2025年までに電気と燃料電池のフルラインナップを揃えるとボルボが発表

各自動車メーカーから乗用車の電動化モデルが続々と発売される中、ボルボ・トラックは大型トラックすべてでゼロ・エミッションモデルを揃えると発表しました。CleanTechnicaから全文翻訳記事をお届けします。

2025年までにすべてのトラックを電気と燃料電池モデルにするとボルボが発表

元記事:Full Line Of Volvo Trucks To Go Battery Electric, Hydrogen Fuel Cell By 2025 by Jo Borrás on 『CleanTechnica

(※当初タイトルを元記事の直訳で『2025年までにすべてのトラックを電気と燃料電池モデルにするとボルボが発表』としていましたが正しい情報ではなかったため修正いたしました。2020/11/23)

環境ニュートラルへの大きな一歩

先週、ボルボ・トラックは早くて来年からすべての大型トラックモデルで電気ドライブトレイン付きのものを発売すると表明しました。この動きはヨーロッパで化石燃料使用から脱却し、2040年までに完全な『環境ニュートラル』になるというボルボのコミットメントへの大きな一歩と見られます。

ボルボの電気トラック。画像はボルボ・トラック公式より。

ボルボ・トラックは現在、アメリカ人にはお馴染みのマック・トラック版モデルと同時進行で、大型とセミトレーラーモデルであるボルボFH、ボルボFM、ボルボFMXの運用テストを行っています。すべて、大きなトラックです。中には総重量が40トンを超えるものもあり、一充電での航続距離が200マイル(約320km)程度になります。

1日に1,000km以上を走るようなディーゼル車に取って代わるには、確かにこれでは十分ではありません。しかしもっと短い距離用だとしたら、力強いトルク感より欲しいものがあるでしょうか? 倉庫から70~80km離れた建築現場に機材を運ぶセミトレーラーを考えてみてください。ボルボの電気トラックはこれに適しており、大型EVがもっと出てくれば、この現実はさらに明白になります。

ボルボ・トラック・グローバルの代表取締役であるRoger Alm氏は「大型の電気トラックを急いで増やし、顧客や運送業のバイヤーが持つ大きな持続可能性のゴールを達成する手伝いをしたいのです。私達はこの業界を持続可能な未来に向けて進めていくと決めています」と語りました。

このニュースはボルボ・トラックがダイムラー・トラックの水素燃料電池ビジネスを共同で行うと発表した後に続いたもので、社がゼロ・エミッション車両への転換に向けた準備段階をすでに終えていることを示しています。それどころか、ラスベガスで言うところの“オールイン”をした(※すべてを賭けた)のです。

Alm氏によると、「環境に交通が与える影響を減らすには、化石燃料から電気などの代替物に即座に切り替える必要があります。しかしこの動き、ひいてはそのペースに関する条件は、車種や市場によってかなり違ってきます。経済的なインセンティブ、充電インフラへのアクセスのしやすさ、交通運用のタイプによって違いが生まれます」。経済的な障害、車両の古さに加えて上記のような違いが加わり、化石燃料からのシフトは緩やかに起きると氏は考えています。この変化に直面した、物事を先取りして考える車両責任者を落ち着かせるために彼が強調したのは、ボルボのトラックはドライブラインにとらわれない、つまりある会社がすでにボルボのディーゼルトラック用に特別にデザインした積荷用アームを作っていたら、新しい電気ボルボ車にもそのまま使える、ということです。

Roger Alm氏。画像はボルボ・トラック公式サイトより。

「シャーシは、ドライブラインから独立しています。顧客は同じモデルでも違うタイプのボルボ製トラックを買うことができます。その違いは電気なのか、ガソリン又はディーゼルで動くのか、のみとなります。私達の主なタスクは、電気自動車へのシフトを簡単にすることです。そのためにも経路プラン、適切に選ばれた車両、充電設備、料金、サービスを含む総合的ソリューションを提供していきます。販売店のグローバルネットワークやサービス・ワークショップとともに提供する長期のセキュリティが、かつてないほど重要になるでしょう」とAlm氏は話しました。

