集合住宅への充電器設置事例【2】区分所有者が自腹で設置した小規模マンションの機械式駐車場など

電気自動車(EV)普及のポイントのひとつでもある集合住宅への充電器設置について、具体的なノウハウを知るためのシリーズ企画。今回は具体的事例レポートの第2弾。東京都23区内の小規模マンションで、区分所有者が費用を個人負担して、機械式駐車場などに複数の充電器を設置した事例をご紹介します。

集合住宅への充電器設置事例2/区分所有者が自腹で設置した東京都23区内のケース

事例レポートの第1弾だった前回は、東京23区内にあるタワー3棟で計576戸という大規模マンションで「管理組合が自主的に決めてEV用充電器を導入」した例をご紹介いたしました。

集合住宅への充電器設置事例/大規模マンション「西戸山タワーホウムズ」
集合住宅への充電器設置事例/大規模マンション「西戸山タワーホウムズ」

集合住宅への充電器設置に関連した記事へのリンクをまとめておきます。

【集合住宅(マンション)のEV用充電器設置事例〜今までの記事】
電気自動車を買うには自宅に電気工事が必要?(2015年1月13日)
東京都の集合住宅などへの充電設備補助金【申請受付中!】(2019年6月20日)
電気自動車用充電器を設置した都内マンションで最新EV試乗会開催(2019年3月31日)
集合住宅・マンションに電気自動車用充電器を設置する 【第1回】理事会を通す 編(2019年8月9日)
集合住宅・マンションに電気自動車用充電器を設置する 【第2回】総会・施工・運用 編(2019年10月15日)
集合住宅への充電器設置事例/大規模マンション「西戸山タワーホウムズ」(2019年11月21日)

さて今回は、EVを所有する区分所有者が「自分で設置費用を払ってもいいから、早く付けて欲しい」と提案し、設置後は充電器を管理組合に資産として寄付した形です。いわゆる「自腹」。設置提案者の方が個人負担で費用を支払った、というケースです。

「そんな大金を!!!」と驚かれるかも知れませんが、東京都の場合は「国の補助金」に加えて「都の補助金」があるため、実質支払う額は「消費税額程度」。具体的には200Vの普通充電器を2台付けて、課金用のデーター送受信機器も加えて、工事費など全てを入れても、個人負担は「13万円以内」で済んでいます。これなら、たとえば4人での区分所有者でワリカンにすれば「ひとり当たり3万円」で設置できてしまう計算です。自宅充電は「基礎充電」と呼ばれ、EV運用では大きな利便性があるので、少しぐらいなら自腹でも……という決断もアリかも知れません。

設置した充電設備の概要

今回の集合住宅は東京23区内にあり、7階建て、住戸数30戸前後の小規模な部類に入るマンションです。鉄道の駅から歩いて5分程度で、付近にはスーパーや店舗も数多くあり、便利な場所にあります。また比較的緑も多く、住環境としては魅力的です。著者は取材に行ったあとに、ネットで探しておいた近くのフレンチ・ビストロでランチを愉しみました。

今回の小規模マンションと似たイメージ。

駐車場は、機械式が8台に平置きが1台とコンパクト。駅近で交通至便な場所なので、そもそもクルマはさほど必要ないのかも知れません。今回は、機械式の部分に2台の200V充電器を設置しました。

また、平置きの部分にも1台の200V充電器を付けましたが、こちらは完全に個人負担です。この部分については、「費用」の項目で説明します。

導入の契機

今回の充電器導入の発端は、EVのオーナーであり区分所有者である「設置提案者」の方が、とあるイベントで「ユアスタンド社」の代表である浦伸行さんと偶然会う機会があったことです。設置提案者の方が「自宅のマンションに充電器を設置したいんですよね」と浦さんに話したところ、それならユアスタンド社には補助金の利用や運用面で実績があるので、ということで相談をすることになりました。

相談、話し合いのなかで、具体的な提案がまとまっていきました。ユアスタンド社が、設置場所や工事内容、運用面での要望等も受け止めながら原案を作成し、設置提案者・管理会社へこれを共有して進めました。理事会へは設置提案者の方が提議して、実際の設置への流れができました。

