ボルボ『EX30』一番乗りレポート【最終回】安定した急速充電性能に感動!

『ID.4日記』連載中のモータージャーナリスト生方聡さんが2台目の輸入EVボルボ『EX30』について紹介する集中連載企画。4回目でひとまず最終回。急速充電や電費性能に関するレポートです。

ボルボ『EX30』一番乗りレポート【最終回】安定した急速充電性能に感動!

納車遅れで内心ドキドキだったワケは?

連載の第一回で書いたとおり、ボルボの新型BEV『EX30』が納車されたのは今年の3月でした。当初は昨年末には納車されるはずだったので、約3カ月延びたことになります。EX30の納車が遅れたところで、手元にはフォルクスワーゲンの『ID.4』があるので移動に支障はないのですが、ひとつ困ったことが。気温が低い時期のデータが取れないかもしれないという心配です。

ID.4では、冬のあいだは電費が下がり、急速充電時の電力も落ちるという経験をしています。果たしてEX30はどうなのだろうというのが大きな関心事でした。それだけに、もし納車が春だったら、次の冬まで低温時の実力がチェックできなくなってしまうと焦っていたのです。

さいわい3月中旬にEX30が納車されたおかげで、ぎりぎり気温が低い日に電費や急速充電能力をチェックできたのですが、結論を先に書くと、EX30は低温時でも安定して急速充電器の高出力を受け入れることがわかりました。

具体的には、気温が5℃前後で90kW急速充電器を使用した場合、直前に1時間程度走行しているときには70〜80kW台で充電が可能でした。一方、直前に走行せず、バッテリーが冷えていると思われる状態でいきなり急速充電を行ったときは33kWと低い出力でしたが、同様の状況でナビゲーションシステムで目的地を充電スタンドに設定し、しばらく走行してから充電すると50〜80kW台に向上。EX30にはバッテリーの予熱や予冷機能(いわゆる「プレコンディショニング」)が備わっており、目的地を充電スタンドに設定することで自動的にこの機能が働くのです。

急速充電開始時バッテリー温度の適温は28℃

3月中にこれを試したときには、急速充電に影響するバッテリー温度を知るすべがなく、EX30がどんな温度管理をしているのか不明でした。ところが4月に入って、バッテリー温度や充電出力がリアルタイムでわかるスマートフォンアプリ「Car Scanner」がついにEX30に対応。そこで、急遽、東京よりも気温が低い東北地方まで足を伸ばし、充電時のデータを確認することにしました。

Car Scanner で各種データをチェック。

EX30はサマータイヤを装着したままですので、あまり寒い場所に行くことはできませんでしたが、それでも気温が5℃以下の状況でいろいろチェックできました。通常の走行では、バッテリーの温度調節を行う「クーラント(冷却水)」を30℃程度に保つことで徐々にバッテリーの温度を上げていきます。そして、1時間程度走行したあと、バッテリー温度が28℃を超えたあたりからはこの温度を保っていました。この状況で90kW急速充電器を使用すると80kW超えで充電ができました。

一方、クルマをひと晩駐めて、バッテリー温度が下がった状態からプレコンディショニングを働かせると、クーラントの温度は40℃強まで上がり、通常よりも早くバッテリー温度を上げていきます。約30分走行してバッテリー温度が28℃を超えたあたりで加熱を止めましたので、ボルボが充電や走行に適したバッテリー温度として考えているのが、やはり約28℃であることが想像できます。

SOC40%で「410V×200A=82kW」で充電中。

それにしても、気温が低い時期でも安定して高出力で急速充電が可能なのは助かりますね。なお、これまで何度か90kWや150kWの急速充電器を利用しましたが、充電電流は200Aが上限(カタログスペックの駆動用バッテリー総電圧は392V)のようです。

電費性能は「まずまず」

電費については、まだ気温が低い時期しか経験していませんが、まずまずといったところです。EX30の電費のカタログ値(WLTCモード・国土交通省審査値)は平均:143Wh/km、市街地:141Wh/km、郊外:131Wh/km、高速道路:155Wh/km。これを1kWhあたりの距離に変換すると、それぞれ7.0km/kWh、7.1km/kWh、7.6km/kWh、6.5km/kWhになります。

これに対して、先日、常磐道を守谷サービスエリアから友部サービスエリアまでACCを使って100km/h巡航したときが5.6km/kWh、東北道の西那須野塩原インターチェンジから一般道を使って北関東道の宇都宮上三川インターチェンジまで走行したときが8.1km/kWhでした。気温の低い時期でこの数字ですから、今後、気温が高くなればさらに電費は向上すると期待できます。

気がつけばオドメーターの数字はすでに2000kmを超えました。車両設定のやり方や、後席のスペースがやや狭いといった不満はありますが、走りや電費、充電といった部分は完成度が高く、たった1カ月付き合っただけでも魅力的なクルマであることを確信しています。

今後、ソフトウェアアップデートでさらにどう進化するのか、また、気温が高い時期に電費や充電性能がどう変化するのか、引き続きじっくりとチェックしていきます。一番乗りレポートの連載はいったん完結しますが、興味深いトピックを見つけて改めて報告したいと思います。

私のEX30(2024/4/16現在)

総走行距離 2064km
平均電費 4.9km/kWh

取材・文/生方 聡

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この記事の著者


					生方聡

生方聡

1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職し、システムエンジニアを経験。しかし、クルマに携わる仕事に就く夢を叶えるべく、1992年から「CAR GRAPHIC」記者として、新たなキャリアをスタート。その後、フリーランスのエディター/ライターとなり、現在はモータージャーナリストとして自動車専門メディアに試乗記やレースレポートなどを寄稿する一方、エディターとしてウェブサイトの運営などに携わる。愛車はフォルクスワーゲン『ID.4』。

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