米メディアが「レクサスから米国へ〜電気自動車はありません!」と論評

11月末、中国の広州モーターショーで発表されたレスサス初の電気自動車である『UX300e』について米メディア『CleanTechnica』が「Lexus To US: No Electric Car For You!」と題した記事で取り上げました。内容としては、明確に「酷評」されています。

米メディアが「レクサスから米国へ〜電気自動車はありません!」と論評

今回は「全文翻訳」ではなく、ポイントを絞った解説記事としてご紹介します。
元記事:Lexus To US: No Electric Car For You! by Steve Hanley on 『CleanTechnica

「石炭火力」だけで全てが台無し

2019年も大詰めになってきました。マドリードで開催中のCOP25では、小泉環境大臣が閣僚級会合で行った演説で石炭火力発電からの脱却に踏み込むことができず、国際環境NGOのグループ「気候行動ネットワーク」から不名誉な『化石賞』を贈られるなど、国内外から大きな批判を浴びています。

EV普及を応援する『EVsmartブログ』としては、当然発電の脱炭素=石炭火力発電廃止には賛成ですが、「結果をともなう脱炭素化に向けた行動を確実に進めている」とした上で「石炭火力発電に関する新たな政策をこの場で共有することは残念ながらできない」と発言するしかなかった小泉環境大臣の苦悩もわかる気がします。

演説の中で小泉大臣も触れたように、日本は5年連続で温室効果ガスの排出量を削減してきています。ことに2018年度の速報値では、前年比-3.6%、2013年度比-11.8%という、本来であれば先進国の中でも胸を張って誇るべき削減を実践しているのです。でも、世界が注目する「石炭火力発電」に対して明確なスタンスを示せなかったことで、日本を挙げての低炭素化への努力が、国際的な評価という点ではすっかり台無しになっているってことですね。

我が国の温室効果ガス排出量(2018年度速報値)

※ 環境省資料より引用

電気自動車の状況も、なんだか少し似ています。いかに「低炭素」に貢献するハイブリッド車や低燃費車の先進技術を誇っていても、「脱炭素」を実現可能な電気自動車への不十分な取り組みは、世界から見ると「失望」でしかないようです。

EPA基準の航続距離が示されない理由

『CleanTechnica』の記事中、レクサスが広州で発表した『UX300e』に対して、バッテリー容量が53.4kWhで、航続距離はNEDCサイクルで248マイル=約400kmであることを紹介しつつ、筆者がまず指弾しているのが「EPA基準での航続距離」が明示されていないことであり、その「正当な理由」が「レクサスは『UX300e』をアメリカに持ち込むつもりがない」という点です。

昨日の記事『ポルシェ Taycan Turbo(タイカン ターボ)のEPA航続距離が201マイルと発表』など、さまざまな記事で繰り返しお伝えしているように、EPAというのは「United States Environmental Protection Agency=アメリカ環境保護庁」の略で、EPA基準による電費や航続距離は現状の国際基準であるWLTCや、『UX300e』で発表されたNEDCの数値よりも実使用時に近い、メーカー側からすると厳しい数値が示されます。

『UX300e』で発表された航続距離のデータがNEDC値であったことについて、この記事の筆者は「倫理的な企業が信頼感の低い基準を使用して航続距離を示すのか、消費者をわざと混乱させようとしているのでなければ、謎だ」と手厳しく批判しています。

レクサス(トヨタ)の発表では、『UX300e』はまず中国、欧州で発売され、2021年には日本でも発売するとしています。でも、確かにアメリカでの発売については言及されていません。

なぜ、アメリカで発売しないのか。その理由について筆者は「アメリカで売ろうとしても、EPA基準で200マイルを超えるのは難しいだろう」とシニカルに指摘しています。

絶望的に時代遅れの電気自動車になる

さらに、レクサスの発表ではブランドにふさわしいパフォーマンスやクラス最高峰の静粛性を実現していることを訴求してはいるものの「レクサスとトヨタは燃料電池車とハイブリッド車に焦点を当てることを好み、電気自動車には積極的に敵対してきた」と言及。

どちらにしても『UX300e』が「アメリカの海岸に到着する頃には、絶望的に時代遅れになる。200マイルしか走れないEVに『レクサス価格』を払いたがる人は誰もいないだろう」とぶった切り。「実際、こんなに競争力のない電気自動車」を市場に投入するのは、「トヨタが電気自動車の未来にきちんと取り組んでいないという批判をそらすためでしかないのでは?」と疑問を投げかけています。

トヨタらしい未来を感じさせてくれる電気自動車の登場に期待したい

アメリカで発売することを示していない電気自動車に対して、アメリカのメディア&筆者からここまでけちょんけちょんに言われてしまうのは、レクサス(トヨタ)が少しお気の毒ではありますが、これもまた、世界的な自動車メーカーへの期待感の裏返しなのでしょう。

われわれ日本人としても、なるほど、さすがトヨタ! と思わせてくれるような、魅力的な電気自動車の登場に期待したいと思います。

(文/寄本 好則)