理事会から「議案」として区分所有者の「総会」に提案される。ここが最大のヤマ場、可決されればめでたく充電器は設置され、集合住宅の住民でも「自宅充電」が可能になる。
理事会から「議案」として区分所有者の「総会」に提案される。ここが最大のヤマ場、可決されればめでたく充電器は設置され、集合住宅の住民でも「自宅充電」が可能になる。

充電器設置の提案が、無事、総会議案になると、ユアスタンド社が総会に出席して、出席者の皆さんへ直接概要の説明を行いました。一般的に、理事会メンバーで積極的に発言される方や、管理会社が味方になってくれていると、理事会へユアスタンド社が直接出席しなくてもスムーズに話が進むことが多いのですが、今回は設置提案者の方が色々と尽力されたのが大きかったようです。

原案の項目内容を見てみましょう。マンションの場合は管理会社も絡んでくるので、設置提案者から依頼をいただいてからは、管理会社を含めたやりとりが多くなりました。その後の動きを細かくまとめてみると、以下の通りです。あとの「経過」の項目と重なる部分もありますが、ともかくご覧ください。

① 現地調査。
② 機械式駐車場メーカーと打ち合わせ、調整。これは、今回は機械式駐車場への設置があったので、機械式駐車場メーカーが駐車場内のみ工事を行うために発生した動きです。
③ 工事内容、見積の提出。
④ 理事会で提案(今回は設置提案者、管理会社より役員へ共有)、承認をいただきました。
⑤ 補助金申請(国へ)。
⑥ 補助金採択(国から)。
⑦ 工事実施。
⑧ 運用開始・工事代金のお支払い。
⑨ 補助金振込手続き(国から)。
⑩ 補助金振込(国から)。

国の補助金振込後に、東京都へ申請を行い、振込手続きをしました。

提案から設置までの経過

1.管理組合理事会への提案

管理組合理事会への提案は、2019年の1月頃でした。今回のマンションでは、だいたい3ヶ月に1回の理事会が開かれているようです。もちろん、必要な場合は臨時でも開かれます。

どこに何台設置するかは、「補助金を利用して、機械式駐車場の上段の2区画に、それぞれ200V充電用コンセントを1基ずつ(合計2基)設置する」方向でまとまりました。これに加えて、「補助金を利用しない形」でテスラ用の充電器を平置き区画に1台設置する計画も同時に進めました。こちらは、設置提案者の方が100%費用を負担しました。

2.総会議案の完成と可決

総会議案に関しては、2019年3月の総会の前の理事会で議案を固めるので、その少し前の1月の理事会で決定しました。

電源や充電器設置場所に関しては、じつはマンションには乗り越えるべき障壁はほとんどありません。最大の山は理事会と総会、つまり区分所有者の「理解」です。
電源や充電器設置場所に関しては、駐車場付きのマンションであれば乗り越えるべき障壁はほとんどありません。最大の壁となるのは理事会と総会、つまり区分所有者の「理解」です。

3.工事開始

晴れて議案が通り、施工が始まったのは2019年の7月下旬のことでした。これは、5月以降に「国の補助金申請」が始まり、審査結果が判明するのは6月中旬であること、また今回は施工に関わる機械式駐車場メーカーの都合もあり、7月で工事を調整したのが経緯です。

ユアスタンド社によると、通常は、審査結果が通知され、総会でも承認が取れている状態であれば、工事はすぐに開始可能だそうです。

4.運用開始

運用を開始したのは、2019年8月の上旬でした。機械式駐車場では、2019年10月いっぱいの時点で、まだ利用者はいませんでした。平置きのテスラ用充電器は当初から利用されています。

集合住宅の機械式駐車場に200V充電器を設置する工事が行われている様子。設置工事会社だけでなく、機械式駐車機メーカーにも加わってもらってトラブルの出ない完璧な状態に仕上げる。
集合住宅の機械式駐車場に200V充電器を設置する工事が行われている様子。設置工事会社だけでなく、機械式駐車機メーカーにも加わってもらってトラブルの出ない完璧な状態に仕上げる。

費用負担について

費用負担については、今回は非常に「レアケース」です。と言うのは、補助金でカバーできない費用については「設置提案者(区分所有者のひとり)」が個人で負担しているからです。

ただし、費用の支払いについては、あくまでも「マンション管理組合が代金をユアスタンド社に支払う」形をとっています。管理組合の銀行口座へ、設置提案者の方が「補助金でカバーできない消費税分等の費用」を入金して処理しています。

