ドレスデンの透明な工場でフォルクスワーゲンID.3を生産中~4カ所目の電気自動車生産拠点

欧州で電気自動車ID.3の売り上げが好調なフォルクスワーゲン社が、ID.シリーズを生産する新しい工場を公開しました。透明な見た目だけではなく、そのコンセプトもユニークなものになっています。全文翻訳記事をお届けします。

ドレスデンの透明な工場でフォルクスワーゲンID.3を生産中~4カ所目の電気自動車生産拠点

【元記事】Transparent Factory in Dresden Now Producing Volkswagen ID.3 by Zachary Shahan on 『CleanTechnica

現在フォルクスワーゲンID.3はドイツ、ドレスデンにある「透明な工場」で生産されています。

ここはVWグループとしてMEBプラットフォームを使った電気自動車を生産する4カ所目の工場となります。先立って2020年末に中国の安亭鎮、仏山市、それからドレスデン南西部にほど近いツヴィッカウに工場がオープンしました。4つの工場をあわせると、年間90万台の電気自動車が生産できます。

ドレスデンの透明な工場でID.3の生産が始まった
ID.3の組み立て作業
バッテリーの組み立て前作業

この施設は単なるVW用工場ではありません。現場責任者のDanny Auerswald氏は、「ここは生産プラント、観光地、イベント会場、実験施設、配送施設のすべてが1つになった場所です」と言います。この施設の多岐に渡るオペレーションの詳細は以下を読めば分かります。

「車両生産に加え、この場所は新しく、広がりを見せるビジネスを作り出します。ドレスデンのVW施設では380人が働いています」

「将来、透明な工場で顧客に渡される車両数はかなり増えるでしょう。そのために工場内には2つ目の配送場が作られたのですが、自動車業界ではユニークなものです。顧客の手に渡る車両数は2019年に1,301台、2020年に3,296台、2021年には5,000台以上と増加し続ける見込みです。目標は2022年までに年間9,700台ほどのデリバリーとなります」

「ドレスデンの機能テストステーションはさらに拡大されています。世界の車両開発全体をテストするステーション・ネットワークに不可欠な部分です。その焦点はアシスタンス・システム、モバイル・オンライン・サービス、エンジン、シャーシのテストです」

「車両テクニカル・サービスでは、中古車の点検と修理がされます。電気自動車のデリバリーも透明な工場で準備されます。目標はドレスデンで生産された車両を主にドレスデンにデリバリーすることです」

「さらに、プロダクション4.0(編集部注 ※インダストリー4.0=VWをはじめドイツで進められている産業構造のデジタル化と先進化に見合った製造ソリューション)もこの工場で進められます。組み立てとロジスティクスの複雑なオペレーションを自動化、デジタル化するというものです。具体的には工場を会社のパイロット版と見立て、実際のプロセスで使われる新しいテクノロジーの開発やアプリケーションをテストします」

【VWのニュースリリース】
ID.3 starts series production: The Transparent Factory in Dresden to become the home of the Volkswagen ID.(2021年1月29日)

ツヴィッカウ工場はIDシリーズを生産する初の工場となり、ID.3の生産はここで2020年の6月に始まりましたが、VWはドレスデンの施設を『ID.のホーム』にしたいと示唆しています。車両がどうやって生産されているのか顧客に近くで見てもらうなど、ID車両開発における様々な側面を取り扱う透明な工場は、ID革命の中心となるでしょう。VWは以下のように発表しています。

「ゴールの中心:ドイツVWのかがり火となり、車両に関するアドバイス、テストドライブ、生産過程の見学、ID.3や現代的なイベントの共同構築から、電気自動車の受け渡しまで、IDファミリーの包括的体験を顧客やビジターに提供することです」

「また、イノベティブなプロジェクトを運営する研究・イノベーション用サイトの戦略的配置転換がもう1つの焦点となり、プロジェクトは後々VWの大規模なパイロット版スケールで実施されます」

「ここでは、ビジター、顧客、ゲストが明日のモビリティに直接触れることができるのです。」

ID.3の組み立て作業。
ID.3のロゴ

社はID.3、ID.4、その他のEVモデルを、他に3つあるMEBに集中した工場で毎週増産しています。さらにVWはエムデン(独)、ハノーバー(独)、テネシー州チャタヌーガ(米)にある工場でもこれから数カ月でEV生産をスタートさせる予定です。

ID.3の生産準備ができる前の数年間、VWは透明な工場でe-ゴルフを作っていました。2017年から昨年後半に生産が終わるまで、VWは5万401台のe-ゴルフを生産しました。

透明な工場でID.3生産が始まることの重要性を示すように、ローンチの際にはザクセン州の経済交通大臣Martin Dulg氏、ドレスデン市長Dirk Hilbert氏、フォルクスワーゲン・ザクセン役員Dr. Stefan Loch氏(テクノロジー&ロジスティクス部門)、Karen Kutzner氏(ファイナンス部門)、Dirk Coers氏(人事部門)、フォルクスワーゲン・ザクセン労使協議会会長のJens Rothes氏が出席しました。

透明な工場は月曜日から土曜日の9:30~18:30、日曜日の9:30~17:00にオープンしています。私のポーランドの家から特急で少しの距離になります。ポーランドに帰る暁にはぜひ訪れてみたいと思っています。

(翻訳・文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)1件

  1. VWのディーゼル押しからの変わり身の早さというか徹底ぶりはどこから来るのでしょうね?
    アメリカの自動車メーカーとかでもここに活路を見出そうとしているように見えます。
    日本でも青息吐息の自動車メーカーはあるのに。
    起死回生の大博打を打ってBEV専業とまではいかなくても勝負してみたらいいのに
    と無責任に書いてみる。

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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