12 thoughts on “米メディアが「レクサスから米国へ〜電気自動車はありません!」と論評”

  1. 国内で削減していても、その分輸出していたり(タイなどへ設備輸出)していますから胸張れないかと思います。

  2. レクサスの電気自動車の外観を見てまずがっかりとしました。
    フロントグリルなど本来必要がないのに無理やりにつけていたり、全体的なデザインも電気自動車らしい新しさを全く感じさせません。
    でもこれって日本の社会を表しているような気がしました。
    変化できないものは生き残れないのに日本は変化を好まず時代遅れのものを作り出しているような気がします。

    1. テスラ0804様、コメントありがとうございます。
      おっしゃる通りグリルを付けることにより、その分空力が悪化し、電費に悪影響があることは良く知られていますね。やはり既存の車種と共通部品を多くして、コストダウンを進めているのではないでしょうか?通常電気自動車を開発する場合、シャーシはガソリン車とは共通にしないものですが、レクサスの場合は基本部分は共通だとのこと。そのため、搭載できるバッテリー容量も限界があるのだと思います。
      まずは第一歩として、次に期待したいですね。

  3. Clean Technica は12月12日の記事でポルシェTaycan のことも同じようにこき下ろしていますね。今までドイツや日本に遅れを取ってきたアメリカの自動車産業がテスラの成功で愛国心に火がついているという面もあるような気がします。
    しかし今度のレクサスは日本人から見ても期待外れです。これではリーフe+の中身を
    そっくり借りてきた方が良かったのでは無いかとすら思えてしまいます。
    トヨタが満を持して出したBEVがこれでは酷評されるのは当然で、それを敢えて出す経営陣の鈍感さこそが問題に見えます。数年前はEVをリードしていた日産も立役者を引きずり下ろしてからは全くいいところが無いようです。
    日本の経営陣は総入れ替えが必要なのでしょうか?

    1. 同じ話しが三菱にも言えそうで悲しいです。
      せっかく世界初量産電気自動車アイミーブを出しておきながら後が続かずアウトランダーPHEVでお茶を濁している状態ではなんだかなぁ。
      しかも売れるはずの軽EVジャンルも歩行者保護の車両基準改悪(あえて改正とは言わない)で軽逸脱となって売れなくなり高耐久電池SCiB搭載のMタイプも終売とか…情けなすぎます!!(爆)
      変化を嫌う日本人の文化風習がここ最近ことごとく裏目に出てますな。

      逆にこのEVsmartに来る人間は概してイノベーター/アーリーアダプターなので進歩的で活発な議論がなされている感じです。アマチュアというか無償の愛を感じるというか。かくいう僕は以前アマチュア無線家でしたが概して進歩的で真摯な仲間が多かったですよ。特に電源問題に関してはかなり前向きでしたから。
      それこそソーラー発電で無線交信しようと考える人も少なからず居ました。ただ免許が要る世界なので今やなかなかなり手が居なくなりましたが。

      日本は電気自動車界の中ではファーストペンギンだったかもしれません。電気自動車も数が売れず儲けもあまりないとあってはテンションも下がっちゃうでしょうか!?まぁ電池が良くなれば売れるんでしょうが。
      それこそ日産三菱で共同開発中のアイミーブ後継電気軽自動車が出れば話は変わると思います。たぶん東芝が次世代SCiBチタンニオブ酸化物蓄電池を量産すればイケるんでしょうが。

      日本でまともな電気自動車を出せる会社は…日産三菱以外だとインドで電気自動車を作ろうとしているスズキくらいしか思いつきません(スズキと東芝の蜜月関係は続くようなので)。

    2. 満を持して、って感じじゃないんですよねぇ。どうしたって注目を集める一発目になんでこんなハンパなもの出しちゃったんだろう。
      HVやGOAなど、1発目が非常に大事なのはよく知ってる商売上手なメーカーのはずなのに、マツダみたいな事やっちゃってるのが不思議です。

    3. マグロの漬け丼 様、わざわざこの時期に出した理由ですが、欧州と中国の規制にあると思います。実はフォルクスワーゲンは欧州中国がメイン市場。トヨタは米国がメイン市場。しかし中国や押収は今年からハイブリッド車に対するペナルティがキツく、電気自動車の販売台数を増やさないと罰金で損失が出てしまいます。ギリギリ、罰金を減らせる範囲で、被害を最小化するためではないでしょうか。
      違う意見もあるかもしれませんが、是非聞きたいです。

  4. 変な翻訳では?

    レクサスの電気自動車は、貴方がた向けでは無いでは?

    貴方の電気自動車では、無い!
    貴方が乗る電気自動車では、無いとか?