通常は充電器は管理組合の負担で導入します。これは、充電設備はあくまでマンションの「資産」、つまり「共用設備」として導入するところがほとんどなので、そうなります。

なお、機械式に設置した2台の200V充電器に加えて、平置きにテスラに充電できる充電設備1台を同時に導入しています。しかしテスラは補助金の対象外なので、この部分は完全に別工事で個人負担になっています。なお、この平置き部分の充電器は、テスラを所有されている区分所有者の方が引っ越した場合などには、普通の200V充電器に簡単に変更できるようにしてあります。

今回の小規模マンションでの導入コストを大公開!青い部分が200V充電器2台の導入コスト。それに対して設置提案者の方が支払ったのは、赤い部分の消費税分の12万円台で収まっている。

ユアスタンド社からの情報を付け加えておきます。「充電器本体」の費用補助は充電器によって変わります。「コンセント設備」は費用がかなり安いせいか、全額補助は出ません。とは言っても、負担は数千円ですので、気になる方はそういないかと思います。

コンセント以外の普通充電器については、基本的には国が1/2、東京都が1/2の補助を出してくれます。また今回は、機械式駐車場への設置となり、通常この場合は駐車場メーカーの改造工事が入り、費用は平置き区画への設置より高額になりやすいそうです。メーカーや工事内容によって幅がありますが、今回は非常に安く施工してもらえてた事例だそうです。

利用料金設定と運用方法

充電料金は「1時間あたり119円(機械式の2台)」です。利用者にはユアスタンド社のアプリを使って利用してもらい、アプリ内で利用料金の決済を行います。じつは料金は管理組合が決められますが、今まで取材してきたなかでは「1時間あたり120円前後」が相場のように感じます。

ユアスタンド社の充電器への課金・予約などは、全てこうしたアプリ上で行える。何日の何時の枠が空いているか一目瞭然だし、予約も簡単にできる。ユアスタンド社の公式サイトより転載。

使用形態としては、区分所有者・住民のみが利用できます。充電器はマンションの「専有部分」に設置されているので、当然そうなりますね。よって、区分所有者・住民以外は使用はできません。また、飛び込みでの利用も基本的にできません。アプリ上で予約する必要があるからです。

利用者からの評価

利用者・住民の評価ですが、ユアスタンド社によると、利用者(設置提案者の方)からは、日常的にさまざまなフィードバックをもらっているそうです。システムや運用の改善にしっかり活かされてるとのことです。

居住者全体の評価は今のところ不明ですが、今後確実に「設置しておいてよかった」と言ってもらえる日が来ると信じています、とユアスタンド社は述べています。

今後への課題

ユアスタンド社にお聞きしたところ、「今回のマンションに限らず、現状では特に大きなトラブルはありません。とはいえ、管理組合も充電設備を運用することは初めてですので、今後も運用をしながら色々なご意見が出て来ることと思います」とのことです。ユアスタンド社自体、2018年から充電器設置を始めたばかりということもあり、取り組むべき課題はこれから色々と出てくるのでしょう。

たとえば、今回の料金設定が正しいかどうかなど、ユアスタンド社では無理のあるご要望以外は、その都度対応をしていきたいと話しています。

日本全体が高齢化に突き進んでいるので、昨今ではマンションの駐車場の空きが増える問題や、機械式駐車状の維持コストが重くのしかかる、といった悩みも聞こえてきます。これに対し、マンションの外からアクセスできる箇所に「時間貸し駐車場」と「充電器」が設置され、住民以外も利用できるようになり、その課金収入の一部が、マンション管理組合の収入になるようなビジネスモデルも出てくるかも知れません。管理組合では現行法上できないので、「法人格」を作るとか、工夫すればいろいろ出来そうですね。

(取材・文/箱守 知己)


3 thoughts on “集合住宅への充電器設置事例【2】区分所有者が自腹で設置した小規模マンションの機械式駐車場など”

  1.  「自腹」でここまで下がったんですね。個数も近い小規模マンションで、10台程度の駐車場しかなく、EVオーナーは私一人。多勢に無勢、余計なことするな、といわれそうですが、このままEVを乗り続けるならありですね。もっとも、もう10年もすれば免許返上も俎上に上がるので考えどころですけどね。一晩経ったら満充電、マンション住まいにこれは夢ですから。

