蓄電池&電気自動車活用の最新動向 — 千葉、日本の地方部、そしてニューヨーク

蓄電池や太陽光発電システム、そして電気自動車活用の動きが活発になってきました。日本ではIIJ社がサーバー施設にテスラの蓄電池を設置してピークカットや停電対策に活用。VPP社はスーパーの屋根を借りて、太陽光で発電して店舗とEV充電器に給電するビジネスを展開。海の向こうニューヨークでは、ピークカット用のガス火力発電所が大規模蓄電池に置き換えられることが発表されました。

日米の蓄電池等新設の動き — 千葉、日本の地方部、そしてニューヨーク

この春、近畿日本鉄道がテスラ製の大規模蓄電池を鉄道付帯施設の変電所に設置して、停電時の車両救出やピークカットに活かすという事例を当ブログでお伝えしました。覚えておいででしょうか。その後も蓄電池や電気自動車と電力インフラに関する動きを注視していたところ、日本とアメリカから面白い計画の情報が入ってきました。3つのニュースのうち、2つは大容量蓄電池がカギを握っています。

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まずは、従来型の停電用非常発電機の代わりに、またピークカット・ピークシフトの目的で大容量蓄電池を備えるというニュースが、日本国内から伝わって来ました。「株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ、本社:東京都千代田区)」は、2019年5月1日に運用を始めた「白井データセンターキャンパス(千葉県白井市)」に、テスラ社製の産業用蓄電池「Powerpack」を導入し、11月から稼働すると発表しました。同社が10月21日のニュースリリースで発表したほか、日経XTECHが伝えています。

テスラ社製産業用リチウム蓄電池「Powerpack」。これも、近鉄の東花園変電所に設置されたPowerpackと同様、「関電エネルギーソリューション」のユーティリティー・サービスを利用して設置されている。IIJ社のニュースリリースより転載。
テスラ社製産業用リチウム蓄電池「Powerpack」。これも、近鉄の東花園変電所に設置されたPowerpackと同様、「関電エネルギーソリューション」のユーティリティー・サービスを利用して設置されている。IIJ社のニュースリリースより転載。

この蓄電池によって、同施設の運用コストの40%あまりを占める空調用電力費を、ピークカットとピークシフトを用いて軽減します。「ピーク時のデマンド値(ピーク電力)」をおよそ15%削減できる見通しです。このようにデマンド値を下げることができれば、契約ワット数を低くすることができます。IIJでは、今後15年間で5,000万円のコスト削減を見込んでいます。

※ 初出記事でIIJのコスト削減見込み額が「1,500万円」と誤っておりました。謝罪して訂正いたします。(EVsmartブログ編集部)

ピークシフトのメカニズムが分かる概念図。IIJのニュースリリースより転載。
ピークシフトのメカニズムが分かる概念図。IIJのニュースリリースより転載。

深夜料金でPowerpackに充電し、空調に電力が多く必要となる日中に放電します。今回設置した蓄電池は696kWhで、同施設のサーバーを最大4時間稼働できるとしています。このうち5〜10分の空調稼働に必要な電力は応急用として常に備蓄し、残りの容量をピークカットとピークシフトに使います。

導入とアフターサービスは、近鉄の東花園変電所のPowerpackと同様、関西電力の子会社「関電ソリューションズ」が担当します。従来型の鉛蓄電池も検討したとのことですが、鉛蓄電池が3〜5年で交換が必要になるのに比べ、Powerpackは15年と耐用年数がはるかに長いことも採用の理由になったようです。

今後、同施設内のサーバーがさらに設置され、「満床」になる頃には、今回導入したのと同様のPowerpackシステムがもう一つ追加導入される予定です。

白井データキャンパスの非常用ガスタービン発電機。IIJのニュースリリースより転載。
白井データキャンパスの非常用ガスタービン発電機。IIJのニュースリリースより転載。

同施設にも、緊急用の発電機がUPSと共に設置されていますが、ほとんど動いていないそうです。発電機はガスタービン式ですが、こうした内燃機関は適度に運転しないと様々なトラブルが出るので、筆者としては今後はこうした発電機も蓄電池に取って変わられるものと予測しています。PHV・PHEVなどは、エンジンや燃料系のトラブル防止のために、ある程度の間隔で強制的にエンジンが運転されるシステムが、よく搭載されていますね。それも、見方によっては「故障リスク」であり、「電欠リスク」を回避する代わりに背負い込んでいる、と言えるでしょう。

