成都モーターショー2022が開催〜注目のEVをレポート!

中国四川省の成都市で2022年8月26日から「成都モーターショー」が開催されました。新型コロナ感染拡大を受けた市政府の通達で8月30日以降は中止となったものの、電気自動車を含む多くの新エネルギー車が登場。注目モデルをLei Xing氏がレポートします。

成都モーターショー2022が開催〜注目のEVをレポート!

【元記事】 New EVs at Chengdu Motor Show 2022 by Lei Xing.

10日間の予定が4日間で中止が決定

成都モーターショー2022(第25回成都国際モーターショー)は、8月29日に四川省から出された新型コロナウィルス感染防止対策のために突然終わりを告げました。当初の予定では、8月26日から9月4日の10日間に渡って開催されるイベントのはずでした。

中国の自動車市場にとって、今年はこのように想定外の事態が起こる年です。半導体不足、バッテリーの制限、上海ロックダウン、ヒートウェーブ、電力危機と供給制限、散発的に起こるコロナ感染爆発、そして最近では四川省瀘定(ろてい)県でマグニチュード6.8の地震が起き、首都の成都も揺れました。

車の生産量やローンチ、デリバリーに影響が出たこれらのできごとにも関わらず、新エネルギー車両のセールスは記録を更新し続け、8月の販売量は66万6,000台に達して月間販売台数の新記録を出しました。中国汽車工業協会(CAAM)によると、NEVは自動車市場全体の約28%を占め、通年では386万台、23%となりました。

成都モーターショー2022は予定より早く終わってしまいましたが、8月26日から4日間開催されました。4月に隔年開催の北京モーターショーが延期され、中国で開かれた今年初の目ぼしいモーターショーだったというのは信じられないことです。

ショーの主催者によると、初日には72の記者会見があり、28の世界デビューと36の中国国内デビューを含めた92の新しいモデルが発表されました。中国内外の128のブランドから、1,600種類以上の車両が展示されました。

いつも通り、中国産のEVがショーの話題を占めました。対極的に、新しいEVを発表した海外レガシーメーカーは1つもありませんでした。少なくとも私から見て目ぼしいものはなかったのです。中国NEV市場の現状がよく現れていたと思います。中国ブランドが駆け抜けていき、海外ブランド(テスラを除く)が追いつこうと慌てているのです。

ショーで気になったEVを以下にまとめました。

BYD Frigate 07 PHEVはケーキのアイシングのよう

2022年で100万台目の乗用車を送り出しながらいまだに70万台の注文を抱え、年間150万台の新エネルギー乗用車セールスを見込んだBYDが市場にこれから出すものは、ちょっとしたアイシング程度に見えます。

Frigate 07はBYDのDolphin、Seal、Frigate 05セダンに続く、『Ocean』シリーズから出る4つ目の車両です。これから出るSea LionとSeagullに先駆け、Bセグメントのミッドサイズ・プラグインSUVであるFrigate 07はショーで22万~28万元(約453万円~577万円)で先行販売の受付がされました。『Warship』シリーズの一員として第4四半期に正式に市場に出る予定です。

Tangと同じサイズのSUVが持つ最も目を引くオリジナルの特徴は、『中国結び』スタイルのラップアラウンド・テールライトのデザインです。EV走行換算距離で200km走るBYDの36.8kWhブレードバッテリーを搭載したDM-iとDM-pの両方に導入されると見られます。DM-pの方には、DM-iと同じ145kWのモーターに加え、150kWのリアモーターが搭載されます。

