ノースボルトが電気自動車用バッテリーのギガファクトリー用に30億ドルを投資

先日独占インタビュー記事をお届けしたピーター・カールソン氏が率いるバッテリースタートアップのノースボルトが、巨大工場用に30億ドルを調達しました。名だたる世界的金融機関が出資しており、注目度の高さが伺えます。このニュースに関する分析記事を、『CleanTechnica』から全文翻訳でお届けします。

ノースボルトが電気自動車用バッテリーのギガファクトリー用に30億ドルを調達

元記事:Northvolt: $3 Billion For 2 Battery Gigafactories In Europe by Zachary Shahan on 『CleanTechnica

ノースボルトのビジネスプラン

ノースボルトが16億ドル(約1,698億円)の借り入れをして、資本金を30億ドル(約3,184億円)に増やしました。

私達(CleanTechnica)は最近ノースボルトのCEOであるピーター・カールソン氏にインタビューをして(パート1パート2パート3)、EV市場への見解やノースボルトのビジョンについて伺いました。そこで得た詳しい情報に関わってくるのがこの30億ドルです。1時間に及んだインタビューを短いサマリーにするのは不可能ですが、1つ大きなポイントは、採掘から正極、負極、セル、モジュール、パックまで、ノースボルトがかなりローカライズされたバッテリー生産の必要性と市場に目を向けているということです。これに関しては後述します。

追加の16億ドルは商業銀行、年金基金、公的金融機関から来ています。ノースボルトによると、これに加えて以前調達した14億ドルを2つのバッテリー用ギガファクトリーと、研究開発、工業化、リサイクルに投資していきます。カールソン氏は以前テスラのサプライ・チェーン部門のエグゼクティブでしたが、テスラのバッテリー工場用語である『ギガファクトリー』を使用するのに問題はないと考えています。

カールソン氏とのポッドキャストインタビューでは、これから10年で年間150GWhのバッテリー生産を可能にするのを目標としており、この150GWhはヨーロッパのリチウムイオンバッテリー市場の20~25%になるという話でした。そのうち約85%が電気自動車、約15%が蓄電システムに使われる予定です。新しい融資に関するプレスリリースでは2030年にノースボルトが欧州リチウムイオンバッテリー市場の25%を占める予測をしていると書かれており、カールソン氏が私達に話したよりも高い目標になっています。

ノースボルトCEOのピーター・カールソン氏

カールソン氏は原料の需要とコストをカットし、よりサステイナブルにするために、バッテリーをリサイクルするという会社のゴールについて多くを語ってくれました。今回のニュースでは、2030年までに50%の原料をリサイクルされたバッテリーから得ることを目標としています。個人的にこの目標に興味が惹かれてます。車の寿命(10年は優に超えます)、これがことさら電気自動車に関しては長くなること、2030年までに引退する電気自動車が現在路上をどれだけ走っているのか、2030年にバッテリー生産量はどのくらいになっているのか(ノースボルト単体での目標の50%で75GWh)などを考えると、どう計算すれば良いのか分からないのですが、私が何か見落としているのでしょう。ノースボルトはロボタクシーの利用がそれまでに多くなり、(車両が)ひっきりなしに使われるようになって、EV用バッテリーが今よりも相当速く寿命を迎えるようになると考えているのかもしれません。

バッテリーのリサイクルをしない場合に出てくる可能性のある問題が、鉱物掘削のプロセスに存在するボトルネックです。これに関しては “The Battery & Mining Catch-22 Threatening The EV Revolution“で詳しく書きましたが、ノースボルトが手にする16億ドルが助けになるかもしれません。この資金は掘削会社が採掘場を作り上げ、鉱物にしっかり対処できるよう使われる可能性があります。

豊かな水力発電の電力がバッテリー生産に有利

ノースボルトが計画しているバッテリーギガファクトリーは、スウェーデンのシェレフテオにノースボルト・エッテ、ドイツのザルツギッターにノースボルト・ツヴァイの2カ所になります。工場の操業コストに関しては、カールソン氏へのインタビュー内で低コストの再生可能エネルギーがどれだけ全体の操業コストを安くできるかについて少しだけ話しました。このトピックに関しては、CleanTechnicaのマックス・ホランド氏とカールソン氏の間で次のような会話がなされました。

【マックス・ホランド氏】 ここでもう少し技術的な質問に移りましょう。あなたが受けた前のインタビューで、スウェーデンの水力発電があなたのビジネスモデルの大部分を占めると話していましたね。100%カーボンフリーである一方で、非常に低コストだからと。

それからスウェーデンに居を定めてから、この非常に安いカーボンフリー・エネルギーを使えるようになったことで浮いた金額は、例えば中国などで払う電力料金と比べて2千人の給料分に相当するというような話をしていましたね……。その位の数字でしたか?