スーパーなどの屋根と敷地を借りて、太陽光発電で店舗とEV充電器に給電するビジネス

VPP Japan社」は、商社の伊藤忠商事や、日本最大の卸電気事業者であるJパワーなどが出資する会社です。今回同社は、スーパーなどの小売店の屋根と敷地の一部を借りて、屋根に設置した太陽光発電パネルで作った電気を店舗と電気自動車(EV)用充電器へ給電するビジネスを始めると発表しました。日本経済新聞(2019年10月21日)などが伝えています。店舗には「無料」で太陽光発電やEV用充電の機器を設置し、店舗とEV用充電器から「電気代」を受け取ってビジネスを成り立たせます。

伊藤忠商事では2019年3月末、日本とタイで、施設などの屋根を借りて太陽光発電パネルを設置し、その電力を施設に供給して電気料金を受け取るビジネスモデルを発表していた。今回のモデルはこれにEV充電器が追加された形と言えそうだ。伊藤忠商事のサイトより転載。
伊藤忠商事では2019年3月末、日本とタイで、施設などの屋根を借りて太陽光発電パネルを設置し、その電力を施設に供給して電気料金を受け取るビジネスモデルを発表していた。今回のモデルはこれにEV充電器が追加された形と言えそうだ。伊藤忠商事のサイトより転載。

流通業界では昨今、店舗へのEV用充電器(EV充電インフラ)設置が顧客を呼び込むのに有効であると認識し始めています。しかし、特に地方では、充電器のあるスーパーはまだまだ少数です。主に設置しているのは「AEON(全国153ヶ所のショッピングモールのうち、じつに146モールに設置)」、「イトーヨーカドー」、それに「ららぽーと」といったところですね。

全国には、急速充電器と普通充電器を合わせると、およそ3万8千台の充電器があると言われています。このうち、コンビニエンスストアのファミリーマートがおよそ600店、ローソンが200店ほどにEV用充電器を設置していますが、地方スーパーなどへの設置はほとんど目にしませんね。

VPP Japan 社では、EV用充電器がまだそれほど普及していない地方にまず設置したい考えです。なお、設置する充電器は、急速充電器ではなく、いわゆる「普通充電」の200V充電器です。

店舗側の負担が無いという点はなかなか魅力的ですね。また、充電するEVユーザーにとっても利点があります。太陽光由来の電気のため、従来のグリッド(電力網)から給電して充電する場合に比べ、充電料金をおよそ20%安くできそうとのことです。

VPP Japan社では、早速来月(2019年11月)から設置を始めます。2019年に関東をはじめとした各地に数十ヶ所に設置し、その後の2年のあいだに100ヶ所ほどまで増やす計画です。

この事例では蓄電池は前面に出てはいませんが、太陽光パネルで発電するので、いずれ「蓄電池を内蔵」もしくは「併設」した形になると著者は予測しています。急速充電器で言うと、蓄電池内蔵型である「JFE製の機種」のようなイメージです。

新東名岡崎SAに設置されているJFE製の蓄電式急速充電器。

大都市の電力需要ピークカット用ガス火力発電所を大規模蓄電池に置き換え

こちらは海の向こう、アメリカのニューヨークからの情報です。ニューヨーク州当局は、クイーンズ地区にある「ピーク時の電力を担うガス火力発電所」2ヶ所を、「世界最大の大規模蓄電池」に置き換えるという「Ravenwood  Development社(ガス火力発電所の運営会社)」の計画に対し、承認を与えました。これで2,528MWh(およそ2.5GWh)の世界一の容量を誇る大規模蓄電池が、マンハッタンからイーストリバーを貫く地区に建設されることになります。

発表には「316MW / 2,528MWh」とあるので、「316MWを8時間にもわたって出力できる」施設と考えて良さそうです。

この情報は、太陽光発電の商用利用の専門家ジョン・ウィーバー氏も、太陽光発電の情報を専門に発信するウェッブ・マガジン「pv magazine 2019年10月18日号」で伝えています。

昨年12月には、同じくアメリカですが、再生可能エネルギー利用の先進地カリフォルニア州で、火力発電所が大規模蓄電池に置き換えられることが発表されました。昨年初夏には、オーストラリアのサウス・オーストラリア州ホーンズデールの風力発電所にテスラが大規模蓄電池を設置して大成功したニュースも世界を駆け巡りました。こうした流れは、もはや世界的な潮流になりつつあるのでしょう。

