レクサスの電気自動車『RZ』初試乗〜プレミアムブランドならではの「気持ちよさ」を実感

レクサスブランド初のBEV専用車『RZ 450e』に、モータージャーナリストの諸星陽一氏が試乗。東京ミッドタウン日比谷の「レクサス充電ステーション」での予約充電&特典サービス体験も試してみたレポートです。

レクサスの電気自動車『RZ』初試乗〜プレミアムブランドならではの「気持ちよさ」を実感

レクサス初のEV専用車『RZ』に一日試乗

レクサス初となるBEV専用車のRZは2022年4月にワールドプレミア、2023年3月に発売が開始されていたが、やっとのことで試乗機会を得られた。

レクサスRZ 450 eはトヨタbZ4X、スバル・ソルテラとプラットフォームを共有するモデル。ホイールベースはbZ4X & ソルテラと同寸の2850mmとなる。トレッドは前後ともに10mm広げられフロントが1610mm、リヤが1620mmとなった。サスペンションは同様でフロントがストラット、リヤがダブルウィッシュボーン。ボディは専用設計で、bZ4Xは全長×全幅×全高が4690×1860×1650(mm)なのに対し、RZは4805×1895×1635(mm)と全長は長く、全幅は広く、全高は低いスタイリングである。

もっとも異なるのはモーターで、bZ4X & ソルテラの4WDが前後ともに「1YM」という型式の最高出力80kWのモーターを装着するのに対し、レクサスRZはbZ4X & ソルテラのFWDで使われている「1XM」という出力150kWのモーターをフロントに配置、リヤは1YMを使い150kW+80kWのモーターの組み合わせで4WDとしている。バッテリーはbZ4X & ソルテラ同様の71.4kWhのリチウムイオン電池を採用する。

クルマに乗り込みインパネまわりを観察すると、全体としてまとまり感のあるダッシュパネルであることが確認できる。bZ4Xのインパネはメーター部分がグッと奥に押し込まれたようなレイアウトで、全体に角張った部分が多く、さまざまなパーツを配置しました……的なイメージだが、RZは統一感があっていい。

メーター部分を奥に配置する必要がないのは、レクサスRZにはヘッドアップディスプレイがあるからだ。レクサスRZのステアリングは合成皮革が使われているが、これがじつにしっとりとしていい手触り。革製品が最高品質であるという考えは、もはや捨てたほうがいいだろう。

回生ブレーキを調整するパドルスイッチを装備

ソルテラには回生量を調整するパドルスイッチがあり、bZ4Xには装備されない。トヨタの思想がそういう方向性なのかと思っていたのだが、レクサスRZには装備されていた。

やはり、パドルによる回生量調整ができるのは歓迎。速度を調整するだけならば、フットブレーキを使えばいい。私はそれが面倒だとは感じないし、そんなことぐらいが面倒なら運転なんてしないほうがいい。だが、減速という行為をエネルギー獲得に使える回生ブレーキをあたかもギアチェンジのような「運転の楽しさ(EVならではの操作感覚)」に転換できるパドルシフトは素晴らしい技術で、それを効率的にそして快適に行えるようにする回生量調整機構(現時点ではパドルが最良だろう)はすべてのEVに採用されるべきだ。

レクサスRZの回生量調整は、一般道走行レベルの速度域で顕著に変化させられるもの。高速走行時でももう少し強めに回生できるほうがより効率がアップしそうな印象もあった。

走りはまさに「スポーツEV」

レクサスRZはbZ4X & ソルテラよりも強力なパワーユニットを備える。前述のようにbZ4X & ソルテラの4WDは前後ともに80kWのモーターだが、RZはフロントモーターがbZ4X & ソルテラのFFと同じ150kWとなる。フロントモーターの出力が2倍近くになるのだから、走りは力強くなって当たり前だ。

アクセルを踏み込んだときの加速は強力で、「おお、スポーツEVだな」と思わせるもの。クルマの魅力、クルマの役割は、生身の人間では不可能なことができることにある。加速の強さが人を魅了するのはそうした能力にほかならない。RZはまさにその能力を見事に発揮するのだ。

欲をいえばリヤモーターの出力が高ければもっとよかったに違いない。せっかくの4WDなのだから、リヤ寄りの駆動配分にしてやれば、フロントタイヤをより操舵のために使える。しかし、そうはしなかった。bZ4X & ソルテラのFFはフロントモーターが150kWなので、フロントセクションは150kWを受け止められる設計である。こう考えれば、bZ4X & ソルテラをベースにレクサスRZを作る際、フロントに150kWのモーターを配置したのは当然の流れだ。つまり、bZ4X & ソルテラの2WDがRWDであったら、モーター配置も異なっていただろう。トヨタとスバルは86 & BRZでRWDの経験を積んできているだけに、ちょっと残念な点ではある。