【カールソン氏】 私達のビジネスモデルは規模と垂直統合の上に成り立っています。ビジネスを立ち上げて自分達で原料を作り出しているのです。硫酸ニッケル、マンガン、硫酸コバルトなどを取り出し、前駆体に入れて非常に細かい粒子を作り、リチウムと混ぜて煆焼(かしょう=鉱物熱処理プロセスのひとつ)し活性化させるのです。この工程で使う窯などでは、かなり大きな電力を消費します。

その後バッテリー本体を作るのですが、ここでも多くの電力を使います。大きなオーブンを使ったコーティングのプロセスがあるからです。その後形成をしていきます。

そういうわけで、非常に多くの電力がいる産業なのです。スウェーデン北部のシェレフテオに施設が完成した際には、大体40GWhを目指しています。スウェーデンの発電量の約2%をそこで消費することになると計算しています。

バッテリー1kWhを生産するには、生産ラインでその80倍位の電力を消費します。ここで電力のコストと、電力生産の際に出るカーボン・フットプリントの両方が大きな問題になってくるのです。そこでスウェーデン北部の水力発電を使えば、例えばドイツで同じ電力量にかかるコストよりも大体4分の1から5分の1になることが分かりました。また私達の水力発電と比べると、石炭ベースの中国の電力は5倍から6倍のコストになります。

これらを大きな規模で、あまり細かいところまでは考えずに原料のコストを計算すると、(電力を生産する)労働力と(消費する)電力がイコールになり始めるのです。北欧ではkWhあたり2セント以下で買うことができ、これは非常に有益です。

スウェーデンのノースボルト・エッテは現在建設中で、将来的には年間40GWhの生産能力を持つ可能性があります。生産は2021年にスタートする予定です。

ノースボルトとフォルクスワーゲングループのジョイント・ベンチャーであるノースボルト・ツヴァイも許可申請をしている最中です。生産は2024年に開始予定で、年間の出力は20GWhかそれ以上になります。

フォルクスワーゲンとBMWがスウェーデンのスタートアップ企業Northvoltに出資
ノースボルト・エッテ。画像はノースボルト公式より。
ノースボルト・ツヴァイ。画像はノースボルト公式より。

2017年3月にバッテリー事業に着手してから3年強で、ノースボルトは700人の従業員をスウェーデン、ドイツ、ポーランドに集めました(ポーランドのグダニスクにあるバッテリーシステム工場は既に操業開始しています)。

ノースボルトの発表によると、「ノースボルトは自社初のバッテリーセルを2019年後半に生産したスウェーデンのヴェステロースにある研究施設で、バッテリーのセル技術、処理開発、リサイクルにも大きな投資」をしています。

金融機関は既に産業の方向性を分かっている

このニュースの話題に戻りますが、今回の16億ドルの出資者は欧州投資銀行、北欧投資銀行、韓国輸出入銀行(KEXIM)に加え、APG、BNPパリバ、ダンスケ銀行、Danica Pension、IMI-インテ―ザ・サンパオロ、ING、KfW IPEX銀行、PFA Pension、SEB、シーメンス銀行、SMBC、ソシエテ・ジェネラル、スウェドバンク、ウニクレディトとなります。

ノースボルトのCFOであるアレクサンダー・ハートマン氏は「世界クラスの金融機関がヨーロッパの新しい産業をサポートしていると言う事実は、市場がどの方向に向かっているのかの明確なサインであり、持続可能なプロジェクトを行うチャンスでもあります。この新しい産業はこれから数年で相当な投資を必要とするでしょう。」と話しました。

ごもっとも。自動車市場がどこに向かっているのか見えないのならば、あなたは相当な馬鹿ということになります。2020年のヨーロッパ自動車市場がどうなっているのか、以下で見ることができます。(リンク先記事はすべて英文)

ドイツEV市場シェアは7月に昨年同月比4倍の11.4%で過去最高に
UKのEV市場シェアは7月に昨年同月比約4倍の9%
フランスのEV市場シェアは7月に昨年同月比約4倍の9.5%
スウェーデンのプラグイン市場シェアは7月に昨年同月比約3倍の29.5%
ノルウェイのプラグイン市場シェアは68%超え
ヨーロッパでEVが記録的な売り上げ

ノースボルトは大きく花開く産業で、他社に先駆けて好調なスタートを切ったようです。これはカールソン氏の先見の明とエグゼクティブとしての能力によるところが大きいでしょう。

(翻訳・文/杉田 明子)

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					杉田 明子

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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