私は良い計画だと思いました。皆さんはどう考えますか? ボルボのような大きい会社には、BEVと水素燃料の両方を使ったアプローチが良いのか、それともテスラやニコラのような、1つのアプローチに特化した方法が正しいのでしょうか。あなたの考えをお聞かせください。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)9件

  1. 短距離の市街地走行という負荷の高い使用方法で酷使された初期型リーフタクシーでバッテリーが3年しか持たなかったという例がwebCGにありましたね、3万キロでバッテリー容量減少に伴い廃車になった事を思い出しましたが、リーフも48万キロバッテリー容量が減少せずに走れたのかなぁ、あれってエビデンスにならないんでしょうか?

    まぁ、ウチのi3のバッテリーは10万キロまでしか保証してもらえませんが、3万キロをもうすぐ超えるので、バッテリー容量の確認をしてみようかなと、、、

    ところでトラックの場合は過積載もありますし、反復利用で帰りは空荷ですから負荷は減るかな?でも毎日満充電を繰り返すので、バッテリーは消耗品として設定されるんでしょうね。トラックは道具です、研ぎ減りして使えなくなる刃物と同じ様に使い切られるでしょうから、短距離配送トラックと言うと20万キロで結構逝くかなぁ、、長距離なら50万キロは逝くんでしょうが、、、

    ゴーストップの繰り返しな日本と、なかなか止まらず定速走行のアメリカと寿命を走行距離で語ると、些か公平性に欠けるのではないかな?と愚考するのですが、、

    エビデンスと繰り返される方であれば、ソコラにも留意された方が信頼も得られるのではないかなと、、、

    それと透過性の高い水素を燃料として高圧保存すると、タンクの寿命は意外と短いのではないかな?只今川崎重工が水素タンカーの開発に苦労しておられますが、巨大なタンクが消耗品となると産油国からの水素輸送がアンモニア態で輸送せざるを得ないか?という感じにもなりつつありますし、、

    ディーゼル・エレクトリックな戦艦も存在した事ですし、大島造船さんが作りシップ・オブ・ザ・イヤーを獲得した小型電動フェリーも、恐らくは主流にならずに終わりそうですし、、全てが電動化というのも極論のような気がしてなりません。件のフェリーは600kwhのバッテリーで10ノットしか出ませんから、関門海峡を超えるの潮待ちしないと無理ですし、、

  2. 長距離トラックをEV化するには、どの程度のバッテリーが必要か?を計算してみたことがあります。その時の結論は「荷物の積載量を6割減らして、空いた分にリチウムイオン電池を積めば何とかなりそう」というものでした。これでは電池を運ぶために電池を積んでいる状況になってしまい、経済的には苦しそうです。

    ボルボの言っているように、実は短距離でも十分な用途が相応にあるのであれば、EVトラックが成立する可能性もあるのかもしれません。荷物を満載したトラックが喘ぎながら坂道を上っている状況を見たりすると、電動化すれば運転はずいぶん楽になりそうだなとも思います。320kmの航続力でどの程度の需要が満たせるのか気になるところです。意外と多いようであれば、いすゞや日野、三菱ふそうなどの国内勢も対応を迫られるようになるかもしれませんね。

    でも結局トラックのEV化は困難との結果になるような気もします。EU当局が貨物車に対しても乗用車と同様の厳しい規制を敷いてくるか、あるいはより妥協的な規制になるかにもよりそうです。未来がどちらかわからない以上、ボルボのように複数の選択肢を持っておくのは賢い戦略だと思います。水素インフラが整備され、水素が安価に流通するのであればFCVや水素エンジンでも良いでしょう。

