メルセデス・ベンツ『EQS SUV』試乗レポート/重量級ながら小回りや加速に不満なし

2023年5月29日に日本でも発売されたメルセデス・ベンツ『EQS SUV』のメディア向け試乗会が開催されました。EV専用プラットフォームを採用したブランド初のSUVモデルは、はたしてどんな出来映えなのか。モータージャーナリスト・諸星陽一氏のレポートです。

メルセデス・ベンツ『EQS SUV』試乗レポート/重量級ながら小回りや加速に不満なし

EV専用プラットフォームを採用した初のSUVモデル

メルセデス・ベンツが展開する電気自動車、EQシリーズの初代モデルであるEQCが2018年に発表、2019年から日本でも発売開始されました。2023年の現在、EQシリーズはもっともコンパクトなEQAから、EQB、EQE、EQS、そして今回のEQS SUV 、EQE SUVと、多彩なのラインアップを備えています。さらに欧州などではミニバンのEQV、ややコンパクトなミニバンのEQTなどもあり、日本へのさらなる導入を期待したいところです。

EQS SUVはEV専用プラットフォームを採用した初のSUVモデルということで、その性能の高さに期待値が上がります。試乗したEQS 450 4MATIC SUVは全長5135mm、全幅2035mm、全高1725mmという堂々としたボディに3列7名分のシートを配列。駆動方式は4WDでシステムとして265kW(360ps)/800Nmのパワー/トルクスペックを持ちます。車両重量は2900kg、バッテリーはリチウムイオンで容量は107.8kWhです。

一充電航続距離はWLTCモードで、今回試乗した「450」が593km。システム最大出力400kWを誇る「580」で589kmと発表されています。実用値はともに8割程度になるでしょうが、それでもおおむね500kmレベル。十二分な実力であると評するべきスペックです。

重くて大きな車体も取り回しは悪くない

5mを軽く超える全長、そして2mオーバーの全幅は都内ではさぞかし持て余すことだろうと思ったら、これが意外とそうでもありません。もちろん、密集した住宅街ではキツいでしょうが、そうでなければ意外と大丈夫です。というのもEQS SUVには最大でリヤタイヤが10度の切れ角を持つ4WSのリア・アクスルステアリングという機構が与えられています。これにより最小回転半径は5.1mと小回りが効くのです。今回の試乗は六本木にあるメルセデスミーから、臨海地区までの短い距離の試乗。そのコースでは車体が大きすぎて困るということはありませんでした。

もっとも緊張したのは首都高速入り口ゲートでしたが、これも左右の見切りがよく車幅感覚がつかみやすく比較的楽です。車高が高いこと、Aピラーが立っていることなどが幸いして、安心してゲートに入ることができました。また、もうひとつの緊張シーンとして左折して駐車場に入るパターンです。リア・アクスルステアリングは最小回転半径を小さくできますが、同時に自分の感覚よりもリヤが小回りすることになるので、いつもの感覚でステアリングを切るとリヤが早めに寄りすぎてしまって、ホイールを縁石にヒットしてキズつける可能性もあります。この部分はそれなりに気をつかう必要があるでしょう。

回生ブレーキの強度切り替えも好印象

EQS SUVにはダイナミックセレクトと呼ばれる走行モードの選択と併せてパドルシフトによる回生量の調整ができます。回生量は普通回生、強力回生、インテリジェント回生、回生なしの4段階が選べます。普通に乗っているだけなら、インテリジェント回生を選んでいれば快適で、ACCとのマッチングも快適に作動します。一方でEVに乗り慣れた方なら欲しいと思うのがワンペダルモードではないでしょうか? もちろんワンペダルモードには是非がありますが、選べるにこしたことはありません。EQS SUVの場合は、センターモニター(MBUX)を使って行う設定で、「クリープをしない」とすることでワンペダルモードとすることができます。この際、もっともワンペダルモードらしい走りとなるのが強力回生で、もちろん回生なしではワンペダルモードとはなりません。