中国結びとは、技法を組み合わせて結んだ紐による中国の伝統的な装飾品のこと。

Song、Qin、Han、Yuan、Tang、Dolphinがすべて月に1万台以上売れている中、Frigate 07もヒット作になれるのでしょうか。

帰ってきたDenza:INCEPTION SUVコンセプトカー

電気ミニバンのDenza D9(BYDとメルセデス・ベンツの共同開発)が4万台以上のオーダーを取り付け、3年前にローンチした凡庸なDenza Xの後継となる新しいコンセプトカーとともに、BYDのラグジュアリーブランドは前に進みます。このモデルの詳細はほとんど明らかになっていませんが、2023年の第1四半期に生産が始まると見られます。Denza D9に使われた『π-Motion』設計言語を応用したTangと同じサイズのINCEPTIONは、全長が4.9m、ホイールベースが2.9mで、2つのLiDARとブレードバッテリーを搭載して航続距離は約700km、3秒で時速100kmに達します。Tangのように、大量生産モデルはBEVとDM-i PHEV両方のバージョンで販売されます。

Denzaの販売部長であるZhao Changjiang氏によると、D9を注文した顧客の50%がアウディ、メルセデス・ベンツ、BMWの現オーナーで、25%が6~7シーターSUVのオーナー、そして15%がトヨタ・アルファードやシエナなどハイエンドなミニバンのオーナーだそうです。D9の価格は30万元~40万元(約617万円~823万円)なので、INCEPTIONの量産モデルも30万元を軽く越えてくると予想されます。

HiPhi ZはHiPhi X の成功に続けるか?

今年の嬉しいサプライズの1つが50万元(約1029万円)越えのEVとしてはベストセラーとなったHiPhi X(62万元、約1,269万)で、このセグメントではポルシェ・タイカンの納車数をしばしば越えてきます。

HiPhi Xは洗練されつつも型破りなデザインや機能で顧客を増やしました。HiPhi Zはさらにこの世のものとは思えないデザインと、安い価格で後ろに続きます。4シーターが63万元(約1,300万円)、5シーターが61万元(約1,256万円)です。

未来的なGTと銘打たれたHiPhi Zは、120kWのCTPバッテリーパック、最高出力494kW・最高トルク820Nmを出すデュエルモーターを搭載、航続距離はCLTC(中国乗用車走行サイクル)基準で705km、さらに3.8秒で時速100kmに達します。

HiPhi Xと同じISD/PML(Intelligent Signal Display/Programmable Matrix Light。世界初のプログラミング及びカスタマイズ可能な照明システム)とNTドアが引き続き採用されましたが、8つの方向に動くHiPhi Botスクリーンも新しく搭載されました。H-SOA E/E アーキテクチャが、NVIDIA Orin XやTexas Instrument TA4チップとともに、 32のスマート・ドライビング・センサー(HesaiのAT128 LiDARを含む)などのハードウェア、ソフトウェア、スマート機能を支えます。アクティブグリルシステム(AGS)、アクティブエアスポイラー、13.2度リアホイールステアリング、1,710mmトレッドが車両のエアロダイナミクスを素晴らしいものにしています。ZがXの成功に続くことができるのか、そしてその程度はどれくらいになるのでしょうか。

WEY Mocha DHT PHEV LiDAR は、Xpengの都市型運転アシスト機能のNGPに真っ向勝負

WEY(Great Wall Motorsのブランドで、2016年設立)のMocha DHT PHEV LiDARエディションは正確には新しいモデルではないのですが、Great Wall Motor(長城汽車)のHaomo.ai自動運転ユニット及びQualcommのスナップドラゴン・ライド・プラットフォームが組み合わされた、ハイブリッド・ソリッドステートLiDARであるRoboSense RS-LiDAR-M1が2つヘッドライトの下に追加されており、NOH(Navigation on HPilot)と呼ばれる都市型運転アシスト機能がつきます。

これはXpengが昨年から世に送り出そうとしてきたドアtoドアでレベル2運転(ドライバーは常に周りに注意を払う必要がある)ができる、NGP(Navigation Guided Pilot)と同じものです。Great Wall Motorは同モデルが9月に量産、年末までにデリバリーを 開始し、このスマート運転アシスト機能をつけた中国初のモデルになると自信を持っています。年末までに10の都市をカバーし、その数を2023年に100以上に拡大する計画です。