静粛性や快適さもワンランク上の印象

さて、快適性である。レクサスブランドから販売されるRZは、bZ4X & ソルテラと比べるとかなり快適である。ステアリングやシート、ドア内張の触感などもそれぞれが高級感にあふれている。

ドアノブもe-ラッチとよばれるシステムで、外からドアを開ける際はドアノブに触るだけ、内側からはドアノブを軽く押すことでドアが開く。静粛性に関してはかなり気を遣っている印象で、とにかく細かいや振動がない。全体として静粛性に優れ、振動がよく抑えられている。加速時は効果音が発せられていたが、それでかき消されるという印象もなかった。この効果音も消す手段はあるのだと思うが、試乗中にいろいろいじってみても見つけられなかった。

また、今回は後席に乗る機会もあり、後席の快適性も確認できた。bZ4X & ソルテラで感じたタイヤノイズもよく抑えられていた。ただし、ギャップ乗り越え時の突き上げ感は抑えきれてない印象。オプションで用意されているフロント235/60R18、リヤ255/55R18サイズに交換すれば、より乗り心地がよくなりそうである。

予約可能な専用ステーションで充電体験も

今回、RZのローンチに合わせて2023年6月にオープンした、東京ミッドタウン日比谷の「レクサス充電ステーション」での充電体験を試みた。サービスを利用するにはLEXUS Electrified Programへの加入が必要だが、RZ450eとUX300eを新車で購入した場合は3年間(認定中古車の場合も3年間)、無料で使える。無料期間が過ぎてからは月額1000円の使用料が必要だ。

試乗開始時の午前11時にレクサス充電ステーションを15時から使用する予約をして試乗をスタートした。15時に合わせて東京ミッドタウン日比谷の専用充電スペースに行くと、充電スペースにある黄色いクルマ止めスタンドが自動的に下がりRZを迎入れてくれた。この一連の動きがじつにスムーズで、なんともおもてなし感にあふれている。

予約で充電できるということは、充電待ちという事態を避けられるわけである。EVライフにおいて、もっともネガティブな事態ともいえる外出先での充電待ちを避けられるのは最高にハッピーである。しかも東京ミッドタウン日比谷の充電器は最大150kWの性能があるので、短時間でたっぷりと充電できるはずだった……。

だった、というのはほかでもない。じつは原因不明のトラブルで充電ができなかったのだ。現在トヨタ自動車でも調査をしてくれているが、まだ原因は不明である。ただ、普段は問題なく充電できているとのことなので、今回は借り物スマホのアプリ認証などに関わる突発的なトラブルではないかと考えている。

充電中の15分マッサージが気持ちよかった

できなかったことをとやかくいっても仕方ないので、よかった点を書いておく。東京ミッドタウン日比谷では充電中にさまざまなサービスを優待価格で受けられる。今回はJet Setというシャンプー&ブロー専門店での首肩15分マッサージ。通常1650円のところを1100円で体験した。これが、抜群に気持ちよかったのである。

充電時間をいかにして過ごすかはとても大切。運転後にマッサージでリフレッシュできるというのは魅力的なプログラムだと感じた。

東京ミッドタウン日比谷で用意されているプログラムは、このマッサージのほかに同店でのシャンプー&ブローの割引、NEUTRALWORKS.HIBIYAでの体成分分析装置での無料計測、Q CAFÉ by Royal Garden Cafeのワークスペース1名分の時間延長無料サービス、理容ヒビヤでの全施術メニュー10%オフ(平日限定)など。カフェのLEXUS MEETS THE SPINDLEのアフタヌーンティー1名料金で2名分の提供(要予約)やシーズナルパフェもしくはアルコールを除くドリンクメニューの中から1品無料も用意されているが、取材のタイミングではLEXUS MEETS THE SPINDLEは改装休業中であった。

EVは充電時間をいかに快適に過ごすかでその評価が変わってくる。充電器の空き待ちでイライラし、充電中にやることがなくイライラし……ではEVはつまらないになってしまう。そこをどう変えていくか? という命題へのひとつの提案がLEXUS Electrified Programにはあった。レクサスというプレミアムブランドだからこそ実現できているサービスだが、有料でもいいので「充電器予約ができる」ようになるといったサービスは、今度はさらに広がっていくといいと感じた。

取材・文/諸星 陽一

この記事のコメント(新着順)1件

  1. EV推しですが、紹介記事見る度に「じゃ乗り出しいくらなの?維持費は?」といつも思います。
    魅力的に感じても高嶺の花って感じる人も多いのでは💦

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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