やコストを活用するために「新しい出会いや消費」といった付加価値が重要になるという視点です。

続くパネルディスカッションの中では、インテルの野辺継男氏が「40年前、まだ駅員が改札口に立ち切符にハサミを入れていた時代の渋谷駅」の写真を提示。交通系カードやスマホへの進化を具体的に示しながら、「本当に便利なソリューション(サービスや製品)が登場すれば、社会は一気に変化する」ことを指摘しました。

是非もなく共感できる指摘です。インターネット、そしてスマートフォンの普及によって、40年前には想像もできなかった「未来」が現在に実現しています。

そして、会場を訪れて印象的だったのが、想像した以上に「大盛況」だったこと。

3万円という有料のカンファレンスだったにも関わらずチケットは早々にソールドアウト。1200名を超える来場者があったそうです。会場にはIoTやAIを活用したさまざまなサービスを紹介する企業のブースが出展されて、休憩時間には多くの人で賑わっていました。

電気自動車への懐疑的な意見がまだ根強く聞かれる日本社会ですが、実は、とてもたくさんの人たちが、モビリティの変革や電動化は当然進むということに、すでに気が付いているということでしょう。まあ、これもまた当然のことなのですが……。

出展ブースも賑わっていました。

ビジョンを共有した協業が大切

JLJのマグナス・ハンソン社長を交えたセッションでは、「テクノロジーの進化の中でいかにしてブランド価値を高めていくか」(ハンソン氏)というポイントで話が深まりました。たとえば北川氏は、自動車も運転の自動化が進めば空間としての価値がより重要になり「客室や接客のクオリティでホテルを選ぶように、エクスペリエンスを重視してクルマを選ぶ時代になる」と指摘。

そのためにも「ファンとブランドの親密度を高める必要がある。百発百中とはいかないだろうが、さまざまな取組に挑戦し続けることが大事」(野辺氏)といった話にハンソン氏も共感。全体を通じて「今までの常識にとらわれることなく、ビジョン(ソリューションが提供する価値の想定図)を共有しながら、業種の枠を超えたコラボレーションを活性化していくことが重要である」というメッセージが示されました。

たとえば、カメラの画像からそこに写った人の年齢や性別を解析してデータベースに蓄積する。あらゆるクルマの移動経路や所要時間などを収集して解析する。会場の出展ブースが大賑わいだったことからもわかるように、モビリティの進化を支えるテクノロジーには、多様な業種のビジネスに、またあらゆる生活者のライフスタイルに新たな価値を提供できるポテンシャルがあります。

北川氏のプレゼンテーションの中でも、スマートドライブが収集・解析したセンサーデータのプラットフォームを活用して「ユピテルのドライブレコーダーとのサービス開発」や「ホンダが2020年春に発売するEVバイクを手始めに提供する二輪専用サービスの開発」など3つの新しいプロジェクトが始まることが発表されました。

未来って、ある日突然やってくるのではなく、こうしたチャレンジの延長線上に浮かび上がってくるものなのだと感じます。言い替えれば、未来はもう始まっているのです。

トヨタ自動車の豊田章男社長が、モビリティの進化をしばしば「馬」に喩えますが、まさしくその通り。エンジン車が「馬」や「蒸気機関車」のように趣味として愛でるもの、博物館の展示物としての価値しかなくなってしまう日は、もうそんなに遠い未来の話ではないのかも知れません。

(取材・文/寄本 好則)


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