テスラの自動運転「オートパイロット」を首都高都心環状線C1外回りで試す

12月の一般道自動運転1月の首都高自動運転に引き続き、都心環状線の難関、外回りを全線オートパイロットで走行してみました。自動車線変更を使って、一回も自動運転を解除せずに自動で走行しています。

テスラの自動運転「オートパイロット」を首都高都心環状線C1外回りで試す

1月の首都高速都心環状線「内回り」は、自動運転ソフトにとっては比較的簡単なほうに属します。なぜなら内回りは走行車線を走る限り、放射状線からの合流や分岐が非常に少ないからです。逆に今回の外回りは1・2・3・4・5・6号の各路線からの合流に加え、各インターチェンジからの流入も走行車線に入ってきます。うまく車間に合流してくれればいいのですが、大して混んでもいないのに真横に合流する車は後を絶ちません。そのため、過去のバージョンのオートパイロットでは合流部分で必ずと言っていいほど手動運転に切り替え(テイクオーバーといいます)しなければなりませんでした。

さらにハードルを上げるため、今回は外回りを走行するうえで車線変更が必要な、江戸橋ジャンクションと浜崎橋ジャンクションの2車線分の車線変更を、自動車線変更で行ってみました。テスラの自動車線変更は、現在日本で利用できるバージョンでは、運転者がウィンカーを車線変更したい方向に出すことにより、ソフトウェアがカメラで前方、側方、後方を確認して自動的にハンドル・アクセル・ブレーキを操作。車線変更を自動的に完了してくれます。ウィンカーはその後自動で止まらないので、運転者がウィンカーを戻す必要があります。またウィンカーを出してすぐ車線変更してくれるわけではなく、法律で定められた通りある程度の時間ウィンカーを出し、その後進路を変更するようになっています。そのタイミングも考慮したうえで運転する(!?ウィンカー出すだけですが)必要があります。

動画はこちら。

結果としては、ウィンカー操作を江戸橋と浜崎橋でそれぞれ2回ずつ、計4回行うだけで、環状線外回りを自動運転だけで全線走行できました。当然自動運転中も周りに注意を払っていなければならないわけですが、これだけ複雑な道路をほとんどの場所で車線の間をスムースに走行できるのには驚きます。ただし今回の一周だけでも、以下のような三つの課題を見ることができました。

  • いくつかの合流点において、自車の直前もしくは真横に並走する合流車が来た場合に、そのまま無視して走行車線を走行することが複数回ありました。もちろんこのような場合では合流車が加速するか減速するかしてわざわざしっかり開けてある車間に入り込むのが当たり前ですが、やはり日曜日。横を見ずに合流する車が多いです。オートパイロットでも無理に減速して「入れてあげる」必要はないにしろ、本当に何も見ないでグイッと入ってくる車もあるかもしれませんから、入れてあげるなら後方の車間に気を使いつつしっかり意思が伝わるくらいに減速するか、入れないなら前方へ加速して車間を少し詰める意思表示ができるといいですね。
  • 銀座出口手前で、先行車両が流出したからなのか、それともその瞬間に強い逆光があったからなのかは分かりませんが、一瞬出口レーンを選択しようとして走行車線に戻ってきています。戻り方は急なものではなく見ていなければ気づかないくらいだと思いますが、設定速度を上げると銀座で降りてしまうかもしれません。
  • 采女橋(うねめばし)のところのS字カーブでは、車線のかなり右寄りを走行しました。これは一度だけではなく、このバージョンでは何度でも再現しています。実際にミラーで確認すると後輪が黄色線を少し踏んでいます。道路が赤いから嫌なのか、黄色線が嫌なのか(米国では車線変更禁止は白の実線)分かりませんが、今後の学習に期待したいと思います。
竹橋JCTで合流車が直前に入ろうとしています
竹橋JCTで合流車が直前に入ろうとしています

日本以外の国ではすでに2019年に入って何回かソフトウェアアップデートが行われています。日本は国土交通省の許可が必要なんだそうで、まだ2019年のバージョンはリリースされていません。

残念ながらこれはちょっと意味が分かりません。ソフトウェアには必ずバグ=不都合が存在します。実際に車だって、すべてのメーカーはハードウェア(機械部分)にしろソフトウェアにしろ、バグが発生しているわけです。もしそのバグが重大なものであればリコールが行われますが、重大でない場合でかつ、ある程度安全に関係のある自動運転レベル2関係のソフトウェアに関して、「メーカーに勝手にリリースさせず、国土交通省が承認する」ということなのだと理解していますが、これは意味のあることでしょうか?メーカーが何十万台もの、実際に走行している車両で集めたデータを基に、コンピューター内で実際の走行データを使ってシミュレーションし、以前のバージョンより改善されている=ドライバーの安全につながるからこそ、メーカーは新しいバージョンをリリースするわけです。
膨大な規模のソフトウェア、特に自動運転には切っても切れない関係にあるニューラルネットワークを、部外者がテストすることなど絶対に不可能です。第三者がアップデートを止めることにより、実際にはドライバーから、「より安全になる」権利を奪っていることにはならないのでしょうか?今後の議論が注目されます。

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この記事の著者


					安川 洋

安川 洋

日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX P100Dのオーナーでもある。

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