バイデン大統領のスピーチから読み解く電気自動車シフトに対するアメリカの「本気」

米国のジョー・バイデン大統領が、米国の雇用計画(American Jobs Plan)を発表し、ペンシルバニア州ピッツバーグで演説を行いました。計画の中で重要なポイントがいくつか語られていますが、EVsmartブログで注目したいのは、もちろん電気自動車産業の促進及び交通インフラの整備です。

バイデン大統領のスピーチから読み解く電気自動車シフトに対するアメリカの「本気」

【関連ページ】
ホワイトハウスのFACT SHEETはこちら。
THE WHITE HOUSE ‘FACT SHEET’
バイデン氏のスピーチはこちら。
THE WHITE HOUSE ‘Remarks by President Biden on the American Jobs Plan’

格差の是正

まず前提として、米国経済面においてバイデン氏が目指すのは格差の是正と“公正な経済”です。コロナ禍で米国・日本を含め世界的に見られた傾向として、富裕層がより裕福になり、貧富の差が拡大しました。これは単なる金融資産の話だけではなく、安全な交通手段やヘルスケアへアクセスする機会も含まれます。例えば米国では貧困層の方が自家用車を買えないために公共交通機関に依存したり、また地価の安い汚染された地域に住む率が高くなっています。さらに給与の面でも、自動車工場などで働くブルーワーカーの給与とホワイトカラーとの格差が大きくなっていました。

そこでバイデン氏が取り組もうとしているのが、給与水準の高い国内雇用の創出、公共交通機関インフラの整備、クリーンエネルギーの促進です。スピーチの中でバイデン氏は、これをトップダウンではなくボトムアップで行うこと、ミドルクラスの再建及びミドルクラスを構築したユニオンの重要性に言及しました。持続可能な社会を構築するために必要なテクノロジーに従事する労働者を、トレーニングも含めてバックアップするという姿勢を見せています。

ホワイトハウスから出ているFact Sheetにはモビリティの電動化について次のように示されています。


自動車電動化に関係する(給料の)良い仕事を作り出します。プラグイン電気自動車(EV)の米国市場サイズは中国市場の3分の1しかありません。大統領はこの状況を変えなければならないと確信を持っており、EV市場で勝つために1740億ドルの投資を提示しています。彼の計画は自動車メーカーに原料から部品まで国内でサプライチェーンを構築するよう促し、グローバルに競争するため工場を一新し、米国の労働者がEVとバッテリーを作れるようサポートします。消費者には米国製のEVを買えば販売奨励金や税金の優遇措置が受けられるようにする一方、給料の良い職場で働く労働者によって作られた車両をすべての世帯にとって手が届く価格帯に抑えます。州政府、地方政府、民間セクター向けの補助金プログラムを設立し、50万台のEV充電器からなるネットワークを2030年までに構築し、強固な労働力、しっかりとしたトレーニングや設置基準を促進します。またこの計画では5万台の輸送用ディーゼル車両を電気自動車に置き換え、環境保護庁による『新しい子供のためのクリーンバス政策(エネルギー省のサポート付き)』を通じて20%の通学バスを電動化します。これらの投資により100%クリーンなバスへの道を拓き、米国労働者が21世紀型のインフラを運用・整備するに必要なトレーニングを受けられるようにします。最後に、連邦調達制度を最大限活用し、郵便サービス用を含む連邦政府のフリートを電動化します。

アメリカが示した「決意」のポイントをピックアップしておきましょう。

●EVとバッテリーをアメリカの労働者が生産できるようサポート。
●EVを全ての世帯にとって手が届く価格に抑える。
●2030年までに50万台のEV充電インフラを構築。
●郵便を含む連邦政府のフリートを電動化する。

この目標を達成し「EV市場で勝つ」ために1740億ドル(約19兆2000億円)を投資するとしているのです。アメリカは電気自動車シフトに「本気」です。

電気自動車促進が経済政策において果たす役割

電気自動車の促進は、クリーンエネルギー政策の一環でもあります。バイデン大統領は2050年までの実排出ゼロ化を目指しており、そのゴールを達成するために電気自動車、充電ポート、住宅及び商業施設向け電動ヒートポンプが必要だとしています。連邦政府の予算としては年間5億ドル(約550億円)という巨額の支出が可能なので、これら持続可能な社会を構成するのに必要な物資を購入し、生産拡大に割り当てたいという考えです。

脱炭素、再エネの拡大、電気自動車の普及にはすべて最新のテクノロジーと、それを扱う人材が必要となります。バイデン氏はスピーチの中で、アメリカは主要国の中でも数少ない、過去25年間に研究開発への公的投資を削減し続けてきた国であること、その現状を変えなければいけないことに言及し、人材育成とR&D(研究開発)の重要性を強調しました。世界でリードの座を奪うチャンスがある部門として、バッテリー、バイオテック、コンピューターチップ、クリーンエネルギーを挙げ、特に中国との競争がすでに起こっているとしています。電気自動車シフトに関係する技術が多いのは明白です。

今回のスピーチは電気自動車を含む新しいテクノロジーに関する包括的なプランが見られる内容でした。中国の台頭もあり、国際競争で何としてもリードを取りたい米国にとって、研究開発と人員育成という土台から既存プライベートセクターへの補助金までカバーする今回のプランは理にかなっていると思います。バイデン氏は今回のプランが第2次世界大戦以降で最大の米国雇用への投資だとしています。1740億ドルという巨額を投じる電気自動車産業、ますます大きくなっていきそうです。

(文/杉田 明子)

この記事のコメント(新着順)2件

  1. 不正選挙の疑いがあるという噂も有ったのでこの方には正直期待していませんでしたが、スピーチ内容は大変立派で、しっかりした青写真を持っている政権だと思います。
    日本の環境施策のレジ袋有料化は、汚れたマイバックへ食品を直に入れることの不衛生さや、万引きのし易さの問題を生み出していてよくありませんでした。
    アメリカでの充電インフラ構築の波が日本にも波及してくれる事を期待します。

    1. 再エネの拡大、BEVの推進が、経済的、量的に持続可能なシステムだとは、考えにくいかと思います。
      やっぱり、やーめた。ってことになりませんかね。

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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