    実のところ、再エネ由来水素などのインフラが将来的に整備される可能性は結構高いです。というのは、リチウムイオン電池のみによる完全電動化が困難なモビリティは他にもあります。航空機と船舶がそれです。航空機はクルマでいうハイブリッド型(ガスタービンエンジン+バッテリ)が研究されていますが、電池のみで飛行するものはドローンのような小型のもの以外は真剣に検討されていません。船舶は燃料の重油を天然ガスに置き換えてCO2排出量を減らす動きが世界的に進行していますが、バッテリーのみで航行する方式はやはり検討されていません。

    航空機と船舶もゼロエミッション化しようと思えば、再生可能エネルギーによる水素、あるいはそれを改質したアンモニアかメタン、もしくはバイオ燃料を用いた動力を使うことがおそらく必須です。いわゆる水素社会ですね。社会全体を低炭素化しようと思うと避けては通れない課題です。

    なればこそ、バスやトラックのメーカーはどの未来が来ても対応できるように準備する必要があるのでしょう。日本勢も時代に取り残されることなく頑張ってほしいものです。下手を打つと石炭火力発電業界のように泣きを見ることになりかねません。

    1. 堀越様、コメントありがとうございます。おっしゃる通り、経済的に成り立つかどうかが大事ですよね。いろんな方がこのシミュレーションを出しています。
      https://cleantechnica.com/2019/09/01/how-much-does-the-tesla-semi-weigh/
      これによればトラクターは25000lbs=11.3tくらい。普通のトラクターは7tくらいですので、やっぱり5tくらい重くなっています。この分積載可能量が減るかどうか、ですよね。
      実際には車軸ごとの重さなども計算しないといけないようで、簡単に足し算で(5tぶん、積める量が減る)というわけではないそうなんです。このあたり、詳しい情報が入ればご紹介したいともいます。

    2. 中~長距離トラック/バスは航続距離の件からみても水素の方がいいでしょうけど、
      近距離用はBEVでしょうね。
      水素ステーションの設置の敷居の高さと、水素充填の手間と充電器設置の敷居の低さと充電の手間を考えるとおのずと答えは出ているように思います。

  3. 使用済みバッテリは環境負荷が大きい
    耐用年数は約5年
    それを考慮に入れたら果たして正しいのか?
    間抜けしかいない今の政治家と技術屋

    1. 日本太郎様、コメントありがとうございます。
      バッテリーの耐用年数が5年というのは、どこかにエビデンスはありますでしょうか?
      こちらの記事に統計データがありますが、
      https://blog.evsmart.net/tesla/model-s/tesla-battery-degradation-statistics/
      10%劣化までに25万7千キロくらい走行できるというデータが出ています。また10%の劣化では別に使えないというわけではなく、まだまだ走行させることができます。
      実際に、48万キロを走行した車両の全データも公開されています。
      https://blog.evsmart.net/ev-news/tesloop-480k-km-battery/
      記事を批判される前に、ご自身で、データを確認されてからお願いできますと幸いです。

    2. 技術は日進月歩で研究開発が進んでおりますゆえ、今回のような感情任せにてお話しをされたり、無知なコメントは他方に誤解を招き更なる無知を生み出す要因となりうるため、控えていただきたいと願います。

  4. 私は内燃機関で走る車両は必要悪だと心ならずも妥協していました。そして、いろいろな記事で2030年ころに各国が軒並み内燃機関で走る車両の販売を禁止すると報道しているなかで、バス・トラックをどうするのか? が私の疑問でした。
    こんな短期間に大型車用にも対応できる充電・水素供給インフラを構築できるのでしょうか?
    恐らく、大型トラックはFCV一択ですね。(記事にある320kmでは、県内の移動でも貨物の積み下ろしをしながら充電できないと安心して運行できないと思います)
    インフラの問題は別としても、「トラック・バスも内燃機関禁止」となれば、昭和40年代後半から昭和50年代に起こった排出ガス規制とは比較にならない急変革が襲うことになるのではないでしょうか。
    2030年以降を自分の目で見られるかどうか心もとないですが、子供の頃から夢見ていた「乗り物は皆電気で動く」時代にもう一歩かも知れません。よーく眼を見開いて老後の見物とします。

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この記事の著者


					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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