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「ニューヨーク州公共サービス委員会(PSC:the New York State Public Service Comission)」は「グリッド(電力網)の信頼性を高めながら、ニューヨーク市のピーク容量、エネルギー、および補助サービスを提供する」ために、承認を与えたとしています。 Ravenwood Development社は、今回のプロジェクトを3段階(3つのフェーズ)で進めるとしています。まず128MWを設置し、次に98MW、最後に89MWを追加設置します。このうち、第1段階は2021年3月までに完成させます。第2・第3段階に関しては、今のところ具体的な展開は発表されていません。

大規模蓄電池が設置される場所は、お馴染みのマンハッタン島の東、イーストリバーを渡った対岸にあたります。詳しく言うとニューヨーク市クイーンズ区ロングアイランドシティの38〜54番地、バーノンブルバードです。現在はガス火力発電所があります。地図で赤い矢印を付けておきました。周辺には学校や保育園、病院やシニア市民用の施設などがたくさんあります。すべてで「2.5 GWh」に達する蓄電池を展開する場合、16ある既存のピーク対策ガス火力発電所を解体する必要がありますが、そのうち2つだけ(合計出力316 MW分)が現在も稼働しています。他にもガス燃焼施設があり、その一部は1960年代初期に建設された「年代物」です。

今回建設される施設には、136個のインバーターがあり、64個のユニットが二重にスタックされるようです。施設の出す騒音ですが、デシベル評価で「3 db増加」、つまり「些細なレベルの騒音未満を増加させる」であろうとの判断がなされました。建設主のRavenwood Development社は「蓄電池施設から1,500フィート以内に子供、高齢者、障害者(学校、病院、デイケアセンター、グループホームなど)にサービスを提供している施設があるかどうか」を確認するよう求められましたが、実際に「セントリタス・スクール、ウエスタンクイーンズ保育園、ロングアイランドシティ高校、ロングアイランドシティ・ヘルスセンターなど複数の施設があることが判っています。

現在、公表されている世界最大のリチウムイオン蓄電池は、フロリダにある「409 MW / 900 MWh」のFPL施設、Vistra Energyによる「300 MW / 1200 MWh」システム、そしてカリフォルニア州のMoss Landing FacilityにあるTesla製による「182.5 MW / 730 MWh」のシステムです。今回のニューヨークの蓄電池「2,528MWh」は、これら全てをはるかに上回る巨大さですね。

(箱守知己)


One thought on “蓄電池&電気自動車活用の最新動向 — 千葉、日本の地方部、そしてニューヨーク”

  1. 箱守様、一介の電気技術者として記事を興味深く読ませて頂きましたm(__)m
    現状太陽光発電所の絡む配電線は電圧変動が激しく、今後は蓄電池とセットにして変動を抑えるべきとの声が現場でも挙がっているので現実的だと思います。
    幸い地方のEV充電器設置状況はまだ少ないので、これから整備するならJFE製の電池内蔵型をVPP対応にして系統安定化も兼ねればイイと思いますが高価なので設置できるケースは当面少ないでしょう!?

    これより電気技術者として蓄電池と発電機を比較します。主設置事例が多いのは消火設備(消火ポンプ)なのでまずはそれから。
    以前から鉛蓄電池の寿命が問題で6~10年で交換しなくてはならず、発電機も起動用に鉛蓄電池が必要かつ騒音も振動も大きいですが、住宅地にある役場や公民館など公共施設ではそれが問題になり高価ながらも鉛蓄電池だけで電動ポンプを動かしますが場所を撮る欠点があります…これがリチウムイオン蓄電池に代わるなら初期投資はかかるものの交換頻度や設置場所などが半分以下になり相当改善されると見ています。

    非常災害停電が増えた今となっては学校・公民館など公共の指定避難場所へのソーラー発電+蓄電池設置も有意義になるでしょうが、それなら同時にVPP対応V2Hも設置し公有車もEVにすればいいのではないかと思いませんか!?
    身近にある非常用発電機も設置後30年を過ぎるとエンジン車に同じくラジエーターの発錆液漏れやオイル交換などで交換に至るなど面倒な手間や出費が嵩みます。しかも大概は供給可能な負荷が消火ポンプに限定されていて運転可能時間も1~2時間程度だったりします。
    それならいっそ負荷を限定しない蓄電池を導入すればいいのではないか、そしてピークカット対応にすれば…話し出すとキリがないですが行政も先の心配を読んでくれないとダメでしょ!?

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