    1. JB様、コメントありがとうございます。「自腹」は最後の手段だとは思いますが、これが実現できてしまう東京都内はじつに羨ましいですよね。やはり、国の補助金だけだと、「自腹」ももっと多額になり、今の状態では結構「痛い」出費になりそうです。我々が情報をもっと多くの人たちに伝えて、府・県を動かす市民パワーを盛り上げる必要がありそうですね。

      JB様は都内のマンションにお住まいであれば、いちどユアスタンドさんに相談して戦略を練ってみるのも悪くないと思います。

      別件ですが、私は昨年夏より通勤を「電車・バス」から「BEVを自身で運転」に切り替えました。ガソリン車の「三菱i」でシュミレートしたところ(以前数年間所有していて、データをたくさん取ってあります)、省燃費運転のわりと得意な小生が運行すると双方の費用はほぼ同じ、クルマ通勤のほうが「15円/日」程度安いのですが、通勤時間が「プラス1時間」+「自身の運転による疲労」と、「駅・電車の混雑の不快さ」+「バスを待つ時間の無駄」とを天秤に掛けることになります。

      ところがBEVの「三菱i-MiEV」だと、通勤にかかる費用は(電車・バスだとほぼ1,300円/日のところ)自宅で全て買電で充電したと仮定しても、BEV使用は260円程度で済んでしまいます。実際には、帰路に5ヶ所の無料QCがありますし、自宅にはPVパネルが載せてあり日中は電気を作りまくっているので、260円は絶対にかかりません。じつは、実際に家で充電している量は、無料QCから自宅に帰着するまでに使った「せいぜい1〜3kWh/日」ですし、この部分は自宅発電量で賄えるので、無料になってしまいます。最近は真冬で発電量は最低レベルですが、平均で5kWhは発電できているので問題無さそうです。(一番良い季節は、リーフ初期型の電池容量を凌ぐ28kWhくらい発電してしまいます。)

      長くなりましたが、こうした点からも、「基礎充電(自宅での充電)」の確保は喫緊の課題だと思います。おっと、国や行政がもっと基礎充電を支援すべきだと考えます。日本の事情はどうか知りませんが、世界の流れを考えると、国や行政は当然そうすべきですよね。

  2. 箱守さんに同じく三菱の軽自動車(eKSPORT→i-MiEV(M))へ乗り換えた僕の実績です。
    年間11000km走行してeKSPORTの燃費が12km/l、ガソリン代140円/lなので年間128333円。これがi-MiEV(M)へ置き換わって電費9km/kWhとしても1426kWh、殆ど深夜充電なので14円/kWhとしても19964円。実に108369円もの差です!!オイル交換2回オイルフィルター1回各2000円としても116369円も安い。
    そこから三菱電動車両サポートプレミアム会員代19800円を差し引いても96569円ですが…毎月500円分無料なので道の駅1分8円を15分4回使っても範囲内、過去実績で30kW(75A)充電器で15分5kWhなので毎月20kW年間240kWhそれで充電したとすれば自宅での充電量は1186kWhで電気代は年間16604円。111729円もトクになります。
    2年前の中古購入時eKワゴン70万i-MiEV(M)85万なのでもう逆転してますよ(笑)
    当家も箱守邸に同じく屋根ソーラーありますんで将来FIT(固定買取)が切れてもV2H導入で充電できるし、現在殆ど使わない(自宅留置)セレナをリーフe+(62kWh)へ代替すれば計算上冬以外は電気を丸々自給できます。ブレーカーの契約を10Aにしてもいけるかもしれません(100V/9Aの充電器でi-MiEVへ蓄電すればいいだけ)

    今でこそ電気自動車乗りは少ないですが、こうして一般庶民が知恵を使って生きてゆけばいいですし、その動きに企業も便乗して最終的に行政も動かざるを得なくなりますよ。日本は行政の腰が重すぎ(爆)特に地方では期待できません
    中古のソーラーパネルと電気自動車は「庶民の宝」!最近リーフ中古バッテリーを自己責任で分解しオフグリッドソーラー(蓄電式太陽光)にするカリスマも増えてきました。電力会社とは無縁のEVライフも技術さえあれば割と簡単にできるかもしれませんよ!?

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