3輪電動スクーター『AAカーゴ』を発売した『アイディア』ってどんな会社?

『aidea』という新しいEVメーカーが『AAカーゴ』を新発売。早々にマクドナルドのデリバリーサービス用バイクとしてテスト購入が決まるなど、好調なスタートダッシュを見せています。いったい、アイディアはどんな会社でAAカーゴはどんな電気バイクなのか。取材に行ってきました。

3輪電動スクーター『AAカーゴ』を発売した『アイデア』ってどんな会社?

大容量バッテリー搭載の3輪スクーター

まず、気になるバイクから紹介しましょう。2020年6月15日、『aidea(アイディア)』から発売されるEVバイク第一弾となったAAカーゴは、フロントスクリーンとルーフが付いた後ろが2輪になった3輪電動スクーターです。バッテリー容量は4kWh。ホンダ『BENLY e: (ベンリィ イー)』のような交換式ではなく、市販電気自動車にも付属している国際規格J1772の充電ケーブルを、200Vコンセントに繋いで充電します。

赤坂のショールームに展示されているAAカーゴα4。

メーカー希望小売価格は、原付一種の『AAカーゴ α4』が87万7800円、原付二種の『AAカーゴ β4』が90万900円(ともに税込)。α4、β4はモーターの出力が異なるものの、車体などは全て共通となっています。バッテリー容量も共通の4kWhで、一充電航続距離もともに80kmとされています。航続距離は実走した測定値ということで、WMTCモードなどの試験データより、むしろ実用値に近いといえるでしょう。

第一弾は200Vコンセント用充電ケーブルが付属したタイプのみですが、今後、100Vコンセント用の充電ケーブルや、着脱式バッテリー搭載モデル、さらに8kWhのバッテリーを搭載してV2H機能を備えたモデルなどを展開していく計画になっているそうです。

付属の200V用充電ケーブル。
バッテリー収納部にはまだ余裕あり。4kWhのパックをもうひとつ追加して、8kWhへのバリエーション展開は無理なく可能、です。

取材では港区赤坂(東京都)にあるショールームを訪ね、実際に原付一種のα4を試乗させていただきました。普段はあまりバイクに乗ることがなく、ましてルーフ付きのカーゴタイプのバイクを運転するのは初めてだったので突っ込んだ評価はできないですが、第一印象としては「すごくしっかりした作りのバイク」と感じました。

アクセルのレスポンスや信号待ちからの加速感などもスムーズでパワフル。デジタルメーターの表示が鮮明でわかりやすく、なにより、デザインがなんだかカッコいいのが好印象でした。学生時代、50ccの原付バイクで新聞配達バイトをやってたこともありますが、ことに早朝は原付といえどもエンジン音が気になったものですが、EVバイクであればもちろん静かです。

2回ほど交差点を曲がるまでは車体が傾く3輪バイク独特の挙動に少し戸惑ったけど、慣れてしまえば普通の2輪バイクよりいろいろ楽ちんであろうことも体感できました。想像以上に「よくできたバイクだな」というのが、お世辞抜きの感想です。

マクドナルドがテスト導入を開始

写真提供/日本マクドナルド株式会社

6月18日には、日本マクドナルド株式会社が「マックデリバリーサービス」用のバイクとして6台のAAカーゴを神奈川県下の3店舗にテスト導入。すでに5月から稼働中であることを発表しました。

デリバリーサービスを多店舗展開している業界で電動3輪バイクを採用するのは日本国内で初めてのケース、とのこと。7月末からは東京都内を含めた40店舗で80台が走り始めることになるそうです。

ちなみに、スペックでは充電時間が約3時間と示されています。容量は4kWhで、200Vコンセントでの充電ですから出力は「4kWh÷3時間=約1.3kWh」で0.3C程度、電流値としては6.7A程度しか流していない計算になります。取材で話を伺った同社マーケティングディレクターの成田裕一郎さんに「商用が主体でしょうし、もっと充電出力を上げて充電時間を短くできなっかったんですか?」と素朴な疑問を投げかけてみました。

「デリバリーサービス1日の業務には十分な電池容量がありますから、仕事が終わって翌日までに充電できれば問題ないと考え、充電時間の短縮はさほど重視していません。また、ひとつの店舗に複数台導入いただいた場合、1台あたりの容量を抑えたほうが、電力契約などの負担を軽くしやすいことも考慮しています」(成田さん)

なるほど! マクドナルドや宅配ピザ店の店先に、ズラリとAAカーゴが並んで充電している様を想像して、ちょっとワクワクしてしまいました。

ショールームにはマック用の実車が展示されていました。マクドナルドの指定色というボディカラーは、少しオレンジっぽさを感じる鮮やかな赤。東京での導入予定店舗などは未確認ですが、三軒茶屋のマクドナルドにも導入されたら、AAカーゴに会うためにもぜひ一度オーダーしてみたいと思います。

バイクの欠点をよくしていこう!