2900kgと車重はかなりあります。ロールス・ロイスの最高峰であるファントムエクステンデッドホイールベースですら2750kgなので、ある意味異次元の重さです。クルマは軽いことが正義と言われますが、乗り心地については重さが正義となることがあります。ロールス・ロイスが比類なき乗り心地を稼げているのはその重量に由来するところも多いのですが、EQS SUVの乗り心地もまた同じだといえます。さらにもっとも重量の重いバッテリーが床一面に配置されるので、重心は低く遮音物にもなるため乗り心地性能はさらに高いもです。この重量を支えるサスペンションはフロントがドイツ勢が4リンクと呼ぶダブルウィッシュボーン、リヤがマルチリンクでバネは金属ではなくエアスプリングです。

3列目シートの乗り心地も上々

フロントシートに乗っている際に感じるフラットで落ちついた乗り心地だけでなく、ビックリしたのはサードシートの乗り心地のよさです。サードシートはちょうどリヤアクスル(車軸)上にあるのですが、上下動などもよく抑えられていて快適そのものです。ヘッドクリアランス、レッグクリアランスともに十分に確保されていて、サードシートに押し込められいるという感覚は受けません。乗り込む際もセカンドシートがしっかり前進してくれるので、楽に行えます。

ただし乗り込みには注意が必要で、サードシートへの乗り込むためにセカンドシートを前倒しにすると、そのままセカンドシートが自動で前進、連動してフロントシートも前進します。このときにフロントシートに座っているとシートに挟まれたようになってしまうのです。サードシートに乗る際は、誰も乗っていない状態で(もしくはシートが動くことを想定して準備した上で)サードシートに乗り込むという手順が必要になります。

3トンに迫ろうかという車重ながらシステムトルクで800Nmを発生させているだけに加速に不満感などはありません。アクセルを踏めば、グイッと前に押し出す加速が生まれます。欧米系のハイパフォーマンスEVほどの大迫力加速ではありませんが、EVらしいズドンとくる加速を味わえます。ハンドリングもスムーズで気持ちよく走れます。エアサスのブワッとした印象は皆無です。これまでもさまざまなエアサスがありましたが、やはりこのレベルの重量との相性は抜群。重いクルマほどエアサスがいいのはわかっていましたが、3トン近くなればその効果もより現れるというものです。

今回は短距離試乗ということで充電チェックはできませんでしたが、資料によれば残量10%から80%までの急速充電での充電時間は50kWで100分、90kWで53分、150kWで49分とのこと。また10%からの30分充電は50kWで30%、90kWhで49%、150kWで58%まで各回復ということでした。

車格に比べて充電口の仕様はややチープにも感じます。

今回試乗した標準モデルとなるEQS 450 4MATIC SUVが1542万円。544ps/858Nmのシステムスペックを持つ、EQS 580 4MATIC SUV Sportsが1999万円と価格はかなり高価です。

補償関係も充実していて、新車購入から5年間または10万kmのいずれか早い方まで、一般保証修理と定期メンテナンス(点検整備の作業工賃・交換部品)、24時間ツーリングサポートが無償で提供される保証プログラム「EQケア」が適用されます。また高電圧バッテリーは10年または25万km以内で、サービス工場の診断機により高電圧バッテリー残容量が70%に満たないと診断された場合の保証が付帯されています。

さらに、今までのEQシリーズ車種と同様に、充電サービス「Mercedes me Charge」の充電カード(別途申込が必要)は、1年間の月額基本料金と都度の充電料金が無料となります。

リセールバリューに不明な点もありますが、イニシャルコストを掛けられる方は、数年間乗った場合のコストは意外と抑えて乗ることができるかもしれません。

取材・文/諸星 陽一

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					諸星 陽一

諸星 陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。国産自動車メーカーの安全インストラクターも務めた。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。自動車一般を幅広く取材、執筆。メカニズム、メンテナンスなどにも明るい。評価の基準には基本的に価格などを含めたコストを重視する。ただし、あまりに高価なモデルは価格など関係ない層のクルマのため、その部分を排除することもある。趣味は料理。

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