エヌビディアが新しい自動運転プラットフォーム「DRIVE Hyperion 8」をリリース〜テスラとの違いは?

電気自動車とともに未来を担う自動運転テクノロジーの開発には、大きな注目が集まっています。米国大手テクノロジー企業のエヌビディアが、新型自動運転プラットフォームをリリースしました。その内容を『CleanTechnica』から全文翻訳でお届けします。

エヌビディアが新しい自動運転プラットフォーム「DRIVE Hyperion 8」をリリース〜テスラとの違いは?

元記事:NVIDIA’s New DRIVE Hyperion 8 Released, Includes Radar & Lidar — Unlike Tesla’s FSD Suite by Johnna Crider on 『CleanTechnica

DRIVE Hyperion 8とは

テスラがロボタクシー群を作る計画を立てており、完全自動運転機能(FSD)開発と並行して取り組んでいることはよく知られています。人命を救える素晴らしいものになりそうなテクノロジーについて、一番声高に話しているのが恐らくテスラとそのファンです。しかし完全自動運転に焦点を当てた開発を進めている企業は他にもあり、その中には大手テクノロジー企業のエヌビディア(NVIDIA)がいます。

エヌビディアは独自のコンピューター・アーキテクチャ、センサー、完全自動運転ソフトウェア(使用条件あり)を含む『DRIVE Hyperion 8』を最近発表しました。社によると、DRIVE Hyperion 8には最高水準の安全性能とサイバーセキュリティが設計されており、2024年モデル車両用の受注を開始したそうです。

エヌビディアの生産するプラットフォームはモジュラー設計となっており、顧客は必要なものだけ使うことができます。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、新しいソフトウェアの発表のためにDRIVE Hyperion 8搭載車両がカリフォルニア州サンタクララにあるエヌビディア本社からサンノゼのリバーマークプラザまで自動運転で移動するのを、GPUテクノロジーカンファレンスで披露しました。

DRIVE Hyperionは拡張可能で、そのAIは自動運転車両開発のセキュアベースとなるともエヌビディアは話しています。

DRIVE Orin プラットフォーム

2021年4月、エヌビディアは自動運転車両用の新しいNVIDIA DRIVE OrinハイパフォーマンスAIプラットフォームを発表しました。このプラットフォームはISO 26262規格におけるASIL-Dなどの安全基準を達成しつつ、その処理能力は250TFLOPsとなります。

DRIVE HyperionはOrinプラットフォームとともに、自動運転車両のセキュアベースとなります。2つのNvidia DRIVE Orinシステムチップが使われ、レベル4自動運転に必要なパワーと安全面での冗長性を備えます。社によると、「DRIVE Hyperion 8 開発キットにはNVIDIA Amper アーキテクチャGPUが含まれます。このハイパフォーマンスな処理能力により、開発者は余裕を持って新しいソフトウェアをテストし有効化することができます」としています。

センサーセット

センサーセットは12のカメラ、9のレーダー、12の超音波、そして正面を向いたLiDARセンサー1つから成り立ちます。また自動車メーカーそれぞれのニーズに合わせてプラットフォームをカスタマイズできるよう、センサーセットには抽象化ツールも備え付けられています。

正面向きLiDARには、Luminar社のロングレンジIrisセンサーが搭載されています。Luminar社の創設者でCEOのオースティン・ラッセル氏は「ロングレンジLuminar Irisセンサーは最も高度なパフォーマンス、安全性、自動運転レベルの必要要素に見合う、カスタム・アーキテクチャを使用してフロントのLiDAR機能を操作します」と話しました。

またLuminarとエヌビディアの共通項については「エヌビディアは現代のコンピュート革命をリードしており、自動運転部門でも同じようになると業界は見ています。2社に共通しているのは、私達のテクノロジーが主な自動車メーカーにとって、次世代の安全と自動運転を可能にするデファクトのソリューションになりつつあるという点です」と話しました。

DRIVE Hyperion 8のレーダーはHellaのショートレンジ、Continentalのロングレンジ及び映像化レーダーから成り立っています。SonyとValeoのカメラが画像感知をし、Valeoは超音波センサーでシステムが対象物までの距離を測れるようにもしています。Sonyの自動車マーケティング部長であるマリウス・イヴェンセン氏は、「NVIDIA DRIVE Hyperionは自動運転車両開発用に完成されたプラットフォームです。Sonyは自社の顧客がプロトタイプからプロダクションモデルに最も効率的に移行できるようにするため、このセンサーを取り入れました」と話しました。

テスラとの比較

エヌビディアのセンサーセットとテスラのFSDハードウェアの最も大きな違いは、テスラがレーダーの使用をやめ、LiDARに至っては一度も採用したことがなく、100%ビジョン(カメラ)に依拠している点です。8月に開催されたテスラのAIデーでは、カメラからのインプットだけで、どのようにニューラルネットに運転の仕方を教えるのか公開されました。ハードウェア側から見ると、ビジョンだけを利用することによりシステムを深部まで簡素化できます。

テスラが自前のAIやFSDソフトウェアを開発し、それを使った電気自動車を製造している一方、ライバルメーカー達はエヌビディアの助けを借りて追いつこうとしています。その方法で成功するのでしょうか。もっと良いものができるのでしょうか。もしくは、テスラに自動運転テクノロジーを100%ビジョン/カメラベースにするよう決断させたのと同じような障害が出てくるのでしょうか。

自動運転の未来を考えるとワクワクさせられます。米国幹線道路交通安全局(NHTSA)は、2021年前半に米国内では2万160人の人が車の衝突事故で亡くなっており、当然ながらこれを危機と呼んでいます。自動運転技術は、今すぐ必要とされているのです。

(翻訳・文/杉田 明子)

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この記事の著者

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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