東京モーターショー2019の出展ブース。

ところで、アイディアってどんな会社なのでしょう。公式サイトを見ると、トップページには「電動バイクで地球を救う」というキャッチフレーズが掲げられています。AAカーゴ発売のリリースやウェブサイトの会社案内によると「aideaは、2019年東京モーターショーで誕生した、日本の新しいモビリティブランド」であり「1996年にNicola Pozio(ニコラ・ポツィオ)により創設されたイタリアのバイクメーカー、ADIVAが前身」であることが紹介されています。

失礼ながら「いったいアイディアというのはどんな会社で、何がきっかけでEVバイクを手がけることになったのか?」、直球で成田さんに伺ってみました。

そもそも、ADIVA は1996年にイタリアで誕生したバイクメーカーで、常識にとらわれることのない独自の発想と技術により、全てのライダーの「移動を喜びにする」先進的なプロダクトを開発するメーカーでした。わかりやすく言うと、バイクのダメなところをよくして魅力的なモビリティを提案しよう! という理念を実践したメーカーだったということです。

アイディアの「前身」はこのADIVAの日本の輸入元でしたが、もともとADIVAは自社製のエンジンをもっていなかったこともあり、2018年には「ガソリンエンジンではないEVバイクの開発に着手。さらに独自のブランドとしてより魅力的な電動モビリティを提案し、『地球環境をはじめとするさまざまな課題を解決し、社会に貢献』するために、新たな会社としてアイディアがスタートした」ということでした。

ウェブサイトのプロダクトページには、高速道路のタンデム走行も可能な大型EVバイク『AA-4』(受注生産)や、前2輪、後1輪のリバーストライクである『AA-1』『AA-2』が開発中であることが紹介されています。

『AA-1』紹介動画(YouTube)

今回、あえて商用タイプのバイクから市場に投入したのは「ビジネスのラストワンマイルで活用される商用車であることに大きな意義があると考えた」と成田さん。「かつて、日本でもバイクがもっと人気のモビリティだった時代がありました。次第に乗る人が少なくなっているのは、バイクそのものが乗り物としてあまり進化してこなかったからではないかとも思っています。ミニマムで効率的なモビリティを普及させて地球環境保全に貢献するためにも、魅力的な電動バイクを提案していきたい」とのこと。とても共感できる言葉でした。

AAカーゴのレンタルサービスもスタート!

と、記事を書こうとしていた6月26日、成田さんから『最新電動バイク「アイディア AAカーゴ」や「プジョー ジャンゴ」を 気軽に試せる「アイディア バイクレンタル」開始』というプレスリリースが届きました。

6月27日から、「三密」を避けられるバイク通勤を促進するために新規事業としてアイディア 赤坂ショールーム(東京都港区赤坂2-5-4 赤坂室町ビル1F)で「アイディア バイクレンタル」を開始したそうです。

レンタル料は、AAカーゴα4が一か月31,240円、β4が一か月32,340円(ともに税込)。このほか、ADIVA時代のエンジン供給などで縁があったプジョーのオシャレスクーター『ジャンゴ』のレンタルも用意されています。

と、いうわけで、アイディアはEV普及に熱意をもって取り組む生粋の日本メーカーであることがわかりました。しかも、中国や東南アジアなどコスト優先の地で生産するのではなく、神奈川県相模原市内にある自社工場で生産。イタリアンデザインをメイド・イン・ジャパンで提供してくれています。この自社工場の生産台数は「年産3600台程度の態勢からスタートしています」とのこと。マクドナルドで採用されて順調なスタートを切ったアイディアのチャレンジ。今後、さらに魅力的に拡大していくことを期待しています!

2021年夏には8kWhバッテリー搭載のV2Hモデル『AAカーゴα V2H』も発売予定。

(取材・文/寄本 好則)

この記事のコメント(新着順)4件

  1. たまにスクーターに乗っていて一番残念に思うのは、あのアクセル応答の悪さだと思う。常にもっさりしか加速しない。電動化すればアクセル応答も良くなり、低速トルクも太くなるので、配達みたいな用途では最適かもしれない。

    バイクという形式にはこだわらずに、車輪の幅を広げて普通自動車にしてしまえば、ヘルメットかぶらずに乗れるだろうから、夏場はいいかも。出力ももっと大きければ、趣味での乗る人も出てくるかもね…

  2. ホンダのやつはバッテリー取り外し方式にこだわって航続距離が犠牲になっている。
    郵便局内で予備バッテリーを充電しておけば帰局後すぐに出発できる。
    のがウリになっているが、充電時間を考えると予備は充電器もバッテリーも2セット用意する必要があります。
    そこまでできるか?無理でしょうね。
    それならいっそのこと固定式にして容量を大きくとって航続距離を伸ばした方が使いやすいと思います。
    あるいは固定バッテリーと取外しの2個口体制とか。

    値段に関してはミニキャブMiEVバンが安く感じます。

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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