    つまり、性能を批判する記事ですね!(汗)
    米国の基準値を出さないのが、一番の失点?(泣)

    1. 仙台市のタクシー運転手様、コメントありがとうございます。
      翻訳内容には間違いはありません。間違っている箇所がありましたら、具体的にご指摘お願いいたします。

      性能は、具体的に見てみると、2015年発売のモデルXより数値では悪いようですので、2021年発売なら6年遅れ、というところかと思います。

  5. まあ、確かに酷評していますが、本文を読んでみて感じるのは、「デカくて強いクルマこそ最高」という、いかにもアメ車的な価値観にそぐわないものへの蔑視であるように思います。

    航続距離のために重い電池を大量に積み、その巨体を動かすために巨大な出力のモーターを載せたモデルS/Xは、極めて伝統的なアメ車の価値観によって設計されていると思います。新興のテスラといえど、設計哲学はアメ車です。それが悪いという訳ではなく、やはり非常にアメリカ的なのだと思います。

    そして、このメディアは、あるいは少なくともこの記者は、そういったアメ車の伝統がお気に入りのように感じます。

    彼らの指摘するポイントは、6.6kWという普通充電の性能と、50kWhという電池サイズとそれによる短い航続距離、そしてレクサスの価格です。

    米国の事情は違うかもしれませんが、こと国内や中国の電力事情であれば、普通充電は6kW程度で適正に思えますし、重くてかさばる今のLiBでは、搭載量を少なめにして重量を抑える方向性もあってもいいと思います。

    このメディアに酷評されても、正直気にする必要があるような内容ではありませんでした。

    1. MZY様、コメントありがとうございます!UX300eはデカくて強いクルマなんだからまあまあ合っている気もするのですが、、そのあたりは感覚の違いかもしれませんね。

      >50kWhという電池サイズとそれによる短い航続距離

      航続距離が短いことを嫌って、電気自動車は長い間メインストリームになることができませんでした。2009年から電気自動車は市販されていたわけですが、消費者にとって最も避ける理由は航続距離なのです。そして、電池を多く積めば当然航続距離は延ばすことができます。UX300eのサイズであれば、シャーシが専用設計であればもっと搭載することは可能だったはず。ガソリン車と共通のプラットフォームを用いることにより、搭載可能な容量が制限されたのです。
      https://www.tesla.com/en_AU/model3/design?redirect=no#battery
      ちなみに全く形の違う車ですが、55kWh搭載のモデル3 スタンダードレンジはNEDCで460km。SUVであることを考えるとNEDC 400kmは効率的にはかなりいい線まで行っていると思われます。つまり、航続距離が中くらいになっている理由はMZY様がおっしゃる通り搭載量を減らしたから。ただし搭載量を減らして航続距離を減らす(EPAでは300kmを切ると思います)と、正直冬の箱根往復も難しくなるんです。実用性という意味で、利用者側にある程度のEV経験を要求する車両であると言っても言い過ぎではない(=誰にでも売れる商品ではない)と思います。

      普通充電に関しては、6kWあればまあ充分ではないかと思います。MZY様のご意見に同意いたします。

  6. いつも面白い記事をありがとうございます。

    今回のレクサスはお茶を濁したと言われても仕方がないのかな?とは思います。
    実際既存の内燃機関と同様のプラットフォームを使用していることからもそう思われても仕方がないと思います。

    ただ、確かに電気自動車として最大効率を見るなら電気自動車として開発したものか良いのでしょうが、「パワートレインの選択肢を増やす」と解釈するならなるべくプラットフォームは共通化した方が良い気もします。
    もちろん航続距離等の問題は解決しなければならないですが、この車が欲しい!とした上で動力は電気?ガソリン?軽油?等と選択できた方が、今の状況なら消費者の立場からしたらありがたいですもんね。

    上記の記事の化石賞については小泉大臣の残念っぷりは論外としても、日本の現在のigcc等最新技術の石炭火力の効率を意図的に無視しているとしか思えないので(知らないならよりあきれますが)個人的には結論ありきの話にしか聞こえませんでした。

    特に発展途上国に対して全部先進国が支払うならいざ知らず、安定的でなく投資コストのかかる発電を押し付けるのはエゴがひどいなと思います。

    別に高効率なら発電方式にこだわる必要はないのに何故か太陽光とか風力にこだわるのはいまだに理解できません。

    エネルギー源の有限性を語るかたもおられますが、それと同じくらい経済性もエネルギーの独立性も重要なのになぜ、そこを無視して結論を出しているのかいまだに理解ができていません。

    とはいえ電気自動車へのシフトは避けられないでしょうから、少しでも良いものを作って欲しいですね!

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この記事の著者


					寄本 好則

寄本 好則

兵庫県但馬地方出身。旅雑誌などを経て『週刊SPA!』や『日経エンタテインメント!』の連載などライターとして活動しつつ編集プロダクションを主宰。近年はウェブメディアを中心に電気自動車と環境&社会課題を中心とした取材と情報発信を展開している。剣道四段。著書に『電気自動車で幸せになる』『EV時代の夜明け』(Kindle)『旬紀行―「とびきり」を味わうためだけの旅』(扶桑社)などがある。日本EVクラブのメンバーとして、2013年にはEVスーパーセブンで日本一周急速充電の旅を達成した。

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