オペルのアンペラ-eがノルウェーで納車開始

300km以上走れる長距離EVが欧州でテスラに続いて2017年5月16日、納車開始されました。オペルのアンペラ-eはコンパクトハッチバックで、米国EPA基準で238マイルすなわち380km走行することができます。ノルウェーでの価格は314,900ノルウェークローネ。おおよそ日本円で419万円ほどです。

オペルのアンペラ-eがノルウェーで納車開始

ちなみにEPA基準は、時速100キロでエアコンを冷房にして走行できる距離、と考えれば、実用性の非常に高い車だということが分かります。
実はこのアンペラ-e(公式サイト、アイルランド)GMのシボレーBOLTと兄弟車。同じLG Chem製60kWhバッテリーを搭載しています。288セルとのことですので、96直列(400V)だとすると3並列、すなわち3つのセルを並列にして1つの組を作り、それを96組直列にしたバッテリーでしょうか。電気自動車ではこの96直列というのが事実上の標準になりつつあります。ノルウェーでの予約は2016年9月から開始されたそうで、実に8か月後の納車というわけ。Ampera-eの納車式にはOpel Norway CEOのBernt G. Jessen氏が一人一人にキーを手渡したそうです。結構力入ってますね。この日は3台だけの納車だったそうですが、現時点で受注残がノルウェー国内だけで4000台。やはりノルウェーは欧州のEV中心地だけあって、かなりの人気と言えます。

電気自動車は冬に走行可能距離が減少するから、寒い地域では使い物にならない、というのはすでに古く覆された常識。ちなみにノルウェーでは、11,12,1,2,3月の5か月間、平均気温が0℃を下回りますが、最低気温はマイナス9℃くらいまでと米国北東部やカナダほどは寒くないのです。例えば米国と国境を接するカナダのサスカチュワン州サスカトゥーン市の1月の平均気温はマイナス17.5℃です。
ガソリン車は温度が0℃を切ってしまうと、二つの問題が出てきます。一つはラジエーターの凍結、そして12Vバッテリー上がりです。ラジエーターは不凍液を50%にすることでマイナス36℃までは凍らないようにできますが、12Vバッテリーは低温になると性能を発揮できなくなるので暖める必要があります。同時にエンジンオイルやエンジン本体も暖めたほうがよいわけなので、ブロックヒーターが使われます。これを出発前に2時間タイマーで入れておき、外部の電源から電気を供給して暖めます。人によってはバッテリーを毎晩外して家に持ち帰る人もいますね。ノルウェーやカナダなどの寒い地域では、公共の駐車場にはブロックヒーター用の電源が来ています。
電気自動車はガソリンエンジンと異なり、エンジンオイルを必要としませんし、ラジエーターはあるもののモーターが回るために必須なものではありません。また12Vバッテリーは駆動用のバッテリーから常時フル充電されている状態にあるため、性能を発揮しやすく、かつエンジンをかけるときのように12Vバッテリーに大きな負荷をかける必要がまったくないので、何の問題もなくすっと走り出すことができます。このため、本当に寒い地域ほど電気自動車が必要なのです。

なお、このアンペラ-eですが、納車されたのは赤と白と青のようですね。これはノルウェーの国旗の色。さすがヨーロピアン、センスがあると思います。日本でも今後、300km、60kWhをベンチマークとして長距離EVが導入されていくことと思います。アンペラ-eのEPA基準での電費は380/60=6.3ですので、6.3km/kWh(テスラ的な書き方では158Wh/km)。30kWhリーフが171km/30kWh=5.7km/kWh、テスラモデルS 100Dが536km/100kWh=5.36km/kWhですから、これから新型EVを出すメーカーは6.3を超える高効率の車を出さないとBOLT/Ampera-eに見劣りしてしまうということにもなりますね。そのためには空力、タイヤ、重量などさまざまな点で追い付かないといけないということになりそうです。
※簡単に計算するため、電池の容量はカタログ容量をそのまま使っています。本来は実効容量を使って計算しなければなりません。

当記事はノルウェーのTV 2の記事を参考にしました。冒頭の写真は引用です。

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この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

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