パワートレインに関しては、115kWのエンジンと135kWのデュアル・モーターを搭載しており、二輪駆動のEV換算走行距離は約204kmです。

HiPhi Z & Xへの挑戦者、SAR Mecha Dragon

SAR(Great Wall Motorsのブランド)Mecha Dragonのプロトタイプは昨年11月の広州モーターショーで発表され、限定のエヴァンゲリオン・バージョンとともに成都で量産モデルがデビューを飾りました。

純電気の四輪駆動クーペは全長5.2mで、複数のレーダーやカメラとともにHuaweiの96-lineハイブリッド・ソリッドステートLiDARが採用されています。またこの怪物に搭載されたデュアル・モーターの最高出力は405kW、トルクは750Nmです。バッテリーパックを含め、パワートレインはGreat Wall Motor自らの設計で、エンジニアの努力により急速充電10分弱で400km分の充電ができます。高いエネルギー効率により、CLTC基準の航続距離は802kmで、時速100kmに3.7秒で到達します。

Mecha Dragonは101台限定で48万8,000元(約1,010万円)のスペシャル・エディションに続き、40万元(約830万円)以下のスタンダード・バージョン の2つのタイプで発売されます。

エクストリームで型破りなデザインのMecha Dragonは、車というより『マシーン』という新しいセグメントでHiphi X及びZと戦うことになります。

突如現れたYuanhang Autoの4つ子、Y6/Y7/H8/H9

Yuanhang Y6
Yuanhang Y7

日に日に新しいブランドが増えてきますが、今回出てきたのは中国語で「長い航海」を意味するYuanhang Auto(遠航)です。

ブランドは新しいですが、背後にいる企業のDayun(大運汽車)は、元々はバイクメーカーとしてお馴染みで、今では中国内で大型トラックメーカーの大手となりました。

プレミアム電気セダンのY6、Y7と、プレミアム電気SUVのH8、H9はすべて電池電圧800V、10分で300km分が充電でき、航続距離は800kmか1,000kmの2つから選べます。4つのモデルすべてが最低でも全長5mで、車幅2m、ホイールベースも3mを余裕で超えます。Dayun会長のYuan Qinshan氏によると、Yuanhang Autoは100万元(約2,000万円)クラスのラグジュアリー車両のパフォーマンスを越えて世界のプレミアム自動車メーカーに対抗できる、中国を代表する電気プレミアムブランドとなることを目指しています。

Yuanhang H8
Yuanhang H9

すべてのモデルはYuanhangのハイエンドなプレミアムバッテリー電気プラットフォームのB.H.Dをベースにし、AliOSスマート・コックピット・システム、17.38インチの大きなインフォテインメント・スクリーン、70インチのパノラミックAR-HUD(タイポじゃありませんよ)、イマーシブ・ステレオ・システム、Face ID、140度後部リクライニングシート、マッサージ・シート、その他居心地の良さと技術力を見せつける機能がついています。

B.H.Dプラットフォームは世界クラスの企業であるBosch、Huawei、Alibaba Banmaなどと共同開発されました。SUVやミニバン、BからDセグメントまで、様々なボディタイプを支える予定です。

他にもEVは展示されていましたが、以上のモデルが私の中では独創的で重要に見えた車両になります。

(翻訳・文/杉田 明子)

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この記事の著者

杉田 明子

2010年代に住んでいた海外では'94年製のフォード→'02年製のトヨタと化石のような車に乗ってきました。東京に来てからは車を所有していないのですが、社用車のテスラ・モデル3にたまに乗って、タイムスリップ気分を味わっています。旅行に行った際はレンタカーを借りてロードトリップをするのが趣味。昨年は夫婦2人でヨーロッパ2,200キロの旅をしてきました。大容量バッテリーのEVが安くレンタルでき、充電インフラも整った時代を待ち望んでいます。

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